ポーランド空軍向けのFA-50PLには冷却装置が不要な空冷式AESAレーダー=Phantom Strikeの搭載が確定しており、RTXは6日「Raytheonがテストベッド機を使用したPhantom Strikeの試験飛行に成功した」「複数の空中目標を追跡して地形を正確にマッピングした」と発表した。
参考:RTX’s Raytheon completes first flight test for PhantomStrike radar
参考:PhantomStrike Low-Cost Lightweight AESA Radar Flies For First Time
小型で安価なPhantom Strikeは有人戦闘機だけではなくドローン、ヘリコプター、地上の監視塔にも設置可能でCCAにぴったりのセンサー
Raytheonが開発したPhantom Strikは「冷却装置が不要な空冷式AESAレーダー」という点がユニークで、Janesの取材に「Phantom Strikeの重量とコストは最新のAESAレーダーの約半分」「Phantom Strikeの小型バージョンでも目標の検出範囲はF-16と同等」「中型バージョンならF-16よりも優れた検出範囲を提供できる」と述べ、Phantom Strike搭載のFA-50PLを導入するポーランドメディアは「Raytheon関係者がPhantom Strikeの性能はAPG-83に匹敵する」と報じている。

出典:Ministerstwo Obrony Narodowej
Raytheonでスペクトル・ドミナンス分野を担当するエリック・ディトマーズ氏はDefence24の取材に「Phantom Strikeの性能はF-16C/D Block52+より優れ、F-16向けのAESAレーダーに匹敵する性能を備えている」「これはAPG-83がGaAs技術で作られているのに対し、Phantom StrikehはGaN技術で作られているためだ。重量やコスト面で優位性を備えるPhantom StrikeをF-16C/Dに搭載することもできる」と言及しているため、Phantom StrikeはAN/APG-68シリーズよりも優れ、F-16Vに搭載されたAPG-83に匹敵するという意味だ。
他にも「Phantom Strikeの売却にはFMSの手続きが不要」「他のAESAレーダーでは到底不可能な技術移転や現地生産にも対応している」「可動部部品の削減や空冷式の採用で故障する部分が極端に少なく保守が容易」と述べているが、FMSの手続き不要は「直接商業売却=DCS」のことなので「国際武器取引規制を回避できる」という意味ではないが、それでも従来レーダーより「売却手続きが簡単で技術移転のハードルが低い」というのは大きなセールスポイントだろう。
RTXは6日「Raytheonがテストベッド機を使用したPhantom Strikeの試験飛行に成功した」「Phantom Strikeは複数の空中目標を追跡して地形を正確にマッピングした」「この次世代レーダーは脅威の特定と対応アプローチを劇的に変化させる」と発表し、War Zoneも「AESAレーダーは機械走査式レーダーよりも高価だったが、RaytheonはPhantom Strikeでこの状況を逆転させようとしている」「小型で安価なPhantom Strikeは有人戦闘機だけではなくドローン、ヘリコプター、地上の監視塔にも設置可能でCCAにぴったりのセンサーだ」と報じた。
Phantom Strikeを搭載したFA-50PL=FA-50 Block20の初飛行は2025年11月で、作業スケジュールに大きな遅延がなければ2028年までに32機の引き渡しを終える予定だが、FA-50PLへのAIM-120C統合についてはポーランド側と韓国側で認識の違いがあり、ポーランド側は当初「FA-50PLにAIM-120Cが統合される」と述べていたものの、契約には「AIM-120C統合に関する実現可能性の調査」しか含まれておらず、これはPhantom StrikeとAIM-120Cの統合=実現可能性の調査結果後でないと米国の承認が下りないため、ポーランド側は「契約上の見落としだった=想定よりも時間がかかる」と自身のミスを認めている。

出典:KAI 한국항공우주산업 ポーランド向けのFA-50GF
ポーランド国内で浮上したFA-50PLへの批判は前政権への攻撃の脈略で語られることが多く、トゥスク政権のある閣僚は「FA-50契約に武器が含まれていなかった」「我々は戦闘機ではない戦闘練習機を購入した」と批判したが、ポーランドのディフェンスメディアは「戦闘機購入の契約は機体と武器が必ずセットになっている訳ではない」「機体契約とは別に武器契約を結ぶこともある」「F-16C/Dに搭載するJASSMやJASSM-ERも別途発注された」「そもそもFA-50で使用するAIM-9、爆弾、機銃弾はF-16向けのものと同じだ」「AIM-9XもFA-50PLから使用可能になる」と説明したが、これを一般人が理解できるかどうかは分からない。
批判のための批判を行う人々にとって「武器が付属していない契約で騙された」と言えば興味のない人々に刺さりやすく、この手のフェイクはSNSと相性が良いので直ぐに炎上してしまうが、本ブログの読者なら「FA-50PLへの批判は的外れ」と理解できると思うので騙されることはないだろう。

出典:LIG Nex1
因みに韓国のLIG Nex1はPhantom Strikeと同じ空冷式AESAレーダー=ESR-500A(送受信素子モジュール数は500以上)を開発中で、昨年末には「オランダ国立航空宇宙技術研究所と共同で飛行テストに着手した」と発表しており、海外輸出やアップグレードの自由を確保するためPhantom Strikeの代替品を確保するつもりだ。
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※アイキャッチ画像の出典:RTX
これには本田宗一郎も草葉の陰でにっこり😊
ちょっと意味が分からない。
本田宗一郎が韓国にいい経験を持たなかったから
韓国と関わって痛い目見たことを皮肉ってるんじゃないかな
にしてもまぁこれは契約内容の見落としだけども
そもそも本田宗一郎の話は明確な根拠が無いのでフェイクと考えた方が無難です
単に空冷エンジン好きだった事からの言及では
そもそもシビアコンディションでどこまでの安定性能が担保されているかの保証が有るんですかね。
空冷のポルシェとか渋滞に捕まったらアウトみたいな面はあるし、液冷の車ですら有る程度の走行風が当たる前提で組まれているパーツによってはオーバーヒート気味になる。ファンレスのタブレットやPCは能力的に制限が多いにありでしょう。
PCとか車を知っている人だと空冷で性能をアピールされても懐疑的になる人ばかりじゃないですかね。
データセンターですら運用コストの観点から空冷が多いらしいので可能性としてはアリかなと
絶対的性能を考えたら水冷一択だが、軍用は稼働率が大事なんで空冷にしたいだろな(ブローニングm2的に
日本・アメリカ・韓国・イタリア・ウクライナなど、どこの国でも与野党・党内与野党が入れ替わったりすれば、前政権の政策を否定したがりますよね。
もうお決まりなんでしょうが、民意の信託を受けたものと、政争は分けてみるべきだなと感じます。
GaN 半導体の AESA なんて J/APG-2 で採用した三菱が今でもトップレベルの分野だから対抗製品出せないのかなと思ったが、レイセオンとの共同開発をスムーズに進める方が自衛隊として重要で、さらに地上や艦載などより攻撃的でレピュテーションリスク高いところを取りに行く必要もなさそうだった
GaNと言えば充電器として家庭にも入り込んで来てるな。実際それ以前と比べて出力当たりの大きさと発熱について相当改善されている。
詳しくはないのですが、コストダウンが重要な小型充電器向けと違って、高周波・高出力がとにかく必要なレーダー向けはまた違った技術が必要そうです。
私も畑違いなので、受け売り止まりですが…
横軸をカットオフ周波数fT、縦軸を破壊電圧BVとして、両軸とも対数でグラフ表示すると
素子ごとに右肩下がりの直線状に並び、
上の方から GaN > GaAs > Si系 となっています。
これは、下記の物理特性が要因との事です。
・バンドギャップが大きい
Si:1.1eV、GaAs:1.4eV、GaN:3.4eV
・飽和電子速度が高い
Si:1.0×E7cm/s、GaAs:1.3×E7cm/s、GaN:2.7×E7cm/s
※注:E7→10の7乗
ちなみに、バンドギャップが大きい点は、破壊電圧が高いことだけでなく、動作温度の上限値にも有利に働いている様です。
上記のようにGaNの素子特性は優れているのですが、
Siなどに比べ微細化加工技術が数世代遅れているので、
2000年代辺りから漸く無線のPA用途で使える様になったみたいです。
あと無線装置って、高パワーなアプリケーションでも受信部とか、送信部でもゲインブロックなど、低パワーなアンプを多数使っています。
低パワーなアプリケーションなら尚更ですね。
そういった数量が出る領域は、安価なSiやGaAsなどで性能的に事足りるため、
無線分野だとGaNは
性能的に必要な所に限定使用となり
数量が出ないので高止まりしている
と悪循環に陥っている様です。
前々から思うんだけどFA-50ってレーダーとか武器が豪華な割にエンジンが貧弱過ぎない?
元が練習機って言われたらそうとしか言えないけど、せっかくF414があるんだからさ
エンジン貧弱ですかねえ?F404系は小形高出力だし、それ以上大きくなると機体サイズが厳しいのでは?
それはそうと、動画の機体にT-7っぽいのが映ってるのは意味深ですな。
F-16比でざっくり8割の空虚重量で6割の推力ですから貧弱でしょう(旧グリペンさんは黙ってて)。
そして「せっかく『同じサイズの』F414があるのに『なんで積み替えないのか』」という話なんだろうと思います。
T-50登場当時と異なり、(上で触れられているように)レーダーとか武器が豪華になってるので、
アンバランスで余計に『なんでF414に替えないのか?』な感じになっていますよね。
FA-50とF-16を比較して根本的な違いは何かと言えばそのサイズです。
FA-50は航続力と搭載量でF-16に匹敵することはサイズ上物理的に不可能で、F414等に換装しエンジン推力を大幅に引き上げても兵器搭載量を比例的に増加できるわけではなく、速度や上昇性能が向上する代わりに燃料消費量の増加から航続力は相応に低下します。
メリット・デメリットのトレードオフで、要求に対しF-414への換装はベターではないとの結論なのかと。
と、思うじゃん?
でもF404ってF414と比べてたった4%程度しか燃費良くないのよね
元々T-50にはF414の低出力型が提案されてたので、多分燃費とかよりもコストで選んだのかと(練習機なら少々性能低くても問題ない)
そしてFA-50でF414換装が成されないのは、開発リソースの問題なのかな?
などと予想しています。
FA-50への装備統合はLMが担当するから支障ないけど、
機体の改造が絡むと開発リソースがKF-21に取られているので出来ない、
といった感じで。
ポラメのレーダーもこれにすればええんや無かろうか?
ドローン用の安価なレーダーは、需要が高まりそう。
ただFA50の機首容積がやや不足気味でこのレーダの性能を完全には発揮出来ないような話がSNS界隈でチラホラ
ESR-500AとPhantom Strikeの性能比較ってどこかで見られますか?
よその記事で、窒化ガリウムの次は人造ダイヤと読みました。
素人などにとっては”付いて行けない”ような話なのですが、
そんなものなのでしょうか。
耐熱性が半端ないからね
熱伝導率の桁が違うし最大動作温度も高い
無線用途だと、デバイスの性能指数がSi比で
GaN:ジョンソン性能指数433倍、ケインズ性能指数1.8倍
ダイヤ:ジョンソン性能指数1100倍、ケインズ性能指数19倍
と桁違いの性能を誇っている様です。
高周波&高パワーで有利なデバイス特性なので、実用化されたら恐らくTHz帯のPA用途とかで使われるかも。
なるほど、です。
ご教授ありがとうございます。
調べるとPhantom Strikeを搭載するBlock20になるとASRAAMやIRIS-Tやミーティアなど色々運用できるようですが。
FA-50PLBlock10は外付けのALQ-200K ECM podを搭載できるようで他にも色々盛っているようで。
いとも簡単に戦闘機を開発して輸出まで持って行く韓国。日本人が凄い凄いと自慢するF2なんて実は大したモノじゃないの事が明らかになった。
F-2をスゴイスゴイなんて言ってる軍オタなんているんですか?
むしろデマで駆使して腐す「評論家」とか、結局F-16の亜種になってしまって残念とかいう声ばっかり聞こえていましたが。
F-2のエアフレームはF-16やアジャイル・ファルコンと似て非なる代物だけど、所詮F-16の基礎データから派生した少し重めな機体、
また使用エンジンもF-16のシリーズ展開の一つなので、
F-16との対比は、優劣よりもキャラクターの相違の面が強い様に思えます。
登場当初売りだった炭素繊維強化複合材による一体構造の主翼は、今後は寿命の面で懸念材料ですか。
登場当初のもう一つの売りだったAESAも、今では各機体に普及してきてるし、
J/APG-2の時は先端だったGaNも、遠からず普通になるのでしょうね。
対空用途の探知距離がF-35の倍以上とされる先進統合センサ・システムは、所詮実証試験止まりだし、
今日F-2に関して『凄い』と言える要素って、正直ちょっと思い浮かびません。
一方、『凄い』とは異なりますが、日本にとりF-2が有難いと言えるのは、装備の統合作業を日本独自で行える点でしょうか?
FA-50に統合する照準ポッドについて、開発してた韓国製照準ポッドが断念されてスナイパーポッドに変更となったのは、
(統合作業を担当する)LMに韓国製照準ポッドの統合を拒否られたから、といった話しを聞きます。
(日本独自で統合作業を行える)F-2の場合、上記の様な問題は起きないので、その点は魅力だと思います。