米国関連

米陸軍がサーベイヤー迎撃ドローンを中東に配備、その規模は最大1万機

米当局者はイラン製無人機に対抗するため今月6日「ウクライナで有効だと証明された対ドローンシステムを中東地域に送る」と言及、米陸軍長官も13日「メロプスシステムを中東に送った」と明かした。これはサーベイヤー迎撃ドローンのことで、米陸軍は1万機の迎撃ドローンを中東に配備した可能性がある。

参考:US to send anti-drone system to Mideast after successful use in Ukraine, officials say
参考:Merops anti-drone system, built around Surveyor interceptor UAVs and proven in Ukraine, is now being adopted by several NATO states
参考:US Sends Intercept Drones Used in Ukraine to Blunt Iran Strikes
参考:Polnische Streitkräfte beginnen Ausbildung am Drohnenabwehrsystem AS-3 Merops
参考:MEROPS – nowy wymiar obrony przed zagrożeniami powietrznymi

単にウクライナと同じ迎撃ドローンを持っているだけで同じ効果を得られるわけではないので、米軍のお手並み拝見と言ったところだろう

米国とイスラエルは2月28日にイランへの大規模な共同攻撃を開始し、イランも弾道ミサイルや自爆型無人機でイスラエル、米軍基地、この戦争を支援する国の基地がある中東諸国に反撃を加え、高価な迎撃ミサイルを信じられないスピードで消耗させており、ヘグセス国防長官やケイン大将は議会で行われた非公開のブリーフィングで「イランのShahed-136が国防総省の予想以上に戦場で戦術的混乱を引き起こしている」「対ドローン技術の欠陥で米軍部隊や資産がますます脆弱になる恐れがある」「(Shahed-136の脅威に対する)我々の備えは不十分だった」「イランのShahed-136は低高度を飛行し防空システムを回避できる」と警告。

出典:IMA Media 演習に登場したShahed-136

米当局者は3月6日「ウクライナでShahed-136の迎撃に有効だと証明された対ドローンシステムが中東地域に送られる」と明かしていたが、これは元Google CEOのエリック・シュミット氏が設立したProject Eagle製のMerops(メロプス)と呼ばれる地上制御装置、発射機、そして敵のドローンを追跡して破壊するSurveyor Interceptor UAS=サーベイヤー迎撃ドローンで構成された対ドローンシステムだ。

Defense Newsは「中東に配備されるメロプスはドローン同士を交戦させるシステムだ。ピックアップトラックの荷台に収まるほど小型で通信が妨害された環境下でもAIを用いて敵ドローンを識別できる」「ドローンは高速ミサイルを捕捉するために調整されたレーダーシステムでは特定が困難で鳥と誤認される可能性がある」「メロプスはこれらを探知し撃墜するために設計されている」「極めて重要なのは5万ドル未満のドローンに対して数十万ドルもするミサイルを発射するよりも同システムを用いる方が安価であるという点だ」と指摘。

出典:U.S. Army photo by Sgt. Luis Garcia, 52d ADA Bde

ウクライナのディフェンスメディア=DEFENSE EXPRESSもメロプスについて昨年11月「ウクライナ軍はメロプスと呼ばれる対ドローンシステムを運用しているが、このシステムの導入経緯に関する詳細は極秘扱いとなっているため、いつからメロプスを前線で使用し始めているのかは不明だ。それでもメロプスが1,000回以上もShahed-136の迎撃に成功していると判明している。サーベイヤー迎撃ドローンの価格は1機あたり1.5万ドルで、Shahed-136よりも安価だがウクライナ製の迎撃ドローン(1,000ドル~2,500ドル)よりも非常に高価だ」と報じ、Bloombergも13日「米陸軍が1万機の迎撃ドローンを中東に送った」と報じた。

ダン・ドリスコル陸軍長官はBloombergの取材に対して「対イラン作戦開始から5日以内に対ドローンシステムのメロプスが中東に派遣された」「これは元Google CEOのエリック・シュミット氏が設立したProject Eagle製のシステムで2024年にウクライナへ送られてテストされた」「サーベイヤー迎撃ドローンは1機あたり1.4万ドル~1.5万ドルもするが、ドリスコル陸軍長官は大量発注されれば3,000ドル~5,000ドルまで値下がりする可能性がある」と、さらにトランプ大統領がウクライナ支援の必要性を疑問視する発言をしたことを踏まえて「我々は誰よりもドローンのことを知っているし、最高の迎撃ドローンを持っている」と言及。

出典:RTX Coyote Block2

Bloombergの記事は「米陸軍が1万機ものサーベイヤー迎撃ドローンを中東に送ったのか」「サーベイヤー迎撃ドローンを含む複数の迎撃ドローン(米陸軍は2029年度までにコヨーテ迎撃ドローンのBlock2/Block3を計6,700発調達予定、2025年末までにロードランナーMを500機調達)を1万機送ったのか」「それともサーベイヤー迎撃ドローンを最終的に1万機送る予定なのか」をはっきり書いておらず、これまでに登場した陸軍予算文書の中でもメロプス調達に関連した資金供給は一切ない。

ただし、2026年会計年度予算には対ドローン防衛全体に対して30億ドル以上という包括的な資金が計上されているため、この枠組みからメロプス調達に資金が供給されている可能性もあり、もしかするとサーベイヤー迎撃ドローンは本格量産が始まっているのかもしれないが、迎撃ドローンでShahed-136を効果的に迎撃するには「ドローンに特化した早期警戒ネットワークの構築」が必要で、単にウクライナと同じ迎撃ドローンを持っているだけで同じ効果を得られるわけではないので米軍のお手並み拝見と言ったところだろう。

因みにロシアはドローンによるポーランド領空への大規模侵入を2025年9月に開始し、これを受けてNATOは東部国境の安全を守るためポーランドとルーマニアへのメロプス配備を決定。 ポーランドのカミシュ副首相兼国防相も11月「米国製のメロプスが到着した」「NATO東部国境沿いに対ドローンシステムが配備されている」「米国とNATOによる今回の決定と行動を感謝(このメロプス配備は米国からNATOへの寄付という形で実現)する」と述べたことがある。

ポーランド軍参謀本部も13日「ポーランド軍はAS-3 メロプスを活用して空中の脅威に対抗する能力を構築している」「メロプスを運用するオペレーターの訓練が開始され、初訓練はリパやウストカの演習場で実施され、そこでは各種手順、部隊間の連携、実際の作戦におけるシステムの運用が検証された」「この能力の獲得は現在の武力紛争、特にウクライナや中東で行われている作戦からの経験に基づいている」「システム導入にあたっては戦場から得られた教訓、実践的な経験を持つオペレーターから提供された情報、メロプスの製造元から提供された技術的および運用上のデータのすべてが活用された」と発表。

ポーランド軍がメロプスを迎撃ドローンのコアシステムに採用して自費調達するのかどうかは不明だが、サーベイヤー迎撃ドローンの運用経験は迎撃ドローンを国産化するのに役立つはずで、ポーランドはドローン開発や製造が盛んなので迎撃ドローンを国産化してくる可能性が非常に高い。

どちらにしても迎撃ドローンの開発と導入は物凄いスピードで進んでおり、Shahedタイプの自爆型無人機には迎撃ドローンで対処して「高価な迎撃ミサイルを本来の目的に使用する」という流れが出来上がりつつある。

関連記事:再利用可能な徘徊型迎撃弾、米軍がRoadrunner-Mの調達を開始
関連記事:軍上層部が全面的に支持するレーザー兵器、脅威と直面する兵士は信頼せず
関連記事:海上での無人機迎撃、米海軍が駆逐艦にCoyoteとRoadrunnerを導入
関連記事:台湾が低コストの防空兵器開発を開始、安価な迎撃ミサイルと迎撃ドローン
関連記事:ウクライナ軍の経験と技術、欧米は戦い方を教える側から教えてもらう側に
関連記事:Shahed-136が米国や中東の防空網をすり抜ける原因、装備が最適化されていない
関連記事:米国とイランの戦争は消耗戦、どちらが先に目的を達成するかを競う戦い
関連記事:米イラン戦争、オリジナルバージョンのShahed-136が米防空網を突破
関連記事:米空軍副参謀総長、小型ドローンの登場によって航空優勢の定義を見直す
関連記事:米空軍参謀総長、制空権の常時確保を要求する軍事作戦はコスト的に無理
関連記事:適応が求められる低空の戦い、ドイツが近距離防空システムの開発を発表
関連記事:米陸軍参謀総長、我々はウクライナで学んだ教訓を受け入れて適応する
関連記事:米海兵隊副司令、黒海と紅海から得た海洋拒否に関する4つの教訓
関連記事:米軍がウクライナから学んだ重要な教訓、戦いにおける人間の重要性
関連記事:米空軍、無人機の脅威はマイクロ波兵器の開発だけでは解決しない

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. Luis Garcia, 52d ADA Bde

ウクライナ製の戦術弾道ミサイル、ロシア領内に向けた試射を準備中前のページ

ロシアがTelegramのブロックを開始、認知領域保護のため国家管理のSNS移行を強制次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    ロシアが侵攻を開始すればキエフは2日以内に陥落、犠牲者は最大5万人

    米メディアのワシントン・ポスト紙は5日、ロシア軍が第二次世界大戦後最大…

  2. 米国関連

    イタリアがKC-46A購入を中止、競争入札でA330MRTTを選択する可能性大

    KC-46AはA330MRTTと競合した全入札で敗れており、Defen…

  3. 米国関連

    年平均2,000億ドルの資金が流れ込む防衛市場、今後の成長は欧州とアジアが主導

    ウクライナ侵攻を受けて欧州やアジアの主要パートナーや同盟国は劇的な国防…

  4. 米国関連

    トランプ大統領、サウジアラビアに対してF-35やエイブラムスの売却を承認

    トランプ大統領は18日にムハンマド皇太子と会談し、ホワイトハウスは「サ…

  5. 米国関連

    米下院、日本、ドイツ、インド、韓国をファイブアイズに加える可能性を示唆する法案を審理中

    米下院に提出された法案はファイブアイズを拡張して日本、ドイツ、インド、…

コメント

  • コメント (13)

  • トラックバックは利用できません。

    • あい
    • 2026年 3月 17日

    世界では次々とドローン/対ドローン兵器が開発されているのに
    未だに国産ドローンが蒼天くらいしかない日本君さすがに心配になる

    19
      • 戦車
      • 2026年 3月 17日

      USV、UUVと無人随伴機等の大型機開発は進んでますけど、小型、中型の機体は開発があまり進んで無いですからね。

      5
      • kitty
      • 2026年 3月 17日

      はて、日本のドローン兵器開発の現状はどうだったとPerplextyに聞いたら、情報源がここだったw。

      22
    • たむごん
    • 2026年 3月 17日

    イラン戦争で、自国が当事国になったり被害を受けたことで、米軍・湾岸諸国も急速に配備が進んだのも戦訓ですね。
    他国の戦争(ウクライナ戦争)の戦訓、攻撃型無人機の脅威があったわけですが、なかなか自国にフィードバックするのは難しいのでしょう。

    日本も、引き続きドンドン予算を増やして、迎撃ドローンも大量に配備して防衛力を高めて欲しいですね。
    日本目線で見れば、日本が専守防衛を掲げているということは、紛争・戦争が発生するときに(日本ではなく)他国から先制攻撃を受ける可能性が高いという事になるからです。

    16
    • 名無し
    • 2026年 3月 17日

    遅すぎるのはひとまず置いておいて、今回の件で自爆ドローンの迎撃は容易だのドローンは大した脅威にはならないだの主張する人が絶滅する事を願います

    15
    • ろみ
    • 2026年 3月 17日

    いつから前線で使用されているかは不明とされていますが一応、ここじゃないかというタイミングはありますね
    クピャンスクでの反撃の時にルビコンやドゥームズデイといった露精鋭ドローン部隊の阻止攻撃に晒されたにも関わらず画期的な方法で無力化し攻撃を成功させた(詳細は明かせない)とDEEPSTATEと言及してた記憶があるのでその画期的な方法とやらの正体がおそらくメプロスの導入なのではないかと
    シャヘドのような航空機型ドローンへの迎撃力で注目されていますがより小型の野戦レベルで投入されるFPVドローンにも有効なのでしょう

    4
    • cosine
    • 2026年 3月 17日

    ドローンなどの端末自体だけでなく、生産・開発や作戦選択など、さらには民意・戦意の醸成・工作に至るまで、全てといってよい範囲がAIや無人化技術に裏打ちされるようになる時代。

    今は、時来たるまでにまともに戦う術はあるラインに到達できるかの「戦前」。戦士のライセンスありか不戦敗確定かが今決まっていきます。
    無論、勝者になれるのは不戦敗でない者達の中のさらに一部です。

    そして、労働力としてすら人類が必須ではなくなりゆく時代においては、これまでの日本人の感覚のような「戦って敗けるより不戦敗の方がマシ」とすら限りません。
    国家間でも国内でも、勝てなかった民に「秩序に盲従すれば生きられはする」以外にまともな権利は期待できないでしょうね。

    それは、勝者・強者にすらも余裕は無いが故に。
    大半の人類の限度以上に速くなり過ぎて、足が止まれば瞬く間に次の敗者へと転落するのですから。

    3
    • ブルーピーコック
    • 2026年 3月 17日

    次から次へと色んな会社から、様々な無人機が出てくるあたりがアメリカらしいなぁって感じ

    8
    • DW
    • 2026年 3月 17日

    ウクライナのドローンを使わないのはメイドインUSAに拘るトランプの政治的理由だろう。
    それと戦後のドローン市場をウクライナに喰われたくないだろうしな。
    日本のウクライナ製ドローン導入の話もケチ付けてきそうだ。

    5
    • あさり
    • 2026年 3月 17日

    なんかドローン周りの実地試験するために戦争吹っかけてるような気がする…

    • せい
    • 2026年 3月 17日

    日本が民間で空中用のアンチドローンを開発するって現行法で出来るのかな?
    国や一部大企業だけに任せるには、ドローン戦場の変化は早すぎる

    6
    • cosine
    • 2026年 3月 17日

    端末性能で世界一になれずとも、生産基盤では中国には及ばずとも、「実戦経験に裏打ちされる」ことをもって総合No.1に至りゆくのが米軍というものなのでしょう。
    イラン攻撃の理由の一つに「実戦テストが必要になったから」は間違いなくあるはずです。むしろ反米体制打倒どころか核ミサイル云々すらも二の次とも。

    もっとも、イスラエルの諜報に基づき予定より早くおっ始めたとされ、本記事にもある通り特に防御の配備が間に合っていなかったのでこんなんなりやがりましたが。
    代償は「米国評の失墜」。イランをいずれ屈服させたとて回復は望めず。

    ただし、こうも墜ちて戻りそうにないからには、毀誉褒貶なんぞに左右されない純然たる支配力行使への転換に邁進していくのでしょう。既にその兆候もある通りに。
    「支配者でなくなれば、全方向から圧し潰される」から。

    ドローンなどの端末も今のところ扱うのは人間。
    人間+装置どちらも高水準たることが勝利の最低必要条件である中で、我々は何処に辿り着くに至るか。

    2
    • AKI
    • 2026年 3月 18日

    徘徊型で、対象群を発見したら通報&自爆攻撃といったところでしょうかが、日本で完全自動化が許されるかな?
    FPVタイプの迎撃ドローンなら、なんとかなるでしょうが。

    1

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
PAGE TOP