米空軍は非ステルスの武装可能な無人航空機=MQ-9について「中国と対峙する太平洋地域では生存性は見込めないため2035年までに退役させる」と主張していたが、対イラン作戦でMQ-9の価値が見直され、消耗分のMQ-9補充やMQ-9後継機の検討が始まっている。
参考:To Replace Lost MQ-9s, USAF Eyes Next-Gen Reaper
参考:USAF Clears Requirements Doc For MQ-9A Replacement
参考:早期警戒無人機の導入を政府検討、太平洋の監視強化…対中抑止へ広範囲の脅威探知
MQ-9の後継機は「消耗品として利用可能な調達コスト」と「センサーパッケージのモジュール化」が必須
ゼネラル・アトミックス製のMQ-1、MQ-1C、MQ-9A、MQ-9B、バイカル製のバイラクタル・TB2、バイラクタル・アクンジュ、トルコ航空宇宙産業製のアンカA、アンカB、アンカC、イスラエル航空宇宙産業のヘロンTPといった武装可能な無人航空機(UCAV)は情報収集、監視、目標捕捉、偵察=ISTAR能力に加えて攻撃兵器を携行することができ、リビア内戦、シリア内戦、ナゴルノ・カラバフ紛争、ウクライナ戦争の初期においても対地攻撃能力が評価された。

出典:Армія Інформ / CC BY 4.0
特にロシア軍は侵攻した地上部隊に対するエアカバーについて「航空優勢の確保で解決できる。そもそもウクライナ空軍の規模は非常に小さい上、侵攻作戦自体も短期間で終わるため大きな問題にはならない」と考えていたが、移動可能でカモフラージュされた高度な防空システムを破壊する難しさ、低空飛行で侵入しても西側諸国が大量に供給した携帯式防空ミサイルの脅威に晒され、ウクライナ領上空の航空優勢確保に失敗してしまう。
そしてウクライナ侵攻作戦は短期間で終わらず、侵攻した地上部隊や占領地域に対するエアカバーは地上配備型防空システムに依存することになり、特に侵攻初期は接触線がダイナミックに動いていたため、後方地域に配備した高度な防空システム=S-300やS-400といった長距離防空システムだけでは前線上空の低空域をカバーしきれず、TB2に生存可能なギャップを与えてしまい、携行する対地攻撃兵器で前線付近のロシア軍地上部隊を、装備するEO/IRセンサー(最大75km先の車両を認識でき、最大20km先にある目標の位置を特定可能)で後方地域の兵站を苦しめることになった。
この活躍が決定的になってUCAV=対地攻撃能力という認識と評価が独り歩きしたが、軍人、軍事アナリスト、ディフェンスメディアは「UCAVにとって対地攻撃任務は能力の一部に過ぎず、有人機に難しい24時間以上の滞空能力、EO/IRセンサーによる視覚的な戦場認識力の拡張、機外搭載が対地攻撃兵器に限定されない多用途性(電子戦、信号情報収集、戦術通信中継など)といった能力がキルチェーン全体に大きな優位性をもたらす」と評価。
ロシア軍が短期決着を諦めて戦場整理と部隊再編を行い、地上配備型防空システムで膠着した前線や占領地域のエアカバーを多層化するとTB2は前線付近上空で生存できなくなり、UCAVの一般的な評価も「防空システムが存在しないローエンドの戦いでしか効果を発揮できない」「強力な国とのハイエンドの戦いでは全く役に立たない」と様変わりしたが、各国の軍事当局者はUCAVを高く評価してMQ-9B、TB2、アクンジュ、アンカを次々導入した。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Renee Blundon
米空軍も2021年~2024年の間にMQ-9A Block5を新たに34機調達する計画だったのだが、調達コストが高価で運用に手間のかかるMQ-9に見切りをつけ「2021年度で調達を打ち切る」と発表、これを議会が拒否してMQ-9調達資金を復活させたため「調達打ち切り」は回避されたものの、当時のジョン・ロス空軍長官代理は継続調達を訴えるジャッキー・ローゼン上院議員に宛てた手紙の中で「MQ-9の在庫は将来の作戦における需要を十分満たすことができる」「そのため同機をこれ以上買い足す必要はない」と言及。
米空軍はMQ-9について「中国が高度な防空システムを運用しているため太平洋地域の生存性が見込めない」「こういったレガシーなISR戦力から資金を引き上げない限り、高度なステルス性を備えたISR戦力の開発や調達は不可能だ」と主張し、2035年までにMQ-9を全て退役させるつもりだったが、対イラン作戦=エピック・フューリー作戦でMQ-9の評価が「防空システムに撃墜されるから役に立たないのではなく、無人機最大のメリットを活かして有人機の撃墜リスクを肩代わりしている」と変化し、米空軍は対イラン作戦で失ったMQ-9(12機~24機)の補充を検討中だ。
Another US MQ-9 Reaper UCAV was shot down by IRGC Aerospace Force air defense over Hormozgan province. Some sources write that this is an Israeli Hermes-900, but this is clearly US MQ-9 with Hellfire missiles pic.twitter.com/7nvOEEoGUz
— Yuri Lyamin (@imp_navigator) March 7, 2026
さらに米空軍はMQ-9の後継機についても検討中で、ウクライナ戦争勃発前までは「高度なステルス性を備えた後継機になる」と予想されていたものの、現在は「モジュール式のオープンアーキテクチャ技術を採用した大量生産が容易なものを購入し、最終的には消耗品として利用できるようにすることだ」と説明しており、MQ-9の後継機候補に関する情報提供要請でも「最大1,500kmの航続距離、20時間の滞空能力、低~中程度の取得コストで100回のISR任務を遂行できる航空機」と説明している。
ちなみに英語版のWikipediaで言及されているMQ-9の平均単価3,400万ドルは「機体単価」ではなく「調達コストを機数で割った関連費用込みの取得コスト」で、米空軍は2021年度予算でMQ-9A(16機)調達資金として7.9億ドルを計上していたため、1機あたりのMQ-9A Block5取得コストは4,940万ドルになるが、米空軍の事故調査報告書(地中海墜落事件)とGeneral Atomics関係者の証言によればMQ-9A Block5の純粋な機体単価は1,300万ドル~1,600万ドルの間となり、米空軍と2020年に締結した最終契約では1機あたり1,600万ドルだったらしい。

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. David Getz
そしてMQ-9A Block5の機体単価が1,600万ドルで、取得コストが4,940万ドルもするのはセンサーパッケージに原因があり、米空軍のクリストファー・ニーミ少将は「現行のMQ-9は搭載センサーの構成次第で最大5,000万ドルものコストがかかる」「よりモジュール化された設計にすればハイエンドのリスク環境下における運用で、コストを押し上げる要因となる高価なセンサーパッケージを外せば価格を大幅に引き下げられる機会を活かせるだろう」と言及。
要するにMQ-9AやMQ-9Bの搭載センサーは機体に組み込まれているため「任務に応じて不必要なセンサーを取り外すことが出来ない」となり、つまり対イラン作戦で移動可能な防空システムの構成要素、車載型の弾道ミサイルランチャー、車載型の自爆型無人機ランチャーなどを監視するのに必要なのはEO/IRセンサーであり、AESA、ATAR、合成開口レーダーを簡単に取り外しできれば「作戦コストを引き下げることができる」という意味だ。
The Iranian regime has been the number one threat to peace and stability in the Middle East for years. U.S. forces continue to take decisive steps to neutralize Iran’s power projection capabilities. pic.twitter.com/JOT7rRGH7L
— U.S. Central Command (@CENTCOM) March 13, 2026
どちらにしても、MQ-9の後継機は「消耗品として利用可能な調達コスト」と「センサーパッケージのモジュール化」が必須で、TB2のような小型で安価なUCAVになる可能性が高い。
追記:読売新聞は18日「政府は太平洋の防衛強化に向け、広範囲の状況を把握し、いち早く脅威を探知する早期警戒機用レーダー搭載の無人機を自衛隊に導入する方向で検討に入った」「早期警戒機用レーダーを搭載する機体は今後詰めるが、海上自衛隊が2027年度に導入予定のMQ-9Bが有力だ」と報じており、ゼネラル・アトミックスは2025年「MQ-9に統合可能な超広域センサー」の存在に言及し、この超広域センサーの作動範囲は非常に広大なため「少数のMQ-9で米本土をカバー可能だ」と明かしたことがあるものの詳細は不明だ。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class William Rio Rosado





















米軍がMQ-9を再評価したのは悪い動きだと思う。
MQ-9はニアピアには生き残れないって評価は妥当でしょ。
これは非対称戦の兵器にすぎない、それを対ニアピア向けに
再編する所だったのにトランプの思いつきでまた非対称戦を
始めたから図らずも役に立ってしまった。
結局米軍は対象戦に最適化するのに一生手こずってるだけなんだよね。
流石にミリオタの机上論よりも
実戦で得た米軍の評価の方が信頼性高いだろ
使い捨てにするなら使えるって評価ですかね
有人機落とされるよりマシだと
あとはどれだけ安物にできるかですかね
撃ち落とすにはそれなりにコストがかかり、かと言って撃ち落とさないと情報は抜かれるわ地上兵器の命中率は上がるわ本人も攻撃してわなんで、「河原のアブ」みたいな兵器なのかもしれません。
オーバースペックのセンサーを用途に応じて換装してコストを下げられれば、よりうざくなるので、地味に効くんでしょうね
自衛隊が検討している使い捨てセンサーミサイル?もコンセプト的に効果的なんでしょうか?滞空時間が違いすぎますかね
元々MQ-9は、下記①が評価されていました
①パイロットを危険にさらさずに、有人機が担ってきた任務の一部を肩代わり出来る
一方、
②比較的大型な機体うえに中高度で運用なので、防空システムが充実した戦場だと生存性が見込めない
③使い捨て前提運用にするには、調達コストが高過ぎる
④運用にも多くの手間や人員が必要で、運用コストが高過ぎる
とコスパが疑問視され、下記の話しが持ち上がったのですよね。
>MQ-9リーパーの調達を中止して、低価格の商用無人機を同機の後継機にあてる計画を検討
よくこのサイトで話題になる『兵器なんて質より量』についても、MQ-9は③④から不向きな訳だし、MQ-9調達中止は当然の流れだったと解釈しています。
今回の紛争で変わったのは、①の価値が急上昇しただけで、②~④は依然変化なし。
そして①の価値が急上昇したのは、トランプ政権が『米兵の犠牲』を恐れた副作用の様に見えます。
MQ-9後継機に『消耗品として利用可能な調達コスト』を求めるのは良いけど、元々やろうとした『低価格の商用無人機を同機の後継機にあてる』に比べると不徹底な印象で、
その意味合いから、p-traさんの仰る「米軍がMQ-9を再評価したのは悪い動きだと思う」にも一理あると思っています。
非対称戦向けに残すという事でしょう
墜ちやすいなりの利点があるなら、二アピア向けの高価格無人機で中東や中南米までカバーする必要ないですから
これで極東などの二アピア向け装備が疎かになる訳ではないかと
安価無人機と高コスト高性能無人機のセットにしてもいいし、諸コスト下げられるならより使いやすい機体になるじゃないか
ロクに無人機を買えない使えない日本の視点で語るからそうなる
中東で有人機の身代わりになってくれるというのは、単に相手の防空能力が低いからでは…?
撃墜されるような事態がそもそも少ないからこそ消耗可能なユニットとして利用できるけど、中国相手にUCAVが許容可能な消耗で抑えられるとは到底思えないんですけど。
中東だとまだまだ使えそうなんでと言われればそれまでですが
このサイトに来るまでは、兵器のスペックばかり見ていたけど、運用の仕方、統合、数をそろえられるか等、色々な要素をみる必要があると、勉強になった。
やっぱり、実戦で使ってみないと分からない事も多いね。
MQ-9B STOL AEWが早く実用化されて、ひゅうが型護衛艦や強襲揚陸艦で運用されて欲しい。
『パイロットが乗っていない事』無人機の価値は、これだけでも極めて高く感じています。
どれくらいの危険かどうか分からない任務に、真っ先に使えるうえに、有人機のような捕虜リスク(人命リスク)もないですからね。
(有人機の代わりに)攻撃を受ける事ですら、1つの目的を達成していると考えれば、極めて有益だなと感じています。
個人的には、防空火力が多層化しているように、攻撃側も多層化すべきだろうと考えています。
有人機は、調達コスト・運用コストと共に、(犠牲が出たとき)西側だと政治的なコストも大きいので、
有人機を機能補完すると共にデゴイ役として、MQ-9などの高級無人機が要る。
一方その高級無人機は、防衛システムを飽和させるには高コスト過ぎるので、機能が限定的で低コスト大量配備のドローンも要ると。
長距離ミサイル・中距離ミサイル・短距離ミサイルの多層構成との対比みたいな感じですかね?
そして下のレイヤーの機体程、操縦者が数量確保のボトルネックにならないように、なるべく自律タイプであって欲しいです。
簡単に落ちるからあかんではなくてどうせリスクは避けられないにら無人機(それもなるべく安価な)にやらせた方がいいという発想の転換ですかね
MQ-9B AEWが完成採用と同時に、米軍がMQ-9Bの後継機を採用しちゃってラインが縮小、最悪閉鎖で運用コストが爆上げ、
なんて嫌な未来を予想してしまった
AEWのシステムはパッケージ化しておいて、MQ-9Bと同じぐらいの機体には外付け出来る様にしておく、ってのは無理なのかな
無人機は入れ代わりが早いから、〇〇専用機材なんて用意してても、その機体が廃れたら、その機材もいっしょに廃れてしまう
何なら既存の、例えばE-2D辺りの装備、システムを遠隔操作用に改造してパッケージ化でもよさそう
中国の長距離空対空ミサイルPL-15・PL-17の登場でAWACS、AEWの生存性にい疑問符が付きましたからね。
無人機AEWってのは一つの回答なのかもしれません。日本が撃墜前提で運用するにはMQ-9は高すぎますが。
無人機AEWってすぐ思い付きそうなのに、意外と実機がまだないんですね。
人を損なわないって価値にどれだけ投資できるかって時代やなぁって思った
ISR能力は現場の生死に直結するから無理に安くも出来んし、かと言って性能が同じなら有人機のが安くなるとは言え、人の命はプライスレスだからね
宇宙ベースのISRに切り替えたくなるのも解るけど、失敗した場合の保険は絶対に用意してなきゃいけないし、高度なUAVの研究は止められないね
「撃墜されて、機体を接収されても痛くない。」というのも、意外と大事な視点かと。最新技術のステルス無人機をバンバン飛ばして、便利にいろいろ戦術的な情報取れたとしても、何らかの理由で接収されて技術を丸裸にされれば、それ以上の戦略的な痛手じゃないですか。(ここぞとばかりにRQ-170の古傷に塩を塗る。)
「撃墜されて、機体を接収されても痛くない。」というのも、意外と大事な視点かと。最新技術のステルス無人機をバンバン飛ばして、便利にいろいろ戦術的な情報取れたとしても、何らかの理由で接収されて技術を丸裸にされれば、それ以上の戦略的な痛手じゃないですか。(ここぞとばかりにRQ-170の古傷に塩を塗る。)
F-15のCSAR(戦闘捜索救難)においくら万ドルかかったんでしょうね。155機の作戦機に特殊部隊総動員。
まあ、全員がそのために現地にいたわけではないにしろ…。
固定式レーダーサイトの脆弱性がハッキリしてしまいました。無人AEW機を整備して硫黄島から飛ばすと言うのは解の一つだと思います。
誰がどう考えても固定サイトは守りようが無い。なにせ、位置が最初からバレてるんですから対レーダーミサイルである必要すらない。