米国関連

パイロット不足、ウクライナが戦闘に年内投入できるF-16は約10機

ゼレンスキー大統領は受け取ったF-16AMを4日に披露したが、New York Timesは「年内にF-16の操縦訓練を終えるウクライナ人パイロットの数は約20人」「少なくとも1機あたり2人のパイロットが必要なため、戦闘に年内投入できるF-16は約10機に留まる見込みだ」と報じた。

参考:Ukraine Has Received F-16 Fighter Jets, Zelensky Says

映像に登場するウクライナ空軍のF-16AMにはAN/AAQ-33やAN/ASQ-213 HTSが見当たらない

ゼレンスキー大統領は4日「F-16がウクライナにある。我々はそれを成し遂げた」「既にウクライナ人パイロットが我が国のための戦闘機を飛ばしている」と語ったが、何機のF-16を手に入れたのか、既に戦闘任務に就いているのかなどには触れず、Economistは4日「7月末までにウクライナは最初の10機を受け取った」と言及したものの、New York Timesは米当局者の話を引用して「半ダース(約6人)のパイロットが同数の機体を使って脅威のないウクライナ領空内でテスト飛行を行っている」「彼らは小規模な作戦に慣れつつあるもロシア軍とはまだ交戦していない」と報じた。

F-16がウクライナに何をもたらすかは実際の戦場で間もなく判明すると思うが、New York Timesは「年内にF-16の操縦訓練を終えるのは約20人」「少なくとも1機あたり2人のパイロットが必要になる」「戦闘に投入可能なF-16の数は約10機に留まる見込みだ」と報じており、ウクライナ当局者も「F-16の投入が遅れると戦場での効果は薄れ、ロシアに(F-16を使用した戦術や使用する武器について)適応させる時間的猶予を与えることになる」と警告している。

因みに映像に登場するウクライナ空軍のF-16AMにはAIM-120、AIM-9M、PIDS+(ミサイル警報装置とフレア・チャフディスペンサーが組み込まれたTerma製のパイロン統合型ディスペンシングシステム)が搭載され、パイロットのヘルメットにも統合目標指定システム=JHMCSが装着されているのが確認でき、フレア・チャフディスペンサーの代わりにAN/ALQ-162を内蔵するECIPS+とセットで使用されることが多いため、WAR ZONEは「提供されたF-16にECIPS+が含まれるかもしれない」と指摘した。

出典:Офіс Президента України

但し、映像に登場するウクライナ空軍のF-16AMにはAN/AAQ-33やAN/ASQ-213 HTSが見当たらない。

関連記事:F-16がウクライナにもたらす違い、供給される武器や照準ポッド次第
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※アイキャッチ画像の出典:Повітряні Сили ЗС України

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コメント

    • そら
    • 2024年 8月 05日

    まだまだ纏まった戦力として扱うには心許ないけど、ウクライナは数が揃うまで我慢できるかな?
    慌てて使って消耗する未来は避けて欲しいもんだ

    8
      • マミー
      • 2024年 8月 05日

      そもそも運用の為の基地整備が可能なのかから始まりそう

      32
        • たむごん
        • 2024年 8月 05日

        仰る通りです。
        ゼロから別系統の装備を、運用するのは大変そうですよね。

        WindowsとMac、別メーカー・別規格の機械があるとイメージして、(戦時中ということもあり)現場の負担が大きくなるイメージがあります。

        15
        • ポレ
        • 2024年 8月 05日

        ボグダンさんの配信によると
        安全なポーランドの基地から
        出撃させるらしいんですよね
        通過を許すだけでもグレーですけど
        基地の提供って国際法や
        交戦規定的にどうなんですかね?

        ロシアも遠慮なく、ベラルーシ領から
        キエフに戦略爆撃を仕掛けるようになりそうです

        13
          • 遠慮?
          • 2024年 8月 05日

          ベラルーシからキーウ侵攻したのに今更じゃね?
          遠慮しているとすれば、形の上ではベラルーシは独立国だから、ベラルーシに遠慮しているというはあるだろうが。

          12
    • Masari
    • 2024年 8月 05日

    JHMCSも一緒にもらったみたいだね
    ただ見た感じサイドワインダーはL型(M型?)だからオフボアサイト射撃はできんな

    6
    • たむごん
    • 2024年 8月 05日

    ウクライナ空軍の在来機が、まだまだ主力でしょう。
    保有機合計が減少する在来機が消耗していく前に、どこまで運用環境を整えることができるのかが勝負でしょう。

    F16が10機増えても、Mig・Suが10機減れば、戦力ダウンになる可能性が高いからです。
    (F16の能力以前の問題として)ウクライナ軍が、人的資源・物的資源を確保したり、運用に慣れてきたのは在来機だからです。

    ウクライナ政府は、戦闘機調達のために、外交力を使い続けているように見えます。
    ポクロウシク方面を見れば、他国からの協力・大量調達が容易そうな、ブルドーザー・シャベルなど重機の方がコスパがよかったように見えますが難しい所ですね。

    14
    • 航空太郎
    • 2024年 8月 05日

    現時点で2名×10機=20名のパイロットがいるのであれば、自国領土内戦争でベイルアウトした場合、日本のように墜落するとだいたい大海原というとこと違い、歩いて帰還できる可能性は十分ありますよね。あのルーデル閣下は被撃墜回数30回ですから、撃墜されても次の機体を用意して出撃、ということも可能でしょう。なので常時稼働は10機として、予備機はその10倍くらい見込んでおいても良いかもしれません。それくらいウクライナパイロットの皆さんが強運だと良いのですが。

    9
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2024年 8月 05日

      空対空、地対空兵器が機関砲ぐらいしか無かった自体なので被撃墜回数30回ができたのだと思います
      現代では当たったら木っ端微塵になりえてしまう値・空対空ミサイルがあるので、ベイルアウト出来ないと死あるのみです

      20
    • ざる
    • 2024年 8月 05日

    式典の後はもちろん安全な場所に移動しているのでしょうが、どこで誰に見られているか分からないのに堂々とアピールするのはどうなんでしょう。
    内通者に着陸する場所見られて弾道ミサイル撃ち込まれてはたまったもんじゃないと思いますが…。

    12
      • 思うに
      • 2024年 8月 05日

      キーウ近郊の飛行場ではないんじゃないかな、という気がする。
      キンジャールの射程500kmより前線から離れているんじゃないかな。

    • 現実主義者
    • 2024年 8月 05日

    2機一組5編隊の運用でピンポイント攻撃ぐらいになるのかな。
    虎の子だから危ない使い方はできないでしょう。

    4
    • 58式素人
    • 2024年 8月 05日

    ある意味、F16が、現状、ハイローミックスの”ハイ”を担当するならば。
    ”ロー”にあたる機体は現状はどうなのだろう。
    F16は数年掛けないと一定の勢力にはならないだろうし。
    先日、別の記事で、Mig-29の現状勢力は60機ほど、と読んだけれども。

    2
    • うくらいだ
    • 2024年 8月 05日

    表題の写真が一機のみの飛行って寂しいなー
    アメリカ映画イメージに引っ張られてると思うが、普通こういうのって上空を編隊飛行でかけていくきがするだけに、逆に寂しさを覚える。

    2
      • まあ
      • 2024年 8月 05日

      同じ写真のアンテナ?が気になる。EW用のアンテナ?

      1
    • 名無し
    • 2024年 8月 05日

    安全な飛行場あるの?
    まさかポーランドから攻撃出来ないでしょ?

    2
      • のー
      • 2024年 8月 05日

      昔から、聖域なんてありまして。
      ベトナム戦争でも、北ベトナム軍が危なくなると中国に逃げ込んで、南側が手を出せないなんて話がありました。
      同じようにポーランドから出撃されたら、もちろんロシアは怒るでしょうが。ロシアは手は出せないでしょう。
      実際にやるかは知らんですが。

      2
        • 名無し
        • 2024年 8月 06日

        今もポーランドに避難して整備してるけど
        ポーランドから出撃して迎撃や攻撃した場合はロシアがその基地を攻撃出きるようになる。
        ミサイルロシアに撃ち込まれたからと言って文句言えなくなる。
        かといってNATOが核戦争してくれるわけもない。

        4
      • NHG
      • 2024年 8月 05日

      提供前の噂話としてNATO諸国の空港を利用するという話はあったけど実際のところは分からない
      しばらくドローンや弾道ミサイルの迎撃(ロシア兵の命を奪わない)に専念するならNATOの空港を利用するハードルは下がりそうだけどどうなんだろう

      2
      • 折衷案
      • 2024年 8月 06日

      整備はポーランドでやって、出撃の際は一旦、ウクライナの空軍基地に着陸して給油して出撃でいいんじゃね?

      1
    • エンジン回せ―!
    • 2024年 8月 05日

    パイロット一人に対して機体が二機という事は飛行した後の整備点検中にもう一機運用できるという事から、
    飛べる機体があるなら飛べよという政治的圧力でパイロットの精神肉体的な疲弊が凄そう。
    *素人の想像です

    3
      • T.T
      • 2024年 8月 05日

      休んでいる暇は無いぞ、出撃だ!
      航空太郎さんもそうだけど、超人の基準を一般人に適用しないで差し上げろw

      5
      • Easy
      • 2024年 8月 05日

      湾岸戦争の時は、米軍が空母機のパイロットに1日10時間超の連続戦闘飛行を強いており。
      疲れてフラフラで医務室に来るパイロットに容赦なく覚醒剤を打ちまくって爆撃に行かせたという心温まるエピソードがあるくらいですから。
      絶賛大祖国戦争中のウクライナに、パイロットの健康とか精神状態を慮る余裕は皆無でしょう。

      17
        • たむごん
        • 2024年 8月 05日

        イラク戦争では、カフェイン錠剤というのを見た記憶があります。

        ウクライナでは、エナドリが喜ばれているみたいですから、飲み続けてバキバキになるかもしれませんね。

        3
          • Easy
          • 2024年 8月 05日

          カフェイン錠剤だ、という名前で渡されるアンフェタミン製剤ですね。ヒロポンに似た化学式ですがヒロポンとは微妙に化学式が異なるために覚醒剤ではないということになっているんですが、副作用として手が震えて幻覚を見て常習性があるそうです。

          8
            • たむごん
            • 2024年 8月 06日

            情報ありがとうございます、勉強になります。

            まさにそれな副作用ですね…

      • バーナーキング
      • 2024年 8月 05日

      >パイロット一人に対して機体が二機
      すいません、それどこに書いてあるんでしょう。
      今半ダースと同数の機体(6人6機)、今年中に20人(だから10機)という数字しか見つけられない…

      5
        • hiroさん
        • 2024年 8月 06日

        単純な誤読でしょうね。
        一機に対しパイロット二名が必要、が正だと思います。

        3
    • Natto
    • 2024年 8月 05日

    歩兵くらいなら義勇兵になってもお目こぼしがあるけど、元パイロットや整備員が義勇兵は流石に駄目なのかな?
    F16Dとかに民間軍事会社の人間とウクライナの人間が乗って飛ばして各種操作は民間軍事会社の人間、発射操作はウクライナの人間が行なうとかありそうだけど。

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