米国関連

米国がUAEとクウェートに武器の緊急売却を承認、売却総額は約2.6兆円

米国務省は19日、アラブ首長国連邦とクウェートに対する対外有償軍事援助(総額164.64億ドル=約2.6兆円)を議会審査免除で緊急承認した。この中にはAIM-120C、対ドローン迎撃システムのFS-LIDS、THAAD用のAN/TPY-2、LTAMDSが含まれる。

参考:United Arab Emirates – Advanced Medium-Range Air-to-Air Missiles (AMRAAMs)
参考:United Arab Emirates – F-16 Munitions and Upgrades
参考:United Arab Emirates – Long-Range Discrimination Radar with Terminal High Altitude Area Defense Integration
参考:United Arab Emirates – Fixed Site-Low, Slow, Small Unmanned Aircraft Integrated Defeat System
参考:Kuwait – Lower Tier Air and Missile Defense Sensor Radars
参考:Lessons US and Gulf could learn from Ukraine’s air defence warriors

高慢であればあるほど「痛い目」に合うまで愚かさに気づかないのだろう

米国務省は19日「アラブ首長国連邦にAIM-120C-7またはAIM-120C-8を400発売却する可能性(推定費用12.2億ドル)を、F-16向けとしてGBU-39/Bを1,500発、Mk-84向けJDAMキットを900セット、BLU-109向けJDAMキットを300セット売却する可能性(推定費用6.44億ドル)を、THAADと連携する長距離レーダーや関連機器を売却する可能性(推定費用45億ドル)を、拠点防衛用の対ドローン迎撃システム(FS-LIDS)を10セット売却する可能性(推定費用21億ドル)を承認した」と発表。

FS-LIDS=Fixed Site-Low, Slow, Small Unmanned Aircraft System Integrated Defeat Systemとは米陸軍が開発した低空、低速、小型ドローンに対抗するための拠点防衛用対ドローン迎撃システムで、このシステムの主要迎撃機としてRaytheonが開発したCoyote Block2/Block3を採用し、2025年度から5年間でCoyote Block2×6,000発、Coyote Block3×700発、固定式Coyoteランチャー×252基、移動式Coyoteランチャー×25基、固定式Kuバンドレーダー×118基、移動式Kuバンドレーダー×33基調達する予定だ。

アラブ首長国連邦向けのFS-LIDSはCoyote Block2×240発、Kuバンドレーダー、EO/IRセンサー、指揮統制システムで構成されており、同国の防衛産業グループ=EDGEはRaytheonとの提携で米陸軍向けCoyote製造に食い込んでいるため中々興味深く、Coyote Block2の推定単価については過去「約10万ドル」と報じられたことがある。

出典:RTX Coyote Block2

さらに米国務省は19日「クウェートに低層向け防空ミサイル用レーダー=LTAMDSを8基売却する可能性(推定費用80億ドル)で承認した」と発表し、上記5件の対外有償軍事援助(総額164.64億ドル)は全て「国務長官は緊急事態が存在し『即時売却することが米国の国家安全保障の利益に合致する』と判断し、詳細な理由を提示したため武器輸出管理法第36条(b)に基づく議会審査の要件が免除された」と説明しており、イランの弾道ミサイルと自爆型無人機を使用した報復攻撃が続いているため注目が高い。

ちなに、英国のThe Timesは18日「トランプ大統領がウクライナの支援を拒否したにもかかわらず、米中央軍は軍事顧問の派遣をウクライナに要請した」「ウクライナ人200人で構成された顧問チームはクウェート、カタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビアでミサイルとドローンの両方に対する防衛支援を行っている」「ウクライナ空軍の将校は『湾岸諸国が1目標に最大8発のパトリオット迎撃ミサイルを使用しているという報道」を聞いて驚愕している」「しかもドローンに対しても高価な迎撃ミサイルを使用している」と報じた。

出典:Mil.ru/CC BY 4.0

“王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャスティン・ブロンク氏は「ウクライナは間違いなく世界で最も優れた防空指揮統制の手法を持つ国のひとつだ」「ウクライナ軍はロシアの弾道ミサイルに対して1~2発で迎撃している」と言う。ウクライナのパトリオット部隊が蓄積した戦闘データは同じシステムを使用する同盟国と共有されているが、米国と湾岸の同盟国はウクライナが迎撃率向上のために行った「複雑な計算」に注意を払っていないようだ。ウクライナ空軍の将校も「我々が4年間も戦っている間、彼らが何をして何を見てきたの理解できない」と言う”

このウクライナ空軍の将校は他にも「米国と湾岸の同盟国は無分別に迎撃ミサイルを発射していた」「艦船から発射するSM-6は約600万ドルもするのに7万ドルのShahedを撃墜するため使っていた」と指摘し、Shahedの攻撃によって10億ドル相当の早期警戒レーダー(AN/FPS-132)が損傷し、約3億ドルのTHAAD用レーダー(AN/TPY-2)が破壊されたことについても「これ(恐らくAN/TPY-2のこと)は2ヶ月間も同じ場所に留まっていた。そして1機あたり約7万ドルのShahedが3機飛んできた。それで終わりだ」と指摘。

The Timesも「ウクライナ軍はロシアとの戦いで防空システムの隠蔽と機動の達人となった」「特に防空システムについては戦争初期の痛ましい失敗から学び、現在ではいつ、どこで、どのように展開するかを熟知している。だからウクライナはその教訓を米国に提供したいと考えている」「ウクライナ軍は米国の訓練マニュアルよりはるかに速くパトリオットシステムを組み立て・分解する方法を編み出した」「ロシアの新型弾道ミサイルは目標を隠すため2度上昇と降下を行うため防空部隊は鋼の精神で自動照準をオフにし、ミサイルが目標に命中するわずか数秒前という極めて正確なタイミングで迎撃しなければならない」と報じている。

要するに「同じパトリオットシステムを持っているだけではウクライナのようには戦えない」「実戦で鍛えられた運用方法にこそ効率的に戦うためのノウハウが詰まっている」「共有される戦闘データを眺めているだけではウクライナ軍が何を工夫しているのか分からない」という意味で、結局のところ「自分たちの方が上手く扱える」「教えを乞う立場だったウクライナから学ぶものはない」「ウクライナの戦場とは条件が違う」などと高慢であればあるほど「痛い目」に合うまで愚かさに気づかないのだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:RTX

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コメント

  • コメント (28)

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    • master onion
    • 2026年 3月 22日

    Merops?って今役に立っているんだろうか。

    航空機やヘリに積めるポッド型の、自爆ドローンが焼ける程度のレーザー兵器ができればいいな。

    質より量の時代へ戻りつつある感。

    もしも北朝鮮が数百機単位でドローンをソウルに飛ばしたら。
    中国ほどの生産能力なら数千機単位で飛ばすこともできるだろう。
    空からでも洋上のコンテナ船からでも、どの方位からでも任意に発進できるのだし。
    それが台北や東京の上空にやって来たら、と想像してみる。

    高価・高級すぎる既存の防空システムでは絶対に対処不可能。

    コスパの良い迎撃手段を早急に揃えないと……。
    3Dプリンターでもなんでも駆使して、日本国内で大量生産しないと駄目だ。

    もう戦争反対とか非現実な絵空事を悠長に言ってる場合じゃない。

    24
    • 名無し
    • 2026年 3月 22日

    ウクライナ人と違って、アメリカ人や湾岸人はカネと資産を持ってるから、絶対に資産にミサイル当たって欲しくないからバンバン迎撃ミサイル撃つんだよ。
    結局、ウクライナ人に教えを請うても、「迎撃ミサイル1発撃って、外れたら諦めろ。」のところでまず、メンタルが合わない気がする。

    36
      • 2026年 3月 22日

      むかしのウクライナも無限の軍事援助があると勘違いして無駄遣いしてたけどな。

      14
      • 特盛
      • 2026年 3月 23日

      金があっても迎撃ミサイルの生産は追い付いてないんですが…

      3
    • たむごん
    • 2026年 3月 22日

    ウクライナ=ロシアは、(第二次大戦後)最大級の陸戦を4年間も継続してるわけで、陸戦は世界最強レベルになってますからね…。

    どの分野でもそうですが、先進的な分野・先人に頭を垂れて実をとるのも、1つの智恵かなと感じます。

    31
      • たむごん
      • 2026年 3月 22日

      追記です。
      『戦時中に派遣』ウクライナはリスクを取って、計り知れない貢献をしていると言えます。

      (1)湾岸諸国の財政
      (2)日本・欧州など石油ガス輸入国への供給
      (3)『ガザ』『パキスタン』などのように湾岸諸国が支援してくる国

      (3)特に湾岸諸国の支援国は見えにくいですが、湾岸諸国の財政余力がなくなれば、『彼らへの支援も止まる』のも現実的です。
      ウクライナ戦争の支援国へのお返しにもなりますし、ウクライナ復興期を停戦後に必ず向かえるわけですが、今回の派遣がポジティブに働いていくことを願っています。

      10
    • Mr.R
    • 2026年 3月 22日

    ・シャヘドにSM-6を発射
    ・レーダーシステムが2ヶ月間同じ地点に展開

    うーん……(泡を吹いて倒れる)

    23
      • NIVEA万能論
      • 2026年 3月 22日

      他に迎撃手段がなく迎撃しなければ高価な軍事資産が破壊されるのであればSM-6だろうが何だろうが使うでしょうし、レーダーを2ヶ月間同じ地点に展開といっても2ヶ月前はまだ戦時ではありません。
      イラン攻撃開始からレーダーが破壊されるまでであれば半月も経ってませんよ。

      10
      • SB
      • 2026年 3月 22日

      1目標に最大8発のパトリオット……
      これはもうウクライナと米国は違うとかそういう話ではないのでは

      14
        • T.T
        • 2026年 3月 22日

        旧ソ連の軍事顧問が中東戦争の頃、アラブ人はミサイルを機関銃のように撃ちまくっていると苦言を呈していた記憶が有ります。逆に評価が高かったのがベトナム人ですね。
        旧ソ連の軍事顧問も米国の軍事顧問も、アラブ人のミサイル乱射癖を矯正するのには失敗したようです。

        9
    • 流浪の申し子
    • 2026年 3月 22日

    防空部隊は鋼の精神で自動照準をオフにし、ミサイルが目標に命中するわずか数秒前という極めて正確なタイミングで迎撃しなければならない←つまり、あれか。こいつ等ウクライナ兵は根性論でミサイル撃ち落としてるのか…。 

    9
      • マトウ
      • 2026年 3月 22日

      デフォルトで入っている管制システムに任せた自動発射では変則軌道をとる標的に対応できないということでしょうか。

      19
      • po
      • 2026年 3月 22日

      ベトナム戦争末期のF-105G.VS.SA-2でもギリギリまでレーダーのスイッチを入れるのを我慢する合戦になったという記事を思い出してしまいます。

      8
    • paxai
    • 2026年 3月 22日

    以前にイスカンデルの変則軌道によって迎撃率が低下してるって記事を見たのだが・・・
    ウクライナの強みは迎撃率の高さではなく被弾しても耐える精神と損害軽減の為の隠蔽&デコイのような。
    (損害軽減&隠蔽の面でAN/TPY-2を置きっぱにしてるのはアカン行為というのには同意)
    移動できない発電所や変電所への攻撃はかなり刺さってるように見えるが。

    何億ドルのレーダーを犠牲にしてでも石油施設の為に24時間レーダーを焚き続けるアメリカ  パトリオットの生存を最優先するウクライナ   勿論ウクライナの戦い方を研究するのは大切だとは思うけども。     

    27
    • 中村
    • 2026年 3月 22日

     ウクライナ戦争は4年も続いてるので間に合ってますけど、「戦間期の軍備は必ず間違っており常に泥縄で対応するしか無い。手錠が届いた頃には戦争は終わってる」自体が戦訓じゃ無いでしょうか?

     空自のレーダーサイトを全て移動警戒隊に置き換えるとか直ぐには無理ですし、海自のイージス艦のVLS5にはSM-2しか有りません。

     泣いても嗤っても目の前にはガーデンロイド(豆戦車)しか無いんです。鹵獲のブレンガンキャリアにパンツァーシュレック3連装(だったっけ)とか見てる分には本当に面白いんですけどね。

    13
    • 寒い
    • 2026年 3月 22日

    ウクライナ軍が異次元すぎるんです。皮肉な事にウクライナ軍と同じようなレベルの国ってロシアかフーシ派ぐらいで、後は湾岸諸国とあましり変わりないんじゃないでしょうか。マニュアルは使用者の想定レベルを中の下ぐらいに置いて、誰でも出来るように作るのが基本なので、効率が落ちるのは仕方が無いです。

    6
      • NIVEA万能論
      • 2026年 3月 22日

      そのウクライナ軍もパトリオット運用初期は湾岸諸国と似たような事やってたんですけどね。
      今は偉そうな事言ってますけど、

      11
        • 通りすがり
        • 2026年 3月 22日

        対無人機のノウハウにおいて偉そうではなく本当に偉いんですけどね。
        今は全西側諸国がウクライナに教えを乞わなければならない状況。

        18
        • 名無し
        • 2026年 3月 22日

        国民を守るために必死に戦って試行錯誤して来た人に対してこんなことを言う人にだけはなりたくない物だな
        結局リアルの戦争を知ってる気になってるだけでゲームをしてるのと変わらない感覚なのだろう

        15
        • そもそも
        • 2026年 3月 23日

        なんだか、ここの住人を含めて前提を忘れているような…
        ・ウクライナ戦争前からドローンや超音速ミサイルなどが登場していた。それらに対する対策は机上の空論だった
        ・ウクライナ戦争が始まって西側が支援したとき「最新兵器の実験場」などと謂われ、退役間近の旧式兵器だけでなく実戦未経験の兵器なども併せて供与された

        …なので、開戦→支援開始直後@4年前に、ほぼ誰も実戦を経験していない「ドローンの効果的な迎撃方法」が判ってないのは当たり前で、ウクライナが文字通り血と汗を流して経験を積んで、西側は支援の見返りにウクライナが得た知見のフィードバックを得ているはずなんですね(ウクライナが中東と知見を共有したかは知りませんが、米国は得ているはずでしょう)

        何が言いたいかっていうと
        「4年前のウクライナと2026年の米軍が同程度の対応力なのはオカシイよね」という話で
        某鉄血宰相のいう「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」を地で行っているなと
        ※もっとも、実際は普通の人は自身の経験からしか学べないので、愚者ではないのでしょうが

        この記事のタイトルから理解するに、管理者様はまさにそういうことを言っている…

        7
        • 特盛
        • 2026年 3月 23日

        ウクライナ軍は初期から今に至るまで経験を積んだんだから当たり前でしょ。
        偉そうなこと言ってるのは誰だか

        4
    • あばばばば
    • 2026年 3月 22日

    自分で火を放って周辺国に危機感を煽り、国内にいるアメリカに向かって火の粉が飛んできているから良く売れるわな
    いい商売してますな。まさにマッチポンプとはこの事

    7
    • せい
    • 2026年 3月 22日

    「ウクライナの戦場とは条件が違う」
    これは流石に傲慢とは違うくないかな?
    初動から首都付近まで攻め込まれ、その後は西側の支援頼りな期間が続いたウクライナと、イランと戦争中とは言え本国に影響のない米国及び西側諸国は流石に同列には扱えん
    勿論ウクライナが得た教訓は大いに学ぶべきだし、そこを否定はしないけど、これを日本に当てはめるには地理や環境の違いは当然触れなきゃいけないのに、それを傲慢と断じられたらまともな議論は出来ないよ

    8
    • 58式素人
    • 2026年 3月 22日

    他所の記事によると。
    米軍は、対イラン戦にA-10を投入したとのこと。
    ほぼ、制空権はもらった、ということなのでしょうね。
    当面、沿岸の高速艇(SSM/機雷を運用)対策と、UAV対策をするようですね。
    効果があると良いのですが。いや、多分、効果はあるのでは?。
    また、イラン海岸の地下SSM基地を、GBU-72/Bで攻撃したとのこと。
    これも効果があると良いですね。
    目下のホルムズ海峡の問題が解決すると良いのですが。

    5
    • ふむ
    • 2026年 3月 22日

    UAEとクウェートだけでこの出費…
    サウジとカタールとイラクとオマーンとヨルダンとバーレーンとイスラエルにも出すんでしょうか

    1
    • チャイ子腐好キー
    • 2026年 3月 23日

    日露戦争

      • チャイ子腐好キー
      • 2026年 3月 23日

      を欧州各国観戦武官がいたのに、第一大戦になんら戦訓となっていない過去から見ると、人間痛い目に遭わないと対策しないのでは無いでしょうか。

      間違って出してすみません。

      5
        • 山田
        • 2026年 3月 24日

        日露戦争の当時の総括って「どんなに防御を固めても粘り強く攻勢を取れば要塞は落ちる」だったのでちゃんと勉強してね

        1

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