米国関連

中止されたパトリオットシステムの次世代迎撃弾開発、米陸軍が再開に言及

米陸軍はパトリオットシステムの次世代迎撃弾(LTEL)開発を予定していたものの、昨年のAUSAで「予算不足でLTEL開発を中止する」と言及したが、今年のAUSAで「予算確保に道筋が見えたためLTELを再開したい」と方針を転換し、次世代迎撃弾の開発が濃厚になってきた。

参考:Glass ‘half full’: Army likely to reverse course, go for next-gen Patriot interceptor after all

PAC-3MSEは継続的なアップグレードによる安泰から、LTELの結果に将来性が左右される不確かな立場に転落するかもしれない

地上配備型防空システムは指揮統制、レーダー、ランチャー、迎撃弾、発電機など独立した各要素を統合したもので、パトリオットシステムは各要素の段階的なアップグレードや新要素の追加で能力向上を図り、現在はAN/MPQ-65に代わる新型レーダーとしてLTAMDSの調達が進められている。

出典:RTX LTAMDS

パトリオットシステムの迎撃弾もPAC-2GEM-TとPAC-3MSEに並行調達が行われ、後者に関しては新規設計の次世代迎撃弾=Lower-Tier Future Interceptor(LTEL)の競争試作が予定されてたものの、米陸軍は2024年のAUSAで「予算に厳しい制約があるため高価な次世代迎撃弾の開発を中止する」「その代わりにPAC-3MSEの継続的なアップグレードを続ける」と発表していたが、国防予算に追加資金をもたらすBig Beautiful Bill Actが成立し、米陸軍は今年のAUSAで「LTELの再開」に言及した。

このプログラムを担当しているロザノ少将はAUSAのカンファレンスで「まだLTELは決定されていない部分も残っているが、我々はプログラムへの支持が得られると確信している」「来年の今頃にはLTELを正式プログラムとして開始しているかもしれない」「現段階でLTELの実現性は50%ぐらいで計画をどう進めるか考えている最中だ」と述べ、さらに「トランプ政権の発足とBig Beautiful Bill Act成立による資金の増加によってLTEL再開の道筋が見え始めた」と付け加えている。

出典:Lockheed Martin

まだLTELがどの様なものになるか分からないが、ロザノ少将は「プログラム開始から3年~5年以内に最低限の運用能力を獲得したい」「以前の競争はLockheed MartinとRaytheonによるものだったが、この分野には新規参入した企業があり、今回はもっと競争の幅を広げて業界から最良のアイデアを引き出したい」と述べており、パトリオットシステムの迎撃弾=PAC-3MSEは継続的なアップグレードによる安泰から、LTELの結果に将来性が左右される不確かな立場に転落するかもしれない。

関連記事:ロッキード・マーティン、PAC-3MSEの増産を目標より2年早く達成
関連記事:日本のパトリオットミサイル輸出、シーカー不足で増産に数年かかる見込み
関連記事:NATO、欧州のパトリオット運用国向けに1,000発の迎撃弾を一括発注

 

※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin

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コメント

  • コメント (9)

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    • バーナーキング
    • 2025年 10月 16日

    是非完成させて型落ちになったMSEは日本にシーカー含めた完全ライセンス生産を容認しましょう。

    25
      • nachteule
      • 2025年 10月 17日

       ライセンスさせてもらったとして次世代迎撃弾の方が価格面や性能面で優位に有るなら国内で使うにしても海外に売るとしても微妙な結果にしかならない可能性が高いと思うんだけど。

      2
        • バーナーキング
        • 2025年 10月 17日

        次世代弾がコスパで圧倒的に優り、かつ既存のPatriotで何の改修もなく使用でき、米からの制約もなく、世界中で必要とされる全数を短納期でバンバン生産できるならその通りですがそんな訳はないでしょう。
        まあ「米からの制約」についてはMSEのライセンス生産品再輸出も大差はないかもしれませんがそれでも型落ちな分緩くはなるでしょう(むしろ日本の輸出規制がネックになるので今議論されてる5類型の撤廃等がどうなるかの方が問題かもしれません)。

        1
    • SB
    • 2025年 10月 16日

    台湾有事でPAC-3を撃ち尽くすとかでもない限り既存の資産が沢山あるから、LTELが成功したところでPAC-3のアップグレードが不安定化するとは思わないかな

    8
    • dd3
    • 2025年 10月 16日

    PAC-3がある程度安定してるからこそ、こういう事に手が出せるという面もあるからなぁ
    多少は欲張った、冒険的な試みにもチャレンジできるんだろな

    4
      • dd4
      • 2025年 10月 16日

      名前うち間違えた…

      1
    • kitty
    • 2025年 10月 16日

    こういう対空コンプレックスは、いろんな要素の群体だから、次世代のシステムができたから突然使えなくなるってもんじゃないのでは。
    バックポートとかも充分あり得るでしょうし。

    6
    • 2025年 10月 16日

    何をどうしたらLTFIがLTELになるん?

    2
    • 名無し
    • 2025年 10月 18日

    弾がPAC3MSEと同じくらいの大きさと重さならそこまで変わらないものになるだろうし
    ガラリとかえると兵器そのものが別なものになりそうだけど…

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