米国関連

生まれ変わる米空軍のF-22A、F-35並のアビオニクス搭載で2060年頃まで運用予定

F-22はもう間もなく待望のアップグレードが始まり、第6世代に取って代わられる2060年頃までトップレベルの能力を維持することになる。

参考:These Upgrades Will Keep The F-22 Raptor Combat Ready Until 2060

F-22にF-35並の電子光学式システムを搭載するアップグレード計画

2005年に運用が開始された世界初の第5世代戦闘機F-22Aラプターは米空軍にとって非常に重要で価値の高い存在なのだが、レガシーな戦闘機と同じように手厚い機能のアップグレードを施すのは難しいという欠点を抱えている。

では、どうしてアップグレードを施すのが難しいのか?

新しいセンサーやテクノロジーを追加する場合、F-22の高度なステルス性能を損なう可能性があるため簡単に追加できないという問題と、もし技術的に追加可能でもあってもF-22の生産施設や設備が失われてしまっているため、これを一から構築し直すには非常に手間と金が掛かるためだ。

さらに付け加えるとF-22のアップグレード計画は数年前から存在しているのだが費用対効果が良くなく他に資金を必要とするプログラムは幾つもあるため、米空軍が意図的に十分な予算を割り当ててこなかったというのもF-22のアップグレードが進展しない理由の一つと言える。

出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Heather R. Redman

しかし中国やロシアとの対立が決定的になったため、米空軍も重い腰を挙げることになった。

現在、米空軍の予算割り当ての中でF-22のアップグレードは何よりも優先されており、この予算優遇が維持されれば2030年までには全く新しい戦闘機として生まれ変わるだろう。因みにF-22に施される予定の主なアップグレード内容は以下の通りだ。

  • AIM-9Xのオフボアサイト能力を最大限生かすためJHMCSの統合
  • 最新の中距離空対空ミサイルAIM-120Dの統合
  • 戦術データリンク「Link-16」の送信モジュールの追加
  • F-22とF-35がLink-16に頼ることなく戦術情報を共有するためのGatewayOne搭載
  • F-35が搭載しているEOTSやDASと同等の電子光学式システムの搭載

この中で特に重要なアップグレードはGatewayOneとF-35並な電子光学式システムの搭載で、これが実現すれば高度なステルス性能を活かした戦いができるようになる。

F-22とF-35には敵に感知されにくく安全性の高い独自の戦術データリンクが搭載されており敵の厳重な防空システムに守られた空域に活動する際に威力を発揮するのだが、問題はF-22が搭載する「IFDL」とF-35が搭載する「MADL」には互換性がないため、両機が戦術情報の共有を行うためには標準的な戦術データリンク「Link-16」を利用しなければならない問題がある。これを解決するのがGatewayOneと呼ばれるプロトコル変換装置で、これを利用すればIFDLとMADLの間で戦術情報の共有が行えるようになるのだ。

出典:User:Dammit / CC BY-SA 2.5 NL 電子・光学式照準システムEOTS

さらにF-22にF-35が搭載しているEOTSやDASと同等の電子光学式システムが搭載されれば、隠密性の高い任務や電子妨害の激しい環境下でもレーダーに頼ること無く任務を遂行できるようになるため、アビオニクス面でF-35に追いつく存在、米国が日本の次期戦闘機「NGF(仮称F-3)」プログラムに提案していた「F-22とF-35のハイブリッド案(F-22の機体にF-35のアビオニクスを移植する案)」に近い存在と言える。

ただ、このアップグレードは段階的に行われ特に電子光学式システムの開発は2020年後半から始まる予定なので、全てのアップグレードが完了するのは2030年頃だと予測されている。そして生まれ変わったF-22は第6世代に取って代わられる2060年頃までトップレベルの能力を維持する予定だ。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Erin Baxter

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    待っていました、F-22のアップグレード。
    戦場の眼となり、接近阻止・領域拒否の環境下でミッションをこなせる能力をどのように実現していくか見ていきたいです。

    日本で言うところの近代改修ですかね。

    1
    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    侵攻戦闘機としてはセンシングとリンク機能の強化は死活問題ですよね
    F-35あるからイラネってならなくて良かった

    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    アメリカが第6世代機の開発を2060年代まで遅らせるとは思えんのだが
    中露の新型機も登場するだろうし

      • 匿名
      • 2020年 4月 25日

      それはF-15やF-16らの後継が担うのでは?
      ただし、それらが第6世代となり、F-22後継は第7世代になるかもしれませんね。

      • 匿名
      • 2020年 4月 25日

      第6世代の配備が2060年代なのでは?

      • 匿名
      • 2020年 4月 25日

      使い続けることと、開発・導入することがなぜ相反することだと思ったのかな。
      F-22の導入でF-15Cは絶滅してないよね。
      F-15Cに取って代わるであろう第6世代機が導入されたらF-22は退役する?
      そんかことはないわけで。

      1
      • 匿名
      • 2020年 4月 26日

      YF-22が初飛行した1990年の時点では米軍でも第3世代機のF-4がまだ現役だった訳で。
      単純に考えればF-22が退役する頃には第「7」世代の開発が本格化してる計算ですな。

      1
    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    2060年代まで使えるとは、延長改修コミで機体寿命はF-15系並に長いという事かいな。

      • 匿名
      • 2020年 4月 25日

      ステルスコーティングはともかく、構造自体はF-15よりチタン使用料が増えているから長寿命の可能性は十分あるかと。
      複合素材の寿命次第かな。

    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    制空能力戦闘力ではまだF22のほうが上だからアップグレードして使うのはわかるけど、
    EOTSやDASとか追加したりして他任務に使う気なら、新造のF35でよいようなきがする?

      • 匿名
      • 2020年 4月 25日

      大型の警戒機を無くす話も出てるから、センシングと情報共有は足並み揃えてだと思う
      EOTSもDASもそれ自体は相手を叩く武器じゃないわけで

    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    こういう記事を見ると、アメリカにはもう一から新型戦闘機を開発する能力も気力も無くなってしまったのだなあと思わざるを得ない。

    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    有人機はもうこれで最後ってことだろ
    2060の人工知能なんか想像もつかんで。最低でも人間は越えてる

    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    うーんソースがnationalinterestの占い予想かぁ…話半分に聞いとこ

    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    F-22を早期退役させる前提で、新型を新造したほうが安いだろう。
    とも思ったが、戦力化から20年しか経っていない戦闘機を早期退役させる事と、新しい機種の開発をアメリカ議会は良しとしてくれないだろうな……。
    何と言ったって、海軍のFA-XXすら予算を認めてくれないくらいだし。

    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    2060年代までにアメリカ合衆国が存続しているとは思えない

    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    更に強くなるF-22ラプター‼️Fight Usaいつかプラモデルも作ってみたい!

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    米国はF-22を大金をかけて改修するのか。
    でも、その場合、F-22の機体数自体が少なすぎる気がする。
    予算の問題があるとはいえ、戦略が一貫していないきがするなぁ。。。。
    (日本も他所の事いえないのだが。。。。)

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