ヘグセス国防長官が命じた「包括的な陸軍改革」によってM10 Bookerの調達中止は確定的だと見られていたが、米陸軍は11日「M10の調達を正式に中止する」と発表、ドリスコル陸軍長官も「これまでならM10を機能させる努力を続けていたと思う」と述べ、現在の改革はそれを許さないと示唆した。
参考:Dead on arrival: Army pulls plug on M10 Booker light tank
数年後には多くの変化によって「従来の戦力構造との決別」を宣言することになるはずだ
ヘグセス国防長官は5月1日「特定の組織解体や統合、将官の削減、従来システムの調達中止などを通じた改革」を命じ、ドリスコル陸軍長官はM10 Bookerについて「このプログラムは典型的な埋没費用に対する誤謬で陸軍は間違った決定を下した」「我々は空中投下に対応した小型戦車を開発しよとしたのに出来上がったのは重戦車だ」と述べたため、M10の調達中止は確定的だと見られていたが、米陸軍は11日「現在の世界情勢に対応し、陸軍改革のイニシアチブで説明した戦略目標を達成するためM10の低率初期生産を終了する、計画していたフルレート生産には移行しない」と発表。

出典:U.S. Army photo by Bernardo Fuller
米陸軍は低率初期生産分として2022年~2024年までに計84輌(プロトタイプを含む低率初期生産の合計は96輌)を発注、2025年にも33輌の発注を予定し、最終的に40億ドル以上の費用を費やして362輌~504輌のM10を取得するつもりだったが、米陸軍は「低率初期生産を今直ぐ停止するわけではない」「現在生産の最終段階にあるM10は受け入れるつもりだ」「我々既に26輌のM10を保有している」「最終的な保有数は生産の最終段階にあるM10の数によって決まる」と述べ、まだ生産に入ってない発注済みのM10はキャンセルされると示唆した格好だ。
ドリスコル陸軍長官はDefense Newsの取材に「埋没費用に対する誤謬という概念は人間が直面する一般的な問題だ」「個人的な生活でもそうだが、過去の大きな投資を行うと『将来にとって最適ではない』と気づいてもそれに固執してしまう」「M10は新しい用途に対応できる軽戦車として設計されたのに中戦車として完成してしまった」「開発企業もM10に不満を持っていたと思うが、我々も顧客としてフランケンシュタインのような存在を生み出す手助けをしてしまった」「今までの陸軍ならこれを機能させるための努力を続けていたと思うが、現在はM10に対するアプローチが間違ったと認めるよう努めている」と述べているのが興味深い。

出典:Сухопутні війська ЗС України
ウクライナ侵攻以前の作戦環境、小型ドローンによる重装甲車輌の破壊が実証されていない世界、商用・軍用の小型ドローンが戦場の低空域を闊歩するような状況、300ドル程度で入手可能なFPVドローンが兵士1人の交戦距離をmからkmに拡張してしまった事実、この安価なシステムが毎月万単位で供給され「まとまった戦力=機械化部隊」による作戦が現実的でなくなる前なら、米陸軍を含む世界中の陸軍は従来の戦力構造に「ドローンを付け足す程度」の変革で済まされたかもしれないし、その世界線ならM10を機能させるための努力も間違っていなかった可能性もある。
しかし、ウクライナとロシアの戦いによって戦争の形は大きく変わってしまい、これまで机上の空論だった「小型ドローンの大規模使用」「それがもたらす戦場認識力の拡張の戦闘効率の大幅な向上」「これに対応する技術的困難さ」が戦場で実証されてしまい、さらには高性能と多機能が売り文句だった兵器の「構造的な複雑化」と「取得費用の高騰」は迅速な大量生産を著しく阻害し、逆に商用技術を素早く取り込んだシンプル構造のシステムは「戦場で直面する問題への適応」に優れた柔軟性をもたらし、こういった要素は従来戦力の寿命を一気に縮めてしまったのだろう。

出典:U.S. Army National Guard photo by Sgt. 1st Class Brandon Nelson
米陸軍を始めとする西側諸国の軍隊は「ウクライナでの変革を目撃し分析する段階」から「これを実際の戦力構造に取り入れる段階」に差し掛かっており、数年後には多くの変化によって「従来の戦力構造との決別」を宣言することになるはずだ。
個人的に自衛隊は組織的に保守的で、現在ある能力を延長上に強化したり研ぎ澄ませることに長けていても、新しい要素を率先して取り入れてる革新性も創造性も欠けているように見えるため、大きな改革の流れについて行けるのか非常に心配(具体的な成果が見えないのか見せないのかは不明)で、海外の事例で目撃する「従来プロセスによる調達の課題」も防衛省にとって無関係なものではないだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Bernardo Fuller





















この思い切りが、米軍の良さだよな。
我が国なら、間違いなくダラダラ調達を続けているような。
管理人さんが指摘するように、自衛隊の変革は保守的だけど、翻って自分自身は? と考えると似たような物だと思う。
自衛隊だけでなく、日本人全体が変革をあまり積極的にしない民族なのかも。
うーんどうかな
この判断をしてる時点で負けだと思ってるのは俺だけだろうか
中国はすでに新時代の戦場をはるか前から予測して遂行してる
最近のアメリカは何もかも失敗続きでいいとこなく金の無駄使いしてるようにしか見えない
自衛隊は良く悪くも他国の事例を時間をかけて研究してからでないと、導入しない面がありますね。
おかげでアメリカ海軍のような失敗続きの惨状になっていない面があるので、難しい所です。
それだとまるで自衛隊が堅実なプロセスを経て無難にやっているみたいな話になるじゃ無いですか。三自衛隊だってそれぞれの特徴が有る訳だし、そもそも研究していたならとっくに導入されている物なんて幾らでもあると思います。導入した物の評価が悪いとか導入された時のままでアップデートなんてされないとかザラじゃではないでしょうか。
ケージ装甲とかで車両の防御力を上げるとか25式偵察警戒車なんて10年以上前に導入していてもおかしくないですよ。
まあ特に陸自は石橋を叩いて渡らないとか言われていましたし心配ですね。前線でドローンを改造しながら戦うような戦場では適正のある人員を柔軟に配置しないといけないでしょうし。
”自衛隊は組織的に保守的で、現在ある能力を延長上に強化したり研ぎ澄ませることに長けていても、新しい要素を率先して取り入れてる革新性も創造性も欠けている”
そんな組織に金を注ぎ込んでも無駄に浪費するのが目に見えてるから、防衛費増額なんて絶対にすべきではないし、抜本改革なんて出来るわけないんだから。対中国なんてとんでもない無謀な事なので、例え将来中国と衝突になりそうになったとしても譲歩一択しかあり得ない。
痛い目を見る前に自らの無能を認識して、無能は無能らしく縮こまって生きるしかもはや道はない。
現状の組織だと改革は不可能だし、革新性もない。
現状を打破するためには、頭の硬く革新性も柔軟性もない日本人は中堅以上から全て排除し、柔軟かつ革新性に富む米国人に入れ替えるぐらいはやるべきである。
今のアメリカのグダグダぶりを見るとそうも言えないし、そもそも国防を外国人任せはなぁ
日本人を入れ替えるとか、「世界中の人がいっせいに武器を捨てれば平和に〜」レベルの現実性のない話をされてもなぁ。
とはいえ、自衛隊の動きがのろいのは確か。悲しいけど、いつもの如く、外圧による変化を期待するしかないか。
こう書いていると、日本は「忍耐強く、言われたことをする人」が多く、「新しいことを自分で考えてする人」が少ないのがよくわかる。
まぁ、今の教育と明治時代以降の日本人の気質からして、そういうものなんだろうけどさ。
ハマスが、携帯式対戦車弾・ドローンから対戦車弾を投下したりして、メルカバですら撃破される時代ですからね。
M10ブッカーが、中途半端になってしまったわけですから見直しは妥当で、(血の対価を払う前に)損切り出来るのはいいことだと思います。
SNS時代は宣伝戦も兼ねた、戦場の映像インパクトが極めて大きく、文字ベースの報告書とは大きく異ります。
フェイクを見抜く必要もありますが、理論的に可能かどうか検証すれば、兵器設計時の想定外に対応することもできるでしょう。
自衛隊が(組織として)何も変えない判断をするのであれば、戦争に不可欠な『適応能力』が怪しくなるわけですが…血の対価を払って気付く頃には大損害がでたうえに、生産基盤がなくどうしようもないという事態は避けたいものですね。
第二次大戦中のM7戦車みたい。
M7戦車は軽戦車として開発スタートしたけど火力や防御力の要求の変更で中戦車として完成した。
元が軽戦車ゆえに性能的に中途半端なM7戦車を生産する意義に疑問がもたれて発注取り消しとなり少数生産で打ち切りとなった。
最近の米陸軍調達中止中止ばっかだな
他に装備更新のあてはあるの?次に調達中止になるものは?
コマツの撤退が無かったら、陸自の装甲車に海外製は入らなかったし
F-35のジャイアンっぷりが無かったら、GCAPの開発開始は無かったかもだし
アメリカ海軍の迷走が無かったら、もがみ型は無かったかもだし
確かに外からの影響は大きいなぁ
でも自衛隊が独自に知恵を絞っても、kytnみたいに「自衛隊はガラパゴスだ~」と叩く輩がいるし
外から唾を吐くだけなら簡単よな
陸自がAH-64を調達中止したら批判していたのに、M10中止は自衛隊には出来ない決断て褒めるのもけっこう都合がいいもんよね
そもそも陸自ののAH-64と米陸軍のM10とでは中味が違うでしょう。陸自は導入したいけど揃えるのが難しいと言うグダグダの末の中止で、米陸軍は調達は可能だけど時代にそぐわないから要りませんじゃ天と地の差ですよ。
米軍はもともとの要求仕様から外れて使えないのを知りながらダラダラ80両も調達して陸自よりある意味酷いぞ
メーカーとズブズブなだけで調達可能だから良いてものでもない
攻撃ヘリ自体が時代に即してないのはあるからね。
人員輸送ヘリの護衛用とかぐらいしか需要はなさそうだし>日本
アパッチは「調達中止」と言うより「調達不能」と言った方が良いかもしれません
ガーディアン配備寸前でロングボウを調達開始、これが良くなかった
1機あたりの値段は爆上げして少数生産になってしまい、本家米軍はガーディアンに移行、サポートが縮小されてしまうと
そしてアメリカ陸軍はロングボウの「切り捨て」を決断してしまいました
無理やりに配備を強行していたら、サポート切れのロングボウが手元に残り、島嶼防衛にイマイチな子がいっぱいと、陸自のヘリ運用は今以上にヤバくなっていた可能性ああります
海自の空母機能導入前後のミリオタ界隈の反応の違いといい(導入前は空母なんかいらないが多数派だった)、ロシア侵攻前後の陸自のドローンに対するミリオタ界隈の反応といい(いわずもがな)、日本のミリオタ界隈はたんなる自衛隊のファンクラブが多数派なので
ここにも居るけどM10の顛末を何故か肯定的に評価したり
外国のやる事は無条件に高評価する逆の勢力もけっこう居るのも特徴ですね
どうなのでしょうね。
素人は、ブッカーとは言わないまでも、歩兵戦車的な車両は必要と思います。
いずれ、超低空域〜低空域の航空(無人機?)撃滅戦は行われると思います。
そこで勝利した側は、フリーハンド(言い過ぎかな?)を得るのでは?。
後は、攻める側は、火力でひた押しして来ると考えます。物量の問題?でしょうか?。
ウクライナを見ていると、ドローンを使用した防衛で、ロシア軍を止めきれていません。
ドローンの運んでいる物にもよるとは思いますが。
HEAT弾頭やEFP弾頭を別とすると、どうも、爆薬だけを運んでいるように 見えます。
対人弾頭が必要でしょう。HEとか、シェル(殻)のあるもの。砲弾で良いと思うのですが。
重たくなるので、まだ出来ていないのでは?と想像します。
大きな輸送用ドローンで対戦車地雷を改装した榴弾を投下しているのは有効に見えます。
南西諸島に少数兵力を展開する陸上自衛隊向けには、無人攻撃用ドローンは防衛力の強化につながると素人は愚考しますが、ウクライナ戦争の研究が進んでいると良いですね。
戦車でもコープケージの研究が表に出てくるようにはなりましたが。
ケージの研究自体は、機動装甲車(AMVXPに敗れた三菱装甲車)でやっていたので、それを戦車に応用したのかなぁ、と思いますよ
よく分からないのはそういう研究をあまり外に「見せない」んですよね
レールガンは外によく発信しているのに
宣伝するメリットもないですからねえ。
高価で高性能な装備なら説明責任的なものあるでしょうが、教えたら対策されてしまうようなものは防機でいいと思います。
M1は兵站に著しい負担を掛ける上にC-17による戦略機動性も悪いからM10が開発されたわけで、ドローンどうこうは的外れだろう
当初の予定よりも重量化&軽量のM1E3に方針転換で存在価値がなくなったのが調達中止の原因だと思うよ
的外れではないと思いますよドローンによって主力戦車すら破壊される現状。非正規戦だろうが正規戦だろうがドローン攻撃される可能性が一番高くなっていて対応するならば更なる重量増とコスト増が求められる。ファミリー化もされていない単一のM10にそこまで投資してまで使用する必要があるのか疑問です。
仮に大口径主砲を必要とするならブラッドレー後継のMICVに載せて運用したいって思惑が有るんじゃないですかね?砲塔はともかく車体側の防御や制御に関しては共通化出来る訳だし。
いいえ的外れです
なぜかと言うとそもそもM10ブッカーが重量化したのはウクライナ侵攻以前でドローンは関係ありません
M10はアメリカ軍も言っているとおり戦車ではなく火力支援車、つまり使いにくかったストライカーMGSが本来やりたかった歩兵に追随して直射砲で迅速に火力支援を行うという車両です
ドローンに攻撃されやすいというのはその通りですが、ある程度自己完結したドローン対策求められる主力戦車と違い、この車両レベルだとせいぜいRWSをドローンに対応させるくらいで、メインの対応は歩兵か別の随伴車両になります
本来企画されていたM10の役回りは陸自で言えば16MCVでしょう。あくまで歩兵への近接火力支援戦闘車であってMBTの役処を代替する装備ではない。
ドローン戦術の成功で従来の歩兵戦術が通用しなくなる→近接火力支援戦闘車は存在意義を失う
という図式なんだろうと思います。
ウクライナ戦争前に計画、設計されたM10をそのまま生産することが微妙かもしれないですけど、追加装甲APS込みで70t超えで燃費が悪く走れる地形も著しく限られているM1では先がないですね。
M1の巨大で大重量な車体(車体のみで40メトリック・トン程度とM10並み)では50t台に収めることもかなり厳しいので、結局M10ベースで砲塔システムだけ作り直す(自動装填装置搭載で乗員を一人おろして内部容積を削減して軽量化、APS、FPVドローン、ドローン・ジャマー等の装甲と比較して重量があまり増えない必要な装備を載せる)感じになるのでは…
安価で有用な誘導砲弾が実用化されてしまった訳ですから、装甲付の大砲を前線で走り回らせる必要が減少したってだけのような。
塹壕の中から頭を出さずに戦争が出来るなんて、硫黄島以来、日本の軍隊が追及して来た理想ソノモノだよなぁ。
自衛隊も実情はともかくまずドローン試験大隊を編成した!くらいの動きを見せたらいいのに。
米軍はやったので追従しやすくなったはず。