米国関連

米軍がAndurilに最大3.1兆円の契約を授与、戦場の優位性はソフトウェアで決まる

米陸軍はAndurilのLatticeを基盤としたソフトウェア定義型システムへの依存を高めており、国防総省は13日「戦場の優位性はますますソフトウェアによって定義されている」「Andurilの技術を陸軍に統合するため最大200億ドル=約3.1兆円の契約を授与した」と発表した。

参考:Contracts for March 13, 2026
参考:U.S. Army awards enterprise contract for IT commercial solutions
参考:US Army Awards Anduril Contract Worth as Much as $20 billion

Andurilは伝統的な大手企業が独占してきた防衛ビジネスの中で確固たる地位を築いたと言っても過言ではない

Andurilはパーマー・ラッキー氏がAIと無人技術に特化した防衛分野のスタートアップ企業として2017年に設立し、たった9年間の間に戦術ドローンのBolt、Altius、Ghost、超大規模生産と大量使用を前提にした低コスト巡航ミサイルのBarracuda、米空軍が無人戦闘機の第一弾調達候補に選定したYFQ-44A、世界で初めてXLUUVタイプの無人潜水艦として量産化が始まった豪海軍向けのGhost Shark、各国が関心を寄せる無人潜水艦のDive-LDとDive-XL、重魚雷としても使用可能な多目的水中プラットフォームのCopperhead、自律型海底監視ネットワークを実用化。

さらにカウンタードローンシステムとして小型ドローンを直撃方式で排除する迎撃ドローンのAnvil、迎撃ミサイルを空中に徘徊させて自律的に交戦させ、もし脅威と会敵できない場合は自律的に帰還して再使用が可能な垂直離着陸方式を採用したジェットドローンのRoadrunner、AIを活用して陸、海、空の自律的な状況認識を提供できるSentry、新たな脅威に数ヶ月~数年ではなく数時間~数日で対応可能なソフトウェア定義型の電子戦システムのPulsarも実用化し、この製品群のほぼ全てが自社資金で独自に開発され、それを米軍や西側諸国が購入している。

ここまで短期間でAndurilが躍進した理由は大まかに3つあり、1つ目は「とにかくアイデアを形にして見せる」「そのために自社資金でプロトタイプを開発する」「国防総省にアイデアを持ち込んで開発予算を確保したり、要件の取りまとめに時間を浪費しないため大手防衛企業よりも格段に開発スピードが早い」という点だ。Lockheed Martinも2025年10月の決算報告で「研究開発に対する従来のアプローチを転換した」「現在はホームランを打つため多額の投資を行うようになっている」と説明し、今後はリスクを承知の上で自社資金による投資を行い「アイデアを形にしてから軍に提案する」という意味だ。

2つ目は「機密性の問題で扱いづらく海外輸出に足枷になる軍事技術ではなく商用技術、デュアルユース技術を積極的に採用したオープンアーキテクチャを採用して各システムを構築している」「政府資金で開発したシステムではないためシステムやプログラム全体の所有権が国防総省ではなくAndurilにある」という点で、最後の理由は「戦場の優位性」がハードウェアではなくソフトウェアによって定義されるようになり、この点でも米軍もAndurilのLattice(ドローン、センサー、地上部隊など異なるデータを統合・解析するソフトウェア=防衛OS)を基盤としたソフトウェア定義型システムへの依存を高めている。

国防総省は13日「Andurilは陸軍の進化する作戦上ならびに業務上のニーズを支援する統一されたミッション対応能力に、独自のAI対応オープンアーキテクチャ=Latticeスイート、統合ハードウェア、データ、コンピューター・インフラストラクチャ、技術サポートを含む商用ソリューションを統合するため総額200億ドル=約3.1兆円の固定価格契約を受注した」と発表し、米陸軍も「現代の戦場はますますソフトウェアによって定義されるようになっている」「我々の優位性を維持するためにはスピードと効率をもってソフトウェア能力を獲得・展開できなければならない」と言及。

Andurilが獲得した契約は新規契約というよりも、国防総省がAndurilと個別に契約していた120以上の調達契約を1つの包括契約に統合するもので、国防総省は「この契約によって余計な中間マージンが削減され、合理化されたアプローチにより調達のタイムラインが短縮され、兵士が最先端のソフトウェアプラットフォーム、統合ハードウェア、データおよびコンピューティング・インフラストラクチャ、付随的なサポートサービスに迅速にアクセスできるよう保証される」と述べているが、最大の目的はカウンタードローンシステムの相互運用性の確保にあり、AndurilのLatticeを中心としたエコシステムを長期的に採用・活用する枠組みを確立した点にある。

これを監督するマット・ロス准将も「この包括契約は対UAS(無人航空機システム)の相互運用性を確保する共通の枠組みを確立する上で重要な一歩である」「これは基盤となる指揮統制能力を提供するもので、国防総省と省庁間のパートナーは兵士に国土防衛のための最も高度なツールを提供する、一貫性があり作戦上効果的なエコシステムへの明確な道筋を手にしている」と述べ、Andurilとの契約期間は5年間+オプション行使による5年間で、契約期間が10年まで延長された場合の最大契約額が200億ドルになるという内容だ。

出典:Jake Paul

この契約を報じたBloombergも「この10年契約は国防総省がソフトウェア主導型システムによる軍の近代化において、ベンチャーキャピタルが出資するテクノロジー企業への依存度を高めていることを浮き彫りにしている」と言及しており、もうAndurilは伝統的な大手企業が独占してきた防衛ビジネスの中で確固たる地位を築いたと言っても過言ではない。

今後、自律的な兵器システムの採用は爆発的に増えて「戦場の優位性」もますますソフトウェアに依存するのは目に見えているが、日本では目に見える形のハードウェアにしか注目が集まらず、前回の記事でも指摘したがドローン導入で重要なのは「高性能なドローンを買い揃えること」ではなく「信じられないスピードで変化する脅威や対抗技術への適応力」で、この核心的な部分を政策立案者や防衛当局者が見誤ると自律的な兵器システムの競争で致命的な脆弱性を抱えることになる。

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※アイキャッチ画像の出典:Anduril

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コメント

  • コメント (12)

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    • SB
    • 2026年 3月 15日

    Andurilは去年の暮れに日本法人設立してたりDSEI Japanに出展してたりと、日本でも今後の動向にすごく期待できる
    実際にやるかどうかはともかくとして、純日本製パーツだけのドローン作るとか面白いこともしてたね

    20
    • 2026年 3月 15日

    アンドゥリルはウクライナや台湾で結構黒い噂を聞くんだよなぁ・・・

    1
      • 特盛
      • 2026年 3月 17日

      そりゃ当然敵対勢力は悪い噂を流す情報戦を仕掛けてくるでしょう

      3
    • たむごん
    • 2026年 3月 15日

    ラッキーパーマーCEO(日本オタク)が、Kizunaドローンで純日本製部品のみのドローンを披露していました。

    Andurilは、中国から経済制裁を受けているため、日本企業のサプライチェーンへの期待感が極めて高いようですね。

    ウクライナから攻撃型ドローン輸入する話しがありましたが、Andurilがやったように、日本企業が日本製部品100%達成できるのを期待したいですね。

    14
    • ライブ
    • 2026年 3月 15日

    ・「とにかくアイデアを形にして見せる」
    ・「国防総省にアイデアを持ち込んで開発予算を確保したり要件の取りまとめに時間を浪費しない」
    ・「従来の研究開発手法のアプローチを転換した」
    ・「現在はホームランを打つ為に多額の投資を行なっている」
    どれもこれも日本人が不得意なものばかりだね。
    今の日本に染み付いている「リスク回避」・「人生送りバンド」の国家体質を変えなきゃ研究開発の投資予算を増やすだけじゃ無意味って事だね。

    8
      • ネコ歩き
      • 2026年 3月 15日

      本邦で防衛事業に対し同様の意欲を持って臨んでいるのはMHIぐらいですかね。同社にとって防衛関連事業はごく一部でもあるのでそれなりの抑制はあるのですが。
      防衛装備庁が「デュアルユース・スタートアップ・エコシステムの構築」を目標にスタートアップ企業の育成支援事業を一昨年から開始してますが、Anduril のような自己資金力や技術力及び意欲を持つスタートアップ企業は本邦では皆無でしょう。

      7
        • nednir
        • 2026年 3月 16日

        ソフトウェアに強いスタートアップについては、ソフトウェア技術者の性質みたいなのがある。数理で動く世界、またオープンソース技術の活用が盛んな文化で、さらに手を動かすだけでなく頭を使わないと革新的な結果は出ない。単に安定的な報酬でなくやる気を出させることが必要になる。アメリカ・中国・ウクライナ・イスラエルあたりではそういう世の中が回ってそうだけど、むしろ例外的な存在かもしれない。

        しかし今後はAIがある程度ソフトウェア書いてくれるから、また話が違ってくる。ソフトウェア開発がAIによって変容することを考慮しないとこの先は見通せない。

    • 2026年 3月 15日

    あまり話題にならないだけで、海上自衛隊では意識されてるみたいです。

    海上自衛隊、ソフトウェア優先の部隊編成を目指す

    リンク

    8
    • AKI
    • 2026年 3月 15日

    いざとなったら、アメリカの軍事ネットワークに入らないと話にならない自衛隊としては、いっちょ噛むしかないですね。

    出来れば共同開発に参加したいところ。
    後からだとF-35の二の舞ですから、日本製武装の対応も含め少額でも、早めに出資してほしいところ。

    8
    • 名無し
    • 2026年 3月 15日

    ドローン技術に関してはウクライナ軍やロシアのルビコンのように現実の戦場から上がってくるフィードバックを汲み上げて迅速に対応するために国営工廠が無いと厳しいでしょうね、わーくにの場合だと
    従来の防衛産業企業のやり方だとウクライナやロシアのようなスピード感で適応していくのは厳しいしね

    5
    • 58式素人
    • 2026年 3月 15日

    杞憂かもしれないけれど。
    ”AndurilのLattice(ドローン、センサー、地上部隊など
    異なるデータを統合・解析するソフトウェア=防衛OS)”
    デュアルユース品を使えば、確かにハード面の規制は緩くなるのかも。
    しかし、今度は、”防衛OS”で囲い込んでくるのでは?。
    ちょうど、マイクロソフトがウインドウズでやったみたいに。
    詳しくないけれど。
    仮にそうだとしたら、それを破る方法はあるのかな?。
    はたまた、長い物には巻かれろ、なのかな。

    1
      • nednir
      • 2026年 3月 17日

      杞憂でもなんでもなくその通りです。(Windowsについては諸説あります。)それを破る方法は、自前でOSを作ることです。

      1

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