米国関連

トランプ大統領、駐独米軍の一部をポーランドに移動させると発表

トランプ大統領はポーランドのドゥダ大統領と共同記者会見を行い、NATO加盟国と合意した国防費支出(GDP比2.0%)を守らず「とてつもない滞納」を続けるドイツから駐独米軍を削減して、その一部をポーランドに派遣すると発表した。

参考:Trump announces plan to slash troops in Germany over NATO funding

トランプ大統領再選失敗にベッドするなら覚悟しておけと最後通牒を突きつける

トランプ大統領は共同記者会見でポーランドがGDP比2.0%水準の国防費支出を達成したことに感謝の言葉を述べて、削減した駐独米軍の一部(独駐留の兵士2,000人と30機のF-16C/Dを移動させると噂されている)をポーランドに移動させると発表したが、ドイツに対しては最後通牒とも受け取れる脅し文句で決断を迫った。

ドイツはGDP比1.0%水準しか国防費支出を行っていないため「とてつもない滞納」を続けていると批判、特にロシアとの間に建設した天然ガス輸送用のパイプライン「ノルド・ストリーム」に数十億ドルも投資しているドイツを米国が防衛するのは不公平で上手くは機能しないだろうと語ったがトランプ大統領のドイツ非難はまだまだ終わらない。

トランプ大統領は「ドイツは米国の大統領選挙が終わるのを待って私以外の誰かと取引をしようと考えているようだが、選挙終了後には今以上の支払いを要求されることになるだろう」と最後通牒とも受け取れる脅しをポーランドのドゥダ大統領が同席した共同記者会見で炸裂させたのだから、ドイツのクランプ・カレンバウアー国防相(与党キリスト教民主同盟(CDU)党首)は頭を抱えるに違いない。

出典:US Army

カレンバウアー国防相は24日、米国のシンクタンク「大西洋評議会」が主催した会議でドイツのラムシュタイン空軍基地は米軍がアフリカやアフガニスタンなどに移動する際のハブと機能しており、基地に併設されている軍の病院は負傷した兵士の治療に活用されるなど重要性が高いことをアピール、仮に駐独米軍を削減しても米国へ戻すのではなくNATO内に再配置しなければロシアに間違ったメッセージを送ることになると主張したが、GDP比2.0%水準の国防費支出については従来の説明(2030年頃までにGDP比2.0%達成)繰り返しただけでトランプ大統領の要求に屈しなかった。

このような姿勢がトランプ大統領には「自身の再選が失敗して状況が変化することに期待している」と映ったようで、大統領選挙前にGDP比2.0%水準の国防費支出を決断しない=トランプ大統領再選失敗にベッドするなら、自分が再選に成功したら「もっと高額な請求書を送りつける」と脅してたのだ。

出典:U.S. Navy photo by Lt. Cmdr. Darin Russell/Released

カレンバウアー国防相は連立を組むドイツ社会民主党が「米軍撤収」を主張しているため、これを宥めつつ強引にF/A-18E/F購入を決めて米国に配慮を示すなど何とかバランスを取ろうと必死なのに、今回の脅しめいた内容の発言をされては、これ以上ドイツ社会民主党を抑え込むのは不可能かもしれない。

もしトランプ大統領で世論の対米感情が悪化すれば、ドイツ社会民主党の主張が力を得て本当にドイツ国内から米軍を追い出しにかかるだろう。

果たして、トランプ大統領の発言にドイツの世論はどのように反応するだろうか?非常に注目される。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Melody W. Howley

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 25日

    >トランプ大統領再選失敗にベッドするなら

    まあ確かに、今のドイツなんてベッドで寝て寝言を言っているようなものだがw

      • 匿名
      • 2020年 6月 25日

      ベッドってベントってこと?

        • 匿名
        • 2020年 6月 25日

        排気してどうする

        • 匿名
        • 2020年 6月 25日

        まあある意味「貸している」とも言えなくもない

        • 匿名
        • 2020年 6月 26日

        ベット(bet)ですね。
        マジレス失礼。

        1
    • 匿名
    • 2020年 6月 25日

    前線がポーランドに移ったのだから、移動は当然。

    • 匿名
    • 2020年 6月 25日

    ドイツ的には願ったり叶ったりじゃないの?
    アメリカに払う駐留費が減るし、仮想敵国のロシアの間にポーランドがあるわけだし
    移動しても問題が起きず、アメリカがうろたえることになるのでは。

      • 匿名
      • 2020年 6月 25日

      英国に撤退、トルコも退きウクライナに行けばいいんじゃね

      • 匿名
      • 2020年 6月 25日

      最前線でもなく危機感もなく、単に敗戦国であり経済規模が大きいからとドイツに役割を担わせようとしているアメリカの戦略に無理があるのは事実でしょうね。

    • 匿名
    • 2020年 6月 25日

    ドイツにとっちゃ良いことずくめじゃね?

    要は対ロシアの前線基地がポーランドやバルト三国でその内側のEU内陸国は駐留負担も米兵の現地トラブルの機会も減るし

    少ない負担で安全保障の担保得られる

    これが日本海以外緩衝国が無い日本と大きな違い

      • 匿名
      • 2020年 6月 25日

      いや、緩衝国は南朝鮮国なんだが。
      なかりせば日本はかの国のごとく軍事支出を増やさなければいけないわけで、だからこそ褒めたり空かしたりと対応がメンドクサイ。
      好き嫌いとは別に役にはたっているわけですよ。
      嫌いだけどな。

        • 匿名
        • 2020年 6月 26日

        緩衝国が敵性国家じゃねーか

        それを緩衝国とは言わない
        だいたい地続きで間に緩衝国あれば

        尖閣も竹島も北方領土問題も起きてないわ

    • 匿名
    • 2020年 6月 25日

    芋はエネルギーを露助に依存というか中毒モードなんだが
    それでも自前の軍事力すら削減できる理由が知りたい
    密かに独露不可侵条約でも結んだかな?歴史は何度でも繰り返すのにw

    • 匿名
    • 2020年 6月 25日

    今や現代の西ドイツですねポーランドは。

    • 匿名
    • 2020年 6月 25日

    ベット(bet)賭けるじゃないの

    • 匿名
    • 2020年 6月 25日

    これ本当にトランプが言ったのか?
    だとしたらそうとうセンス無いぞ。
    アメリカの金でドイツを怠けさせるだけじゃないか!

      • 匿名
      • 2020年 6月 26日

      今までアメリカの金で怠けてたのがドイツなんだが?

        • 匿名
        • 2020年 6月 26日

        ドイツにとって重要なのは米軍じゃなくて
        ソ連時代はソ連側だった東欧の国が西側についたことだよ
        自分たちが最前線なら当然最高の軍備が必要
        自分よりまえに壁ができて怠けてても安全になったら?当然怠ける

        撤退するぞってカードにしたところでどうぞどうぞとしかならんわな

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    ドイツが平和なのは結構な事だし、アメリカ軍の移動も当然だが
    それはそれとしてNATO加盟国としてせめて最低限の責任を果たすべきでは
    10年で2%は今のドイツ軍の惨状を考えると余りにも悠長過ぎる

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    これ、米独離反を目論んでいたロシアにしてみたら、突然ドイツから自国に近いポーランドに米軍が移動してきて前より悪化してるんじゃ?

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    マッケンロー、ボリスベッカ、シュテフィ・グラフとドイツが生んだテニスプレーヤーは過去の遺物
    ドイツは、もはや・・

    関係ないか

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