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トランプ大統領、フォード級空母への蒸気式カタパルト復活を正式に命令

トランプ大統領は2025年10月「本気で空母の電磁式カタパルトを蒸気式カタパルトに戻す大統領令を出すつもりだ」と述べていたが、13日に署名した国家安全保障大統領覚書の中で「フォード級空母4番艦から電磁式カタパルトおよび電磁式エレベーターを従来の蒸気式および油圧式システムに戻せ」と命じた。

参考:Fact Sheet: President Donald J. Trump Rebuilds the U.S. Navy and America’s Shipbuilding Industrial Base
参考:Trump orders return of steam catapults on carriers, fifth public shipyard

4番艦以降から電磁式カタパルトを蒸気式カタパルトに戻せば設計の大幅見直しが必要になり、フォード級空母の建造遅延はさらに酷くなるだろう

ジェラルド・R・フォード級空母はニミッツ級空母と比較してフライトデッキや発電能力が拡張され、アナログだった航空機発着艦支援システムが刷新され、格納庫や弾薬庫から航空機や武器をフライトデッキに移動させる経路が合理化され、本格的な省力化技術導入など斬新な技術やアイデアが幾つも詰め込まれ、米海軍の次世代を担う象徴として2018年に華々しくデビューするはずだったのだが、最大の革新だった電磁式カタパルト(EMALS)、艦載機の着艦を支援する新型着艦制動装置(AAG)、艦内で弾薬類を移送するために使用される電磁式の兵器運搬用エレベーター(AWE)が設計通りに機能しない問題に直面。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Apprentice Alyssa Joy

そのため1番艦フォードの建造費用は132億ドル(研究開発込みで30億ドルのコスト超過)に陥り、当時の政府や議会から大きな批判を受け、トランプ大統領も「9億ドルの費用を投じて開発した電磁式カタパルトは問題だらけで、このシステムがあらゆる環境下で確実に作動するのか誰も知らない。誰もがイノベーションを望んでいるものの、これは明らかにやり過ぎで65年間問題なく機能してきた伝統的な蒸気式カタパルトに戻すべきだ。私は新しく建造する空母の設計を蒸気式カタパルトに改めることを検討している」と述べていた。

当時のギルディ作戦部長も「フォード級空母に23もの新しい技術を詰め込んだことは海軍にとって繰り返すことの出来ない過ちだった」と認めたものの、トランプ大統領は2020年の大統領選挙で敗れたため、この話は有耶無耶になり、EMALS、AAG、AWEも何とか実用レベルまで問題が改善し、2023年5月には初の海外展開を行い約8ヶ月間の任務を成功させたが、トランプ大統領は2025年10月に再び「電磁式カタパルトを蒸気式カタパルトに戻す」と明言して注目を集めたことがある。

トランプ大統領は横須賀に停泊している空母ジョージ・ワシントンの将兵に対して「馬鹿げたシステムに何十億ドルも費やしている。問題はシステムが壊れたら飛行機でMITを派遣しないといけないことだ。蒸気式はハンマーとバーナーで修理できる。だから元に戻すんだ。私は本気で大統領令を出すつもりだ。こんな事を続けさせる理由にいかない。空母のシステムを蒸気式と油圧式に戻すんだ」と述べ、本当に電磁式カタパルトを蒸気式カタパルトに戻す大統領覚書に署名してしまった。

トランプ大統領は13日に米海軍と米造船産業基盤を再建するための国家安全保障大統領覚書(National Security Presidential Memorandum=NSPM、旧:大統領政策指令)に署名し、これは大統領が国家安全保障に関する政策、方針、戦略を各政府機関に対して指示・決定するため公式な行政文書で大統領令とほぼ同等の法的効力をもつ。

出典:The White House

この中で「本覚書はフォード級空母4番艦(CVN-81)建造において、電磁式カタパルトおよび電磁式エレベーターを従来の蒸気式および油圧式システムに置き換えるよう指示するものだ」と明記しており、EMALSを製造しているゼネラル・アトミックスは直ぐに「製造が約50%完了している段階で方針を変更することはコスト、スケジュール、システム統合において重大なリスクをもたらすことになる」「この決定は空母の即応性、国家安全保障、米国の技術的優位性に広範な影響を及ぼし、敵対国に能力格差を縮める機会を与える可能性がある」と声明を発表。

ハドソン研究所のブライアン・クラーク氏も「フォード級空母はカタパルト、アレスティングギア、調理、暖房、浄水といった多くの機能を動かす動力に電力を採用している。以前の空母ではこれらの機能の動力に蒸気を使用していた。少なくともフォード級空母でカタパルト用の蒸気配管を復活させるには艦の広範な再設計が必要になるだろう」「さらに海軍は20年以上も蒸気式カタパルトを新規購入していないため、サプライヤーによる多額の先行投資と生産ラインの再確立に必要な時間を無視して、新たに蒸気式カタパルトを入手できる可能性は低い」と指摘している。

フォード級の建造は大幅に遅れており、FY2027調達予算文書の中でも「3番艦エンタープライズは進水に必要な重要工程の遅れにより、引き渡し時期が2030年7月から2031年3月に延期された」「4番艦ドリス・ミラーも3番艦の建造遅延を受け、造船所内の建造スペースが制約を受けて船体モジュール建造が制限されたため、引き渡し時期が2032年2月から2034年2月に延期された」と言及していたが、4番艦以降から電磁式カタパルトを蒸気式カタパルトに戻せば設計の大幅見直しが必要になって建造遅延はさらに酷くなるだろう。

関連記事:フォード級空母3番艦と4番艦で建造遅延、4番艦の引き渡しは2年延期
関連記事:フォード級空母2番艦の引き渡しが再び遅延、2026年から2027年に延期
関連記事:トランプ大統領、電磁式カタパルトを蒸気式カタパルトに戻す大統領令を出す
関連記事:米海軍のギルディ作戦部長、フォード級空母に「未検証の技術を詰め込み過ぎた」と失敗を認める

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo

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コメント

  • コメント (28)

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    • たむごん
    • 2026年 8月 14日

    生産性は、段々ノウハウが積み重なって、向上していくものなんですけどね。

    電磁カタパルトに、余程の欠陥がない限りは設計変更ただただ面倒くさいだけと思いますが、設計変更による遅延・整備要員育成どうなりますかね…。

    48
      • Ponta
      • 2026年 8月 18日

      実質的にはアメリカの空母調達中止でしょう。あからさまに言えないので、設計変更と、官僚表現したのです。

      3
    • 幽霊
    • 2026年 8月 14日

    中国としては大歓迎でしょうね
    最新鋭空母の就役が大幅に遅れる上にアメリカでは性能を向上させた電磁式カタパルトの研究や開発も中止もしくは大幅な遅延が見込まれますから
    アメリカが足踏みしている間に中国は電磁式カタパルトの性能向上や信頼性向上で世界の最先端を行くかもしれません。

    65
      • gobu
      • 2026年 8月 14日

      蒸気カタパルト技術をパスして電磁カタパルトにベットした中国ですが
      参考にする(パクる)技術がない状態で果たして自分たちだけで技術を昇華できるんでしょうかね

      しかしアメリカは本当に電磁カタパルトやめるのかなあ…

      8
        • shkk
        • 2026年 8月 14日

        中国のシステムは技術的に米国のとは違うようですし米国が成功しようが失敗しようが関係ない立場なんじゃないですかね
        既に実艦空母や強襲揚陸艦に搭載されて運用してるほど開発が進んでいるので時間をかければ完成度は高くなっていくでしょうし…

        7
        • 幽霊
        • 2026年 8月 14日

        トランプ大統領ももしかしたらこんなコメントみたいな思考なのかもしれませんね
        だとしたら中国はそんな考えの大統領が現れた事を歓迎しているかもしれません
        自分達を過小評価する敵対国のトップはどんな味方より有難い存在でしょうから。

        50
          • gobu
          • 2026年 8月 15日

          いやいや過小評価というより
          技術の世代を吹っ飛ばして開発して本当に上手く運用できるのかなという話ですよ
          列車なら蒸気機関車→電車→高速列車を吹っ飛ばしていきなりリニア作り出すみたいなもんですからな

          6
            • SDF1
            • 2026年 8月 15日

            シリンダーに作動流体(空気や油、蒸気)を流してピストンを押して動作する既存カタパルトと電気モーターで動作する電磁カタパルトは全然違う技術だから、新規開発で全く問題ないよ。

            一応中国は蒸気カタパルトをオーストラリアの空母メルボルン(BS4)やウクライナのニートカ(スヴェトラーナ・マヤーク))から手に入れた実機やブラジル空母サンパウロのデータ(BS5)を入手して製造できるから、空母訓練基地で蒸気式と電磁式の比較試験もしてるしね。

            9
            • 幽霊
            • 2026年 8月 16日

            既に中国は空母での電磁式カタパルトを使用した発艦に成功しており後は運用を続けてトラブルの洗い出しや経験の蓄積を行う段階ですからね
            まだまだアメリカの方が能力や経験は上ですが、アメリカが電磁式カタパルト関連で足踏みするなら中国がアメリカに匹敵する若しくは追い越す可能性は充分あると思いますよ。

            9
    • YF
    • 2026年 8月 14日

    >問題はシステムが壊れたら飛行機でMITを派遣しないといけないことだ。蒸気式はハンマーとバーナーで修理できる
    今一番アメリカに不足してるのはハンマーとバーナーで修理出来る人だと思うのですが…

    101
    • 地を這う飛行機
    • 2026年 8月 14日

    トランプさん、混乱を巻き起こす才能だけは天下一に思えますね。我が国もそのような政権が続いた時がありましたが揺り戻しで自民一強になっています。アメリカはどこへ行くのでしょうね⋯

    22
    • Kaeru
    • 2026年 8月 14日

    この万能感が総統閣下ムーブなんだよなぁ
    3流の商売人がなんで軍事に口を出して大統領令だすんだよ

    73
    • nimo
    • 2026年 8月 14日

    頭を最新の情報に更新できてないっぽい

    27
    • 黒丸
    • 2026年 8月 14日

    トイレが詰まって使えない? 空母「ジェラルド・R・フォード」に新たな欠陥が見つかる
    リンク
    トイレの問題は解決したのかな?

    フォード級空母4番艦(CVN-81)建造は一旦延長になり、
    対中国用にはF-35キャリアーのような安価で小型な空母が沢山必要ということで
    最終的に建造中止になるかも

    8
    • HEAT信奉者
    • 2026年 8月 14日

    たしか蒸気カタパルトは業者の撤退、職人不足、部品の枯渇等々で生産終了状態だったような???

    18
    • イーロンマスク
    • 2026年 8月 14日

    もう不戦敗で中国に西太平洋を明け渡すつもりとしか思えないんだけど、誰か合理的な説明をしてほしい

    33
    • あああ
    • 2026年 8月 14日

    電磁式は不具合多発、蒸気式は最終調達が昔過ぎてサプライヤーを確保出来ない、もはやアメリカは空母を新造できないということでは⋯

    4
    • ななし
    • 2026年 8月 14日

    実際蒸気式ってそんな簡単に直んのかよ…?
    正直船の仕様なんてちょっとづつ違うのが当たり前だから節々を改修したGRF改はまあありえそうだが

    4
      • まめ
      • 2026年 8月 14日

      シャトルと蒸気管のシールが大変だと思う。柔らかい金属を何枚も重ねてシールしてるとかシャトルの進行と合わせて変形しつつシールする仕様。

      7
    • せい
    • 2026年 8月 14日

    何で問題への対応が熟れてきたタイミングでこれやるかなぁ

    19
    • 58式素人
    • 2026年 8月 15日

    どうなのでしょうね。
    今更蒸気配管を設置できないならば。
    電磁式カタパルトの性能が安定しないならば。
    内燃式カタパルトを再検討してみては?。
    ICCALS C-14という形式名で検討されたとか。
    開発当時には安全性を確保しきれなかったそうですが、
    動力や電源を損失しても運用可能であるそうだし。

    4
    • たら
    • 2026年 8月 17日

    トランプ級戦艦が空母の時代を終わらせるから,問題ないってことなのでは?(棒

    1
    • daishi
    • 2026年 8月 17日

    「ニミッツ級の後継艦が予定通りに就航せずニミッツ級のメンテもドック不足でヤバい」状況に「解決にならない大統領令を出す」「アイランドを中央に移す(船体バランスの再設計が必要)」「WW2当時の空母(アングルド・デッキなどは1950年代以降に確立)」と「無知なマイクロマネジメント」をやり始めているのが末期ですね。

    そもそもアメリカ海軍が「キッチリ確立した技術を一つずつ実装していく」をやれば今の有様ではなかっただろう、というのも大きいのですが、EMALSの完全廃止はフランスの新型空母フランス・リーブル(PANG)にも影響の出る話なので、トランプ大統領の寿命か退任まで逃げ切れるか、という問題になりそうです。

    3
    • 神田明(仮名)
    • 2026年 8月 18日

    蒸気式カタパルトがランニングコストが大き過ぎて問題になり、解決策としての電磁カタパルトだった筈ですが、電磁カタパルトもトラブル続き…蒸気カタパルトに戻せという話が出るのもやむを得ないと思います。
    設計変更が難しいのであるならば「ニミッツ級を追加建造せよ」なんて話が出るかもしれませんね。
    サプライチェーンの問題等で蒸気カタパルトの製造再開が難しいのは心得ていますが、あり得ない話では無いと思います。

      • zzzzzz
      • 2026年 8月 20日

      中国空母は近海で活動するからすぐに帰港出来る。
      一方、アメリカ空母はそう簡単に帰れないから現場で修理出来る蒸気カタパルトに変更する。
      という意味かな?
      兵器の過度な電子化、半導体化は俺も昔から反対だったから、トランプ大統領の気持ちも分からないではない。
      約35年前の1回目の大統領選挙でトランプが当選してたら、彼の空母案は正解だったかもしれない。当時、NHKテレビが泡沫候補として、彼の顔写真が波うったように消えて馬鹿にしたような扱いだったのを思い出す。
      2回目の大統領選挙で勝利。3回目で敗北。4回目で再び勝利。この間に技術基盤が変化してしまい、間に合わないのが残念。

    • 神田明(仮名)
    • 2026年 8月 18日

    蒸気式カタパルトがランニングコストが大き過ぎて問題になり、解決策としての電磁カタパルトだった筈ですが、電磁カタパルトもトラブル続き…蒸気カタパルトに戻せという話が出るのもやむを得ないと思います。
    設計変更が難しいのであるならば「ニミッツ級を追加建造せよ」なんて話が出るかもしれませんね。
    サプライチェーンの問題等で蒸気カタパルトの製造再開が難しいのは心得ていますが、あり得ない話では無いと思います。

    • 神田明(仮名)
    • 2026年 8月 18日

    蒸気式カタパルトがランニングコストが大き過ぎて問題になり、解決策としての電磁カタパルトだった筈ですが、電磁カタパルトもトラブル続き…蒸気カタパルトに戻せという話が出るのもやむを得ないと思います。
    設計変更が難しいのであるならば「ニミッツ級を追加建造せよ」なんて話が出るかもしれませんね。
    サプライチェーンの問題等で蒸気カタパルトの製造再開が難しいのは心得ていますが、あり得ない話では無いと思います。

    • C6H12O6
    • 2026年 8月 22日

    やってるふりだけで十分なのでは。急に思い出して「おう、そういやあれはどうしたんだ、そろそろ出来上がるのか?」などと言い出した時は、トランプ級の時みたいにプラモデルの箱絵みたいなカッコいいイラストを見せて気持良くさせておけばよい。どのみち長くてもあと二年ぐらいの辛抱なのだし、真面目に取りあうなど馬鹿らしいと周辺の人たちも考えているのでは。

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