米国関連

無人機が無人機を搭載、低コストでMQ-9に搭載可能な小型UAV

米空軍のMQ-9後継機需要を狙うジェネラル・アトミックスとロッキード・マーティンは、ハイエンドUAV+ローコストUAVの組合せで米空軍の要求を満たそうと考えているようだ。

参考:GA-ASI Conducts Sparrowhawk sUAS Flight Tests
参考:MQ-Next should include both expendable and high-end UAVs: Lockheed Martin

MQ-9後継機の本命はローコストUAVか、ハイエンドUAV+ローコストUAVの組合せ?

米空軍は偵察/攻撃用途に使用している無人航空機「MQ-9リーパー」の新規調達を2022年以降中止する方針(議会承認は下りていないので変更になる可能性もある)で、現在MQ-9後継機に関するデザインアイデアを広く募集しているが、MQ-9後継機を1から新しく開発するのか、既存の商用無人航空機をベースに開発するのか米空軍の方針が決まっていないため非常にあやふやな状況だ。

この状況下で中々興味深い動きが2つ報じられている。

1つ目はMQ-9を供給しているジェネラル・アトミックスの動きで今月25日、米空軍が開発中の新しい戦闘管理システム「アドバンスバトル・マネージメントシステム(Advanced Battle Management System:ABMS)」に関連した「AttritableONE(消耗性マルチロールシステム)」テクノロジーに基づいて開発を進めている小型無人航空機「Sparrowhawk(スパローホーク)」をMQ-9Aに搭載して飛行テストを実施したという話だ。

出典:public domain MQ-9リーパー

この小型UAVは米空軍のMQ-9や米陸軍のMQ-1C等に搭載して発射、同機の拡張センサーとして作動してISR(情報/監視/偵察)カバレッジを拡大させることを目的としており、スパローホークが実用化できればMQ-9やMQ-1Cを危険な空域に侵入させる必要がなくなるため、1,500万ドル~3,000万ドルといわれるMQ-9は戦場での消耗に耐えれないと考え調達中止の方針を打ち出している米空軍にとっては非常に興味深い話だろう。

ただスパローホークは飽くまでセンサーの固まりで攻撃能力は備えていないため、ISR以外の任務=攻撃を行うためにはMQ-9やMQ-1Cを目標に接近させる必要があるため米空軍の懸念を完全に払拭させる存在ではないが、スパローホークを流行りの徘徊型自律兵器(通称:カミカゼUAVもしくは自爆型UAV)に改造すればMQ-9はもはや目標に近づく必要さえなくなるため、このような技術開発はMQ-9調達問題や後継機開発に大きな影響を与えるかもしれない。

2つ目はMQ-9後継機需要を狙って独自のステルス無人航空機を提案したロッキード・マーティンの動きだ。

ロッキード・マーティンは最近MQ-9後継機としてステルス性能に配慮した無尾翼機スタイル(同社が開発したRQ-170センチネル似)のハイエンドUAVを提案したが、同社が提案するMQ-Next(MQ-9後継機こと)は「消耗品タイプの無人航空機が含まれる」と言及して注目を集めている。

出典:ロッキード・マーティン

要するにロッキード・マーティンの提案するMQ-Nextは、MQ-9を進化させたハイエンドUAVと低コストで消耗に十分耐えられるローコストUAVで構成されているという意味で、このローコストUAVは200万ドル(約2.1億円)以下で偵察・監視や自爆攻撃任務に対応した消耗品になることを想定しているらしく、ハッキリと明言していないもののハイエンドUAVにローコストUAVを搭載して運用することを想定している可能性が高い。

補足:ローコストUAVが200万ドル以下というのは飽くまでロッキード・マーティン=米国基準で、海外市場で200万ドルクラスのUAVは通常ローコストに分類されない。

このような考え方は一見すると合理的に見えるが、無人機に無人機を搭載して運用するということはシステム全体が複雑化していくことを意味しており、上手く実用化させることが出来るのか?システム全体で見た場合にコスト増大を招くのではないか?など懸念材料が多いのも事実だが、アイデア自体は革新的なので今後の開発に状況に注目していきたい。

因みにロッキード・マーティンが提案したMQ-9後継機はポーランド空軍にも提案(共同生産)されており、ロッキード・マーティン曰く「米空軍の要求とポーランド空軍の要求は非常に近い」らしい。ただ両国に提案する無人航空機が同一のものになるのか、設計や搭載機器の一部が共通化されるだけなのかは今のところ不明。

 

※アイキャッチ画像の出典:ジェネラル・アトミックス

アゼルバイジャン、アルメニア軍が戦術弾道ミサイルを使用したと発表前のページ

トルコ、早期警戒管制機を使用してアゼルバイジャン空軍の空爆を支援か次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    ゼレンスキー大統領はワシントンに向かい、米国はパトリオットシステム提供を準備中

    米CNNは「ゼレンスキー大統領がバイデン大統領と会談するためワシントン…

  2. 米国関連

    米陸軍、議会承認の遅れで155mm砲弾の購入・増産資金が手に入らない

    米国はウクライナが必要とする155mm砲弾の増産に取り組んでいるものの…

  3. 米国関連

    米海兵隊、いよいよスウォーム攻撃対応の自爆型UAV調達検討に着手

    米海兵隊はスウォーム攻撃に対応した自爆型UAV(もしくは徘徊型UAV)…

  4. 米国関連

    米メディア、ウクライナがザポリージャ州で待望の反撃を開始した

    米国のワシントン・ポストやABCニュースも「遂にウクライナが待望の反撃…

  5. 米国関連

    米軍、地球上どこへでも物資を運搬する「輸送用垂直着陸ロケット」研究中

    米輸送軍の司令官であるスティーブン・ライオンズ陸軍大将は今月6日、スペ…

  6. 米国関連

    機体寿命は残りわずか? 米空軍、爆撃機「B-1B ランサー」維持ため低空飛行を禁止

    米空軍が開発した可変翼の大型爆撃機「B-1Bランサー」は、機体がこれ以…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    中国の無人攻撃機翼竜Ⅱが100万ドルで売られてるのに
    200万ドルで使い捨てでローコストとか言われても
    一般人と軍事関係の金銭感覚が違うように米軍と米軍以外の軍隊の金銭感覚もかなり違うから
    米軍基準だとローコストなのかな

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      インフレ率とかで、そもそも西側兵器と東側兵器の単純な価格比較は困難な気がする……
      とはいえ、米帝基準が消耗型無人機として高すぎるのは確かかなと
      まあミサイル1発数億円の国からすれば、ミサイルという消耗品と同等の価格ではあるのですが

      5
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    戦争するにも頭を使い金の心配をしなければならないのは昔からの話だが。
    UAVは偵察機型→攻撃機型→爆撃機型→制空戦闘機型へ進化していくようだが、戦闘機型が完全ステルスでマッハを超える速度を持たない限り有人ステルス戦闘機には勝てない。
    しかしそんな機体は数十億するからコスパで言えば有人型が当分は有利に思える。
    ローコストなUAVは電子戦機で落とせるだろうし、それで落とせないハイエンド機には機銃かミサイルを使うだろう。

    3
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    うーん、日本も早く小型で安価で高性能なドローンを独自開発してくれないかな
    もちろん、大量に

    12
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      「軍事利用に繋がる!」ってことで、軍学共同に反対している団体をはじめとする
      イカレ共が、開発しようとする大学や企業に対して抗議・脅迫したり、
      核兵器開発企業への銀行の投資をやめさせたように金融機関に圧力かけたりして
      阻止してくると思う。

      16
        • 匿名
        • 2020年 10月 01日

        ああいう連中の妄言には誰一人として耳を傾けない様な社会になって欲しい。

        11
        • 匿名
        • 2020年 10月 01日

        その癖に仮想敵のお仕事や研究はするんだよね
        だから、スパイ防止法も全力で阻止してくる
        それならもうアッチの国に行けばいいのにw

        15
        • 匿名
        • 2020年 10月 01日

        ガースーが、平和安全法制に反対してた左翼学者などの日本学術会議会員任命を拒否したらしい。学術会議は軍事研究止めろと声明していた事があったが、この件をきっかけにもう少しまともになってくれたら嬉しい。

        21
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      ドローン自体は難しい技術ではない、とおもいますが、なんか鈍いですね。
      電波法とかが邪魔してるのかな?
      それにしても、自ら寄ってくる空飛ぶ地雷とは、恐ろしい。

      4
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      海に囲まれてる地形上、足の短い自爆UAV等はどうしても需要が薄くなります。保有しても使いどころがない
      英国・米国もそうだけど、島国は航続距離の長い戦闘機随伴型の大型UAVの方向に舵を切ってる気がする。日本はこの大型UAVがどういう方向に進化するのかまだ見極められていない感じですね。だから開発が遅れてる。あと純粋に技術力不足

      7
        • oominoomi
        • 2020年 10月 01日

        アメリカとは桁がひとつ少ない日本の研究開発予算を効率的に使うには、アメリカにパイオニアの役割を託しその方向性を見極めてから追随する、というこれまでのパターンを踏襲するのはやむを得ないでしょう。
        ズムウォルト級とかLCSみたいな壮大な失敗を日本がやる余裕はないから、UAVよりは高速滑空弾が優先されるのは仕方ないでしょうね。

        6
        • 匿名
        • 2020年 10月 04日

        君の書き込みから48時間後に、こんな記事が出たぞ
        【無人機が次期戦闘機と編隊 防衛省が開発本格化】

        防衛省は、航空自衛隊の次期主力戦闘機の開発事業に関連し、同戦闘機に随伴する無人機の開発を来年度に本格化させる。
        人工知能(AI)で航行する複数の無人機が、空自パイロットが搭乗する次期戦闘機と編隊を組み、パイロットの指示を受けながら作戦行動にあたる計画。
        令和3年度に実験用無人機の製造に着手し、6年度ごろの飛行実証試験の実施を目指す。
        防衛省の構想では、次期戦闘機は17年度に配備が始まる。無人機は敵戦闘機との空対空戦闘(空中戦)に随伴して支援にあたる。
        現在は4機程度で編隊を組むのが一般的であるため、母機となる次期戦闘機1機につき無人随伴機3機程度の編成を想定している。
        リンク

      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      農薬撒くラジコンヘリなら結構先頭走っているみたいよ。
      低空から撒くから散布量も減って、財布にも環境にも優しいそうで。

      ただ兵器となるとちょっと勝手が違うみたいだけど、
      宗教上の影響で欧米みたいに無人機で人を殺傷するのに抵抗があるようなことは比較的少ないと思うので、
      刺激があれば開発も進むとは思いますね。

      3
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    昔ゴブリンとか言うロマン溢れる飛行機あったな。

    目指せ、合体、分離、変形。

    5
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      丸っこいのでしたっけ?空中空母とか言うロマン

      5
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    『アルドノア・ゼロ』でカタクラフトが監視用の小型ドローンで戦域情報確認しながら戦ってたけど、あんな感じで次世代戦車にも観測射撃や戦域データ取得目的で観測・偵察用ドローンがくっついたり…しない?

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      懐かしい
      あのアニメは結構科学的なところが多くて面白かった

    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    この「Sparrowhawk(スパローホーク)」の回収はどのようにして行うのかな?
    パラシュートで回収かな。
    もしかして使い捨て?
    200万ドルを?
    金持ち―。

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      XQ-58ヴァルキリーもそうなんだけど、回収の方法がイマイチわからない。
      膠着装置がない機体を回収するのはかなりハードルが高そう。

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    将来的には無人機に無人機に無人機に無人機に無人機に無人機を搭載したマトリョーシカタイプをロシアが作るよ

    10
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      それはもう無人化した軍隊では?

      2
        • 匿名
        • 2020年 10月 01日

        ターミネーターぢゃん

        4
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      でも最前線は頭の中にチップを埋め込まれて無人機に操られる人間とか

      1
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    日本には昭和の時代から「今週のびっくりドッキリメカ」という
    群生行動ドローンがあってだな…

    7
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      いわゆる自爆型ですね。

      4
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      先に書かれちゃった。
      くやしいゼ。

      3
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      その内ドローン群にドローン群で対抗し始めたり、
      ドローンが更に小型のドローン産んだり、母機が大型の母艦に搭載されたり、今思えば時代を先取りしてたんだな。
      アルメニアとアゼルバイジャンの紛争もドローン同士の歌合戦とかクイズ勝負とかで片付いたりしねえかなぁ。

      3
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    自衛隊がUAVを導入してその名称が「神風」だったら
    それだけで強そう

    5
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    同じ小型パラサイト機のF9C Sparrowhawkと同名なんだな

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    ソ連のTB-3にI-16載せる親子飛行機の発想ですね

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    もはや偵察ができるミサイルですな

    3
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
PAGE TOP