米国関連

オーストラリア空軍、開発中の無人機「ロイヤル・ウィングマン」が初飛行に成功

西側諸国で開発が進められている有人戦闘機に随伴可能な無人戦闘機のトップバッターとして今年2月末、オーストラリア空軍とボーイング・オーストラリアが開発中の無人航空機「ロイヤル・ウィングマン」が初飛行に成功した。

参考:Boeing to base U.S. Air Force prototype on Australian pilotless combat jet

西側諸国のエア・チーミング・システムで最も開発が進んでいるロイヤル・ウィングマンが初飛行に成功

各国が競うように開発を進めている有人戦闘機に随伴可能な無人戦闘機=つまりエア・チーミング・システムの開発で最も先行しているのは2019年に初飛行を果たしたロシアのステルス無人攻撃機「S-70オホートニク(別名:ハンター)」で2024年中に量産機引き渡しが予定されているのだが、西側諸国のエア・チーミング・システムで最も開発が進んでいるのはオーストラリア空軍とボーイング・オーストラリアが開発中の無人航空機「ロイヤル・ウィングマン」だろう。

両者は2019年2月、既存の航空機と高度なチーミング(協力)が可能で有人機の任務遂行を補完・拡張する大型の無人航空機「Loyal Wingman(ロイヤル・ウィングマン)」の開発を発表、今年2月末に西側諸国で開発が進められている有人戦闘機に随伴可能な無人戦闘機として初めて初飛行に成功した。

このロイヤル・ウィングマンと呼ばれる無人航空機はボーイングのエアパワー・チーミング・システムに基づいて開発が進められており、今回の初飛行についてボーイング・オーストラリアは「ロイヤル・ウィングマンは自律的に機体を離陸させ、予め設定された飛行コースを異なる速度と高度で飛行して設計通りの飛行性能を備えていることが確認された」と発表、さらにAIを搭載した小型のジェット無人航空機によるチーム化(5機)と連携運用にも成功したと明かしており実用化に向けたスッテプを順調に消化している様子が伺える。

オーストラリア空軍も初飛行の成功をうけて1億1,500万豪ドル(初期投資と合わせると1億5,500万豪ドル:約130億円)の追加投資と新たにロイヤル・ウィングマンを3機追加で取得(発注済みと合わせると計6機)することを発表、いよいよ同機の具体的な運用方法や有人機と無人機によるチーミングを活かした戦術開発に着手するらしい。

ロイヤル・ウィングマンの機首は交換可能で任務に応じた装備品の携行や最大16機(有人機を含む)までのチーミングが可能なので、有人機と無人機のチーミングが従来の航空戦術にどれほど新しいものを提供できるか非常に楽しみな存在なのだが、ボーイングはオーストラリア空軍と共同開発しているロイヤル・ウィングマンをベースにした無人航空機を米空軍の「Skyborg(スカイボーグ)」に提案すると明かして注目されている。

出典:public domain XQ-58ヴァルキリー

米空軍の無人戦闘機プログラム「スカイボーグ」は他国とは異なり伝統的な「競争試作」を採用しており、特に興味深いのは機体開発とAI開発を分離している点だ。

機体の競争試作に挑戦するのはボーイング、ゼネラル・アトミックス、クラトスの3社だけだが、AIの競争試作にはAeroVironment、Autonodyne LLC、BAE System Controls、Blue Force Technologies、Fregata Systems、Lockheed Martin Aeronautics、NextGen Aeronautics、Northrop Grumman、Sierra Technical Services、Wichita State Universityの10社が挑戦することになっており、3つの機体と10つのAIを全て組み合わせてテストされ最終的に最も優れた組み合わせが採用される。

出典:General Atomics Aeronautical Systems アヴェンジャー

少々話が脱線したがボーイングがロイヤル・ウィングマンベースの無人航空機をスカイボーグに提案すると明かしたので、機体の競争試作はロイヤル・ウィングマン、アヴェンジャー、ヴァルキリーで争われることが確定した。

オーストラリア空軍のロイヤル・ウィングマンも楽しみだが、今年の夏頃から複数の機体とAIを組み合わせたテストが始まる米空軍のスカイボーグからも目が離せない。

関連記事:ボーイング、豪空軍に完成した無人航空機「ロイヤル・ウィングマン」を納入
関連記事:爆速で完成する米空軍の無人戦闘機、プロトタイプ引き渡しは5ヶ月以内
関連記事:無人戦闘機時代は幕開け直前、ロシアが早くも量産モデルの「S-70」製造を開始か

 

※アイキャッチ画像の出典:Boeing Australia

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 3月 03日

    豪空軍は、今後の要注目対象になった。
    「ロイヤル・ウィングマン」はベンチマークになりそう。

    13
    • 匿名
    • 2021年 3月 03日

    凄いなぁ、オーストラリア空軍。
    このロイヤルウイングマン量産化されて実戦配備されたら日本でも導入できないかなぁ?

    12
      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      ボーイング系列を導入すると、F3との適合性とか面倒臭そう

      3
        • 匿名
        • 2021年 3月 03日

        F-35とのチーミングはやるんだから、LMの支援を受けるF-Xもやろうと思えばできるでしょう。
        日本も随伴無人機をF-X配備に合わせて開発するって言ってるけど、無人機で出遅れ過ぎないで欲しいとは思いつつあんまり開発リソース分散して欲しくもないんで、
        F-Xと同時配備する国産無人機はセンサー機のみ、その他は最初はスカイボーグかテンペスト随伴機を買って済ませる、くらいがいいんじゃないかなぁ。

        5
          • 匿名
          • 2021年 3月 03日

          今後はエアチーミングシステムが戦闘機の価値を左右するのに、海外製で済ませるくらいでいいと考えてる時点で何だかなぁ。。。

          6
            • 匿名
            • 2021年 3月 03日

            センサー機は最初から、その他も後追いで自国で、と言ってるんですが。
            何でもかんでも最初から全部国産でなきゃ気が済まないの?

            9
      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      やるならロッキードかノースロップグラマンのどっちかな
      開発に協力してくれるのあっちだし

      2
        • 匿名
        • 2021年 3月 03日

        ロッキード(スカンク)のは見た目がサンダーバード1号みたいなのがなあ
        ノースロップに任せたらオホートニクと見分けつかんくなるだろうし

        3
      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      日本は日本で独自に随伴無人機の開発が始まってるしそれはどうだろう
      AI開発を優先して機体は後回しにしてるみたいだから動きが見えづらいけど小型無人機で空戦機動の実験をさせたりしててかなり高度な事を無人機させるつもりらしい

      7
        • 匿名
        • 2021年 3月 03日

        > AI開発を優先して機体は後回しにしてるみたい

        kwsk

        以前のここの記事で、「F-Xと同時配備の無人機はAIでの自律飛行制御も戦闘支援も行わない計画」って解釈が出てたけど、流石にそれは誤読だと思ってるんで、
        その反証になり得るその情報には大変興味があります。

        3
          • 匿名
          • 2021年 3月 03日

          誤読じゃなくて事実、無人航空機に必要な技術要素の開発が諸外国に比べて遅れてるんだから仕方ないだろ。

          1
            • 匿名
            • 2021年 3月 03日

            どの国も開発中で実際に実戦投入可能なレベルのものが完成してるわけではないのに遅れてると断言できる根拠は?
            自衛隊は金を無駄遣いできないからAIが実用レベルに仕上がるの待って機体開発に移るつもりでいるから確かに現状では機体は影も形も無いがAI開発が他国に致命的後れを取ってるなんて根拠はないぞ
            ロイヤルウイングマンやスカイボーグは機体がある分進んでるように見えるがAI開発がどの程度のレベルに達してるかなんて現状じゃわからんしAIが実戦レベルならなかったらそのままポシャる可能性だってあるんだぞ
            過去にはX-47Bが空母からの発艦・着艦実験に成功してるのに結局開発中止になってるしな

            4
              • 匿名
              • 2021年 3月 03日

              >どの国も開発中で実際に実戦投入可能なレベルのものが完成してるわけではないのに遅れてると断言できる根拠は?

              実戦投入可能なレベルをゴールに設定するなら遅れてるとは言えないけど、開発の進捗具合から判断すれば遅れていると言っても言い過ぎだとは思わないけど。

              AIが実用レベルに仕上がるの待って機体開発に移るつもりでいるとか、ポシャる可能性だってあるとか言って日本のやり方を擁護してもカネがない、研究のリソースが足りないことを正当化させる言い訳似すぎないよ。

              私は失敗を恐れて他人が成功するのを待つより、失敗するリスクがあっても挑戦を選んだ方を評価したい。

              4
            • 匿名
            • 2021年 3月 03日

            「他国に遅れてる事」と「F-Xと同時配備の無人機はAIでの自律飛行制御も戦闘支援も行わない計画、という解釈が元記事の内容と合致しない事」は全く何の関係もない。
            別に他国に遅れてたって日本がやりたい事がやれればそれでいいんだし、下のコメントにある様にそのための研究は着実に進めている。

            3
          • 匿名
          • 2021年 3月 03日

          遠隔操作型支援機技術の研究って名前で研究がスタートしてるソースはリンクリンクリンク
          遠隔操作型支援機って名前だから誤解しそうになるけど内容は有人機からのわずかな指令で戦術行動を達成できることを目的にしてるからロイヤルウイングマンと同様のものと考えていいと思ってる。
          でもって実験用無人機に空対空戦闘固有の戦術機動が可能なことが求められてるから自衛隊は無人機を単なるセンサーや弾薬庫にするのではなく高度な空対空戦闘させる気かもしれないって話

          8
            • 匿名
            • 2021年 3月 03日

            え、それ開発が難航しないか?

            1
            • 匿名
            • 2021年 3月 03日

            リンク提示感謝。

            >有人機からのわずかな指令で戦術行動を達成できる

            うーん、これだと別に「AIでの高度な自律制御」は必ずしも要らんのよね。
            もちろんこの次元でもセンサー機とのチーミングには十分だとも思うけど。
            あと2番目のリンクの「空対空戦闘固有の戦術機動」ってのはポジショニングやらミサイル回避機動やらの話で、まさかプロペラ機に格闘戦やらせるつもりではないでしょう。

    • 匿名
    • 2021年 3月 03日

    思ったより可愛らしい機体ですこと
    主人に忠実な使い魔の茶々丸ちゃんかと

    1
      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      オホートニクも可愛い形状してて見た目が良いよね

      5
      • A
      • 2021年 3月 03日

      尾翼付近がYF-23っぽくてカッコいい!

    • 匿名
    • 2021年 3月 03日

    今更だけど、デルタエンドとかヒートショックとか実装して欲しくなるような名前。

      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      これからどんなチェイングをするか楽しみな機体ですね。

      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      随伴無人機だからむしろウイナアじゃなかろうか。

    • 匿名
    • 2021年 3月 03日

     アタック級と比べてロイヤル・ウイングマンは順調な様で何よりです。広大な国土と海岸線を持つオーストラリアにとってこの機体は大きな戦力となるでしょう。ボーイングのためにも早期の戦力化と詳細発表(こっちの方が大事w)を期待してます。

    9
    • 匿名
    • 2021年 3月 03日

    いつもこの機体の画像は横からだったから
    サムネの上からの機体の画像を見たのは初めてだ
    こんなにのっぺりして平べったいとは思わなかったな

    3
      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      コックピットがないとこんなもんでしょうね

    • 匿名
    • 2021年 3月 03日

    無人機開発は、いまや生き馬の目を抜く分野だ。
    このあと、スゴイいエアチーミング・システムがどこから発表されても驚かない(と思う)。

    • 匿名
    • 2021年 3月 04日

    我が国の無人機開発にも何か活かせそうな良いニュースですな。

    • 匿名
    • 2021年 3月 04日

    ボーイングに久々に明るいニュース来たな

    2
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