米国関連

米陸軍、無人機迎撃においてAH-64Eは移動型防空プラットフォームだ

攻撃ヘリはウクライナとロシアの戦争で「想定していた役割」を果たせていないが、AH-64に対する新規導入やアップグレードといったニーズは旺盛で、米陸軍もAH-64Eが無人機迎撃に効果的だと演習で実証し、空飛ぶ移動型防空プラットフォームしての役割が期待されている。

参考:U.S. Army AH-64E Apache’s Counter-Drone Capability Rapidly Matures
参考:For Europe’s ‘drone wall,’ detecting threats is challenge number one: Officials

脅威を検出しても「それが何なのか」を識別する能力が重要で、この能力を確立しないと無人機対策は始まらない

ウクライナとロシアの戦争に投入された従来兵器の多くが「開発時に想定しない使われ方をしている」と言われており、攻撃ヘリも携帯式防空ミサイルやドローンの普及で「想定していた役割」を果たしていない格好だが、同時に「戦場の変化」は新たなニーズも生み出しているため「攻撃ヘリを廃止する」という国は皆無に近く、特にAH-64は新規導入やアップグレードといったニーズが旺盛で、各国がAH-64E V6バージョンに期待しているは「無人機を戦場空域で制御するためコアプラットフォーム能力」と「対無人機としての防空ソリューション」だ。

今回のは話は「対無人機としての防空ソリューション」に関するもので、これまで「イスラエル国防軍がAH-64を使用してヒズボラやイランの無人機を効果的に迎撃している」という評価は複数登場していたものの、外交政策研究所も先月発表した報告書の中で「米英の戦闘機はShahed型無人機を発見して迎撃するのが非常に困難で、旧型のAIM-9Mも効果的ではなかったが、イスラエル空軍だけはAIM-9Mのシーカーに変更を加えて相当な成功を収めた」「さらに米空軍のように空対空ミサイルを無闇に使用せず、F-35と地上レーダーの情報を共有しているAH-64が機関砲やロケット弾でShahed型無人機の迎撃を行った」と指摘。

イスラエルも現在「AH-64Eの新規調達(30機)」を検討中で、これは無人機の迎撃コストと守備範囲の広さを評価したものと解釈されているが、米陸軍も最近行われた実弾演習で「AH-64E V6バージョンが無人機の迎撃に効果的である」と実証し、この演習に参加したAH-64Eのパイロットも「搭載された電子光学センサー、赤外線センサー、AN/APG-78は無人機を検出するのに効果的で、地上配備型センサーだけでカバーできないギャップを埋め、AH-64Eが真の移動型防空プラットフォームとして運用できると証明した」と述べている。

出典:U.S. Army photo by Staff Sgt. Dean Johnson

この演習結果を受けて陸軍当局者も「AH-64E部隊の訓練に対無人機戦術の追加」を検討中で、War Zoneは「回転翼機は地上配備型の防空ソリューションに比べて大きな利点がある」「回転翼機は戦闘半径内なら自由に移動して対無人機シールドを構築できる」「特にAN/APG-78を搭載したAH-64Eは対無人機迎撃において魅力的な候補になるだろう」「AN/APG-78は遠く離れた目標を検出するのに向いていないものの、低空域を低速で飛行し地上クラッターに紛れる脅威の検出には優れた能力を発揮する」「さらにV6バージョンに含まれる無人機との協調能力も分散センサーとして対無人機迎撃に役立つかもしれない」と指摘した。

兎に角、Shahed型無人機が低空域を自動車並のスピードで道路に沿って飛行すると「レーダーのみで車輌なのか無人機なのかを区別するのが困難」で、これを区別するには電子光学センサーや赤外線センサーで脅威が何なのかを識別しなければならず、欧州が構築を目指すDrone Wallにおいても「Shahed型無人機を検出するためには従来とは異なるシステムが必要になる」「レーダーや音響システムに加えて受動型システムを組み合わせなければならない」「とにかく検出が最大の課題で迎撃手段はそのあとの話だ」と指摘されている。

出典:U.S. Army photo by Spc. Elijah Magaña

エストニアのペフクル国防相は「高度200m付近を低速で飛行する脅威を検出するソリューション」を産業界に求めているが、同時に「軍が24時間365日の高度な警戒態勢を維持し、部隊を国境全体に5km間隔で配置すつことは平時に望めない」「平時と戦時の対応も完全に別もので、空域を閉鎖して目に入るものを全て撃ち落とせば親子が乗ったセスナを撃墜することになるだろう」と述べ、脅威を検出しても「それが何なのか」を識別する能力が重要で、この能力を確立しないと無人機対策は始まらない。

関連記事:サウジへのF-35売却、イスラエルは国交正常化と引き換えなら容認
関連記事:トランプ政権、AH-64Eや歩兵戦闘車輌3200輌のイスラエル売却を計画中

 

※アイキャッチ画像の出典:photo courtesy from S.C. Army National Guard

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コメント

  • コメント (45)

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    • AH-X
    • 2025年 12月 01日

    一旦、無用と思われた兵器が意外なとこで役に立って用途を変えて生き残るっていうのは今まででも結構ありましたが攻撃ヘリもそうなるんでしょうか?今後が気になります。
    そう考えたら自衛隊も攻撃ヘリの完全廃止は要再考かもしれません。ただAH-64Eは高価なので費用対効果が気になりますが。

    18
      • ソロブロマイド
      • 2025年 12月 01日

      陸自のヘリ廃止はAH64D調達に大失敗してにっちもさっちもいかなくなった結果の全廃で、役に立つ立たない論はそもそも関係ないからどんなに有用でも復活はしないぬ
      またシャヘド136みたいなプロペラドローンには有効でもアメリカのERAM(Rusty DuggerとかRAACMとか)みたいなジェット推進弾薬にはヘリでは手も足も出ないので、普通にF-15にAPKWS統合するのが早いと思う。

      31
        • kitty
        • 2025年 12月 01日

        そこは、戦闘機も落とせるエアウルフみたいなジェットヘリ開発に期待。

        しかし、wiki見直してみると、エアウルフってたったの10億ドルで開発できたんですね。
        コマンチなんか中止になるまで80億ドルかかっていたのに。
        だからチャールズ・ヘンリー・モフェットは悪魔的天才と呼ばれていたのか。

        18
          • 半分の軍事費の国から
          • 2025年 12月 01日

          DEFIANT Xベースで武装してしまえば良いような‥518km以上の速度で飛べてブラックホークの2倍の航続距離で、ステルスなので、ブラックホークの置き換えに最適な気がします。エアーウルフは音速出ちゃうので別格ですが‥DEFIANT Xは、ステルス性、高速性(時速280マイル以上)、そして高度な機動性を兼ね備え、どのブラックホークよりも高速、静粛性、そして優れた生存性を実現しています。デジタルコックピット、低熱シグネチャー、そして最先端のフライ・バイ・ワイヤシステムを備えたDEFIANT Xは、紛争地帯への侵入と帰還を完璧にこなします。

          6
      • 匿名希望係
      • 2025年 12月 02日

      大型ヘリ自体が輸入しかないけど

      そもそも日本の場合ドローン上陸させんなという話し出しな・・・。
      AH-64Eとか使う量上陸させる方がだめでは?

        • せい
        • 2025年 12月 02日

        こっそり少数が侵入して原発や自衛隊基地の近くから発進なんて事もあり得る
        だから戦略的要所付近での防衛力の行使をしやすくしなきゃ駄目だし、国民もその危機感を正しく理解してか無きゃいけないね

        9
          • kitty
          • 2025年 12月 02日

          ホント、対ドローン用装備以前に、まず自衛隊施設・艦船の近くでドローンを見たらすぐに発砲して撃墜して良いくらいの法整備が先なんですよね。

          6
            • 名無し
            • 2025年 12月 02日

            迎撃時の周辺被害を考慮しないと話が進まないと思うよ

            6
    • たむごん
    • 2025年 12月 01日

    ヘリは、燃費のコストですが、リッター数十m~数百mだった記憶がありまして。

    本体・武器・パイロット養成・整備員養成に、各種ランニングコストが上乗せされるんですよね。

    安価な無人機の目的は、防御側に負荷を与える事ですから、高価な攻撃ヘリが対応するにしても目的達成してる気もするんですよね。

    13
      • せい
      • 2025年 12月 02日

      同じ高価でも、ミサイルみたいに一発で消費される物じゃないし、ドローンにMANPADSやパトリオット使うよりはマシだろうね
      燃費とか言い出したらレールガンや高出力レーザーだって電気馬鹿食いするわけだし、育てた人員はそう簡単に腐るような職種でもないしね
      守りに回る以上仕方がない

      4
    • p-tra
    • 2025年 12月 01日

    ヘリを防空資産として活用しようというのは理解できるけど、
    アパッチなり攻撃ヘリを使うのはあんまり効率的とは思えません。
    攻撃ヘリが戦えるのは精々三時間でしょう。
    本来の任務たる対地攻撃のために飛行に必要ないものを搭載している訳で
    防空の為に空域に留まれる時間は大したことない。
    攻撃ヘリの装甲が対ドローンにおいて何の役に立つの?と考えれば
    やはり最適なチョイスとは全く言えません。
    費用対効果は全く持って疑問です。
    汎用ヘリを改造した方が早いし有用でしょう。

    6
    • hogehoge
    • 2025年 12月 01日

    AH64は高価過ぎるんでまぁ繋ぎだな
    将来的にはUAVに、APKWSみたいなパッシブ小型AAMが主流になるだろう

    13
    • Easy
    • 2025年 12月 01日

    一方、ロシアはシャヘドをFPV化してヘリを体当たりで撃墜する戦術を試しているそうです。
    戦場は常にイタチごっこですよ

    23
      • Mr.R
      • 2025年 12月 02日

      ウクライナ側は偶然もあったとはいえFP-2でもヘリ撃墜に成功してるっぽいですしね、そりゃロシアも試すでしょう

      4
      • トーリスガーリン
      • 2025年 12月 02日

      どうやらシャヘドにR-60(赤外線誘導)積んでる奴が出てきたみたいですね
      どうやって照準付けるのかわからないけどもし可能なら普通に反撃されるようになってくるかもしれない
      そうなるとヘリだときつそうではある

      4
    • ため息
    • 2025年 12月 01日

    気球がいいんじゃないの
    ヘリはそりゃ無人機を撃墜出来るだろうけど運用コストが高すぎて冷えたご飯を温めるために庭にピザ焼き窯作るくらいの違和感があるわ

    4
    • nednir
    • 2025年 12月 01日

    汎用ヘリにガンポッドやセンサーを取り付ければ同じことはできそうですが、乗員の立場からすると攻撃ヘリくらいの装甲は欲しいと思いそう。シャヘドが無防備のままとは限らなくて、思わぬ反撃されたときに生き残れる確率が全然変わってきますもんね……。

    米軍はどこで運用することを想定してるのかは気になります。イスラエルみたいな狭い国ではないですし、もちろん本土防衛を想定なんてしてないはずですが、他のどこなんだろかと。

    4
      • バーナーキング
      • 2025年 12月 02日

      いや目標が「短くしたMANPADS」的なAAM撃ってきたとして汎用ヘリと並の攻撃ヘリでそこまで差が出ますかね。
      アパッチクラスなら乗員の生存性は多少マシ、とかその程度では…

      8
    • Kaeru
    • 2025年 12月 01日

    素人考えだけど、スーパーツカノみたいな低速COIN機ベースで作るんじゃだめなんかな
    燃費はヘリよりいいだろうし

    16
      • 通りすがり
      • 2025年 12月 01日

      結局のところ無人機迎撃用に安価な代替機を採用しても攻撃ヘリを全廃するわけにはいかないから両方維持しなければならず、それなら役不足は承知でAH-64に無人機迎撃も兼任させて使いまわすのが総合的には最も安価で簡単なんだと思う。

      25
    • かず
    • 2025年 12月 01日

    ドローン相手ならもうちょっと安いプラットホームが欲しい、AH-64Eみたいな高価な兵器を使うのは贅沢を通り越して無駄遣いの雰囲気がある

    13
      • レプタリアン
      • 2025年 12月 01日

      やはりレシプロ戦闘機…
      ドローン相手にはレシプロエンジンの戦闘機がいいと思う
      本邦に導入する場合は、塗装は伝統の濃緑色に日の丸でお願いしたい

      10
      • 匿名希望係
      • 2025年 12月 02日

      米陸軍の選択肢としては安価

      正直91式というか93式そろえた方が安くすみそう。

      4
      • Easy
      • 2025年 12月 02日

      これはすでにアパッチ持ってて持て余している国向けの話で。
      これからこの任務のために高価な攻撃ヘリを準備するのはさすがに敗退行為でしょうね。
      ヘリの任務は完全にドローンが上位互換になってしまってますから。

      10
    • のー
    • 2025年 12月 01日

    素人の発想ですが、
    道路沿いに飛ぶドローンが問題なら、道路を遮断するように防護ネット貼っただめですかね?
    全ての道路沿いに機関砲を配備するより、だいぶ安上がりで済みそうですが。
    下の方に車両の通る穴だけ開けておく。
    背の高い車両が引っかかりそうですが、有事だから仕方ないで済ませる。

      • ため息
      • 2025年 12月 01日

      道路沿いに飛ぶのは道路が地文航法の物標として利用しやすいからでネットに引っかかる距離を飛行しているわけではないと思う

      8
        • のー
        • 2025年 12月 01日

        車と誤認識させるために、道路上を飛ぶのかと思ってましたが。
        違うんですかね。

        3
      • バーナーキング
      • 2025年 12月 02日

      地上2mを60km/hで飛ぶUAV作るのそれほど苦労するとは思えないので防衛側に生活負荷掛かるだけじゃないですかね。

      1
      • Easy
      • 2025年 12月 02日

      可能と言えば可能ですが。
      航空で言えば地上高50メートルは十分過ぎるほど低空ですが。
      逆に建築物で50メートルの高さってかなりのもんですよ。
      10数階建てのマンションと同じ高さです。
      自立する50メートル級の柱を建てるのはかなりの難易度ですし。
      ドローンが当たって倒れたらそれはそれで周囲に甚大な被害です。
      また、そんなのを建てたらドローン側はじゃあ60メートル、70メートル,80メートルと高度を上げてくることになり。
      結局はコスパで負けると思いますね。

      6
    • YF
    • 2025年 12月 01日

    攻撃ヘリ全廃方針の自衛隊でも攻撃ヘリの部品調達は継続するみたいなので、この辺今の戦場において何が有効か試行錯誤の状態なんでしょうね。
    現状ドローン優位な状況ですが今後対ドローン技術が向上していくとある程度優位性も収束していくと思うので、現状の兵器の見極めが難しいですよね。

    5
    • 通りすがれ
    • 2025年 12月 01日

    その用途なら現代の技術で開発したレシプロ戦闘機でいいのでは…?
    純粋にどんな戦闘機がいくらくらいで作れるのか興味ありますし

    3
      • nednir
      • 2025年 12月 01日

      レシプロではなくターボプロップにはなりますがピラタス PC-21 とかカッコいいです。

      3
      • バーナーキング
      • 2025年 12月 02日

      同じくターボプロップになりますがその用途ならスーパーツカノ系が手堅いかと。
      戦闘機、といっても同格の機体と格闘戦する訳じゃないでしょうし。

      4
        • 匿名希望係
        • 2025年 12月 02日

        初級訓練に使う予定のT-6の武装版のAT-6でよくないですかねー?

        4
          • バーナーキング
          • 2025年 12月 02日

          日本についての話なら運用インフラ共用できますから当然選択肢に入るでしょうね。
          「その手の既開発品が手堅い」という話でスーパーツカノを特別視してる訳じゃありませんよ。

          2
    • 名無し
    • 2025年 12月 01日

    T-7後継機に機銃つけて多めに調達した方が費用的にも迎撃効率的にも良さそう

    1
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2025年 12月 01日

    ヘリ単体で防空をするとは思わないけど、ヘリに対してドローンで飽和的に攻撃されたら大損害になりかねないのでは

    2
    • 名無し
    • 2025年 12月 01日

    わーくにの軍事ブロガーの主張だと「低速な自爆型無人機は低速だから迎撃が容易」の一点張りだけど海外ディフェンスメディアや米国の情報だと「低速ゆえにその特性から迎撃困難」って話が出てくるから混乱するのよね
    まあ信憑性は日本の軍事ブロガーより国外の情報源の方が高いと思ってるけど

    11
      • NIVEA万能論
      • 2025年 12月 02日

      それは「低速だから発見すれば迎撃は容易」と「低速ゆえにレーダー上では鳥や車両と見分けがつかず発見が困難」であって着眼点が違うだけでは?

      8
        • kitty
        • 2025年 12月 02日

        仮想戦記物で、An-2が自動車と区別が付かないから特殊部隊の潜入に使われるってのがよく出てきますな。

        2
    • m
    • 2025年 12月 02日

    戦闘ヘリを防空用途に使うなら生存性を高めるためにステルス性が求められそうな気がする…コマンチ復活クルー?

      • kitty
      • 2025年 12月 02日

      ビンラディン暗殺の時に故障したヘリを徹底的に爆破処理してましたけど、ナイトストーカーあたりでは、公表されていないだけで、ステルス仕様のヘリは既に運用しているのでは。

      1
        • nednir
        • 2025年 12月 02日

        可能性として有るとは思いますが、対ドローンみたいに出動回数が増えがちで迎撃側なので毎回の事前計画も十分にできず、目撃されやすい任務には出さないでしょうね。

        3
      • 名無し
      • 2025年 12月 02日

      ヘリのステルス化は費用対効果があまりにも悪すぎると思いますね
      MANPADSを撃つ歩兵は遮蔽物に隠れながらヘリを目視して撃ってるわけで、赤外線シーカーの追尾にステルス性は関係ない
      その上中東、ウクライナロシアでも防空システムや弾道ミサイルのランチャーは巧みに隠匿、移動して生存性が高いので戦場から駆逐できてませんし
      ステルス性をもたせたところで、敵の防空システムや歩兵の配置を完全に把握していなければ気付かずに近付き過ぎてあっさり撃墜される事になると思いますよ

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