米国関連

馬鹿げた方法を止めたM1E3の開発は順調、米陸軍がプロトタイプを公開

米陸軍のジョージ参謀総長は「馬鹿げた方法でM1E3を開発するな」と指示して開発期間を半分以下に圧縮、2025年末までM1E3のプロトタイプが登場すると予告していたが、陸軍は7日「M1E3の初期プロトタイプの第一号が完成した。テストは2026年初頭に開始予定だ」と発表した。

参考:U.S. Army – Speed to Delivery
参考:Our First Glimpse At The M1E3 Abrams Next-Gen Tank Demonstrator

全体的にM1E3のデザインは2022年に発表されたAbramsXと大きく異なっている可能性が大

米陸軍はM1Abrams、M2Bradley、M113の後継車輌、歩兵旅団戦闘団向けの火力支援車輌、地上無人車輌を対象にしたNext Generation Combat Vehicle構想を推進し、Abramsの正統な後継車輌の開発が本格するのは2020年代後半、量産車両が登場するのは2030年代と予想されていたため、それまでの繋ぎとしてSEPv4開発を予定していたものの、ノーマン准将は2023年9月「将来の戦場は戦車に新たな課題を突きつけている。Abramsは重量を増やすことなく能力を強化するのが難しく、ウクライナでの戦争は兵士の包括的な保護の必要性も浮き彫りにした」と述べ、SEPv4の開発を中止してM1E3の開発を発表した。

出典:U.S. Army Photo by 1st Sgt. Luisito Brooks

これまでのAbramsに対するアップグレードは重量増=機動性の低下と兵站の負担増で成立しており、54トンだった初期重量はSEPv3で66.8トンに到達、GDLSはSEPv4について「新技術の追加はAbramsの重量をさらに押し上げるだろう」と言及していたが、ウクライナ戦争の教訓は「戦車の保護能力」に疑問を投げかけ、M1E3の「E」という名称は「簡易な修正よりも重要な技術的変更」を、これまでのような「能力の継ぎ足し」ではなく「抜本的な改良」を意味するが、SEPv4の開発を中止に追い込んだ最大の要因は徘徊型弾薬やFPVドローンの脅威に対応できないためだ。

ノーマン准将も「Abramsが最も効果を発揮する戦術は機動し続けることで、そのための機動力と火力を備えているが、静止状態ではあらゆる脅威に対して脆弱になる。FPVドローンなどの上の脅威に対してAbramsの装甲は薄すぎる。M1E3では直接攻撃を受ける前面、側面、背面、地雷や即席爆発装置の影響を受ける車体下に加え、トップアタック攻撃を受ける上面の保護能力の強化に取り組んでいる。このトップアタック・プロテクションにはアクティブ防護システム(APS)が含まれる」と述べ、M1E3はトランプ政権が推し進める陸軍改革の中でも「開発を加速させるべき」という評価を確保している。

出典:Минобороны России

さらにDefense Newsの取材に応じたジョージ大将も「2023年9月21日に陸軍参謀総長へ就任した直後『M1E3の初号機生産までに65ヶ月間かかる』と告げられ、開発チームに『馬鹿げた方法で開発するのを止めろ』『必要なら現実的なリスクを受け入れろ』『異なる目的のため作られたポリシーや規制に縛られるな』『法的、道徳的に許容可能な全てのものを利用し、リスクを0にするためのあらゆるリスクを管理しようとするな』『なぜならリスクは常に存在するからだ』と指示して多くの自由裁量権を与えた」と明かし、開発期間を半分以下に圧縮した。

開発を担当するGeneral Dynamicsも2025年10月「今後12ヶ月以内にM1E3のプロトタイプを実戦部隊に配備する」「これを実際に使用する兵士に触れてもらいM1E3の良いとこや駄目なところに関して率直な意見をもらう」「それから直ぐにM1E3の提供を開始する」「これは10年後の話ではなく2年~3年以内を予定している」「この開発スピードはモジュール性、オープンアーキテクチャ、デジタルエンジニアリングのお陰で、商用向けに実用化されている技術やコンポーネントの流用も重要な役割を果たした」と言及。

出典:U.S. Army photo by Sgt. David Resnick

地上戦闘システムの開発責任者を務めるハウエル大佐も「もう実戦部隊からのフィードバックに3年も4年も時間を掛けない。時間内に得られたフィードバックのみを反映した改良バージョンを2027年に配備できるようにする。我々が最も避けたいのは実験部隊のみでテストを行い、実戦部隊の戦車兵が初めてM1E3が見た時、もうどんな修正も不可能な完成バージョンにならないことだ。従来のアプローチで実戦部隊からのフィードバックを戦車に反映するのは6年後だった」と述べ、GDはM1E3のプロトタイプを昨年末に陸軍に引き渡した。

ジョージ大将も「誰もが製造には6~7年かかると言っていたが、既に最初のプロトタイプが完成している」と述べ、陸軍も7日「次世代の戦場に革命を起こすべく設計された最先端のテクノロジー・デモンストレーター、M1E3の初期プロトタイプの第一号が完成した。Roushによって製造され、これまでのリスク低減活動から得られた教訓を反映させたこのプロトタイプはスピード、機動力、そして兵士中心の解決策に対する米陸軍の決意を体現するものだ。テストは2026年初頭に開始予定だ」と発表。

陸軍はM1E3の主要な特徴について「高度なソフトウェア統合」「強化された機動力」「比類なき攻撃力」を挙げており、War Zoneは公開されたM1E3の写真について「1枚は戦車正面からの部分的なカット、もう1枚も同じく前方部分を捉えているように見えるが、側面から前方に向けた角度で撮影されている。2枚とも砲塔を後ろに向けた状態の車体後部を写している可能性も考えられるが、まだ全体像が分からないので何とも言えない。砲塔の外観を見る限りAbramsと共通する部分もあるが、全体の車高はわずかに低くなっているかもしれない。主砲の付け根部分には従来のAbramsには見られないセンサー用の窓がある」と指摘。

さらに「車体構造に目を向けると既存のAbramsとは大幅に異なっているように見え、2つの特徴的なハッチが確認できる。また分散型視認システムに関連するものと思われるカメラ、新しいLEDライトも見て取れる。これまでのAbramsは車体前方に操縦手用のハッチが1つあるのみで、残りの乗員3名は砲塔内に搭乗する構成だった。全体的にM1E3のデザインは2022年に発表されたAbramsXと大きく異なっており、これはM1E3がAbramsXと異なるコンセプトで開発されていることを示唆している」と述べている。

出典:Abovfold/CC BY 4.0

まだM1E3のデザインや能力は不明な部分だらけだが、現時点で判明しているのは重量を60トン程度まで削減すること、ガスタービンエンジンをハイブリッド推進システムに変更して燃費を大幅に改善(ガスタービンエンジンに比べて約40%向上)すること、徘徊型弾薬やFPVドローンの攻撃に対応したアクティブ防護システムを搭載すること、自動装填装置が採用して乗員を減らすことで、武装に徘徊型弾薬が追加される可能性も噂されている。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army – Speed to Delivery

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コメント

  • コメント (20)

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    • kitty
    • 2026年 1月 07日

    さすがにガスタービンエンジンは放棄したかw。
    まあシリーズハイブリッドの発電用ならまだしも、瞬間加速の性能だけでどうにかなる戦場環境じゃなくなったものなあ。

    わーくにもそろそろ次世代戦車の話を聞きたい。

    11
      • のー
      • 2026年 1月 07日

      もともとM1がガスタービンエンジンを採用したのは、当時の米国では高性能なディーゼルエンジンを作れなかったのが理由ですから。
      やっと世界水準に追いついたと言ったところでしょうか。
      でも自動装填装置までつけて、ほとんど別物です。
      M2戦車に改名しても良さそうですね。

      14
        • バーナーキング
        • 2026年 1月 07日

        MBTとIFVが両方M2に…

        12
          • さだを
          • 2026年 1月 08日

          「M2(ブラッドレー)の隣のM2(戦車)のM2(機関銃)を整備しといて」

          みたいな会話に…

          21
      • inaba
      • 2026年 1月 07日

      たしかドローン対策の改修をするとか言ってなかったでしょうか。

      2
        • 無印
        • 2026年 1月 07日

        10式戦車能力向上型は30mmRWSとAPSの組み合わせで、ドローン対策をやるみたいなのはぼやっと見えてはいますね
        期待はしているんですが、3人乗りの10式で、RWSは誰が操作するんだろうとちょっと気になってます

        「遊弋型UAV対処機材」の知見は戦車以外にも、16式MCVや24式、AMVXPにも広げて欲しいなぁ

        12
          • kitty
          • 2026年 1月 08日

          ミサイルやRPG弾頭ももちろんですが、ドローン対策ももう人力でどうにかなる時間感覚で無いのだから、AIで対応する陸上版ミニイージスシステムとかになっていくような。

          7
      • イーロンマスク
      • 2026年 1月 07日

      ガスタービンエンジンは燃費が悪い以外にも排熱の大きさも問題な気がする
      現代戦は発見されると生存率が下がるし、戦車の運用も攻勢というか防御向きだろうしな

      5
        • kitty
        • 2026年 1月 08日

        エンジンはキャタピラー社が受注したそうです。
        だけど、キャタピラー社ってエンジンを今、国内で作ってるのかなあ。

    • たむごん
    • 2026年 1月 07日

    エイブラムスは、あまりにも燃費が悪かったですからね。

    ウクライナ戦争の戦訓で、重量の重さ・整備の難しさ・自爆ドローンへの防御力などの問題点がでただなと。

    M1E3にケージはつけられていないわけですが、ロシア=ウクライナのように、戦車表面の改造をしていくのか演習・テストどのように使われるのかも気になりますね。

    14
    • inaba
    • 2026年 1月 07日

    やっぱり陸の王者は戦車ですね。

    12
    • ゴードン
    • 2026年 1月 07日

    ガスタービンエンジンを採用した理由は航空燃料との共通化を行うことで兵站の効率化を云々と説明されることが多かったがやっぱ無理あったか

    3
    • cosine
    • 2026年 1月 07日

    来月末に発売予定の大○略にはエイブラムスXなる戦車があるようですが、それがコイツなんですかね?()

    1
      • T.T
      • 2026年 1月 07日

      違いますです。
      M1A2SEPv4やM1E3は次世代戦車までのつなぎの車両
      エイブラムスXは次世代戦車のコンセプトモデル

      7
    • ブルーピーコック
    • 2026年 1月 07日

    ついに自動装填装置を付けるのか、従来通り人間讃歌するのか。はたまた付けるけど従来通り4人で行くのか。個人的にはそこが気になる。

    12
    • 朴秀
    • 2026年 1月 07日

    軽量化
    自動装填装置

    ロシア戦車かな

    15
    • Ard
    • 2026年 1月 07日

    こういうワクワクする話題だけよこしやがれくださいトランプちゃんよぉ

    18
    • 2026年 1月 07日

    民主国家の官僚的になりがちな軍隊のあれこれの中では結構異質なこと。まぁ変更前はそれそのものだったのだが。他の国家と比べるとシビリアンコントロールは守っていても軍が強い国家だからだろうか。トランプ政権下ではシビリアンコントロールというか、トランプコントロールに侵食されてる感じもするがそれにしたって素早く動かないといけない局面で動ける組織としての土台そのものに感心する。

    8
    • potita
    • 2026年 1月 08日

    車体にも砲塔にも外部の視察装置が見当たらないので、センサーを用いた革新的な戦車を目指していそうですね。
    車体上部が嵩上げされたのは、乗員のスペースの確保、装甲強化(従来エイブラムスでは厚さ数十ミリの鋼鉄のみで脆弱な部分)のためでしょうね。
    砲塔は僅かに高さが減っていそうですが、形をエイブラムスに合わせている理由はよくわからないですね(コスト削減?従来車両との区別をできなくするため?)

    1
    • コロ
    • 2026年 1月 09日

    そろそろ、新しい戦車にしたほうが良いんじゃ?
    次の戦車の名前は湾岸戦争のシュワルツコフ将軍かなと思うけど、
    知ってる世代が生きてる内は無理かな?

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