米国関連

初飛行から30周年、B-2爆撃機は米空軍の全世界に対する攻撃能力の象徴

世界初のステルス爆撃機「B-2スピリット」は7月17日、初飛行から30周年を迎える。

参考:Whiteman AFB commemorates 30-year anniversary of B-2 test flight

気づけば、衝撃的な登場からはや30年が経過したB-2爆撃機

米国のミズーリ州、ウォレンズバーグの東に位置するホワイトマン空軍基地は、ステルス爆撃機「B-2スピリット」が配備(実戦部隊として)されている世界でただ一つの基地だ。

米空軍は1989年7月17日、カルフォルニア州ロサンゼルス郡北中部の都市「パームデール」から、同州エドワーズ空軍基地までの初飛行を行ってから30周年を迎える「B-2スピリット」に対し、米国の国防にとって重要な存在であり、空軍の全世界に対する攻撃能力の象徴だと讃えた。

補足:パームデールには米空軍のプラント42があり、ロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマンなど防衛産業企業が拠点を置いており、ここで米軍開発する大半の試作機が組み立てられ、その中にはB-2スピリットも含まれており、軍用機の多くがパームデールで初飛行を経験している。

米空軍のB-2は、この30年間で5つの軍事作戦に従事し、1999年のコソボ紛争では、6機のB-2が計30時間をけて爆撃任務を行い、初めてGPS/INS誘導のJDAM(スマート爆弾)を使用した。

2001年のアフガニスタン紛争では、ホワイトマン空軍基地から出撃し空中給油を行いながら飛行し、アフガニスタンの地上軍支援のための爆撃を行い、2003年のイラク戦争では、インド洋に浮かぶディエゴガルシア島に設置されたB-2用簡易ハンガーから出撃し、往復44.3時間もかけ爆撃任務を実施した。

出典:public domain

2011年には国連が設定したリビアの飛行禁止区域設定のため、3機のB-2が出撃し、大西洋を超えてリビアの飛行場を爆撃し、2017年には、リビアにあるISISのトレーニングキャンプを攻撃するため、ホワイトマン空軍基地から飛び立ち、計15回の空中給油を受け、爆撃任務を実施した。

ステルス爆撃機の「B-2スピリット」は、登場当時は機密の塊で、機体の撮影に関しても制限があり、当然コックピット内の撮影も禁止されていたが、今年、米空軍は飛行中のB-2コックピット内の映像撮影を許可した。

この映像は、ダラスを拠点とする映画プロデューサー兼ラジオパーソナリティーの、ジェフ・ボルトンが撮影したものだ。

飛行中のB-2の勇姿から、空中給油機から給油を受けるシーン、B-2を操縦するパイロットとコックピット内部が映っており、もっとも驚きなのは、B-2のコックピット内部を映した動画に、操縦計器パネル類が遠慮なく映っている点だ。

ここまで映して良いのか?と思うほど、遠慮なく撮影し、一切のモザイク処理なしに動画で公開している。

2人のパイロット正面には4つ多機能情報画面が配置され、左右のパイロットの間には、姿勢指示計や昇降計、傾斜計など基本情報を映し出す、大型の情報画面が設置されている。それ以外の空間には、これでもかと言うほどのアナログ式計器や、機械式のスイッチ類がびっしりと取り付けられており、20世紀に設計され、初飛行から30年が経過したという事実を思い知らさせる。

出典:public domain

今回30歳を迎えたB-2爆撃機は、あと10年ほど働けば、現在開発中のステルス爆撃機「B-21レイダー」との更新が始まり、順次退役することが決まっているが、B-2が博物館入りした際には、必ずこの目で見に行こうと思う。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Joseph A. Pagán Jr.

陸上自衛隊、米海兵隊、米海軍、米空軍の「V-22オスプレイ」が編隊を組んで空を飛ぶ前のページ

いずも+F-35Bで対抗可能?中国「空母搭載型ステルス無人機」コンセプト披露次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    偽物かどうか見破るのが困難な装備のダミー、ロシア軍は数百の弾薬を浪費

    CNNやGuardianは「ウクライナ企業が供給する精巧なダミー」につ…

  2. 米国関連

    実戦配備が遅れていた米空母フォード、遂に兵器運搬用エレベーター問題が解決

    米海軍は22日、空母フォードに最後まで残されていた欠陥=兵器運搬用エレ…

  3. 米国関連

    ウクライナ人パイロットは4ヶ月の訓練でF-16を操縦できるようになる?

    ウクライナ人パイロットは約2週間のシミュレーターテストで技量の高さ示し…

  4. 米国関連

    新型コロナウイルスの影響でF-35フルレート生産移行に遅れ?日本発注のKC-46A製造に影響も

    米国では新型コロナウイルス「COVID-19」の感染が急速に拡大中で影…

  5. 米国関連

    B-21はB-2よりも一回り以上小さい? 米空軍がB-21を保護するシェルターを公開

    米空軍が開発中のステルス爆撃機「B-21レイダー」はプロジェクトの特性…

  6. 米国関連

    バイデン政権、ウクライナへのサイバー攻撃はロシア軍による犯行と発表

    ホワイトハウスは18日(現地時間)午後、ウクライナ国防省や銀行に対する…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 7月 17日

    世界一美しい飛行機

    1
    • 匿名
    • 2019年 7月 17日

    全翼機好きのノースロップ社長の生涯の夢ですわ

    1
    • 匿名
    • 2019年 7月 17日

    もう30年なのか最初見た時はなんじゃこりゃと思ったなぁ
    でも虎の子過ぎて前線基地に持って行けずに本土から延々飛んでって爆撃とか効率悪い…
    レイダーさんはもうちょい使い勝手良くなってるんだろうか?

    1
    • 匿名
    • 2019年 7月 18日

    実物見たら震えそう。

    1
    • 匿名
    • 2020年 7月 17日

    ジャック爺さんの生涯の夢が叶ったのは感動的な話だけど、兵器として考えた場合は高価過ぎ&気密度高過ぎで容易に出せないってのはちょっと問題よな。兵器の本質ってのはガンガン前線に出す、消耗上等使ってナンボってなもんだで。使うのに躊躇するようじゃ宝の持ち腐れ。

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  2. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  3. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
PAGE TOP