ワシントンに拠点を置く保守系のシンクタンク「ヘリテージ財団」は今月20日、米国の国益を守るため米軍の軍事力が必要レベルに達しているのかを客観的に分析した報告書「Releases 2022 Index of U.S. Military Strength」を発表して注目を集めている。
参考:Heritage Foundation Releases 2022 Index of U.S. Military Strength
ヘリテージ財団の評価によれば空軍は資金を何をに優先して投資すべきか分かってない
この報告書は陸軍、海軍、海兵隊、空軍、宇宙軍、核戦力の6つを規模/能力/準備/総合の4分野で分析、これを5段階(非常に劣っている、劣っている、及第、優れている、非常に優れている)で評価しているのだが中々興味深い結果となっている。
陸軍は近代化スピードは装備や能力の老朽化に追いついておらず、兵力も本来達成すべき規模の約62%しか準備されていないとヘリテージ財団は指摘しているが、陸軍の基本戦力である31旅団戦闘団(歩兵旅団戦闘団、機甲旅団戦闘団、ストライカー旅団戦闘団)のうち18旅団戦闘団は最高の準備状態を維持しており、将来の戦いに対する備えや投資も「何が必要なのか」を理解している印象を受けると付け加え5段階中「及第」と評価している。
海軍は戦争に対する準備状態が下降の一途で「将来の戦いに備えるためには約400隻の戦力を必要としている」とヘリテージ財団は指摘しているが、現在の資金レベルでは当面これを実現するのは不可能だと付け加え5段階中「及第マイナス」と評価、海兵隊は昨年の「及第」から「優れている」に状況が改善しており、これは大規模な部隊再編計画「Force Design 2030」が順調に推移して即応性が高まったと評価されているためだ。
核戦力は老朽化したミニットマンIIIの更新プログラム「地上配備型戦略抑止/GBSD」をバイデン大統領が支持したため「核戦力の将来は楽観的へと変化した」とヘリテージ財団は指摘するも「ミニットマンIIIの更新スケジュールに余裕は残されていない」と付け加え5段階中「優れている」と評価している。
問題は「劣っている」と評価された空軍で中々興味深いことを指摘している。
まずテロとの戦いに明け暮れた20年間で空軍のサイズは冷戦時代の約半分に落ち込んでおり「特に空中給油機の不足が危機的な地域への展開能力を制限している」とヘリテージ財団は指摘、さらにパイロットの準備不足は致命的で2020年の年間飛行時間の平均は「週3回/年間200飛行時間」と設定された基準を大幅に下回る131時間で「歴史的な低水準」だと強調、その上空軍は敵が恐れている第5世代戦闘機のF-35Aではなく「中国人やロシア人が全く恐れていない第4世代のF-15EXに資金を投資しており何を優先すべきかが分かってない」と批判。
2019年のMC率 | 2020年のMC率 | |
F-15C | 70.05% | 71.93% |
F-15D | 72.45% | 70.52% |
F-15E | 71.29% | 69.21% |
F-16C | 72.97% | 73.90% |
F-16D | 70.37% | 72.11% |
F-22A | 50.57% | 51.98% |
F-35A | 61.6% | 76.07% |
F-35Aの準備率(Mission Capable Rate:MC率)は2020年に大きく改善して他のプラットフォームを抑えトップ(76.07%)に踊り出たが、元々空軍の戦闘機に要求されていた準備率は80%以上なので51.98%~76.07%の現状では「中国やロシアといったライバルに立ち向かうには不十分で約2,000人ものパイロット不足も解消されていない」と糾弾しており全く良いところがない。
宇宙軍については創設されて間もないので割愛するが、ヘリテージ財団が発表した評価は飽くまで一つの指標に過ぎないため「このような評価もある」程度に受け取っておくが良いだろう。
パイロットの年間飛行時間やパイロット不足については弁解の余地が無いもののF-35AではなくF-15EXの調達を優先をしているのには事情があり、80%以上の準備率が達成できない原因も一言では語れない複雑な事情が関係しているので「米空軍的には頑張っている方だ」と管理人は思っている。
まぁ結果が全てなので言い訳をしても仕方がないのだが、、、
関連記事:米空軍が運用するF-35Aの稼働率が大幅に改善、F-15やF-16を抑えてトップに立つ
関連記事:米空軍が保有する戦闘機の在庫は過去最低水準、老朽化は過去最高水準
関連記事:米海兵隊が戦車大隊廃止を開始、M1A1エイブラムスは倉庫送りに
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. Sam King
冷戦時代、それも7,80年代の空軍力と比較したらそりゃあ見劣りするよね(冷戦終結後の軍縮で真っ先にメスが入ったのは海空軍だし)。逆に個人的に気になるのは陸軍の高射部隊の状態かなあ。対テロ戦争中一度も出番が無く改変で部隊ごと消えてしまったようなところもあるけど、敵の航空優位下で地上部隊が活動しようと思ったら彼ら抜きには何も進まないし。
戦前の話になってしまうが日本陸軍も日中戦争の過程で(元から厚かったとは言えない)高射部隊が質・量ともに減勢して、結果として本土爆撃での被害拡大を招いたという話もある。
核戦力について「優れている」と評価してる時点でお察しレベル。評価レポートそのものが現状のアメリカを反映した物に思える。
こんな素人の評価よりも真っ当かと。
流石プロは言うことが違いますなぁ
世界の王様は揺るがないってかw
アメリカは冷戦時代の半分の戦力に削減しても浪費ばかりして更に半減しなくてはならない事態に追い込まれつつ有るのですが核戦力は維持していくと思われます、その理由は今の中国は核弾頭保有数も多くはなくアメリカは中国全土への先制核攻撃で簡単に優位をとれるからです、それが「優れている」の評価理由なのでは?その結果広島と長崎の状態が中国の主要都市全部で同時に起こる訳ですけどアメリカは知ったことでは無いのでしょう。
参考
リンク
はいはい自演乙
書き忘れてたので追伸。
米国の核戦力は最新のトライデント2で25年以上前の代物なので、世界の核戦力又は運搬手段と比較すると「優れている」はあり得ない。老朽化しているが数が多いので精々「及第点」相当が妥当。そして老朽化してても数が多いので確証破壊(核抑止)が成立しているのが現状。
自演乙を除く上三つの(釣り)コメントに対してあえて返信するが、これくらい「常識」。最近の当サイトにはあからさまな自演工作(管理人主導を疑うレベル)多いが、世界の核戦力を正しく理解してる者はスルー推奨。
膨大な量のコメントの管理に手が回らないだけだから深く考えなくておk
だってみんなA10とかのレガシー兵器好きだしさ
空軍はさっさとF35の次に行くべき
A-10残したがっているのは一部の米陸軍ぐらいじゃなかったっけ
それと議会
A10の投射力は捨てがたい
>A10の投射力
A-10に投射力…?
ちょっと何言ってるかわかんない
君は投射弾量も知らないの
それは投射力って言わない
投射力って、弾薬を撃ち込む能力のことを言わないよ?
可及的速やかに戦力を浸透しえる能力を指すのであって、
A-10はその浸透しきった後の制圧、維持を行う物なので、投射力とは別物
実物を見ると、黒光りしてて太くて大きいのに見惚れてしまって退役反対派になっちゃうの><
くうぐんさん「パイロット足りない予算足りない・・・せやもうオワコンの対テロでしか使えない時代遅れのA10全廃したろ!」
えらいひと「いやダメです200機は維持しなさい」
↑
コレじゃ無理やろ・・・
A-10こそ、最も無人機化に適していると思えるんだけどなぁ。
素人目にはグダグダ続きの海軍が一番下て、問題はあれどF-35を揃え、B21も順調にいってる空軍の方がましに感じる。
前インド太平洋司令官はこういっている
「可能性を論じるな、ただ備えよ」
これ全部優れているにするのにあと何兆円かかるんだろうね
戦車隊を全廃する海兵隊が優れているとは?貧乏だから再編しただけじゃないの
危険地帯は陸軍に丸投げかね
島嶼すべてに敵戦車がいるとは限らないから順当では
海兵隊の編制と装備の見直しは戦略重心をインド太平洋に転換したことによる戦術的最適化でしょ。
個人的にはむしろ海軍のが問題あるような…
金無駄遣い艦多すぎ、何歩か譲ってフォード級は上手く動かせるようになれば戦力になりそうなのと、まだ、就役してから比較的日が浅いことと、最新技術山盛りだからで、まだ許せるが、ズムウォルトと沿岸防衛艦はマジでなんで建造した?レベル。
百歩どころか万歩くらい譲っても擁護不能。
潜水艦以外と空母以外の水上艦は要らない!と、どこぞの総統が激怒するレベルで酷いここ30年
いや、その人が言えることではないやろ、個人的に一番謎なのは沿岸防衛艦、マジデナンデコンナカンケンゾウシチャッタノ?
戦車が必要な場面は陸軍や同盟国だよりなのでは?
戦車隊廃止でもACVに砲塔付きのを導入するしLAV25の後継は在来の12tサイズではないから単なるパフォーマンスという気もするよ
某国のキドセンだって新規戦車半減の上での大量導入ですし同じ話じゃないかな?
海兵隊のニーズ的にもし10式があるなら戦車隊廃止にはならなかっただろうけどM1ならもう要らないという感じ
不要なイラク戦争で無駄遣いしたブッシュJrをなじるべきか
平和主義(笑)で中国を増長させたオバマを恨むべきか
再編より兵器ビジネス重視だったトランプに嘆くべきか
先日のヘリコプターの話を見ても、米空軍が迷走してると言われても仕方ない。見返せるかはデジタルエンジニアリングの戦闘機開発で適切に口出しできるかだな
世論対策にトマホークだけ打っておけばいいだろのクリントンもいるぞ。・・・あれ、ひょっとして全員ダメなんじゃ
れ、レーガン(震え声)
カーターは論外として、増税で退いたブッシュシニアがマシな部類か。日本からしてみれば凶悪な大統領だったが
ならず者相手なら、レーガン・シニア位の姿勢でないと駄目なんだろうなあ・・・。国営企業そのままの国をWTO歓迎とか論外で
評価のわりに沿岸戦闘艦とかズムヲルト級のような盛大なやらかしを抱えてるわけでもない空軍さんなのであった
だいたいがアホみたいにMRAP抱えて戦車や歩兵戦闘車の更新が蔑ろにされまくりの陸軍さんが評価高いとか冗談にもほどがある
更にはストライカー旅団の空中展開破綻で今更にM8軽戦車が復活とかいう意味不明を呈してるのに
やらかしまくってるので、何もやらない方が相対的に上がるという・・・。ロビイストにじゃぶじゃぶであちこちやらかしの近年空軍を手放しで褒めるもあり得ないでしょう。諸々のしわ寄せを現場が受けてるだけ
こっちはF-35有能論なのかな…?
F-35は能力が駄目だという話ではなく、運用維持コストが高すぎて円滑に運用するためのサポート体制にも問題があるだけ。
そこを切り分けて理解しないと
「にも」じゃ語弊がありますよ。
能力はともかく、目的としての評価はB以外はどうかなと思うけど。採算性で落第は成功作でも幾らでもあるよ