米国関連

米空軍、今後30年使用するB-52Hにとって重要なアップグレードを決意

B-52はエンジンを換装して2050年まで使用予定だが、急速な女性の社会進出に伴い米空軍は遂にB-52のトイレ事情改善に動くことを決意した。

参考:Privacy, Please: Air Force Wants to Add Toilet Curtain on B-52 Bomber

今後30年以上も運用されるB-52Hにとっては非常に重要なアップグレードを実施する米空軍

伝統的に男性を基本とした軍の仕組みは急速な女性の社会進出に伴い大きな変革を迫られており、6万8,470人(1,000人以上が航空機勤務)の女性が勤務する米空軍も例外ではない。

米空軍の兵站を担当するライフサイクル管理センター(AFLCMC)は昨年、女性の体型に適したフライトスーツや妊娠中の女性は着用するマタニティユニフォームなどの開発を行うプロジェクトや基地内に授乳スペースを設置するなど様々な施策を打ち出して空軍で勤務する女性が働きやすい環境整備に乗り出しており、増加傾向にある女性入隊者の取り込みに余念がない。

しかし米空軍の航空機は伝統的に男性が搭乗することを前提に設計・運用されているため女性にとっては働きやすい環境とは言えない状況だ。

出典:pixabay

特に長時間勤務が前提の戦略爆撃機では1回のフライトが最大40時間に及ぶことも珍しくなく、基地に帰るまでトレイを我慢するは不可能なので簡易便器を完備しているのだがプライバシーに配慮された設計とは到底いえない作りで、最新のステルス爆撃機B-2でさえコックピットの後ろに設置された仕切りのないステンレス製便器で生理現象を処理する必要がある。

ただB-2の場合は乗員が2人だけなので互いが秘密を守りあえば他人に知られたくないプライバシーを守ることも可能かもしれないが、乗員が5人も必要なB-52ではそうもいかない。

出典:public domain B-52H

B-52は兵器士官が勤務するオフェンス・コンパートメントの後ろに小さな便器が設置されているのだが、当然仕切りはなく便器で生理現象を処理中に通路を他の乗員が通ることもあるためプライバシーは限りなく0に近く女性の航空機勤務者にとってはなかなか厳しい状況と言える。しかも問題のB-52はエンジンを換装して2050年まで使用されるので米空軍は遂にB-52のトイレ事情改善に動くことを決意した。

米空軍は今月、繊維業界やアパレル業界に対してB-52の便器と通路を遮るプライバシーカーテンのRFI(情報提供依頼書)を発行、これによればプライバシーカーテンは「オリーブグリーンのパラシュート素材」で作られている必要があり、両端にはカーテンを固定するための「金属製フック」が取り付けられていることを要求しているとクソ真面目の米メディアが報じている。

果たして便器と通路を遮る布1枚のためにRFIを発行する必要があるのか疑問だが、今後30年以上も運用されるB-52Hにとっては非常に重要なアップグレードなのかもしれない。

因みに米空軍は射出座席に長時間固定される女性航空機勤務者=つまり女性の戦闘機パイロットのため効果的な「bladder relief solutions=膀胱救済ソリューション」を求めており、これに56社の企業が応募して空軍に選ばれた11社がプロトタイプ製造に進むと29日に発表している。

参考:Division holds Pitch Day event for bladder relief solutions

この手の話は下世話に聞こえるかもしれないが、人手不足に直面する先進国の軍隊では共通の課題だとも言えるので米空軍の取り組みは中々興味深い。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Staff Sgt. Trevor T. McBride

謎の命令? 米空軍が退役済みのF-117に対して空中給油を正式に許可前のページ

米大統領補佐官、米日豪印4ヶ国によるクアッドの軍事同盟化がバイデン政権の目標次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    レア映像!飛行中の「F-22ラプター」&「F-35ライトニングⅡ」コックピット映像を公開

    今回、米空軍が公開したF-22の映像は、デモンストレーションチームによ…

  2. 米国関連

    第2次大戦の技術が復活、Wave Engineが量産型パルスジェットエンジンを発表

    米空軍はWave Engineが実用化に取り組む「パルスジェットエンジ…

  3. 米国関連

    米メディア、ロシアはマイクロチップの備蓄を大量に持っている可能性

    ニューヨーク・タイムズ紙は「今月15日の攻撃は『ロシア軍が保有する精密…

  4. 米国関連

    米陸軍、歩兵戦闘車「M2ブラッドレー」の後継に無人戦闘車を要求か

    米陸軍は過去3度、歩兵戦闘車「M2ブラッドレー」の後継車輌開発に失敗し…

  5. 米国関連

    米空軍の次期戦闘機コンセプトアートが公式の報告書に登場

    米空軍はサービスや装備取得に関する隔年報告書を発表、この中にNGAD(…

  6. 米国関連

    米陸軍は120mm砲搭載の重量級UGVを検討中、ユニットコストはM1A2の1/6

    米陸軍の重量級UGV=RCV-Heavyに関するコンセプト資料が登場、…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    もうお爺ちゃんを引退させて乗務員に優しい新型を作った方が良いのでは・・・でも金がないからなぁ

    2
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      おじいちゃんだからこそおまるには違和感が無いのさ

      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      ボーイングに残った最後の本業(大型爆撃機)やからしゃーない

      9
        • 匿名
        • 2021年 1月 31日

        大企業の命綱がトイレの改修ってのがなんとも・・・盛者必衰だなぁ

        1
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      今のボーイングに新造させるなんてとてもとても…

      12
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    おならのにおいが消える消臭パンツがあるから、それと同じ生地で提案すればいいかも。

    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    クソ真面目の米メディアwww

    6
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    もっと簡略に解決できそうな問題に対してのあえての事大主義、ジェンダーフリーだの社会への貢献度アピールに取り組んでますね
    やかて半数近くが女性兵士で構成された軍も、北欧辺りには生まれてくるでしょうね

    1
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      「事大主義」に違和感。
      まさかとは思うけど「事なかれ主義の反対」だと思ってたりしないよね?

      9
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    トイレの話だけに「クソ」真面目で笑う

    8
      • バカボンパパ
      • 2021年 1月 31日

      ヤケクソなのだ。

      3
        • 匿名
        • 2021年 1月 31日

        このプライバシーカーテンを受注できれば
        晴れて米軍御用達(ごようたし)ですね。

        8
          • A
          • 2021年 1月 31日

          中国製に収まりそう。

          1
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    女性進出を進める上では避けられない施策だよね
    自衛隊でも最近の護衛艦では女性自衛官が乗り組む事を前提にして居住区の設計が改められているし、航空自衛隊でも戦闘機のパイロットに女性が起用される世の中だから、今後の少子化を考えると先進国の軍隊では無視出来ない課題なんだよな

    12
      • 匿名
      • 2021年 2月 02日

      逆に記事読みながらそこに引っかかった。
      女性特有の肉体の事情に配慮した改造(例えば生理用の何たらとか)は必須の改造と思うが、
      プライバシーは女性の肉体特有の生命維持に関わる話ではないからな。
      女が乗ってくるのであればプライバシーの確保は必須という発想自体が女性への過剰配慮で
      女性側が自分を一人前のクルーとして認めてない感が出てくると思う。

      2
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    膀胱救済ソリューションwww

    3
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    日本の誇る音姫の出番かな(^-^;

    10
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      最新型の極超音姫が30年代に登場予定です。

      3
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    B-52って便器どれくらい搭載できるんだろう

      • A
      • 2021年 2月 01日

      TNT換算で1kt。
      ↑嘘です。

      • 匿名
      • 2021年 2月 01日

      爆弾倉になら100個以上搭載できるだろうからデコレーションをがんばらないとな

      • 匿名
      • 2021年 2月 02日

      スカンクワークスに依頼すれば飛ばしてくれるよ

    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    軍隊において食うと出すの話題は絶対に避けられんよ
    それこそSFのようなロボットによる戦争を実用化せん限りはな

    6
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      それも無人機開発が進められる理由のひとつだし、
      人間の生理機能を配慮しなくていい、極端なGがかかっても失神しないし、墜落しても少なくともパイロットの生命は考慮せずに済む

      1
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      マンガ「勇午」で、「軍隊出身者はタバコを箱の下から出す」と言うシーンがあったなあ。
      曰く「クソのついたフィルターで吸いたくないわな」と。
      フィールドの兵士は今でも用便紙など持ち歩かないのだろうか。

    • 防衛装備庁
    • 2021年 1月 31日

    防衛装備移転三原則に則ってウォシュレットを輸出しよう。

    3
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      そりゃ国会で審議せねば
      米軍機に日本製トイレが積んであるのはたいへんな問題だ、戦争協力だw

      4
        • A
        • 2021年 1月 31日

        憲法に抵触しますぞ!
        武器輸出反対!
        なんて輩が勢いマシマシ。

        1
          • 匿名
          • 2021年 1月 31日

          米空軍はたまに便器を敵の頭上に落とすから武器扱いでも仕方ないね()

          3
            • A
            • 2021年 1月 31日

            スカイレーダーでしたか。
            いい機体でしたね。

          • 匿名
          • 2021年 1月 31日

          その内TVで「ウォシュレットは武器に当たるか否か」を巡って左翼と右翼が激論を交わすのかと思うと、笑うしかない

          5
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    男性兵士「男しかいなくてもトイレは改善してよ・・・」

    23
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    う~ん、爆撃機のトイレに扉がついてないとは驚きだね。妥協してもカーテンなのか。
    女性のプライバシー保護のためなら、カーテンと消臭スプレーくらいは付けるべき。

    大昔、空軍がB-52の監査をしたとき、備え付けのコーヒーメーカーに1台あたり
    5万ドルが請求されていることが発覚して大問題になったことがあったなw 
    今回、トイレのカーテンはいくらになるんだろうな。

    5
      • 匿名
      • 2021年 2月 04日

      真面目に返すと、航空用品は防爆性だの難燃性だので設計、検査に手間が掛かる。
      灰皿1つ20万円位
      生産数が少なければ、そりゃ高くなる。

      2
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    こういう一見些末ではあるけれど士気に直結する事柄に真面目に取り組むのは流石超大国だと思うなぁ。
    全て個人の気合いと根性で解決させるよりずっと効率的だと思う。

    10
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      予算があればどの国でもするでしょう。

      4
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    っていうか、ステルスでもない爆撃機って今後要るのか?・・・何処で誰相手に使えるの?
    中小国相手には過剰で負担だろうし、一定以上の防空力ある国には長距離SAMの脅威から逃れられないし。
    輸送機やマルチロール機に振り分けた方が良くね?

      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      先進国相手には長射程の巡航ミサイルのランチャーっていう役目があるし途上国相手には大量のJDAMで一方的にボコるっていう大事な役目があるから当分は欠かせない存在

      14
        • 匿名
        • 2021年 1月 31日

        その内、輸送機が同じ役割を果たすかも。

        1
          • 匿名
          • 2021年 2月 04日

          kc-130Jは誘導弾落とせる。

    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    まぁ平時ならではの話題ではありますねぇ

    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    B-52の設計者もビックリ!
    当時はトイレが問題になるなんて思ってもいなかったろーなー。

    2
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      最初のロールアウトから100年先まで使用する予定になってる方がよっぽどビックリじゃない?

      7
        • 匿名
        • 2021年 1月 31日

        親子孫と三世代で搭乗経験あり、とかありそうですね。

        1
          • 匿名
          • 2021年 2月 01日

          ありそうですねっていうか実際に三代B-52に乗ってる人達いますよ。
          ぐぐれば出てきますけど。

          3
            • 匿名
            • 2021年 2月 01日

            1世代30年で計算しても4世代なので、
            下手すりゃ5世代乗る事になっても不思議じゃないですね。

            1
              • 匿名
              • 2021年 2月 01日

              奥羽藤原、後北条、朝倉
              五代となると、そこら辺を連想しちゃいます。

              1
        • 匿名
        • 2021年 1月 31日

        センチュリーボマー!

        1
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    ラバウルからガダルカナルまで往復してた零戦パイロットもいろんな意味で大変だったんだろうな。

      • 匿名
      • 2021年 2月 01日

      当時は落下傘をクッション代わりに椅子とケツの間に敷いていたので、そのまんま小便して染み込ませてたって聞いたことがある

    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    トイレは決して馬鹿にしてはならない問題よ。食事と同じくらい大事な要素。
    ある意味兵站の一部と言っていい問題で真面目に解決策を練る所がいかにも米軍らしい。
    人間には食事が必要だと分からない軍隊が昔悲惨な目にあいましたしが、最近でも睡眠不足で作戦行動するらしいから人間の生理欲求を無視しがちな点は今も変わってなさそうだ

    9
      • 匿名
      • 2021年 2月 01日

      心理研究でも、兵士には充分な休養と補給を与えないと、
      潜在的にミスや粗暴な振る舞いを起こすきっかけになり、集団を危機に陥れる旨の報告があります
      トイレ整備も広い意味でのロジスティクスに含むべきです

      2
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    正直このクラスの機体ならVLJぐらいのトイレ積める余地は十分あるだろ
    カーテン追加とかケチりすぎでは?

    1
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      時期的にナローボディだろうし、サイズの割には内部空間は今一つなのかも。

      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      「VLJぐらいのトイレ」ってどんなん?
      ホンダジェットが「クラス初のまともなトイレを装備!」って
      騒がれてた記憶があるけど…

    • 匿名
    • 2021年 6月 16日

    開発当時の設計者はほとんどお亡くなりか痴呆 設計図見ながらだからちょっとの変更も大変。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  4. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP