米国関連

トランプ大統領、ウクライナにパトリオットミサイル製造のライセンスを与える

ウクライナ軍はパトリオットシステムで使用するPAC-3弾の備蓄が枯渇してしまい、ロシア軍が発射する弾道ミサイルは全弾が目標に命中してしまう状況で、トランプ大統領はNATO首脳会談でゼレンスキー大統領に「パトリオット迎撃ミサイルを製造するライセンスをあなた方に供与する」と述べた。

参考:Ukraine to get ‘license’ for making Patriot interceptors, Trump pledges
参考:Ukraine war latest: ‘Make them yourself’: Trump gives Zelensky green light to produce Patriot missiles

これは弾道ミサイルを阻止可能な迎撃ミサイル不足を短期的に解決する手段ではないように見える

ウクライナ軍は7月2日に計25発発射されたイスカンデルMと弾道ミサイル攻撃に転用されたS-400迎撃弾のうち4発しか迎撃できず、4日に発射されたイスカンデルM×1発、6日に発射されたイスカンデルMとS-400迎撃弾×23発は全弾が着弾し、ウクライナ空軍のイグナット報道官は弾道ミサイルを迎撃できない理由について「パトリオットシステムの迎撃ミサイルが不足しているためだ」と言及。

フェドロフ国防相の顧問を務めるセルヒー・ベスクレストノフ氏も出演したRadio NVの中で「我々にはミサイルが全くない」「弾道ミサイルに対抗できる手段は何もない」「弾道ミサイルのほぼ全てが目標に命中した」「このままではウクライナの重要インフラ全て破壊されるだろう」と述べ、ゼレンスキー大統領も「我が軍は巡航ミサイルと自爆型無人機の迎撃において優れた働きを見せたが、残念ながら弾道ミサイルの迎撃はできなかった。その理由は迎撃ミサイルの供給不足にある」と述べた。

イグナット報道官、ベスクレストノフ顧問、ゼレンスキー大統領が言及した迎撃ミサイル不足はPAC-3弾のことで、米国がイランとの戦争でPAC-3弾を大量消耗したため同迎撃ミサイルの納入は米軍備蓄の回復を優先し、同盟国やパートナー国への納入順位は引き下げられている可能性が高く、フランス、イタリア、トルコ、ハンガリー、スロバキア、チェコ、アルバニアを除くNATO加盟国が参加する「米国製兵器を購入してウクライナに供給する枠組み=PURL」経由でのPAC-3弾も行き詰まっている可能性が高い。

出典:President of Ukraine

トランプ大統領はNATO首脳会談が開催されているトルコでゼレンスキー大統領と会談した際「パトリオットを製造するライセンスをあなた方に供与する。これは素晴らしいことだ。これで我々が十分な兵器を提供していないと不満を漏らすことはなくなるだろう。これは防衛兵器であり攻撃兵器よりも私好みだ。我々は企業に対して、つまりパトリオットを製造する企業に対して絶大な力を持っている。まだその企業には伝えていないが、すべて上手くいくはずだ。彼らも喜んでくれるに違いない」と言及。

Defense Newsはトランプ大統領の発言について「ウクライナにPAC-2弾の製造を許可するのか、PAC-3弾の製造を許可するのか不明で、このウクライナへのライセンス供与はパトリオットミサイルを製造する企業と事前相談なく行われたが、この企業に圧力をかけることも可能であると示唆した」と報じ、Kyiv Independentも「トランプ大統領はウクライナにパトリオットを自分達で作ればいいと述べ、ウクライナがミサイルを迅速に生産できると自信を示したものの、発表前に製造企業と調整はしていなかったと付け加えた」と報じた。

出典:Lockheed Martin

仮にトランプ大統領がPAC-3弾のライセンスをウクライナに許可しても、これを実行するには法的要件の審査や複雑な契約を締結しなければならず、さらにPAC-3弾をウクライナ国内で製造するにはサプライチェーンを一から構築する必要があり、ウクライナ製のPAC-3弾が完成するまで数年単位の時間がかかるだろう。

さらに米国はPAC-3弾のシーカー製造に関する技術移転を認めたことがなく、日本が生産するPAC-3弾もボーイングが供給するシーカーに依存しており、オーストラリアもGMLRSとPrSMのライセンス生産が認められているものの、米国から誘導装置、推進薬、信管などの部品を輸入しているため「完全な現地生産」ではなく「現地での最終組立」でしかない。

出典:NATO

トランプ大統領がPAC-3弾のライセンスをウクライナに許可しても、米国はPAC-3弾の製造をコントロールするためシーカー製造の技術移転に応じない可能性が高く、ボーイングもウクライナにシーカーを供給できる余裕があるのかどうかも不明で、この話は詳細が出てくるまで何も期待しないほうがいいだろうし、これは弾道ミサイルを阻止可能な迎撃ミサイル不足を短期的に解決する手段ではないように見える。

関連記事:ウクライナはパトリオット迎撃ミサイルが枯渇、弾道ミサイルの迎撃が不可能
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※アイキャッチ画像の出典:President of Ukraine

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コメント

  • コメント (19)

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    • 無印
    • 2026年 7月 09日

    数年後には、ウクライナがパトリオットを参考に独自の対空ミサイルを開発するのでは

    7
    • ななしのシロウト
    • 2026年 7月 09日

    管理人さんが言う通り、ウクライナ製のパトリオットミサイルが完成するまでは数年かかるので、トランプ大統領の発言は「ウクライナ支援を継続します」という政治的な意味だけだと思われる

    30
    • Ard
    • 2026年 7月 09日

    正直プーチンの野郎が日々飛んで来るミサイルで憤死するとかでもない限り戦争は終わらんので中長期的な解決策として十分に必要
    ライセンス料と大量生産のフィードバックをする事が良い利益になると思うから全部品ライセンス生産やって欲しいけどな…

    21
      • 匿名希望
      • 2026年 7月 09日

      >中長期的な解決策として十分に必要

      その間に、多くの人たちが死んでいくわけですね。

      13
        • シベリアトラ
        • 2026年 7月 09日

        許せねぇよプーチンの野郎・・・!

        12
    • 名無し
    • 2026年 7月 09日

    全力で戦い膠着させればトランプの態度も変わると
    中国対応ではずっと他力(アメリカ)本願してる日本にもいい教訓

    12
    • 適当
    • 2026年 7月 09日

    シーカーの技術がどのレベルかわかりませんが日本にも生産させた方がボーイング以外はみんな幸せになりそうですけどねえ

    30
      • 名無し
      • 2026年 7月 09日

      ボーイングは株主を幸せにするのが最優先
      カネ積んで超長期契約して
      工場拡張してもらうしかない

      6
    • ろみ
    • 2026年 7月 09日

    そもそもイラン戦争でPAC-3の在庫払底させてなければ弾切れになる前に追加供与出来ましたよね
    供与出来る在庫がないから空手形振ってるだけの気がします

    8
    • 中村
    • 2026年 7月 09日

     「後で作って返すから在庫融通して」だと考えます。「ライセンス料格安だから出資しない?」かも知れません。

    6
      • 名無し
      • 2026年 7月 09日

      プーチンはキエフの団地に弾道ミサイル打ち込んでも
      強烈な復讐心しか得られないのに

      10
    • YF
    • 2026年 7月 09日

    トランプの関心がウクライナに戻ってきただけ良しとすべきなんでしょうね。旗幟を鮮明にするのは大事ですから。

    5
    • ソミュア
    • 2026年 7月 09日

    日本にシーカーのライセンスをくれれば米軍の備蓄を爆速回復させる勢いでPAC-2 GEMとPAC-3 MSE作るんでシーカーライセンスをください(血涙)

    22
      • 名無し
      • 2026年 7月 09日

      まあ日本がアメリカ工場に投資して生産拡張だね
      アメリカに切迫感無い

      1
    • shrike
    • 2026年 7月 09日

    本邦の専門家やメディアによるとウクライナは戦局を優勢に進めており、ロシアの補給はボロボロで頼みのエネルギー産業も破壊されているため、数年かかって痛い目を見るのはロシアなので問題ないのでは?

    5
      • 奈々氏
      • 2026年 7月 09日

      ウクライナの長距離ドローンでの後方兵站やタンカーへの攻撃、製油所や軍需企業への攻撃の成果がこのまま続くとは限らない(ロシア側も当然対策するわけで)ので一時的な優勢と見るべきです。
      また、弾道ミサイル攻撃の目標にされているキーウは、主要各国の要人へ対外的に空襲があっても問題なくウクライナは対応していると見せるための政治的な場でもあるため、政治的な意義としてもPAC-3 or PAC-2の補給は必要なのかと思います。

      5
    • 58式素人
    • 2026年 7月 09日

    PAC-3のライセンス生産は数年掛かりになるのでしょうね。
    多分、現在進行中のFP-7Xフレイヤ計画の方が先行するのでは?。
    フレイヤ計画の方は、確か2027年に実験と言っていたし。
    ただ、素人の読んでいる範囲では、FP-7Xミサイルは、性格がPAC-2に
    似ているような気がします。
    ライセンスするとして、PAC-3とフレイヤ計画を並行して進めるのかな?。
    おそらく、補完関係になるだろうし。

    1
    • u
    • 2026年 7月 09日

    ウクライナにとって理想的にPAC3の自国生産が出来たとしてもそれは5年後
    ドイツが鋼の意思でウクライナ支援を継続する事が確定した現状だとこの戦争はプーチンが死ぬか失脚するまで続く
    ひょっとしたらウクライナ製PAC3が完成した時にプーチン死去のニュースが飛び込んでくる皮肉な結果になるかもね

    2
    • kitty
    • 2026年 7月 09日

    しかし、トランプのいつもの

    「つまりパトリオットを製造する企業に対して絶大な力を持っている。まだその企業には伝えていないが、すべて上手くいくはずだ。彼らも喜んでくれるに違いない」

    発言には、ブチ切れてる関係者が100人単位でいそうw。

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