米国関連

米軍、1万発以上の低コスト巡航ミサイルを新興企業4社から3年で調達

米国防総省は13日「米軍の攻撃能力を積極的に拡張するため、革新的なイノベーションをもたらす新規参入企業や民間の革新的企業との間で新たな枠組み合意を締結した」と発表し、アンドゥリルなど防衛分野の新興企業4社から低コスト巡航ミサイル1万発以上を3年で調達する計画だ。

参考:Department of War Enhances Lethal Strike Capacity Through Partnership With New Entrants
参考:Anduril, Department of War Sign Production Agreement for Surface-Launched Barracuda-500M
参考:Leidos to build initial 3,000 low-cost containerized munitions through Department of War framework agreement
参考:CoAspire Signs a Framework Agreement with the U.S. Department of War for Affordable Ground-Launched Cruise Missiles
参考:Castelion and Department of War Sign Framework Agreement to Build Low-Cost Hypersonic Missiles for the Arsenal of Freedom
参考:新たな重要装備品等の選定結果について

量という質を如何に安く、早く、大量に生産するかという点において重要なのは生産上の仕組み

国防総省は13日「米軍の攻撃能力を積極的に拡張するため、革新的なイノベーションをもたらす新規参入企業や民間の革新的企業との間で新たな枠組み合意を締結した。Anduril=アンドゥリル、CoAspire=コアスパイア、Leidos=レイドス、Zone 5=ゾーン5との合意によりLow-Cost Containerized Missiles=低コストコンテナ化ミサイル(LCCM)計画が開始される。これと並行してCastelion=キャステリオンと締結した合意は低コスト極超音速兵器ソリューションの量産化に向けた取り組みを推進するものだ。これらの合意は効果的かつ安価なキネティックマス(圧倒的な物理的攻撃力)を大規模かつ迅速に配備するものだ」と発表。

出典:U.S. Department of War

この取り組みを端的に言うと「複雑な設計、防衛産業に特化したサプライチェーン、高度な専門労働者、手作業による製造手法で構築された拡張性の乏しい精巧なシステム」ではなく「シンプルな設計、調達先が複数存在する商用サプライチェーン、増員が容易な平均的労働者、特殊工具や専用設計の治具を必要としないハイパースケールを前提にした製造手法で構築された拡張性の高い汎用システム」でキネティックマスを達成するというもので、この分野は伝統的な防衛企業よりも「ソフトウェア定義型の兵器開発」と「シリコンバレー流のスピード開発」を主導する新興企業の土壇場になっている。

LCCMのための枠組み合意を見ても伝統的な防衛企業の名前はなく、量という質を如何に安く、早く、大量に生産するかという点において重要なのは「生産上の仕組み」であり、デュアルユース技術や商用部品を如何に素早く統合するか、3Dプリンティング技術など新しい生産技術を如何に素早く活用していくかで、アンドゥリルのパーマー・ラッキー氏も「我々が解決しようとしているのは軍事上の問題ではなく生産上の問題だ」と述べており、射程が凄い、ステルス性が凄い、破壊力が凄いなどといった性能的な部分は「それなり」で十分だ。

出典:Anduril

国防総省はLCCM計画を通じて低コスト巡航ミサイル1万発以上を3年で調達することを目指しており、これは「低コスト巡航ミサイル1万発以上を3年で調達する」という部分より「1万発以上を3年で調達できる生産上の仕組みを整える」という部分の方が重要で、今回の合意発表を受けてアンドゥリルも「米国にとって長射程精密火力とスタンドオフ兵器は敵対勢力を抑止するのに不可欠な要素だが、既存のソリューションは高価すぎる上、過度に精巧で大規模な量産に適していない」と述べた。

“アンドゥリルにはこの課題を解決する用意がある。国防総省と安価で大量生産が可能な地上・水上発射型バラクーダ-500M(SLB-500M)の生産拡大で合意した。この合意に基づいて3年間で最低3,000発(年1,000発以上)のSLB-500Mを納入する。国防総省のニーズが変化すればSLB-500Mの生産力を引き上げることも可能だ”

出典:Anduril

“バラクーダシリーズは設計段階からハイパースケールでの生産が可能なように設計され、SLB-500を構成する70%は汎用部品で、残り30%の部品も特定ベンダーに依存するのではなく、複数のベンダー間でオープンアーキテクチャ設計を競わせることでリスク低減を図っており、アンドゥリルはサプライチェーンの混乱を回避できるようSLB-500Mを設計した。さらにSLB-500Mはわずか10種類の一般的な工具を使用して30時間で組み立てられるため、緊急の需要に合わせて生産を急速に拡大できることが保証されている”

コアスパイアは「LCCM向けに3Dプリンティング技術で製造するGHOSTを供給する」「GHOSTはRAACM-Extended Rangeの地上発射型で年内の試射が予定されている」「伝統的な防衛企業なら数年かかる開発作業を数ヶ月で実現できる3Dプリンティング技術の利点を実証する」と、レイドスも今回の合意発表を受けて「昨年12月にAGM-190Aを2倍に拡大したLCCM開発に着手した」「LCCMは2027年に生産が開始される予定で、この合意に基づいてLCCMを3,000発供給する」と表明したが、ゾーン5は今回の合意発表にまだ反応を示していない。

出典:CoAspire

キャステリオンとの合意は低コスト巡航ミサイルの極超音速兵器バージョンで、HIMARSで運用が予定されているPrSM Increment4(ラムジェットモーターを採用する射程1,000kmの精密攻撃兵器)の能力の約80%を大幅にコストダウンしたBlackbeard=ブラックビアードを開発している。

今回の合意発表を受けて「国防総省とブラックビアード生産に関する枠組み協定を締結した」「ブラックビアードの試験・検証が完了次第、年間最低500発の購入が保証され、さらに年数千発の追加購入の道筋も示されている」と表明した。

出典:Castelion

ちなみに、米国は空中発射型の低コスト巡航ミサイルを多数(AGM-188A ラスティ・ダガー、AGM-189A バラクーダ-500M、AGM-190A、RAACMなど)開発済みで、欧州でも同様の低コスト巡航ミサイルが複数開発されている。

日本の防衛装備庁も4月27日「低コスト誘導弾の技術的方策を検討するに当たり、情報提供する意思のある企業を募集する」と公表したが、募集要項は低コスト誘導弾の用途について何も定義しておらず、地対空誘導弾なのか、地対艦誘導弾なのか、空対空誘導弾なのか、対戦車誘導弾なのか良くわからない。

出典:防衛装備庁

追記:東京新聞は2026年2月「防衛装備庁が2025年度予算で初めて計上した攻撃用ドローン(小型攻撃用UAV-I型)の一般競争入札を実施し、豪DefendTex製のDrone40を提案した丸紅エアロスペースが落札した。落札金額は36億8,016万円で2027年5月末までに約310機を調達する」と報じていたが、防衛省は12日「装備品等の選定に係る手続の明確化・透明化のため、取得実績のない新たな重要装備品等を選定した際は選定結果を公表することにした」と発表し、公開された小型攻撃用UAV-I型の選定結果を拝見したが、これなら選定結果を公表する意味がないので黙っていたほうがマシだ。

“事業の概要:我が国への侵攻を阻止・排除するため空中から車両等を捜索・識別し、迅速に目標に対処するため小型攻撃用UAV-I型を取得する。選定結果:新たな重要装備品の選定にあたり、既に実施を完了した実証結果を踏まえ、今後導入する機種に求める具体的な要求性能の検討等を行い、令和7年度予算に量産取得にかかる経費を計上した。そのうえで一般競争入札を実施した結果として機種が決定された。なお、ライフサイクルコストは引き続き精査を行っていく”

出典:防衛省

装備品等の選定に係る手続の明確化・透明化のため、取得実績のない新たな重要装備品等を選定した際は選定結果を公表することにしたのにコレ?

防衛省は装備品等の選定に係る手続の明確化・透明化も選定結果を公表する気もないようだ。

関連記事:日本も量という質を追求か、防衛装備庁が低コスト誘導弾の情報提供を要請
関連記事:ウクライナ向け長距離攻撃兵器、10月納入に向けてF-16との統合作業が順調
関連記事:自衛隊初の小型攻撃ドローンにDrone40、取得コストは1機1,000万円超え

 

※アイキャッチ画像の出典:Leidos

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コメント

  • コメント (28)

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    • たむごん
    • 2026年 5月 14日

    アンドゥリルの資金調達について、興味深い情報がでていますね。

    企業価値が約10兆円(610億ドル)とみて、50億ドルの調達に成功しました。

    年内に上場する話しも出ており、トップクラスに参入障壁の高い防衛産業で、2017年創業の会社が物凄い伸びているのを感じています。

    3
      • たむごん
      • 2026年 5月 14日

      追記です。
      防衛省は、情報公開の何を恐れているのか、何がネックなのでしょうか?

      日本の政治・世論ともに、自衛隊への支持だけでなく装備増強も後押しがあるわけですから、大した金額でもなく・機密でもないものは公表した方がいいと思うんですけどね…。

      12
        • p-tra
        • 2026年 5月 14日

        バカで無能だから、以外の答えがあるんでしょうか?

        13
          • たむごん
          • 2026年 5月 14日

          現場の方々は、汗をかいてるので、何とかして欲しいものですね。

          最近で言えば、大槌町の災害救援ありましたが、住民の御見送り感謝されていた姿が印象深かったです。

          2
        • SB
        • 2026年 5月 14日

        よく言われるのは日米同盟説とボガチョンコフ事件説ですね

        後者は調べてもらうとして、2000年代からBMD研究と在日米軍再編でアメリカから秘密保護体制の不十分さを指摘されて過剰になったという考えです

        あと実は法的な開示制度は充分に整っているんですが、他国と違って請求と閲覧が情報公開室だけってのも強く影響してると思います
        開示請求は年に5000件くらいあるらしいんですけどね

        18
          • たむごん
          • 2026年 5月 14日

          情報ありがとうございます、勉強になります。

          2
        • 名無し
        • 2026年 5月 15日

        正直、国民主権に基づいて情報公開できてるのに何が不満なのか…としか思えないな
        基本建前だけなのにそんな大層なもんだと思っているのか

        4
    • のー
    • 2026年 5月 14日

    素人なのでよくわかりませんが。
    急激な増産に対応させるなら、ターボファンなどのガスタービンエンジンは無理でしょうから、
    実は構造が簡単なラムジェット推進の超音速巡航ミサイルのほうが、生産性が良かったりするんでしょうか。

    1
      • 58式素人
      • 2026年 5月 14日

      同じく素人なのですが。あちこちの記事を見ていくと。
      低コスト巡航ミサイルの記事で、
      遠心式ターボジェットエンジンという言葉を良く見ます。
      現代の戦闘機で一般的な軸流式ターボファンエンジンより
      構造が簡易で作り易く安価で壊れ難い、とのこと。
      さらに探していくと、遠心式ターボジェットジェットの場合、
      排気の速度が音速に近いので機体の飛翔速度がそれに近い
      場合が一番効率が良い、とのこと。
      まとめると、亜音速の巡航ミサイルは安く作れる?、となるのでは?。
      ラムジェットの場合は、圧縮機がないので、
      空気を圧縮するのに機体の飛翔速度が速い必要があると思います。
      飛翔速度が速いと、機体の方に費用が掛かるのでは、と想像します。
      多分、一番安いのはパルスジェットなのだろうと思います。
      ドイツのV1がそうです。ウクライナでも類似品を作っている様子です。
      独特の作動音と、低速のため、すぐに捕まるのが難な様子です。

      3
        • のー
        • 2026年 5月 14日

        なるほど、遠心式ですか。確か初期のジェットエンジンでしたっけ?
        確かに印象になってしまいますが、ターボより簡単に作れそう。
        巡航ミサイルなんか、安価なパルスジェットが主流になると勝手に妄想してましたが、
        意外にならないですね。安価でも性能が今ひとつなんですかね。

        2
    • 幽霊
    • 2026年 5月 14日

    まあ防衛省が情報を公開しなくてもマスコミも国民も国会議員だって問題視しないんだからしょうがないよね
    何なら公開しないのは国防上正しいみたいな謎の擁護論が出てくる始末だし。

    20
      • 無印
      • 2026年 5月 14日

      居ますねぇ、そう言う人
      報道で「小銃何丁調達する」「装甲車AMV1号車納入」「高速滑空弾配備開始」ってあったら
      「防秘を公開するのはけしかららん!ぎゃおぉぉんん!!」
      って怒る謎の人、全然防秘でもないし

      完全秘密主義って北朝鮮でもやってねぇ

      19
        • 戦車
        • 2026年 5月 14日

        まあ、言っちゃ悪いが左派右派に挟まれてあれこれ言われる期間が長過ぎて秘密主義が普通になってしまったからなぁ。

        20
        • ドゥ素人
        • 2026年 5月 14日

        正直、透明性が高くないと既得権益になったり新規参入障壁になったりもすると思うので、出したほうが良いと思います。
        特定秘密保護法も、情報開示法という名前にしとけばよかったと思います。秘密とかつけたり黒塗りにしたりするから余計に突っ込まれます。
        ノイジーマイノリティはその名の通り少ないので、多くの人は開示してくれたら素通りしそうな気がします。

        16
        • YF
        • 2026年 5月 14日

        使ってるのは国民の血税ですからね。説明責任ってあると思うんですけどね。
        この先防衛費をGDP比5%(3.5%)まで上げないといけないとすれば、広く国民に理解してもらうのは絶対に必要ですから。
        防衛省の広報の在り方を根本的に見直して欲しいですね。

        14
      • SB
      • 2026年 5月 14日

      今に始まったことじゃなくASM-3Aとか12式の時とかもペラ紙一枚でしたしねぇ

      8
      • hogehage
      • 2026年 5月 15日

      議論の公開ではなく。
      選定結果の公開だから、間違いではない。嘘は言っていない。

      役人だ。

      5
    • 中村
    • 2026年 5月 14日

     移動目標に対応した地上発射型低価格巡航ミサイル。30万ドル以下ならナニに当ててもコスト的には問題が無いような気がします。

     戦車を狙ってもヘリを狙っても自走砲を狙っても艦艇を狙っても問題なさそうですし、1時間も滞空して居られるのなら徘徊型弾薬として使っても良いと思います。

     特に対砲兵戦に投入されたら手に負えないでしょう。

    5
      • hogehage
      • 2026年 5月 15日

      移動目標対応だと、最悪ダミーに釣られまくりになるからな。
      どうなんだ。

      1
        • 中村
        • 2026年 5月 15日

         ルーカスにしろFP-2にしろ今の所スターリンク端末を介して人間が介入するのはその点が大きいと思われます。

         結局、FPVドローンを誘導砲弾として使用するアイデアの延長で発達してきている。

         ペイロードの不足は固定翼片道ドローンとの組合せ、速度の不足はジェット化で対応する。頭の良い人は最初から結論に飛びつくって事です。

        3
    • p-tra
    • 2026年 5月 14日

    行政国家の悪いところが出ているようですね。
    重要な決定をしているのは官僚だが、選挙が左右しているのは
    数年で消える議員の人事だけなので、非効率なプロジェクトは
    止められることなく続いていく…

    3
    • SB
    • 2026年 5月 14日

    Barracuda-500Mが15万ドルを目指してるらしいのでざっと20万ドルして、年最低でも1000発、最大3000発生産するとして年6億ドル(950億円)か
    なかなかの市場である

    5
    • ハムスター名無し
    • 2026年 5月 14日

    日本の低コスト巡航ミサイルはJ/AQM-2標的機を小改造するのが安パイかな
    Wikiによると1機2000万円らしいから大量生産すれば1000万くらいに下がるでしょ
    新規開発は絶対に低コストにならないから止めた方が良いと思う

    4
      • 通りすがり
      • 2026年 5月 14日

      確かに。ただ小改造するにしても中の部品を汎用部品に変えるだとか、形状を簡素化するとか、そういった割り切りや工夫が日本の防衛企業に出来るのか・・・ちょっと怪しい気もします。ぶっちゃけ民間企業的には、そのまま厚利少売でやっていけるなら薄利多売に向かいたくはないかと。

      4
    • 反革命分子
    • 2026年 5月 14日

    防衛省の文書について背景の仮説をいくつか。
    ①外部から情報公開を求める声があったが、防衛省自身は不必要だと考えている。

    ②長年秘密主義的な体制でいたために、情報公開でどれくらい話していいかの感覚がわからなくなってしまった。あるいは法律等の制約で情報が削除されてしまった。

    ③省内でも賛否があり、まずは前例を作るために体裁だけ整えてみた。反対派が退官したら具体的な内容を増やしていく。

    個人的には嫌々作らされている感を感じるので①なんじゃないだろうかと思いますが・・・

    3
      • daishi
      • 2026年 5月 14日

      F-4EJの調達でも
      ・空中給油できると他国を攻撃できる (のでフライングブームのレセプタクルを外す)
      ・爆撃機能があると他国を攻撃できる (ので爆撃コンピュータを外して対地攻撃能力を削除)
      とか国会で揉めまくったのもあり、組織的に「公開すると碌なことにならない」と考えている可能性はあると思います。

      今の状況なら国会では「導入が国家の安全保障に資するかどうか」「適正コストか」「国内産業に寄与するか」などを評価するべきなんでしょうが、防衛装備庁も含めて「日本から攻めた結果、国内被害甚大で敗北した」トラウマから抜け出せていない組織は多いのだと思います。

      5
    • せい
    • 2026年 5月 14日

    まあ防衛相からの公開情報なんてこんなもんで充分やと思う
    事細かに公開したとて確認する人は少ないし

    8
      • のー
      • 2026年 5月 15日

      全くです。
      わかりやすい公開資料をつくるのも人もコストもかかります。
      それに頑張って資料を作って公開しても評価もされないから、やる気もでないですよね。
      我々のような変わり者の軍オタか、市民団体みたいなのが難グセつけるぐらいでしょう。
      つまり国民が関心を持ってないということです。
      本当は良くないことなのですけど。

      7

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