安価な長距離兵器は防衛市場のトレンドになる可能性を秘めており、Lockheed Martinは低コスト巡航ミサイル分野への参入が遅れているため「JASSMやLRASMのダウングレードバージョンを開発して低コスト巡航ミサイルとして売り込む可能性」に言及した。
参考:Lockheed considering modifying existing missiles into lower cost designs
米軍の巡航ミサイルに対する投資が今後、高度な巡航ミサイルと低コスト巡航ミサイルに分散する可能性
ウクライナとロシアの戦争は「高度な防空システムによる接近拒否が成立する」と証明したものの、これは高度な防空システムが「空からのアプローチを完璧にシャットダウンする」という意味ではなく高価な有人プラットフォームによる空からのアプローチは撃墜されるリスクが高いため割に合わない=持続可能ではないという意味で、これを技術的に突破する方法は作戦コスト(ステルス、電子戦、各種航空支援など)が高価になるため、ウクライナとロシアは「レーダーの死角となる低空域の活用」と「安価で小型な長距離兵器の大量使用」を組み合わせることで接近拒否戦略を無効化させてしまった。

出典:U.S. Army photo by Sgt. Alexandra Shea
パトリオットシステムやS400を構成するレーダーは非常に高性能で、何百kmも離れた空域を飛ぶ戦闘機や巡航ミサイルを検出・追尾することが可能だが、水平線の下に隠れる低空域までカバーできず、仮に安価で小型な長距離兵器を検出できても高価な迎撃弾で対処すれば直ぐに迎撃弾が枯渇してしまい、このアプローチと「高価な空中目標を迎撃する前提で設計された高度な防空システム」との相性は非常に悪く、低高度や中高度をカバーする防空システムも「ここまで低空域を積極的かつ大規模に使用する攻撃阻止を想定しない」というのが現状だ。
ロシアよりも先に問題に直面したウクライナは小型レーダー、音響探知システム、電子光学センサーを全土に張り巡らせ、電子戦システム、ロケット弾、対空砲、機関銃などの安価な迎撃手段で構成された機動射撃部隊を大量に編成し、これをネットワーク化した情報共有システムで統合して効率的な迎撃体制を構築したが、それでも一度に大量の長距離兵器が投入されると迎撃能力が混乱して飽和し、Shahed型無人機の突破を許す状況で、無人機の迎撃率は70%~80%程度と言われている。

出典:Командування Повітряних Сил ЗСУ
このアプローチの特に興味深いところは「保護しなければならない国土が広ければ広いほど不利になる」という点で、イランの無人機攻撃は国土が狭く迎撃能力の密度が濃いイスラエルに決定打を与えられず、ウクライナの長距離攻撃はロシアの規模に追いついていないものの、毎日のようにロシア連邦領の奥深くまで侵入してエネルギーインフラを攻撃することに、同じ目標を何度も攻撃することに成功しており、この事が「長距離を飛行可能で安価な自爆型無人機」や「従来の巡航ミサイルよりもシンプルな低コスト巡航ミサイル」への関心を高めており、もはや防衛市場における1つのトレンドと言っても過言ではない。
さらに面白いのは同分野を主導しているが「伝統的な大手防衛企業」ではなく「新興企業や中小企業」という点で、米軍が資金を供給している低コスト巡航ミサイルプログラムもAnduril、Kratos、IS4S、Dynetics、Zone 5 Technologiesといった企業が契約を受注しており、欧州ではMBDAが低コスト巡航ミサイルを発表したものの、新興企業や伝統的な弾薬企業が「安価な長距離兵器分野」に続々と参入し、使い捨ての小型ジェットエンジンなど関連分野の需要を狙う投資も相次いでいる。

出典:Defense Innovation Unit
ここからが今回の本題なのだが、Lockheed Martinも国防総省の関心が「高度な巡航ミサイル」から「低コスト巡航ミサイル」に移っていることを認識し、手頃な価格で目標を達成できる独自の低コスト巡航ミサイルとして「CMMT=射程数百マイル/調達単価15万ドル」を発表したものの、この分野は他の追随を許さない高度な技術力が求められていないため「競合する低コスト巡航ミサイルとの違い」が曖昧な上、競合する低コスト巡航ミサイルが出揃った後に発表されたため、潜在的な顧客の注目を集めることに失敗してしまう。
そのためLockheed MartinはBreaking Defenseの取材に「既存の高度な巡航ミサイルを低コスト巡航ミサイルに再設計することを検討している」と明かし、具体的にはJASSMやLRASMの高性能な誘導システムを安価なものに変更したり、ステルス性を高める特殊コーティングの廃止、構成部品の製造への積層造形技術採用などを挙げ、Lockheed Martinは「低コスト巡航ミサイル分野への参入を諦めていない」「そのための課題を様々な角度から検討している」「新興企業とも協力して実現可能な技術を見極めている」「まだ参入のため最終アプローチは決定されていない」と述べている。
要するにJASSMやLRASMを構成する技術や部品を安価なものに置き換えたダウングレードバージョンを開発し、これを「低コスト巡航ミサイルとして売り込むかもしれない」という意味で、Lockheed Martinがここまでするのは「米軍の巡航ミサイルに対する投資が今後、高度な巡航ミサイルと低コスト巡航ミサイルに分散する」と懸念しているためだろう。
因みに有人戦闘機と無人戦闘機が競合関係ではなく補完関係にあるように、高度な巡航ミサイルと低コスト巡航ミサイルも能力が役割が異なり、前者に期待されているのは「高い確率で敵の防空シールドを貫通する能力と目標を確実に破壊できる精密性と破壊力」で、後者に期待されているのは「敵の迎撃能力を飽和させるのに必要な調達性と敵が無視できない程度の精密性と破壊力」で、要するに低コスト巡航ミサイルは「目標に命中するかもしれない程度の精密性」と「どこに着弾したとしても無視できない損害をもたらすかもしれない程度の破壊力」しか求められていないため、この両者も競合関係ではなく補完関係だ。

出典:ЦАПЛІЄНКО_UKRAINE FIGHTS
さらに言えば自爆型無人機と低コスト巡航ミサイルは「目標に到達するまでの所要時間」が異なるだけで、両者に求められている役割や用途はほぼ似通っており、自爆型無人機と低コスト巡航ミサイルさえあれば高度な巡航ミサイルなど要らないとはならないが、逆に高度な巡航ミサイルしか保有していないと「空からアプローチによる消耗戦」を仕掛けられた時にやり返す手段を失ってしまう。
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin





















低コスト路線の巡航ミサイルは最近のトレンドだけどぶっちゃけ本当に役に経つんだろうか
いや、宇露では活躍はしてるけどそれって結局嫌がらせの範疇でしかない(お互いに手詰まりだから後方を地道に叩くってのは分かる)し、「あくまで低コストミサイルは囮、本命は高性能な巡航ミサイル」戦法も、低コストミサイルの準備時間やランチャーの規模を考えると逆に戦術の幅を狭めそう
もちろん低コストでお手軽に使える廉価版巡航ミサイルはあって困るものじゃないけど、基本的には今の技術で新設計した(基本設計が古いものを改良をし続けて高価格になったミサイルと比較して)中価格高性能な巡航ミサイルを大量に配備した方が良いと思うんだよね
俺もそう思う。
結局あらゆる戦争の焦点は土地の支配権を巡るものに過ぎないのだから
遠距離攻撃自体はせいぜい補助。
戦域への介入と同時に精密攻撃を行うことで始めて効果がある、それには
従来の巡航ミサイルの方が絶対にいい。
だからOWAドローンは基本ハラスメントでしかないと思うけど、まあ嫌がらせも
戦術の一つではあるからね。
もちろんおっしゃる通りこんなものに投資しすぎれば戦術の幅を狭める。
弾道ミサイルとドローンに全振りして伝統的空軍に叩き潰されたイランみたいに…
素人にその道のプロの考えを否定できるだけの説得力は無いです
であればへーすごいとだけ書けば良いんじゃないでしょうか
自衛隊の無人機への対応の遅れだってプロの考えなわけですからあなたは当然否定しないわけですよね
一応根拠を書いた上での異論なので否定したいなら相応の根拠を持ち出してください
根拠を持ち出せも何も、そのあなたが主張してる根拠自体にそもそも説得力はないよねという話でしかないので…
日本のミリオタ特有のカタログスペックの数値で戦争を語ろうとする考え方が全く現実に通用してないのはこの数年で痛感したので、自分の主張を一方的に言いっ放しにしてるだけのそこらのミリオタより海外のディフェンスメディア(に記事のネタを提供している軍関係者や国防省関係者含む)の方をより信頼しているだけですよ
個人的にはそもそもS-400しかりパトリオットしかり言われる程高い検知迎撃能力を持ってないと思う。
稼働中なのに敵ドローンに迎撃弾を撃つ時から失敗して破壊される瞬間までドローンに撮影されてる事の方が問題じゃね?と
大変なのは見つける事であって発見さえ出来れば安物でも数撃てば突破は可能なんじゃないかなって。
なぜ高度な防空システムが小型ドローンの接近に気づけないのかは諸説あるものの、最も有力なのは検出対象が航空機やミサイルと比較して非常に小さいため検出自体が難しく、例え検出できてもロストしやすいため安定した追尾が困難で、さらに飛行高度が低く飛行速度も遅いため検出した目標がドローンなのか自然界の何かなのか識別する有効なアルゴリズムが未発達だと言われています。
だから小型ドローンには対ドローンセンサーかAIと組み合わせた電子光学センサーが必要と言われている所以で、高価な空中目標を遠距離で検出して迎撃する前提で設計されたパトリオットシステムやS400を「空からのアプローチを完璧にシャットダウンする万能な防空システム」と位置付けるのは危険かと。
パトリオットシステムやS400は設計で想定された空中目標と交戦するなら優秀でも、そうでないモノと交戦すると脆弱なので、低高度や中高度をカバーする防空システムと統合運用して防空シールドを多層化する必要があるのです。
新しく設計しなおすだけで性能維持したまま中価格化という想定が無理なんじゃないかな
工業製品がそう簡単に高性能化したり低コスト化できるわけもなく、できるのは数世代前の性能のものを相対的に安くだと思われる(結局、現行の高性能ミサイル&新型の低価格ミサイルというハイローミックスが落としどころになる)
別に新規設計せずともそれこそLMがやろうとしている既存高価格帯ミサイルのダウングレードで十分なのでは?ミサイル価格の内訳が分からない事には何とも言えないけど、ASM-3用の輸入GPSモジュールなんか笑っちゃうぐらいの価格で構成部品の見直しすればコスト削減は可能でしょう。
冗長性の部分を削れば価格は下げられるけど、それによる機会損失とどこまで天秤に掛けられるか。
構成部品の見直しをすればコスト削減は可能と言いますけど、あのGPSモジュール価格、一般人からするとかなり高いように思えますけど産業用の高精度アンチジャミング付きなら割と普通の価格なんですわ
端的に言えば攻める側も守る側も安くて手数が必要ということですね。
戦いは数だよ兄貴!
F-15Eなら最低3基イーグルⅡは5基は積めそうな感じで使い勝手も良さそうですね、自費開発だとスケジュール通り完成しそう
ドローンも巡航ミサイルも砲弾の様に消費する。
質×量の、量の部分が質の部分を凌駕する。昔の戦艦や空母の様に、質が高くとも攻撃量が知れている。空母と神風の関係。
特に今は分散化なので高価値の損傷を減らす方向だし
このトレンドは迎撃側に中々難しい問題を投げかけていますね。
対空ミサイル高すぎ問題に関しては迎撃ドローンと人力対空射撃で
対抗できるとされていましたが、ジェットで飛ぶならもう無理でしょう。
結局従来の対空ミサイルしかないやんけと思いますが、やっぱりプロペラ駆動の
ドローンも無視していい訳ではないはずです。
対象とコストがピッタリ釣り合う迎撃手段が欲しいがバリエーションが多すぎて
何を用意すればいいのかイマイチ良くわからない。
日本も早く作るべき
既存の爆弾を誘導弾にした方が役に立ちそうな気もしますが。
ロシアのUMPKとか、米国のJDAM以外のどういう新兵器を想定しているのでしょう?
低コスト巡航ミサイルのコンセプトは「軽弾頭長射程」だから
重たい爆弾をミサイル化すると射程が短くなるからカテゴリーが違ってくる
“敵が無視できない程度の精密性と破壊力”
に加えて、機関砲どころか短SAMでは迎撃不可能な高度1万m以上を飛ばせば非常に嫌な兵器になるんじゃないでしょうか。
中/長SAMを投入するのはコストと生産能力で悪夢でしょう。
戦闘機搭載の安価な簡易AAMが出てきていますが、その手のミサイルは射程が短く、広範囲に多数を投入されると阻止率はかなり低いものになります。
突入段階では機関砲や短SAMでの迎撃も可能ですが、確実を期すには射程や同時対処数の制限から複数配備が必要なので膨大な数が必要になります。
一部に、対レーダー仕様のものを混ぜれば面白いでしょう。初期目標を無視することになりますが、そもそも高い命中率を期待するものではないので無視できます。
従来型の”高度な巡航ミサイル”の前提の一つとして、数年間の消耗戦による弾薬不足を想定していなかったというスキマを抑える意味もあります。
敵防空能力を消耗させることに主眼をおいた場合、効果的な兵器になると思います。
高々度運用は、低高度で広域レーダーの探知を逃れるという基本的な優位を捨てる事になるからあまりお勧めできないかな。
そういう物が普及するようだと、今度は安価な誘導砲弾を使用する大口径高射砲が復活しそうだ。いや、アメリカで復活しそうにはなっているか。
安価な巡航ミサイルが現状では強いというのはわかるのだけれど、安価な迎撃手段が確立されてしまった場合には一度に無用の長物になってしまいます。
あと、保管の問題を軽視している気がします。ウクライナは、作ったそばから使い尽くす環境ですが、日本であれば大量の巡航ミサイルをどこかに保管しなければいけません。安価でも炸薬が詰まってるのですから、適当に置いておくわけにもいかないでしょう。
“安価な迎撃手段”の成立を困難にするための高高度巡航です。
低空なら短距離/携帯SAMや機関砲で迎撃できる可能性がありますが、1万mではこれを完封できます。
将来的なレーザーでの迎撃も雲を利用できる状況なら同様ですね。
保管場所は、防御側の中/長SAMにも同様ですし、迎撃側の消費弾数は攻撃側をうわまる以上、防御側により大きな悪影響をもたらします。
日本の場合は頭が痛い問題なのは同意しますが、日本限定の話ではありませんので。
低コスト巡航ミサイルとは離れますが、対FPV用に近接信管搭載の大口径機関砲とかが登場し、それがバイク歩兵や亀戦車の外装を剥がすのに有効となり···みたいな流れになったりしたら歴史は繰り返すという奴かもしれませんね。
素人の妄想ですが
安物に高級品の真似事をさせるのではなく、根本から発想を変えるべきでは、と思います。
レーダーに発見されて構わない、安物巡航ミサイルよりもずっと高価な中/長SAMや戦闘機隊を消耗してくれるなら上出来、無視すればCEPの広さから広範囲が焼かれるという最悪の2択を突きつけるというコンセプトです。
防空側は分散配置を避けられないため簡単に飽和するうえ、大抵の地上型SAMは防空艦と違い多方向の同時対処は捜索のみで射撃は不可能。
逆に攻撃側は目標位置だけで撃てる上に単一目標に多数を投射するのが容易で、CEPの広さで危害半径を稼ぐ。
防空側が不利なのは昔から変わらない傾向ですが、攻撃側が損害を無視できるようになると恐ろしいほどの差になります。
大口径砲の誘導弾ですが、残念ながら物理的な制約が多すぎ、近距離を直線飛行する目標以外は迎撃困難でしょう。
最近出ている射程延長型の対地砲弾をは求められる能力が違いすぎます。
高度なセンサと高い発射速度を持つ戦闘艦の3インチや5インチですら、発見済みの対艦ミサイルの迎撃成功率は高くないのですから。