トランプ大統領は7日「防衛企業が兵器生産施設の近代化に投資しない限り、自社株買いや株主への配当金支払いを禁止し、役員報酬にも制限を課す」という大統領令に署名し、特にRaytheonについて「米軍のニーズよりも株主への還元に最も執着している」と名指しで非難された。
参考:PRIORITIZING THE WARFIGHTER IN DEFENSE CONTRACTING
参考:‘BEWARE’: Trump order demands some defense firms halt paying dividends, buying back stock
投資家たちは今回の方針転換を受けて伝統的な防衛企業に対してどんな反応するだろうか?
ヘグセス国防長官は昨年5月「包括的な改革」を陸軍長官に命じ、ドリスコル陸軍長官も「伝統的な防衛産業企業が誤解しているのは大統領や国防長官が改革のため一時的な痛みを容認してる点だ」「伝統的な防衛産業企業は今後数日、数週間、数ヶ月以内に新しい状況へ対応し、変化を始めなければ死が待っていることをに気づき始めるだろう」「我々は彼らを救済するつもりはないので自らの力で成功して欲しい」「数年以内に陸軍へ販売できるシステムは素晴らしいものだけしか残らない」「なぜなら、そうでないシステムを購入するつもりがないからだ」と言及し、ヘグセス国防長官も昨年11月に調達改革の全容を発表した。

出典:DoW photo by U.S. Navy Petty Officer 1st Class Alexander Kubitza
防衛関連の主要企業や新興企業、GoogleやMetaなどのIT企業、SpaceXなどの宇宙企業など34社の最高経営責任者を招待した講演の中で「国防総省の防衛産業政策はリスクを最大限回避する官僚主義が反映され、現在の防衛産業基盤は有事の際に生産規模を拡大できるようになっておらず、さらに『資金供給の正式決定まで動かない』という考えに甘んじ、必要とされている技術の生産に乗り出そうともしない」「これは産業界基盤全体全体にも言える話だが、最も重要なのは国防総省と取引している大手企業に関係する」「リスク回避の経営方針を改めないと防衛取引から姿を消すことになる」と警告。
さらに「今後の調達契約は非常に競争的なものになる」「現状に甘んじて競争を望まない企業は必要ない」「今回の演説内容は時間が経てば忘れ去られるものではない」「これは従来のやり方や官僚主義を変えるための容赦ない攻撃の始まりだ」「産業界が資本家として十分な利益と収益を確保しなければならないのを理解しているが、あらゆるコストを納税者に負担させようとするのではなく、自らの投資が必要になっていることを認識してほしい」とも指摘した。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Zachary Rufus
米国製システムの納入遅延は国内産業力の低下というより「契約を獲得した請負業者がプログラム全体を独占できる慣行」「タイムリーな納品よりも安定した収益を優先する経営判断」に原因があり、トランプ大統領も7日「Raytheonは国防総省のニーズに対して最も反応が鈍く増産ペースも最も遅い。米軍のニーズや要求に応えることよりも株主への還元に最も執着していると国防総省から報告を受けた」とTruth Socialに投稿した。
“Raytheonは現在の政権がバイデン政権と同じで従来のやり方が通用すると考えているようだが、それは大きな間違いだ。Raytheonが考えを改めて工場や設備といった先行投資を増やさない限り、国防総省との取引は打ち切られるだろう。政府とのビジネスを継続したいのであれば、これまで数十億ドルも投じてきた自社株買いも一切認めない。事態を正常化するまでこの方針は絶対だ。我が国が最優先だ。そのことをRaytheonは身をもって学ぶことになるだろう”
トランプ大統領はTruth Socialへの投稿後「防衛企業が兵器生産施設の近代化に投資しない限り、自社株買いや株主への配当金支払いを禁止し、役員報酬にも制限を課す」という大統領令に署名し、ヘグセス国防長官は30日以内に「契約上のパフォーマンスが著しく低い」「必要な生産能力に対して自己資本を投資していない」「政府との契約を十分に優先していない」「生産速度が不十分である」に該当する防衛企業を特定し、これを当該企業に通知して「問題が改善された」と判断されるまで自社株買いや株主への配当金支払いを禁止するらしい。
トランプ大統領も「すべての米国防衛関連企業、そして防衛産業全体に警告する。わが国は世界最高の軍事装備を作っているが、防衛関連企業は工場や設備への投資を犠牲にして株主への巨額の配当や大規模な自社株買いを行っている。このような状況は絶対に許容も容認もされない。これらの問題が是正されるまで防衛関連企業の配当や自社株買いは許可しない。給与や役員報酬についても同様だ。軍事装備の製造スピードが遅すぎる」と述べて、今回の措置はRaytheonだけでなくLockheed Martin、Boeing、Northrop Grummanといった主要防衛企業を標的にしている。

出典:Australian Defence Force/Kym Smith
GA-ASI、Anduril、Shield AI、Kratos、CoAspire、Zone5 Technologiesといった新興企業は「積極的な自社投資によるアプローチ」が認められた格好で、投資家たちは今回の方針転換を受けて伝統的な防衛企業に対してどんな反応するだろうか?
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※アイキャッチ画像の出典:United States Navy





















アメリカ大手銀行に対して、自社株買いや配当の制限をしたことが、リーマンショック後(公的資金注入後)にあったんですよね。
自社株買いに課税なんかもありましたが、(全産業ではなく)防衛企業を狙い撃ちで同じようなことができるのかと驚くと同時に、アメリカ大統領の権限の強さも感じます。
『飴と鞭』防衛予算増額を発表したところのため、設備投資に回せということなのでしょうね。
人材確保に難がでます。ビックテックと獲得争いしてるのに、防衛産業にいったらストックオプションとかほとんど期待出来ないってことでしよ?ただでさえアメリカの理工系は巨額の学生ローン抱えてるのに!
ブルーカラーの獲得争いに勝ち抜かないと、成り立たなくなりそうなんですよね。
大卒人材といっても需給の関係だっただけで、今アメリカ大卒者の就職が厳しくなってるという話しがあります。
例えば、海軍艦艇の保修要員の増員・ドッグの建設なんかは現場作業員が求められてますから、ブルーカラー重視も時代なのでしょうね。
(2025年11月2日 米国で「ブルーカラービリオネア」現象 AI発展で潤う肉体労働者 NIKKEI The STYLE 「文化時評」 日経新聞)
(株主配当も自社株買いも)欲しがりません勝つまでは
自社株買い自体は不要な投資を避けるとか、買い戻しからの自社投資みたいな合理的なものも存在するんだけど、今のアメリカ企業における自社株買いなんてEPSの見栄えを良くするか株主に還元するだけのマジで単なるマネーゲームでしかないからな
“まともな”投資家なら逆に期待するんじゃないか?
まさに仰る通りです。
経営者の無駄な投資・多角化による莫大な損失について、論文=ケーススタディなどが大量にあり、自社株買いは合理的な面もあるんですよね。
日本企業の海外M&Aも、ほとんど失敗してるわけです(NTT・キリン・パナソニック・日本板硝子など有名ですね)。
仰る通り、まともな投資であるならば、ポジティブかもしれませんね。
200兆円規模の投資を行い、夢のような軍隊創設を掲げたトランプ政権なのでそれに見合った防衛産業を作れというお達しなのでしょう。対抗馬の中国がアメリカ以上の速度で戦闘機や最新鋭空母に資金を投入している以上、間違っていないとは思いますが、問題なのはそれだけの投資によって作られた軍隊が本当に中国やロシア相手に使う気があるのか?ということでしょう。今回のベネズエラやグリーンランド(使うかもしれない段階だが)のようなまともな反撃手段も無い相手にしか使わないとなれば、自国を守るために渋々、アメリカの横暴に従う事を選んだ国々は絶望するしかないでしょう。
調達もガタガタで製造業もガタガタの状態で上手く行くのかね?
まるでアメリカ以外はガタガタじゃないみたいな言い方だな
戦時でもないのに産業界にここまで強烈な規制が本当にできるのでしょうか?
公的資金を投入するから規制をかけるならわかりますが
自社で投資をしないから規制するというのは、経営の自由に対する侵害では
なんだか、ものすごい裁判になってグダグダで終わりそうな気がします。
いやまったく。
実行力がどこまで伴うのかが疑問。
別に設備投資しなくともタイムリーな納入が出来るなら何の問題もないと思うけど。交代勤務してないなら交代勤務をする、改善活動に力を入れるとか雑巾を絞る余力はあるかもしれないし。
そもそもボーイングレベルのやらかしが頻発してるのか契約上どうなっているのかが分からないと企業を叩くことが出来るのか分からないんだよね。
無視するのは自由だけど将来の米軍調達から排除されるだけでしょう。それが企業価値向上につながると思うなら好きにしたら良い。
>公的資金を投入するから規制をかけるならわかりますが
投入された公的資金で自社株買いをしたから規制がかけられるのですよ
>「Raytheonは国防総省のニーズに対して最も反応が鈍く増産ペースも最も遅い。米軍のニーズや要求に応えることよりも株主への還元に最も執着していると国防総省から報告を受けた」とTruth Socialに投稿した。
とトランプがSNSに投稿したのは、AN/SPY-6の生産ペースが上がらないので、投入された特別予算でレイセオンの経営者が自社株買いをしてしまったからだそうです
正確に言うとAN/APG-82(V)1(F-15EXのレーダー)等も含めたレイセオンのレーダーの生産部門全般を改善するための特別予算で自社株買いしちゃったそうなんです
生産力向上のための政府資金を目的外に勝手に分配とか中国でやったら生産力大好きの習主席が激怒して最悪自殺で責任取らされそう
USスチール買収騒動では全米鉄鋼労組に対してトランプ政権は圧力を掛けなかったはずですが、ボーイングで行われた従業員の長期ストライキとか老舗防衛産業での長期ストライキについて同じようなことが次にも発生したら政府としてどんな対応するのか気になりますね。
ボーイング社のストライキで米軍への納入品が長期間止まったことについての大統領府の声名については知りませんが、票田につながる労働組合については今回の企業に対しての圧力と比べれば対応が甘いままなのかな?時になりますね。
自社株買いの制限で設備投資に回させる
いいことだとは思いますがね。ここ数十年のアメリカ製造業の衰退みてると強硬手段でも行使しないと衰退する一方ですぜ。
ボーイングとかの自社株買いを批判していた
清谷氏は賛成しそう
余剰を資本家の財布に入れるのではなくて兵器開発に回す
方向性は正しいと思いますが裁判になったら厳しそう
財産権は資本主義の根源ですし
またトランプジュニアに空売りでもやらせたんじゃないの
>投資家たちは今回の方針転換を受けて伝統的な防衛企業に対してどんな反応するだろうか?
まず新興軍事企業には株を公開してくれって感じ
でないと、旧来の防衛企業株を売り買いするしかないので
投資家に取っての軸はただ一つ
どっちがより自分の利益になるか、それだけだ
それは起業家にとっても同じでして、投資家に利益を与える動機は全く無いのですよ。
非公開企業に出資するには、ファンドや個人で投資するしか無いと思います。
株式公開は非常にハードルが高く、それこそ株主還元を要求されたりします。
私も過去にIPO企業の中の人だったこともあります。
株式公開をすると経営者は本業をそっちのけで広報活動に追われる日々で、経済活動として健全だったかというと微妙でした。貴重な体験ができて、それはそれで面白かったですが。。。
株式公開って本来事業の資金調達が目的ですからね
別に国が大量に仕事くれる、ってんなら銀行説得して設備投資すれば良いだけの話だし……
しかし、良い経験をなさってますね
アメリカ防衛株の反応を見ると、寄り付き後かなり上昇してますね。
トランプ大統領が並行してぶち上げた金額が、非常に大きいため、そっちに反応したのかもなあと。
ロッキードマーチン・ノースロップグラマン・レイセオンなど、SP500が動いていない中かなり上昇していますね。
アメリカがグローバリズムからブロック経済に回帰するなら、国益に反するような資本の移動や経営判断は許されなくなるのでしょうね。
軍需産業の顧客は国ですし…。
増産の設備投資のために自社株を売却したとして、外国に買われたらどうするんだろう
これはすごく良いね株主資本主義が国を弱くしてるのは明白だから
この調子で他の産業もどんどん統制してほしい
日本も最近株主資本主義始めて投資家から企業に供給された金より企業から投資家に支払われた金のほうが多いという馬鹿な状況になってるからアメリカが率先して是正してくれると日本もやり易くなって都合がいい
>あらゆるコストを納税者に負担させようとするのではなく
ただでさえアングロサクソンはすぐモラルハザードに陥って補助金や開発予算の枠内でのコスト最大化しようとするのに
冷戦終結でさらに寡占化しても国が金入れてグリップしなかったからな
金が余れば、自社株買いで自己資本比率を上げて、経営の強化に走る。それは企業として自然な流れ、日本のように銀行とのもたれあいは、貸しはがしを食らい、リーマンショックの時に実に恐ろしいことと骨身にしみている。そうでないやつもいるが。経営体制の強化は企業として当然のこと。政府の言うがままに、設備投資に金を流し込んで、中国と戦争するなら大儲けだが、核戦争リスクを回避できない今、中間選挙後に大赤字になるリスクを抱え込むか。それくらいなら、配当を増やして、株主を引き付ける方向で、経営体制強化に向かう。