国防総省はロシアや中国の極超音速滑空体(HGV)に対応するため専用迎撃弾=GPIの開発を進めて来たが、米ミサイル防衛局のコリンズ中将は25日「ノースロップ・グラマン案を採用してGPIの開発を継続する」と発表、計画に参加する日本はノースロップ・グラマンと手を組むことになる。
参考:Northrop selected to develop anti-hypersonic Glide Phase Interceptor
2040年までに最低でも24発のGPI配備を予定、量的に全てのHGVに対応できる訳では無い
ロシアや中国が実用化した極超音速滑空体(HGV)は飛行コースを複雑に変更しながら大気圏上層をマッハ5.0以上で飛んでくるため、既存の迎撃弾や単体のセンサーレンジだけ対処するのが困難と言われており、米国は地球低軌道上に赤外線センサーを搭載した小型衛星の配備と専用迎撃弾を開発を進めている最中で、国防総省はノースロップ・グラマン、ロッキード・マーティン、RTXの3社にGlide Phase Interceptor=GPIの予備設計契約を授与。

出典:RTX GPIのイメージ
最終的にロッキード・マーティン案は除外され、GPI開発はノースロップ・グラマンとRTXの間で争われていたが、米ミサイル防衛局のコリンズ中将は25日「ノースロップ・グラマン案を採用してGPIの開発を継続する」と発表、この開発に参加することが決まっている日本はノースロップ・グラマンと手を組むことが確定した。
因みに2024会計年度の国防権限法は「2029年末までに初期運用能力を獲得」「2032年までに完全運用能力を獲得」「2040年までに最低でも24発のGPI配備」をミサイル防衛局に要求しており、GPIもGMD(総調達数は100発未満)やSM-3(生産数は年12発)と同じように限られた数しか調達できない可能性が高く、重要な資産のみを保護するのに使用されるのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Northrop Grumman
ミサイルの飛翔速度が上がれば、探知・迎撃にかけられる時間が減りますからね。
専守防衛という概念は、現代の戦争でも、本当に不利だなあと感じます。
日本の戦争・戦史は、奇襲作戦を取り入れてきた歴史がありますよね。
ただ、奇襲は文字通り「奇策」に属するものですから、常道との組み合わせが非常に難しいですね。
アメリカへの奇襲を試みた真珠湾は成功でも、その後のミッドウェーで負ければ意味がなく。
ロシアへの奇襲とはなったクルスクは領土面では奪取できても、その後の東部戦線で負ければ意味がないどころか兵力を引き抜いた分だけマイナス。
個人的には、日本はミサイル分野においても、地味に地道に電子戦のノウハウを積み重ねていき、“華々しい奇襲効果”よりも、“堅実なレーダー防衛網”を作っていくのが良いと思っています。(イメージはバトルオブブリテンですが、アフリカ戦線よろしく専守防衛に徹するだけが道ではないとも思います。中国やアメリカが相手だと敵地への上陸はやるべきではないですが)
まさに仰る通りです。
国家間戦争、横綱相撲になれば長期化しますから、堅実さが重要と思います。
ええ!SM-3の生産数ってそんなに少なかったのですか
買いたくても買えず、日本の新型イージス艦もでかいドンガラは出来てもVLSはスカスカになるかも
イージス艦からの運用みたいですが。
日本の場合、フネの数が多くはないので、
稼働する全艦について、必要な改装をするのかな?。
もともとこの手の弾道ミサイル防衛は、北朝鮮みたいなならず者国家が、せこせこ拵えた数えるほどのミサイルで恫喝をかけるということを抑止するための兵器です
ガチンコの核戦争に堪えられないのは最初から織り込み済みです
そんなもの作ってしまったら相互確証破壊が崩れますしね
全力の総力戦だと重要拠点とかを防衛する為に絞って使われるんですかね?
4年くらい前にもHGVのこと全然理解してない記事書いてたけど、HGV自体はダイブフェイズ時にマッハ3~5程度までに急減速して目標に一直線に向かってくるからPAC-3やSM-6で十分に迎撃可能
ミッドコース段階に対応してる既存のSM-3なんかがHGVに対応できないのであって、GPIの数=HGVに対処出来る数ではない
「思ったよりもグネグネ曲がらない」を懐疑論者が「一直線」と単純化してしまってるだけで、ダイブフェイズでも滑空体は一定の機動を行う可能性があります
迎撃できる・できないの二元論であれば「できる」と回答できますが、実際には迎撃可能な距離が大幅に減少します
ダイブフェイズで機動出来るのは揚力の関係でせいぜい20~30kmまでで、大した機動は出来ません
一応パーシングⅡも10kmくらいで最終的な機動はしますが、それは『迎撃を回避』するためではなく、目標に向けての最終的な弾道の調整であり、この場合着弾時は音速以下まで減速します
余談ですが、巷ではPAC-3は迎撃できずTHAADなら迎撃出来る可能性があるなんて言われてますが、THAADの迎撃可能高度である40~70kmだとHGVはダイブフェイズ前の回避機動を取ってるので、むしろTHAADの方が迎撃困難でしょうね
「大した機動はできない」という曖昧な表現を駆使するのが懐疑論者の手法です
「大した機動」とはなんでしょう?
何しろ速度が速度ですので、数度変針するだけでも未来位置は数百メートルズレてしまいます
未来位置にめがけて飛ぶ迎撃ミサイルは自然敵弾よりも大きく機動しなければならず、推進剤を浪費し射程が大きく縮むことになる
PAC-3の理想的な迎撃は、100km向こうから弾道ミサイルを監視・最終弾道を確定させ、その未来位置に向けてPAC-3弾を発射し、距離20kmの場所で敵弾を出迎えるというものになります
最終弾道が着弾直前まで確定しないのであれば迎撃難易度は飛躍的に上昇します