米国関連

まもなく開幕する米陸軍のM777後継選定、7月までに自走砲調達契約を締結

米陸軍が進めている新型自走砲=M777の後継調達には産業界が注目しており、Breaking Defenseは3日「陸軍は7月までに自走砲調達契約を締結することを目指している」と報じ、米国、英国、韓国、ドイツ、イタリア、フランス、イスラエルで争われる競争入札がまもなく開幕する。

参考:Army seeks to award self-propelled howitzer contract by July, prototype request coming soon

新型自走砲はM109A7の更新ではなくM777を更新するためのものだが、装軌バージョンになるか装輪バージョンになるかで展開が変わってくる

米陸軍は大砲の射程拡張を目的にしたExtended Range Cannon Artillery=ERCAプログラムを立ち上げ、M109A7の車体、58口径155mm榴弾砲搭載の新型砲塔、射程延長弾の組み合わせで70km超の射程確保を狙っていたが、2025年度予算案の中で「ERCAの取り組みを停止した」と明かし、調達や兵站を担当するブッシュ陸軍次官補も「ERCAの試みは量産に移行できるほどの成果が得られなかったが、戦術射撃の徹底的な研究において射程を拡張したプラットホームの必要性が再確認されている」「そのため開発済みのプラットホームや弾薬に関する情報提供依頼書(RFI)をまもなく発行する」と言及。

出典:Photo by Lance Cpl. Katherine Cottingham

これまでの経緯や発言などをまとめると「自走砲の射程拡張に関する取り組みは継続するものの『M109A7の車体と58口径155mm榴弾砲の組み合わせ』は放棄する」「新型自走砲は市場で入手できるものベースにする」「米国内での生産、米軍規格への対応、持続的な戦闘能力の保証、物流への負担とコストを削減する対策などが採用条件に含まれる」「機動性はHIMARS並み/防御力はM109A7並み」「制圧射撃の最大射程は58km」「精密射撃の最大射程は70km」「最小射程は4km」「最低でも3発以上のエクスカリバー砲弾を格納できること」「射撃速度は最低でも無誘導弾は分6発/誘導弾は分3発」となる。

Breaking Defenseは3日「陸軍は待望の自走砲調達契約を7月までに締結することを目指している。提案依頼書の発行から僅か10ヶ月後に契約を締結するというのは、調達改革のスピード重視が反映された動きだ。陸軍は2月下旬までにプロトタイプ提案のためのドラフトを、3月に最終案を公開する計画だ。この競争入札に参加する企業は発表されていないものの、入札参加を表明している企業は韓国のHanwha、ドイツのRheinmetall、米国に拠点を置くElbit America、同じくLeonardo DRSとKNDS Franceのコンソーシアムだ。General DynamicsやBAE Systemsも潜在的な競争者と見られている」と報じた。

HanwhaはK9を、Elbit AmericaはSIGMAを、Leonardo DRSとKNDS FranceのコンソーシアムはCAESARを提案する見込みで、Rheinmetallが何を提案するのかは不明だが、KNDS Deutschlandが昨年のAUSAでRCH155の装軌バージョン=RCH155-TRACKEDを発表しているため、RheinmetallはKNDS Deutschlandと組む可能性があり、General DynamicsはM109A7ベースの改良型を、BAE SystemsはArcherを提案するのではないかと噂されている。

但し、HanwhaはK9の装輪バージョン=K9A2MHなども発表しており、誰が何を提案するのかは蓋を開けてみるまで分からないが、米陸軍は昨年12月「新型自走砲の取得はM777を置き換えるためのもの」「まずはストライカー旅団戦闘団のM777を置き換え、機甲旅団および歩兵旅団戦闘団へと展開される」と説明しているため、新型自走砲はM109A7の更新ではなく牽引式のM777を更新するためのものだ。

出典:U.S. Army Reserve photo by 1st Sgt. Michel Sauret

米陸軍はM777の後継に自走砲を要求しているため「機動性と発射速度に劣る牽引式は今後の戦場で生き残ることが難しい」と示唆している格好で、装軌バージョンになるか装輪バージョンになるかは不明だが、もし装軌バージョンが採用されると「M109A7の後継にも」という話になってくるかもしれない。

今のところ新型自走砲でM109A7を更新するとは明言されておらず、M777の後継に装輪バージョンが採用されれば「M109A7の後継」は再度選定が行われるだろう。

追記:制圧射撃の最大射程58km、精密射撃の最大射程70kmという要求値はラムジェット弾などの射程延長弾を使用したもので、これを通常弾で達成するという意味ではない。

関連記事:米陸軍、次期自走砲にM109A7並みの防御力とHIMARS並みの機動力を要求
関連記事:米陸軍の次期自走砲、LeonardoがCAESAR提案のためKNDSとの提携を発表
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関連記事:米陸軍がERCA開発を中止、市場で入手可能な自走砲導入に方針を転換

 

※アイキャッチ画像の出典:Hanwha Aerospace

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コメント

  • コメント (19)

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    • MK
    • 2026年 2月 04日

    しかし長射程弾に対する拘りはなんなのでしょう。安価で大量調達出来る事が榴弾砲弾のメリットなのは昔から変わらないのに、さんざんコスト面で失敗して砲以外の安価な代替兵器がどんどん出てきても、諦めきれない魅力がわかりません、ズムウォルトとかもそれで終わったのに。上で出てるラムジェット弾なんて同射程の誘導ロケットと価格変わらんのでは。

    4
      • 幽霊
      • 2026年 2月 04日

      別に全ての砲弾を高価な長射程弾に置き換えるわけではないでしょう
      例えば数で圧倒するなら従来型の砲弾を使うとか、確実に破壊したい高付加価値目標などを攻撃したい時は長射程弾や誘導弾を使用するとか選択肢を増やすのは当然では?

      14
      • 中村
      • 2026年 2月 04日

       対砲兵戦にFPVドローンが投入される事を考えると前線15km以内には居られない訳で、その分を射程延伸しないと使い様が有りませんからね。

       まあ、終末誘導可能な弾が出来た以上は低価格巡航ミサイルに適用されたら逃げようが無い訳ですけど。

      • SB
      • 2026年 2月 04日

      そりゃまあ遠くから撃てれば撃てるほど有利ですからね

      射程が伸びれば前線だけでなく敵の後方も叩けるし、後方に陣取れば補給も楽だし、射程が長いと地形を利用した遮蔽も使いやすくなるし、分散配置も出来て戦術の自由度が上がる

      それにいくら高いと言ってもエクスカリバーで1000万円程度なのでミサイルよりは遥かに安く、ドローンよりもずっと強力です

      3
    • 58式素人
    • 2026年 2月 04日

    1月25日付けの他所の記事で。
    BAEがM2ブラッドレー系列の車台にM109A6の砲塔(転用?)を載せ、
    油圧駆動を電動駆動に置き換え、装填機械化を増し、射撃制御デジタルシステム
    の大幅な更新をしたものを受注した、とあります。砲身長は39のままとか。
    新しい装軌式のものはM2の車台を使うのかな?。

    2
      • 他人事では無い
      • 2026年 2月 04日

      M109A7がM2の部品を使って近代化改修した物だから、その話では?
      M109にRCH155の砲塔を載せれば良いのに

      2
    • 無印
    • 2026年 2月 04日

    牽引砲は無くならないでしょうけど、もうニッチでしか残らないのでしょうか
    それともこんな贅沢が出来るアメリカだけの話なのか…

    1
      • ミリ飯食べたい
      • 2026年 2月 04日

      山岳旅団みたいな特殊な立ち位置の兵種向けには残るのではと思います。

      5
        • kitty
        • 2026年 2月 05日

        海兵隊も使い続けるのでは。
        日本の第一空挺師団は、重迫までですけど…。

    • Mr.R
    • 2026年 2月 04日

    ウクライナ戦争では双方共に自走砲の損失が牽引砲の2倍近くになっているんですが、アメリカ軍が自走砲に振り替えるのはそれでも自走砲の砲が良いと何かしらの結論が出たんでしょうかね

    1
      • Mr.R
      • 2026年 2月 04日

      関係ないけどワイ将月曜にインフル診断されたんやが、水曜の今も39度近い熱があるんよな···
      インフルってこんなに熱続いたっけ

      1
        • 半分の軍事費の国から
        • 2026年 2月 05日

        心配ならば、食品ですけど、タマネギの皮とかニーム(インドセンダン)等を試されては?ネットで買えますし。

          • Mr.R
          • 2026年 2月 05日

          解決しました。木曜の朝になったら解熱してました。

    • たむごん
    • 2026年 2月 04日

    ウクライナ戦争の戦訓は、自走砲が生存性で優秀という話しもありますが、自走砲のメンテナンス問題も見かけるわけで。

    どういった戦場を想定するのかにもよりますが、砲数・砲身の生産性・整備しやすさ、弾薬生産といったロジスティクスも重要なのでしょうね。

    • NIVEA万能論
    • 2026年 2月 04日

    ウクライナ戦争初期にゲームチェンジャーとして持て囃されたM777も供与数の半数以上が失われ、機動力の欠如が指摘された経緯から米軍は牽引砲に見切りをつけたという事なのでしょうね。
    しかし機動力も防御力もと全てを求めればまたお高くなりそうですが。

    7
    • リンゴ
    • 2026年 2月 04日

    >「機動性と発射速度に劣る牽引式は今後の戦場で生き残ることが難しい」
    ぶっちゃけドローンのあの早さと奇襲性を見る限り、誤差でしかないような……

    3
      • ネコ歩き
      • 2026年 2月 04日

      例えば対ドローンRWSシステムを標準装備にするとか、自走砲ならやり易いですよね。
      お値段もそれなりになりますが。

      5
        • リンゴ
        • 2026年 2月 05日

        確かに……
        拡張性、という面で自走砲を選んだのかもしれない

        2
    • ユーロビート大好き
    • 2026年 2月 04日

    IFVや他の車両のように、要求が極端に高すぎてまた決まらないか、決まってもひっくり返されるのでは…

    1

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