ギリシャは「トルコのF-35プログラム復帰」を危惧してきたが、トランプ大統領は25日にエルドアン大統領と会談すると発表し「ボーイング製航空機の大規模購入、F-16の大型契約、F-35交渉の継続などで前向きな結論が出ることに期待している」と述べた。
参考:Trump says to host Turkey’s Erdogan at White House on Sept. 25
参考:Trump, Erdoğan to discuss Türkiye-US ties in meeting at White House
エルドアン大統領にとって「ボーイング製航空機の大規模購入」はトランプ大統領から譲歩を引き出すための材料かもしれない
トルコはオバマ政権時代にパトリオット導入を要請したものの「技術移転」や「共同生産」といった条件で折り合わず、最終的にトルコの要求に近いロシアの提案を受け入れてS-400を導入したが、その直後に敵対者に対する制裁措置法=CAATSAが成立し、トランプ政権は2019年「F-35とS-400を並行して運用することは出来ない」という理由でトルコをF-35プログラムから追放、議会が要求する制裁には難色を示したものの、最後には議会の要求に屈してCAATSAに基づくトルコ制裁を発動したため両国関係は後戻りができない状況に追い込まれてしまう。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Zachary Rufus
NATOにとってトルコは欧州最大の陸上戦力を有し、戦略的に重要な地中海と黒海を繋ぐボスポラス海峡も管理しているため、バイデン政権は関係改善を試みたもののトルコはS-400の廃棄に応じず、民主党もギリシャによるロビー活動の影響でトルコとの関係改善に慎重な立場をとり、ウクライナとロシアの戦争も安全保障における計算を大きく狂わせ、バイデン政権による関係改善は具体的な成果を出せずじまいで「トルコが支払ったF-35関連の資金をどうするのか」という問題も宙ぶらりんのままだ。
トルコは「発注したF-35Aを引き渡さないなら支払い済みの13億ドルを返金すべきだ」と主張しているが、米議会は「保管状態だったトルコ発注分の所有権を米空軍に移転する」と命じただけで、この機体分の支払いをどうするのかについて何も結論を出しておらず、トランプ大統領が政権の座に戻ってくるとエルドアン大統領との個人的な関係が急速に深まり、ギリシャメディアは「トランプ大統領とエルドアン大統領が電話会談後、ワシントンでは制裁解除(敵対者に対する制裁措置法=CAATSA)が決定された場合に備えて法的・政治的手段の模索が始まっている」と報じてF-35プログラムへのトルコ復帰を危惧。

出典:Presidency of the Republic of Türkiye
両者はNATO首脳会談でも会談を行い、エルドアン大統領は「トランプ大統領とF-35問題について協議した」「我々はF-35を調達するため13億ドル~14億ドルを支払っており、トランプ大統領はF-35の納入について善意を持っていることを確認した」と言及、さらにAP通信は「これまでの米国は『F-35プログラムにトルコが復帰するためにはS-400廃棄が必要』という立場だったが、エルドアン大統領は『この件についてS-400問題は協議しなかった』と述べた」と報じていたが、トランプ大統領は「エルドアン大統領と会談してF-35に関する協議を行う」と発表した。
トランプ大統領は「エルドアン大統領をホワイトハウスに迎えられることを大変嬉しく思う」「エルドアン大統領とはボーイング製航空機の大規模購入、F-16の大型契約、そしてF-35交渉の継続など多くの貿易・軍事協定に取り組んでおり、前向きな結論が出ることに期待している」と述べ、F-16の大型契約とは「F-16 Block70×40機」と「既存のF-16C/DをBlock70/72にアップグレードするための近代改修キット×80機分」のことだ。

出典:U.S. Air Force photo Senior Airman Shelimar Rivera Rosado
トルコは米国依存を引き下げるためF-16C/Dのアップグレードを「独自技術によるアップグレード」に切り替え、トルコ航空宇宙産業は既に35機のBlock30を独自のAESAレーダー、ソフトウェア、電子機器でアップグレード済みで、F-16 Block70×40機もタイフーン取得に置き換える交渉が進められており、F-16の大型契約に「前向きな結論」を期待しているということは「何らかのトレードオフが行われる」と示唆しているのかもしれない。
そのトレードオフが「F-35交渉の継続」に関連しているのかどうかは分からないものの、トルコがF-35A購入のため支払った資金の返金問題には答えを出す必要があり、エルドアン大統領にとってボーイング製航空機の大規模購入は「トランプ大統領から譲歩を引き出すための材料」かもしれないため、トルコが25日の会談で何を手に入れるのか注目される。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by 1st Lt. Benjamin Williams





















トルコ向けの機体はF-35Aは日本と韓国向けの初期発注の次にロールアウトした機体だから数年後にはアップグレードが必要になるし、米軍で使っていた中古状態だから、復帰したらまた新規生産になるのかな。
トルコが受け持っていた中央胴体の生産は今年7月からドイツの工場が稼働しているし、どうするんだろう。
ギリシャとしては気にいらんだろうけど、欧州で対ロの風潮が高まってる以上、トルコの重要性は地理的にも戦力的にも鰻登りだから仕方ないね
ホントにそうですね。
このサイトの別記事にある通り、トルコは地理的・戦力的な重要性に加えて、無人機などの防衛産業を通じて欧州と関係を深めてますから。ギリシャとしては財政的余裕もなく、トルコと同等の軍備増強で対抗出来ないことを考えると、全方位どうしようも出来ない状況ですね。
ギリシャは口だけでなくトランプに何を差し出せるかでしょう
以前海外サイトの記事でロシアがS-400を買い戻せないかとの打診と、トルコ側も保守部品が予定通りにには届かず稼働率も低下しているので検討中という内容でしたが、売却できれば解決へ繋がるのでしょうがどうなる事やら
ギリシャは対抗して『何を提供でるのか』結局これでしょうね。
ヒト・モノ・カネ…それに付随した他国への影響力、何が提供できる国なのかなあと。