米国関連

米空軍が調達を増やすF-15EX、能力の旧式化と部品の調達性悪化がリスク

米空軍は2027会計年度予算の中で「F-15EXの保有数を従来計画の129機から267機に増やす計画」を打ち出してきたが、国防総省はF-15EX調達報告書の中で「調達期間が伸びれば能力が旧式化し、構成部品も製造中止のリスクに晒されるため大規模な設計変更が必要になる」と指摘した。

参考:Modernized Selected Acquisition Report (MSAR) F-15EX (F-15EX)
参考:Doubling of F-15EX Fleet Comes with Risks for USAF to Manage: New Pentagon Report

ボーイングやサプライヤーがバッファーストックを確保するだけでは乗り切れなくなるF-15EX調達増問題

国防総省は4月21日に発表した2027会計年度(FY2027)国防予算案の中で「新たな航空機としてF-35A/B/C×85機、F-15EX×24機、KC-46A×15機、E-2D×6機、UH-60×1機、MQ-25A×3機、MQ-9×5機、OA-1K×2機を購入する」と言及し、空軍の報道官はBreaking Defenseの取材に「空軍は今後数年間でボーイング製戦闘機をさらに数十機購入してF-15EX部隊を編成する」「同時に老朽化したF-15E部隊の近代化に着手する」と述べた。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Gracelyn Hess

Breaking Defenseは「空軍は計129機購入する予定だったF-15EXの大幅増強を検討している」「F-15EXの生産ラインは当初予定よりも長く維持される可能性が高い」と、Air&Space Forcesも4月23日「空軍はF-15EXの保有数を従来計画の129機から267機へと倍以上に増やす計画だ」「本誌の取材に対して空軍は新たなF-15EXの購入計画を認めた」「F-15EXは老朽化したF-15C/DとA-10の後継機として取得されていたが、新たに138機調達することで旧型F-15Eを退役させる」と報じたが、国防総省は8月26日に一般公開したF-15EX調達報告書の中で「F-15EXの調達拡大は新たなリスクを抱えることになる」と指摘している。

報告書の指摘を端的に言うと「従来計画の129機取得は2027年会計年度までの8年間(ロット1~ロット8)に発注し、2025会計年度予算で発注したロット6(18機)の引き渡し完了は2030年5月に予定され、2027会計年度予算で発注予定のロット8(24機)の引き渡しが完了するのは推定2032年と見積もられていたが、調達数を267機に増やすと発注期間が2031会計年度(ロット9~ロット12)まで伸び、ロット12(推定36機)の引き渡しが完了するのは推定2036年になり、ここには2つの潜在的なリスクが潜んでいる」というものだ。

出典:Boeing

1つ目のリスクはF-15EXを構成する部品や資材の不足で、報告書は特にエルビット製の大型ディスプレイや薄型ヘッドアップディスプレイ、ゼネラル・エレクトリック製のF110-129、コリンズ製の射出座席システム用のカートリッジの不足を挙げ「2025年に発生したボーイングのストライキ中、サプライヤーが戦略的にバッファーストックを確保したため当面の部品不足問題は緩和されている」「引き続き納入リスクを最小限に抑えるための取り組みが必要になる」と指摘。

2つ目のリスクは生産の遅れと調達期間の延長によるコストの不確実性で、報告書は特にDMSMS=Diminishing Manufacturing Sources and Material Shortages(部品、原材料、ソフトウェア等の製造業者や供給業者の喪失、または差し迫った喪失の可能性)を原因に挙げ、レーダーのAN/APG-82(V)1、ミッションコンピューターのADCP II、電子戦システムのAN/ALQ-250 EPAWSS、エンジンのF110-129といった主要システムが旧式化して交換しなければならなくなり、これは大規模な設計変更に繋がると指摘している。

出典:RTX

要するに生産が2030年代まで延長するとF-15EXの能力自体が旧式化し、構成部品の供給自体も製造中止などのリスクに晒され「ボーイングやサプライヤーがバッファーストックを確保するだけでは乗り切れなくなる=脅威の進化や部品の調達性を考慮に入れて再設計レベルの変更が必要になってくる」という意味で、レーダーに関してはレイセオンがAN/APG-82(V)1の後継となるAPG-82(V)Xを2025年9月に発表しており、初期型が仮にF-15EX Block10ならF-15EX Block20の開発を調達と同時並行で進める必要があるのだろう。

ちなみに上院の超党派議員=テッド・バッド共和党議員とジーン・シャヒーン民主党議員がFY2027国防権限法に組み込むことを目標にした国防パッケージを提出し、この超党派パッケージに含まれるAirpower Acceleration Actは「空軍長官に対してF-15EX調達数を129機から329機まで増やす権限も付与する」という内容が含まれており、まだどうなるのかは不明なもののF-15EXの調達数が329機まで増えると生産は2030年代末ぐらいまで続く可能性があるため、F-15EXの旧式化問題やDMSMS問題は絶対に避けて通れない。

関連記事:米海兵隊のF-35B調達は2032年に終了、生産継続は英国とイタリアの発注次第
関連記事:ボーイング、国防総省からF-15関連の枠組みで約20兆円相当の契約を受注
関連記事:米上院、米空軍のF-15EX調達数を129機から329機に増やす法案を提出
関連記事:米空軍、F-15EXの調達数を129機から267機へと大幅増強
関連記事:Boeingがイスラエル空軍向けF-15IAの契約を獲得、契約額は最大1.3兆円
関連記事:米国の2027年度国防予算案、A-10の完全退役を2030年まで延期
関連記事:米空軍、F-15Eの旧型119機を2028年までに削減することを検討中
関連記事:ボーイングがF-15Eに対するアップグレードを開始、EPAWSS統合へ
関連記事:米空軍はF-35AやF-15EXの調達削減、旧型F-15Eの退役を議会に要求

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Tech Sgt. Thomas Barley

ドイツ海軍、北大西洋でF125フリゲートからの弾道ミサイル試射に成功前のページ

エジプトの戦闘機需要を巡る戦い、ラファール追加購入の動き次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    XQ-58Aで勢いに乗るクラスト、双胴機を彷彿とさせるウイングマンを公表

    米クラストは「XQ-58Aの海兵隊採用」「ドイツ空軍向けバージョンの共…

  2. 米国関連

    Boeingがイスラエル空軍向けF-15IAの契約を獲得、契約額は最大1.3兆円

    イスラエル国防省は2024年11月「次世代F-15購入に関する巨額な契…

  3. 米国関連

    米軍事委員会がA-10やE-3の退役を承認、F-22AとF-15C/Dの退役は禁止

    米両院の軍事委員会が国防権限法の妥協案を発表、A-10の退役、E-3の…

  4. 米国関連

    ハープーン終焉か?米海軍が次世代フリゲートにノルウェー製対艦ミサイル採用

    米海軍は水上艦艇に搭載する対艦ミサイルを自国製の「RGM-84ハープー…

  5. 米国関連

    エクスカリバー砲弾の命中率、2023年8月までに55%から6%に低下

    Washington Postは「米国製のGPS誘導兵器はロシア軍の妨…

  6. 米国関連

    米空軍、日本採用のSPY-7と密接な関係にある新型レーダー「LRDR」の初期運用を開始

    日本がイージス・システム搭載艦に採用する新型レーダー「SPY-7」と密…

コメント

  • コメント (18)

  • トラックバックは利用できません。

    • May hall
    • 2026年 9月 03日

    これ本邦のJSIに大きく影響するのでは⋯?

    15
      • 匿名希望係
      • 2026年 9月 04日

      V(X)の次点でAPG-82(V)1のストックをまわすのかV(X)にするのかですねー
      開発費が変わらないんなら新型のV(X)にして欲しいが。

    • 神田明(仮名)
    • 2026年 9月 03日

    レーダーのAN/APG-82(V)1は名指しでニュースになっていましたが、F-15EX専用のコンポーネントには生産ペースが大変遅いものがあったようです。
    電子戦システムのEPAWSSは生産ペースが比較的早いのでF-15Eにも順次搭載中とかニュースになっていましたが、一つでも生産ペースが遅いコンポーネントがあると、それがボトルネックになって新造機の生産ペースを落としてしまいます。
    生産期間の長期化はあり得る話です。

    11
    • フラット
    • 2026年 9月 03日

    俺が寿命で死ぬまで空飛んでそう

    16
      • kitty
      • 2026年 9月 04日

      親子三代イーグルドライバーもあるかもw。

      1
    • たむごん
    • 2026年 9月 03日

    安定した需要がないと、設備投資や人員投入などは続けられないですからね。

    (本邦の水上救難艇でも問題になりましたが)サプライチェーン各社も、安定した受注があるのか分からなければ、いつまでも相手にしてられないわけです。

    5
    • あばばばば
    • 2026年 9月 03日

    改修用の部品が届くころには、改修対象のF-15Jの退役が始まってそう。
    アメリカの場合は今からF-15系列の機体を新造するわけで、性能の陳腐化を懸念するのは分かる
    だが、今更F-15を調達するくらいなら、開発中のF-47と生産中のB-21に振り分けたらどうだろうか

    3
      • コロ
      • 2026年 9月 03日

      新型機の開発にお金や人を集中したいという理由でEXの調達やスーパーホーネットの追加調達に軍側は反対してました。
      この辺は議会の提案だったはず。

      7
      • ユーロビート大好き
      • 2026年 9月 04日

      F-35やB-2がうまくいっていないのに、さらに高度で複雑なF-47とB-21にはリスクしかないのでは…

    • AKI
    • 2026年 9月 03日

    F-15JSIが配備される頃には陳腐化という。
    2030年代に配備されても10年くらいしか使えないのに1機120憶以上払うのは、いかがなものか。
    自力改修出来る機体ならよかったのだが。

    10
      • YF
      • 2026年 9月 03日

      自衛隊はF-15JSIを2050年をまで運用することを決めてます。(換装しない現用エンジンを維持出来るかは謎ですが)あくまで現用機の改修なので陳腐化は想定内でミサイルキャリア―としての能力を期待しての物だと思います。
      改修費用は膨らんで1兆円超えて1機140億円以上になります高すぎですね。

      23
    • SB
    • 2026年 9月 03日

    もういっそ改修せずにF-15EX買うか?
    そりゃ中国のステルス機相手には力不足だけど、機体そのものは良いんだから普段使いやサポートには十分過ぎると思う
    まあオプションのターゲティングポッドがクソ高いけど…

    17
      • 神田明(仮名)
      • 2026年 9月 04日

      >もういっそ改修せずにF-15EX買うか?

      F-15EXの生産ペースが遅い事を認識していますか?
      この記事はF-15EXは生産している最中に旧式化してしまうという内容なんですが…

      6
        • SB
        • 2026年 9月 04日

        あなたこそ記事とレポートを読んでいますか?
        調達数が大量に増えたから、今すぐ調達してるLotはともかく後半Lotでは後期型への設計変更が必要だよねって話ですよ

        3
          • 匿名希望係
          • 2026年 9月 04日

          一機あたりのべ450億ですかね>F-15EX
          サポートや予備部品の代金を本体価格で3倍として見積もるとして・・・
          F-2のライン再開しても再製造しても多分余裕でおつりが来ると思いますが・・・

          2
          • 神田明(仮名)
          • 2026年 9月 05日

          このサイトもそうですが、米国国防省の再三の要請にも関わらずレーダーのAN/APG-82(V)1の生産ペースが上がらないという報道が何度も出ています。
          しかも今回の記事ではロット6は推定18機となっています
          以前よりは生産ペースが上がっていますが現状の生産ペースはそんなものなのでしょう。
          今までの生産状況を考慮すると、ロット12までに劇的に生産ペースが上がるという考えは楽観的過ぎます。

            • 匿名希望係
            • 2026年 9月 05日

            旧F-15Eのラインが13機で1ロット+F/A-18が同じぐらいと考えて年20前後がRTXのレーダー製造の現界なのかもですね

    • daishi
    • 2026年 9月 05日

    そういえばF-2用のF110-IHI-129生産ラインって機体製造終了後どうなっているのか、と調べてみたら
    ・ライセンスは2025年4月で契約終了
    ・補修パーツ製造、オーバーホール、定期メンテナンスの設備のみ維持
    と補修パーツ面でアメリカに協力できてもそれ以上は無理みたいですね。
    発注から納入までの期間が長くなるほど陳腐化しますし、レーダーなど構成部品が新しくなれば適合テストも必要なため、F-35TR3の問題解決とF-47の開発が順調にいかないと詰みますね。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  2. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
PAGE TOP