米国防総省はPAC-3 MSE、THAADミサイル、トマホーク、AMRAAM、SM-3 Block IB/Block IIA、SM-6の生産能力を最大4倍に増強すると発表したが、25日にTHAADミサイルのシーカー生産量を4倍に増やすための枠組み合意、PrSMの生産を加速させる新たな枠組み合意を発表した。
参考:Department of War Secures Agreement on THAAD Seeker Production, Quadrupling Output to Bolster America’s Missile Defense
参考:Department of War and Honeywell Aerospace Forge Agreement to Surge Production of Critical Munitions Technology
参考:Department of War and Lockheed Martin to Accelerate PrSM Deliveries, Putting Production on a Wartime Footing
参考:Pentagon, Lockheed sign plan to boost PrSM missile production
参考:Pentagon announces major surge in missile production
参考:Department of Defense Fiscal Year (FY) 2026 Budget Estimates Army
参考:Department of Defense Fiscal Year (FY) 2026 Budget Estimates Missile Defense Agency
参考:Department of Defense Fiscal Year (FY) 2026 Budget Estimates Navy
参考:Department of Defense Fiscal Year (FY) 2025 Budget Estimates Navy
参考:Department of Defense Fiscal Year (FY) 2024 Budget Estimates Navy
参考:Department of Defense Fiscal Year (FY) 2026 Budget Estimates Air Force
PAC-3 MSEとSM-6以外は十分な購入資金がないので生産能力を持て余している
Lockheed Martinは1月6日「PAC-3 MSEの生産と納入を加速するため国防総省と画期的な枠組み協定を締結した」「7年間の契約で年間生産能力を約600発から2,000発に増強する」と、1月29日「国防総省とTHAADミサイルの年間生産能力を4倍に強化する枠組みで合意した」「THAADミサイルの生産量は今後7年間で年96発から年400発に増加する」と発表。
| 国防総省のFY2026予算説明資料の中で言及されたPAC-3 MSEの調達数 | |||
| 調達数 | FY2024 | FY2025 | FY2026 |
| PAC-3 MSE | 230 | 214 | 233+96 |
| FY2026の通常予算で調達するPAC-3 MSEの数は233発、議会が許可した特別予算から調達するPAC-3 MSEの数は96発、米陸軍が調達するPAC-3 MSEの推定単価は387万ドル | |||
| 国防総省のFY2026予算説明資料の中で言及されたTHAADミサイルの調達数 | |||
| 調達数 | FY2024 | FY2025 | FY2026 |
| THAAD | 11 | 12 | 25+12 |
| FY2026の通常予算で調達するTHAADの数は25発、議会が許可した特別予算から調達するTHAADの数は12発、米陸軍が調達するTHAADの推定単価は1,240万ドル | |||
RTXも2月4日「Raytheonと国防総省が5つの画期的な枠組みで合意した」「トマホーク、AMRAAM、SM-3 Block IB、SM-3 Block IIA、SM-6の生産能力を大幅に増強して納入を加速させる」と発表。
RTXが国防総省と合意した枠組みはPAC-3MSEやTHAADミサイルと同じ「7年間の枠組み」で、RTXは5種類のミサイルの現生産能力には触れず「トマホークは年1,000発以上、AMRAAMは年1,900発以上、SM-6は年500発以上まで生産能力が増強される」「SM-3 Block IBの生産を加速させる」「SM-3 Block IIAの生産を増強する」「現在と比べて2~4倍になる見込み」と説明し、SM-3 Block IIAの生産を2~4倍に増強するには日本が生産を担当しているノーズコーン、第三段ロケットモーター、上下分離部、第二段ロケットモーター、第二段操舵部の供給量を増強しなければならない。
| 国防総省のFY2026予算説明資料の中で言及されたTomahawk Block Vaの調達数 | |||
| 調達数 | FY2024 | FY2025 | FY2026 |
| Block Va | 0 | 0 | 55+2 |
| FY2026の通常予算で調達するTomahawk Block Vの数は55発、議会が許可した特別予算から調達するTomahawk Block Vの数は2発、米海軍が調達するTomahawk Block V(MK.14キャニスターや関連費用を除く)の推定単価は249万ドル。新造のBlock Vb発注は0。生産ラインを維持するための最低生産率は60発~90発。 | |||
| 国防総省のFY2026予算説明資料の中で言及されたTomahawk Block IVからBlock Va/Vbへ改修数 | |||
| 調達数 | FY2024 | FY2025 | FY2026 |
| Block Va | 274 | 252 | 237 |
| Block Vb | 0 | 0 | 23 |
| Tomahawk Block IVからBlock Va/Vbへ改修は中間寿命再認証とアップグレードの同時実施。FY2026に米海軍が調達するTomahawk Block IVからBlock Vaの推定改修単価は63万ドル、Block Vbの推定改修単価は84万ドル | |||
| 国防総省のFY2026予算説明資料の中で言及されたAMRAAMの調達数 | |||
| 調達数 | FY2024 | FY2025 | FY2026 |
| AMRAAM | 757 | 471 | 277+308 |
| AMRAAMの調達数は米海軍と米空軍の合計数。FY2026の通常予算で調達するAMRAAMの数は277発、議会が許可した特別予算から調達するAMRAAMの数は308発、米海軍が調達するAMRAAMの推定単価は137.1万ドル。米空軍が調達するAMRAAMの推定単価は137.7万ドル。2024年時点でのAMRAAMの年間生産能力は1,200発。 | |||
| 国防総省のFY2026予算説明資料の中で言及されたSM-3 Block IB/Block IIAの調達数 | |||
| 調達数 | FY2024 | FY2025 | FY2026 |
| Block IB | 36+9 | 6 | 23 |
| Block IIA | 12 | 12 | 12 |
| バイデン政権はBlock IBの生産をFY2024の36発で終了し、Block IIAに完全移行する予定だったが、中東作戦での消耗(約80発超)を受けてFY2024で9発とFY2024で6発の緊急調達を実施。トランプ政権はBlock IBの生産継続を決定してFY2024で23発発注。Block IIAは毎年12発を発注。Block IIAの生産能力は月2発。FY2026からBlock IIAの生産能力向上(月2発→月3発)に投資を開始。Block IBの推定単価はFY2025=1,800万ドル、FY2026=1,100万ドル、Block IIAの推定単価はFY2025=2,800万ドル、FY2026=3,700万ドル。 | |||
| FY2025大統領予算要求書の中で言及されたSM-6 Block IA/Block IBの調達数 | ||||||
| 調達数 | FY2023 | FY2024 | FY2025 | FY2026 | FY2027 | FY2028 |
| Block IA | 125 | 125 | 125 | 155 | 200 | 300 |
| Block IB | 10 | |||||
| FY2024大統領予算要求書の中でSM-6 Block IAの複数年調達(FY2024~FY2028)が承認され、5年間の最大調達数は825発と言及。FY2025大統領予算要求書の中で5年間の最大調達数は905発と言及。SM-6 Block Iの生産は2023年に終了。技術的問題でSM-6 Block IBの初年度調達(10発)はFY2024からFY2026に延期。FY2026までにSM-6 Block IAの生産能力を年間200発まで引き上げる予定。 | ||||||
共同通信は20日「日米両首脳はミサイル防衛協力の一環としてSM-3 Block IIAの生産を4倍に拡大する方針で合意した」と報じ、ホワイトハウスのプレスリリースにも「ミサイル防衛協力の支援として、両国は日本におけるSM-3 Block IIAの生産を急速に4倍に増加させる」と明記しているが、これはRTXが2月に発表したSM-3 Block IIA増産方針に準じた措置だ。
国防総省は25日「BAE SystemsやLockheed Martinと提携してTHAADミサイルのシーカー生産量を4倍に増やすための枠組み合意を発表した」「Honeywell Aerospaceと提携して弾薬備蓄に不可欠な重要部品の生産を大幅に増強する枠組み合意を発表した」と発表したが、これも先の増産方針に準じた措置で、特にHoneywell Aerospaceとの枠組み合意は精密誘導弾薬を誘導する航法システム、ミサイルの機動性に直結する高性能アクチュエーター、戦場を支配する最新電子戦ソリューションの増産に関連している。
PrSM production accelerates! A new DoW framework will quadruple Precision Strike Missile output. This expansion comes on the heels of a historic first as PrSMs were used in combat, providing an unrivaled deep‑strike capability. pic.twitter.com/oSmIlOEXR4
— Lockheed Martin (@LockheedMartin) March 25, 2026
さらに興味深いのは「Lockheed Martinと提携してPrecision Strike Missile=PrSMの生産を加速させる新たな枠組み合意を発表した」「この枠組み合意に基づいてLockheed MartinはPrSMの生産リードタイムを大幅に短縮するための先進的な工具、設備の近代化、重要な試験装置に重点的な投資を行う」とも発表し、PrSMは生産上限を引き上げるのではなく「リードタイム短縮のための投資を行う」という意味で、これまでの枠組み協定とは少し毛色が違うが、米陸軍はPrSMをFY2026で45発しか発注していない。
今回、米軍がPAC-3 MSE、THAADミサイル、トマホーク、AMRAAM、SM-3 Block IB、SM-3 Block IIA、SM-6をどれだけ購入しているのか各予算文書から数字を集めてみたが、PAC-3 MSEとSM-6以外は十分な購入資金がないので生産能力を持て余しており、7年間の枠組みで生産能力を4倍に拡張しても調達資金が流れ込んでこないと意味がなく、弾薬備蓄の問題は生産能力だけではなく調達コストが高すぎることにも問題があるのだろう。
関連記事:日米がSM-3 Block IIAの生産4倍で合意、増産達成でも生産数は年50発以下
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin





















増産っていうけど、今回のオイルショックでヘリウム足りてないのに、大丈夫なのかな?
自分(アメリカ)で元栓壊しておいて、ガスの必要な増産計画なんて立てられないんじゃ?
まあ、自分のところでいくらかはヘリウム生産できるだろうけど、設備も縮小してるし、コストも戦争終わらなければどんなことになるか分からないし。ね。
どうなることか。。。
増産っていうけど、今回のオイルショックでヘリウム足りてないのに、大丈夫なのかな?
自分(アメリカ)で元栓壊しておいて、ガスの必要な増産計画なんて立てられないんじゃ?
まあ、自分のところでいくらかはヘリウム生産できるだろうけど、設備も縮小してるし、コストも戦争終わらなければどんなことになるか分からないし。ね。
どうなることか。。。
管理人様、連投すみません。
増産が達成される頃にはイラン戦争もウクライナ戦争も終わってるよ。イスラエルの原子力の町が弾道ミサイル迎撃に失敗した。コスパ追求して「ダビデ・スリング」を使ったとかいうが、あり得ない。原子力の町だぞ。アローやTHAADが尽きた、もしくは空軍基地などのみ使用許可。開戦一か月もたたずに
防空ミサイル、ウクライナ戦争以降とんでもなく消耗してるので、どうなりますかね。
『どれだけ過去の遺産があったんだ!』とも思うわけですが、さすがに備蓄もう厳しいでしょうから、今後どうなるのか見守りたいと思います。
防空ミサイルは現行品は急速な増産は難しいよなぁ
シーカーがこなす役割を、大量の衛星とかに任せて弾体の生産性やコストを下げるとかは出来ないんだろうか?
増産ができるのは良いことですが、それでも年400発、しかも高価だと、重要施設の防護で精いっぱいという印象が拭えないですね…
自分が追えていないだけだとは思いますが、迎撃ミサイル関係のスタートアップや新興兵器メーカーってありましたっけ?
低価格巡行ミサイルや低価格極超音速ミサイル、低価格ドローン迎撃ドローンの話はよく見かけますが、低価格迎撃ミサイルの話はあまりなかったような気がします。これからどんどん増えていきそうな気はしますが、一発約5000万円(1発10万ドルの低価格巡航ミサイルの3倍くらい)の迎撃ミサイルが出てこないのかなと思いました。
生産が増えるのは良い事と思うのですが。
イージス・アショアの代替艦の建造が始まっているようですね。
これらの艦には、対艦弾道弾から自艦を守る手段はあるのかな?。
SM-3Block IIAは、IRBM以上に対応だろうから、
SRBMを撃たれた時には自艦防衛の必要があるのでは?。
Mk41VLSのうち幾つかをPAC-3MSE(少なくも同等品)
に充てないといけないのでは?。
これが陸上なら、ミサイルサイトの周囲に
パトリオットを展開すれば良いのだけれども、などと思います。
防衛省はどのように考えているのかな?。
そのためにVLS数を増やしてるんじゃない?
対ドローン用に高出力レーザーも載せる計画らしいし、計画通り行けば防空能力は随一の艦になりそう
それはそれとして、二段ピラミッドみたいな不細工な艦橋をどうにかして欲しい
SM-6の導入を進めてるのでSRBMはそっちでは。
新型(軌道変更能力あり)SRBMなら23式艦対空でも対処はできそう。
アメリカはかつての生産力を取り戻さないと戦争で勝てなくなるだろうな
WW2当時のアメリカの驚異的な生産力、特に航空機やエンジンはフォードなどが自動車生産で確率したベルトコンベア生産ラインの活用と大量・安定生産のための最適化再設計など、「民間の力を防衛へ」転用した事例も多いものと認識しています。
一方で今の防衛産業は冷戦終了後の雪解けで生産量が減ったりキャンセルで生産システムの改善に投資ができなくなりましたし、インフレ率と単価削減が難しくなりました。
この状況を一気に改善するためには予算をつけて生産分をちゃんと引き取る、生産システムや設計をアップデートしてより効率的な生産ができるようにするなど、とにかくお金がかかります。
既存兵器は書類手続きも多く様々な意味で複雑になりすぎたため、AndurilのようなCOTSを主眼にした防衛ベンチャーに期待がかかるのと、書類手続きの簡略化・効果的な改善を期待したいところですが、全てを網羅するわけではないため、予算と同時に調達に必要な様々な仕組みのアップグレードを行う必要がありそうです。