米国関連

謎が謎を呼ぶ、F-117を世に送り出したスカンクワークス製の無人航空機が間もなく完成

ステルス攻撃機F-117や超音速高高度偵察機SR-71などを秘密裏に開発してきたロッキード・マーティンのスカンクワークスが再び怪しげな動きを見せて注目を集めている。

参考:Secretive New Skunk Works UAS Set For Ground Testing Soon

世間を欺くのが上手いスカンクワークスはStarDriveを隠れ蓑に何を開発しているのだろうか?

ステルスの採用や幾つもの機能を併せ持つよう設計された現代の戦闘機は開発期間が長期化して完成する頃には当初想定していた戦場環境との齟齬が発生、直ぐに手直し(=アップグレード)が必要となり製造から15年程度経過すると機体のメンテナンスコストが毎年3%~7%づつ上昇していき、製造から30年経過すると大規模なオーバーホールもしくはアップグレードが必要になる。さらに金も人も時間も大量に動員して開発が行われるため、一度開発の方針が決めると変更したり中止することが容易ではない。

出典:US Air Force / Photo by: Staff Sgt. Kate Thornton

この痛々しい問題を解決するため米軍はコンピュータ上に「Digital Twin(デジタルツイン)」と呼ばれる開発製品の双子を構築して、バーチャル環境でテストを行うことで設計通り作動するのか確認・調整を行う民間製造業分野で生まれた「デジタル・エンジニアリング」を軍用機開発に応用しようとしており、米空軍はデジタル・エンジニアリング、ソフトウェアのアジャイル開発、オープンアーキテクチャの3つを採用した軍用機開発の手法を「デジタル・センチュリーシリーズ(1950年代に次々と異なるコンセプトや技術を採用して登場した戦闘機群「センチュリーシリーズ」に因んでいる)」と呼んでいる。

実際に米空軍はデジタル・センチュリーシリーズと呼ばれる手法を用いて次世代戦闘機のプロトタイプを僅か1年で完成(すでにテスト飛行も実施済み)させており、戦闘機の開発期間やコストの大幅な削減を要求する米空軍の要求に米防衛産業が応えるためには軍用機開発に最適化されたデジタル・エンジニアリングを使用する開発環境をいち早く構築しなければならない。

出典:米空軍研究所 次世代戦闘機コンセプトアート

そのためロッキード・マーティンは米空軍が次世代戦闘機のプロトタイプが存在することを明かした昨年9月、独自に開発した「StarDrive」と呼ばれるデジタル・エンジニアリング・システムが軍用機開発において効果的に機能するのか検証する目的で無人航空機(UAV)を開発すると発表、同社のスカンクワークスはStarDriveを使用したUAV開発プロジェクトが「Speed Racer」と呼ばれていると明かしたが、どの様なUAVを開発するのかなどについては口を閉ざしている。

このSpeed RacerについてAviation Weekは最近、スカンクワークスが「StarDriveと呼ばれるデジタル・エンジニアリング・システムを使用して開発されたSpeed Racer UAVのテストが間もなく開始される」と明かしたと報じており、特にステルス攻撃機F-117や超音速高高度偵察機SR-71などを秘密裏に開発してきたスカンクワークスの作品なので大きな注目を集めている。

実際のところSpeed Racerについては何も追加情報も無いのでただの技術実証機である可能性が高いのだが、一部のメディアではStarDriveの検証目的という隠れ蓑を利用して本当は革新的な無人航空機もしくは無人戦闘機を開発しているのではないかと予想しており、この分野に興味がある方にとっては中々香ばしいニュースだ。

出典:ロッキード・マーティン

因みにSpeed Racer UAVで判明しているのは同機がTechnical Directions Inc製のエンジンを複数搭載するということだけで、Speed Racerという名称から期待される高速性については「まったく関連がない」とスカンクワークスが否定している。

果たして世間を欺くのが上手いスカンクワークスはStarDriveを隠れ蓑に何を開発しているのだろうか?

関連記事:米空軍、次世代戦闘機のプロトタイプを製造して試験飛行中だと明かす

 

※アイキャッチ画像の出典:ロッキード・マーティン

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 2月 22日

    ワクワクしますね

    20
      • 匿名
      • 2021年 2月 22日

      かつてはP-80を半年で初飛行させたロッキード、期待感はありますね。

      4
    • 匿名
    • 2021年 2月 22日

    UFOネタが復活した理由はこれだな
    相当機密性の高いもん作ってるんだろ

    8
    • 匿名
    • 2021年 2月 22日

    CPUも下手すると製造停止になりそうですしね。>開発中に

    2
    • 匿名
    • 2021年 2月 22日

    SR-72じゃない?
    開発するって以前言ってたよね。
    だけどまねするところがあるからあんまり公表しない方がいいと思うんだが。
    どうせどっかから圧力かかったんだろ。

      • 匿名
      • 2021年 2月 22日

      TDIのちっさいジェットエンジンじゃ音速突破できんよw

      5
        • 匿名
        • 2021年 2月 22日

        SR-71のエンジンはターボファンではなくターボジェットですね。
        完全でないものの圧縮機をほぼ迂回してアフターバーナー推力で推進するかなり特殊なエンジンで、なんと推力の9割をアフターバーナーで発生させています。
        こんな特殊エンジン、アメリカ神以外に誰も作ろうと思ったことはないでしょう。
        ということで、真似るだけでも一苦労のはず。

        2
          • 匿名
          • 2021年 2月 22日

          アフターバーナーというのは実態にあんまり即してなくて、実態はラムジェットエンジンだから。
          亜音速で飛ぶ構造部分のほうがむしろ変態。

          5
            • 匿名
            • 2021年 2月 23日

            >実態はラムジェットエンジンだから。

            ラムジェットの定義も知らない人間が上のようなことを言ってると自分で無知を晒して恥をかくだけだぞ.

            J58は全くラムジェットではない.なにしろJ58ではバーナー部で燃焼に使われる空気に(近似的にでも)等エントロピー圧縮された空気は全く含まれてないからな.

            J58で有名なバイパスチューブも圧縮機の途中の段で抽気されたのをターボジェットの燃焼室を通さずに直接にバーナー部に送り込んでいるに過ぎない.

            J58は速度に応じてバイパス比が変化する可変バイパスターボジェットだ.

            1
              • 匿名
              • 2021年 2月 23日

              君らは何で突然SR-71の話始めてんの?

              3
        • 匿名
        • 2021年 2月 23日

        TDI-J85(をコアとするターボラムジェットエンジン×2〜4)なら
        高速性能優先の無人機を超音速持ってくのに不足って事は無いんじゃない?

      •   
      • 2021年 2月 22日

      SR72は秘密でもなんでもなく正規に予算ついてるプロジェクトだから別物や

    • 匿名
    • 2021年 2月 22日

    Speed Racerといえばマッハ号
    自分も飛ぶと同時に小型の子機を射出する機能を持つ、くらいやってほしい

    1
    • 匿名
    • 2021年 2月 22日

    別に大して謎じゃなくてLM版Loyal Wingmanだと思うけどな
    Skyborg計画には参加してないし。その分野で他社に劣ってるからR&Dしてんでしょ
    LMは過去にF-16でMUM-Tは部分的に実証してる(Have Raider)けど、実際にその目的のUAVは製造してないはず(ブラックプロジェクトだったら知らんw)だからな。

    4
    • 匿名
    • 2021年 2月 23日

    オーロラはまだ公表されないの?(昭和脳)

    • 匿名
    • 2021年 2月 23日

    名前と性能に関係はないと言っても、ならばそもそも名前をつける意味がないのだし、やはり高速性能に重きを置かれた機体なんじゃないか?
    超音速巡航ミサイルなんじゃないの?今の時代、巡航ミサイルと自爆型UAVの違いなんてあってなきが如しだし

    1
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    詳細はわかりませんが、最近F-117が飛行している姿が捉えられていましたね
    なにかテストしているんでしょうか。

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