米国はウクライナ軍関係者を招待して「急速に進化する現代のドローン戦争」を政策立案者レベルで理解しようとしており、ドイツ軍も「ウクライナ軍の教官を派遣してもらい戦場の知識を教えてもらう」と発表し、もうウクライナ軍は「教えてもらう側」から「教える側」に立場が逆転している。
参考:Ground Truth Symposium
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有人機が飛行する高度と地上の間に広がる“エア・リトラル=Air Littoral”の戦いへの投資はますます加速してくだろう
ウクライナが日々撃退しているイラン製の自爆型無人機=Shahed-136が米国や中東諸国に問題を引き起こしており、米シンクタンクのPeace Through Strength Instituteはウクライナ軍で最も効果的な無人機部隊(ラザール部隊、第12特務旅団、第414無人機旅団など)の代表者や兵士をワシントンに招待し、今月25日にウクライナのドローン戦術と技術に関する専門知識、各国の既存の防空システムにウクライナの技術やドローン兵器を統合するためのベストプラクティスに焦点を当てたシンポジウム=Ground Truth Symposiumを行う。

出典:Peace Through Strength Institute
このイベントは米国の政策立案者や国防指導者向けに急速に進化する現代のドローン戦争の状況を説明することが目的で「現代の複合兵器戦闘と持続的な紛争下における部隊適応から得られる最前線での作戦上の教訓」「ドローン戦と電子戦における戦場のイノベーション、対抗策、監督・調達に関連する能力のギャップ」「ドローンによる絶え間ない空中監視と攻撃下での戦闘の様相や部隊に対する運用上・人間的な影響」「戦闘部隊とメーカーが戦場の結果に基づきドローン、電子戦、戦術を急速に向上させる継続的なフィードバックサイクルをいかに維持しているか」などの知見が披露されるらしい。
Peace Through Strength Instituteも「ウクライナの前線の現実を、戦争そのもの、それを形作る能力、そしてウクライナの存続と米国の戦略的利益の双方に合致する条件で終結させるために必要な状況について議会がより明確に理解できる形へと変換する」と説明し、Ground Truth Symposiumの概要について以下のように説明している。

出典:ОЗ БССП «Тайфун»
“Ground Truth Symposiumはワシントンで開催される招待制の作戦説明会だ。ウクライナ軍の前線部隊を率いるリーダーたちと議会議員、議会スタッフ、国家安全保障の専門家が一堂に会し、リアルタイムで戦争に対峙している当事者から直接的な戦場の洞察を提供する。本シンポジウムは一つの中心的な前提に基づいている。すなわちウクライナとロシアの戦争の真の本質を理解し、米国の戦略的利益を推進しながらウクライナの未来を確保する形で終結させるために必要な条件を理解するには「現場の真実」が不可欠であるということだ”
“公の議論が戦場の現実に立脚していなければ、タイムライン、コスト、運用上の制約、および戦争を形作る能力を読み誤ることになり、ロシア、イラン、その他の国々による挑戦に対する米国の備えを不十分なものにしてしまう。Peace Through Strength Instituteが主催するシンポジウムは議会および米国の広範な国家安全保障コミュニティの参加者を招集し、運用上の教訓、新たに現れている戦場のダイナミクス、そしてウクライナが維持可能であり米国が支援することに強い関心を持つ結末を形成するための実務的な要件について集中的な対話を行う”

出典:ОЗ БССП «Тайфун»
“参加者はウクライナが直面している現実、現代の戦場において最も重要だと証明されている能力、有効な手段を維持・拡大することに伴う実務的な課題について、より明確な理解を得ることとなる”
Defense Newsも「ウクライナの経験は米国とその同盟国にとって極めて重要な教訓を提示している。それは米国とその同盟国がイランとの紛争において今まさに必要としている教訓だ」「ウクライナが安価な迎撃ドローンへの転換を行ったのは自ら望んだからではなく、ロシアによる連夜のShahedの波が同盟国による再補給が追いつかないほどの速さで欧米の迎撃ミサイルを浪費させていたからだ」「ウクライナの迎撃ドローンはキーウ上空に飛来したシャヘドの70%以上を撃墜し、希少なパトリオットミサイルを本来の設計目的である弾道ミサイルの対処に振り向けることを可能にした」と指摘。
ウクライナのドローン企業=Wild Hornetsは迎撃ドローンの主要供給者で、CBC Newsの取材に「約2,500ドルの迎撃ドローンは2025年5月以降、約3,900機のドローン(Geran-2、ジェットエンジン搭載のGeran-3、空対空ミサイルを搭載したバージョンの初撃墜などを含む)を撃墜した」と明かした。同社の迎撃ドローン=Stingはダッフルバッグに収まるほどコンパクトでありながら、暗闇の中でShahedを追跡できるほどの速度(314km/h〜450km/h)を発揮でき、赤外線映像とAI支援による終末誘導システムを搭載し、迎撃の最終局面の数秒間のみ人間のオペレーターが手動制御に切り替えて操作を行う。
さらにSkyFall’sが供給する光ファイバー制御の迎撃ドローン=P1-SUNは約1,000ドルで供給されており、同社のアレス代表はReutersの取材に「P1-SUNはコンピュータービジョンと赤外線映像を搭載し、450km/hの速度で標的と交戦することができる」「約4ヶ月間に運用を開始して以来、1,500機以上のShahed、1,000機以上のその他ドローンを撃墜した」「我々の製造能力はウクライナの購入需要を上回ったため輸出準備が整った」「同盟国や中東諸国から関心や問い合わせが相次いでいる」「政府が許可すれば当社は必要な支援を何でも提供する」と述べている。
🛡️🇺🇦SkyFall tarafından geliştirilen P1-SUN önleyici İHA sisteminin, operasyonel kullanıma girdiği son dört ay içinde 1.500’den fazla Shahed ve 1.000’in üzerinde farklı tipte İHA’yı etkisiz hale getirdiği bildirildi.
SkyFall yetkilileri, ayda 50.000 adede kadar önleyici İHA… https://t.co/SMogOM1vrs pic.twitter.com/YJyBQLiZoH
— Defence Turk (@Defence_Turk) March 7, 2026
Ukrspecsystemsが開発した迎撃ドローン=Octopusもウクライナ企業15社によってライセンス生産されており、昨年11月からは英国の新工場でも生産(月2,000機)を開始した。この英国生産分はウクライナに納入することを目的にしているが、NATO加盟国の英国、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランドは今年2月「1年以内に迎撃ドローンを製造することを目標とする Low-Cost Effectors and Autonomous Platforms (LEAP) イニシアチブを立ち上げる」と発表し、もうShahedタイプの自爆型無人機には迎撃ドローンで対処して「高価な迎撃ミサイルを本来の目的に使用する」という流れが出来上がりつつある。
迎撃ドローンのハードウェア自体は高度な技術力や産業力を必要としないものの、米国、欧州、中東がウクライナに頼るのは「迎撃ドローンをデュアルユース技術ベースで構築した技術力と発想力」「これを制御するためのAIが統合されたソフトウェア」「このソフトウェアを改良・改善するために必要な実戦データ」「迎撃ドローンでShahedと実際に交戦した経験」「膨大な数のドローンオペレーターを育成した訓練プログラム」「Shahedを検出するための音響ベースで構築された早期警戒ネットワーク」など、ウクライナにしかないものが沢山あるからだ。

出典:Денис Шмигаль
一方のドイツでもクリスティアン・フロイディング中将が「ウクライナ軍は現在、ロシア軍と戦闘経験を持つ世界で唯一の軍隊だ」と述べ、ロシアが早ければ2029年までに軍の再編を終えて「NATOへの大規模攻勢を仕掛けられる体制を整える可能性がある」という欧米情報機関の評価に基づき「それはほとんど明後日のことだ。時間はない。敵は我々が準備完了を宣言するのを待ってはくれない。だから準備のためにあらゆる可能性を利用しなければならない」「ウクライナ軍の教官をドイツの軍事学校に招いて4年以上にわたる全面戦争で蓄積された戦場の知識を教えてもらう」と明かした。
Defense Newsも「ウクライナ軍がもつ専門知識は砲兵、工兵、装甲部隊の運用、ドローンの活用、指揮統制に及び、これはウクライナ戦争において最も急速に進化し、多数の戦場の教訓が生み出されている能力分野だ。この動きは欧州諸国の軍隊がウクライナに提供できるものよりも『ウクライナから学ぶべきことの方が多い』という認識がNATO全体で高まっていることを反映している」と指摘。

出典:Bundeswehr/Jana Neumann
ドイツは2022年の侵攻以来、戦車、歩兵戦闘車、自走砲、防空システムなどの訓練をウクライナに提供してきたが、フロイディング中将はこの関係が事実上逆転し「ウクライナが訓練を受ける側」ではなく「ドイツへ教官を派遣する側」になったことについて「安全保障分野における対等なパートナーシップの反映だ」と述べた。
恐らく、2026年~2027年にかけて小型ドローンの話題は安価でShahedタイプの自爆型無人機に対抗できる迎撃ドローンに集中する可能性が高く、有人機が飛行する高度と地上の間に広がる“エア・リトラル=Air Littoral”の戦いへの投資はますます加速していくだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Денис Шмигаль





















ウクライナ陸軍は、世界最強級ですからね。
ウクライナ=ロシア、とんでもない陸戦を4年以上も続けてきたわけで、両国ノウハウを蓄積してるだろうなと。
ウクライナが外交的な借りを返せる機会だけでなく、軍事顧問団=アドバイザーを派遣、もしくはウクライナで訓練したとしても、継戦~戦後に向けてそれ以上の見返りも期待できるでしょうね。
その経験と実績は間違いなく有用だけれども、アメリカ、EUは空軍力と装甲車、自走砲、戦車の質と量が全く異なるし、長期の塹壕戦は絶対やりたくないはずなので、アメリカ、EUにはそのまま適用することは難しい気もしますね。
アメリカは別格としまして、それでもイランの無人機・弾道ミサイルが貫通したり、迎撃弾の在庫を気にし始めてるんですよね。
EU各国軍ともなれば、なかなか厳しいのかなあというのは、私見としてあります。
基本は、まさに仰る通りで、外交により長期戦はやらないでしょうね。
ヨーロッパではロシアを除くならフランスに次ぐ規模の陸軍でしたっけ。
ただ確かウクライナの迎撃ドローンなんかはドローン迎撃部隊が一定の人命を失う前提で防衛してるようだから、アメリカやヨーロッパなんかは人命の価値が高いので教えられてもそのままじゃ使えないでしょうね。
ウクライナ戦時体制のため、(仏陸軍10万人程度)単純比較するものでもない前提として。
ウクライナ欧州派遣軍が話題になり消えていきましたが、英仏の全陸軍を派遣しても、ウクライナの停戦維持に全く足りないというのが現状のようです。
ウクライナ=ロシア、ドローン戦の質量ともに世界トップ水準ですから、仰るように人命を失う前提でないとどうしようもないのでしょうね…
ドローン対策といい、10人のドローン兵でNATOをフルボッコにした件といい、ここにきてウクライナ軍の株が爆上がりしてますな
ドローンを活用した戦術や実戦運用能力に置いて今やウクライナは間違いなくイスラエルと並ぶ西側トップクラスの実力だろう。
日本も今後ともウクライナ支援を進めると同時に見返りとしてウクライナのドローンノウハウを積極的に吸収するべきだな。
最も陸軍国と海軍国という違いがあるけど。
Ground Truth Symposium には、取あえずオブザーバーでも良いので、日本政府も防衛装備庁の無人アセット政策担当官と運用評価担当の自衛隊関係者が受講できるよう交渉するべきかなと。運用現場に直結したレクチャーを運用者から直に受けるのは貴重な機会かと思います。
直接に質疑応答できるのがベストなんで、それが必要と判断されたら後日に改めて日本独自の受講を打診するべきだし。
日本は個別にやってたりするんだよな
日本側からも戦争初期の段階から政府の情報収集衛星や民間のSAR衛星コンステレーションの情報を渡してるはずだし
>ウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領府長官は1日、自身のSNSで、日本の岡野国家安全保障局長とテレビ会議を行い、防衛分野を巡る協議を定期開催していくことで合意したと明らかにした。
リンク
日本もウクライナから幾つか技術を導入しておくべきでは?
迎撃UAV(オクトパス/スティング)とか、マグナ型USVとか、
Fp-1/2やFP-5フラミンゴなど。
マグナ型にStingを載せたものは、海岸線で使えそうだし。
もちろん、冬の日本海では使えないだろうけれど。
共同通信のニュースに、ウクライナの方から日本にドローン導入の打診があった、って出てましたね
イスラエル製より世論の理解が得られやすい、とか