米国関連

米空軍は訓練コストを削減するためステルス無人訓練機を開発、初飛行は2023年予定

米空軍は高度なステルス性能を備えた無人航空機を使用してF-22AやF-35Aといった第5世代戦闘機の訓練効率を高める計画を進めており、ブルー・フォース・テクノロジーズとステルス・アドバーサリー・ドローンの開発契約を9月中に締結すると報じられている。

参考:Stealth Adversary Drone Contract Expected in September

高価になりすぎた戦闘機の訓練には低コストの敵役が必要になる? 米空軍はステルス・アドバーサリー・ドローンの開発に取り組む

ロシアや中国が高度なステルス性能を備えた第5世代戦闘機を次々と開発しているため米空軍のF-22やF-35は戦場で敵の第5世代戦闘機と対峙する可能性が高く、パイロットは普段の訓練を通じて高度なステルス性能を備えた戦闘機との戦い方を学ぶ必要があるのだが「訓練の敵役」としてF-22A(約5万ドル/約546万円)やF-35A(約3.6万ドル/約394万円)を運用すると訓練コストが高価になってしまう問題に直面しており、これを解消するのがステルス・アドバーサリー・ドローンと呼ばれる無人航空機「レッド・ミディアム/Red Medium」だ。

出典:Blue ForceTechnologies

ブルー・フォース・テクノロジーズの創業者兼社長を務めるスコット・ブレッドソー氏によるとレッド・ミディアム(全長6m、全幅5.1m、最大離陸重量2267kg)は複合材料で構成された無人航空機で、エンジンはビジネスジッエットに使用されるFJ44の派生型を使用して「マッハ0.95を発揮できる性能(最大旋回負荷9G)を備えてる」と語っており、調達コストは有人機の25%で1時間あたりの運用コストは4,000ドル/約43万円に設定されいるらしい。

もしブレッドソー氏が主張した通りのコストでレッド・ミディアが運用できれば米空軍は敵の第5世代戦闘機を想定した訓練を低コスト(1/9~1/12)で行えるようになり、貴重な機体寿命を「訓練の敵役」として消耗する必要がなくなるという寸法だ。

出典:U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. Brandon Shapiro

勿論、レッド・ミディアはAI制御の自律飛行で敵の機動や戦術を正確に再現することが可能なのだが、ブルー・フォース・テクノロジーズの顧問を務めるアンドリュー・ヴァン・ティメレン氏(元F-22のパイロット)は「敵役を演じるられるということは味方機の役割も演じることが出来るという意味だ」と語り、レッド・ミディアを使用すればF-22AやF-35Aは将来必ず必要になるエア・チーミング(有人機と無人機の共同作戦)の訓練も行うことが可能になると示唆しているのが非常に興味深い。

因みにブルー・フォース・テクノロジーズは米空軍が望めばレッド・ミディアの武装バージョンも開発することを検討すると言っているが同機は非常に小型なので兵器の運搬能力は小さく、米空軍はエア・チーミングに対応した低コスト無人戦闘機(Skyborgプログラム)を別途開発しているためレッド・ミディアの武装バージョンを望むかは謎だ。

出典:public domain XQ-58ヴァルキリー

戦闘機はどんどん高度化して調達コストや運用コストが高騰しているため、何れレッド・ミディアムのような「訓練の敵役」が各国でも必要になるのかもしれないと思うと中々考えさせれるものがある。

 

※アイキャッチ画像の出典:Blue ForceTechnologies

米空軍、最大定員189人のC-17輸送機に800人もの国外脱出者を詰め込んでカーブル国際空港を離陸前のページ

カーブル空港に殺到する群衆制御に失敗した米軍、離陸中のC-17にしがみついたアフガニスタン人が死亡次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米国防総省、極超音速滑空体を迎撃するため新型ミサイル「GPI」開発を本格的に開始

    米国防総省は19日、噂されていた極超音速滑空体(HGV)迎撃用ミサイル…

  2. 米国関連

    米開発中の新型対空ミサイル「AIM-260」、中露を圧倒する射程300km台実現?

    これまで米国は、AIM-120を改良することで性能を向上させてきたが、…

  3. 米国関連

    全滅に近い米海軍の空母戦力に光明、空母「ハリー・S・トルーマン」がトラブルから復帰

    米海軍の原子力空母「ハリー・S・トルーマン」は、8月末に発生した深刻な…

  4. 米国関連

    本当にF-15EXを買えるのか? 米空軍、議会が「F-15EX」調達を妨害していると訴える

    米空軍は、2020会計年度の予算が成立せず、連邦政府機関の閉鎖を回避す…

  5. 米国関連

    無人戦闘機の可能性、米空軍が編隊飛行を行うF-22AとMQ-28Aを公開

    米空軍の無人戦闘機に関する新たな動画が登場、F-15EとXQ-58A、…

  6. 米国関連

    米空母の飛行甲板に衝突したF-35Cは海に落下、現場は中国に近い南シナ海

    米海軍の第7艦隊は25日、F-35Cの事故について「空母カール・ヴィン…

コメント

    •   
    • 2021年 8月 16日

    AIだと機関砲の見越し射撃で命中率高いそうな
    マルセイユさんかよ
    後ろからでなくてもバンバン当ててくるみたいな

    4
      • 匿名
      • 2021年 8月 17日

      有人機にそのAI射撃システム載せた方が良いんじゃないの?AIがちゃんと目標を目標として認知してくれるかの問題あるからな。

        • 匿名
        • 2021年 8月 17日

        戦闘機の照準補正ってのは当然操舵を伴う訳で、
        有人機とはあらゆる意味で相性悪いと思うなぁ。

        1
    • 匿名
    • 2021年 8月 16日

    本当に訓練専用機の開発・生産装備コスト<既存の無人機の改造・生産装備コストなのかな。
    多少使い勝手に劣ってもバルキリーの派生型でいいじゃないかと思ってしまうが。

      • 匿名
      • 2021年 8月 16日

      調べた所、ヴァルキリーの総重量は不明だけど全長8.8m、翼幅6.7mとレッド・ミディアムより一回り大きい反面、速度性能はレッド・ミディアムが上(ヴァルキリーがM0.85に対してM0.95)なのを考えると、訓練専用機を作った方が有人戦闘機との訓練には有効って判断だと思う
      あと、ヴァルキリーのエンジンは未だに不明なんだけど、レッド・ミディアムのエンジンはビジネスジェット機用からの派生型なので燃費や運用コスト面で有利かも知れない

      それにしても、有人戦闘機の訓練の相手役にドローンを使う発想は面白いと思う
      有人戦闘機との訓練を繰り返す事で無人戦闘機開発へのノウハウが蓄積されるだろうし、無人軍用機用AIも進化するだろうから技術開発の面でも有効だと思う

      10
      • 匿名
      • 2021年 8月 16日

      XQ-58をちょっとやそっと弄っても「マッハ0.95・最大旋回負荷9G」の格闘戦のできる戦闘機にはならないと思うよ。
      おそらく再設計レベルの改修が必要で、であればXQ-58をベースにする意味がない。

      8
    • 匿名
    • 2021年 8月 16日

    当然この先には無人機同士の戦闘訓練とかあるだろう
    それをフィードバック→シミュレーション→実機での訓練を繰り返してあっという間に進化しそう
    こういう最先端の大きな流れに日本はいつも乗り遅れる

    8
      • 匿名
      • 2021年 8月 16日

      そもそも日本人は、目の前にある物で何が出来るかを考える民族なんで、最先端技術と言った「無から有を生む発想」は苦手だよ
      その代わり、手持ちの物で工夫する力は高いんだけど、近年の情報革命に伴う技術革新が速過ぎて付いて行けなくなりつつある(手持ちの物で工夫すると言っても習熟する為の期間が必要だが、その前に更なる技術革新が次々に来る為)

      16
        • 匿名
        • 2021年 8月 16日

        イノベーションは既存技術の組み合わせってよく言うけどね。
        なので日本は無から生み出すのが苦手理論は胡散臭いと思ってる。
        UAVもベースは10年前からあって、そこから運用やシステムを今拡張してる。
        日本に足りないのは、本気度だと思う。
        近々のUAVブームは食い扶持が減ってきたメーカーが推してる部分もある。
        乱発の候補から最後の勝ち馬に乗る戦略もありだと思うね。
        時間の猶予があればだけど。

        14
          • 匿名
          • 2021年 8月 17日

          といっても、日本が最後尾走ってるのは事実だし
          他国では実機テストをやりまくってる中で、日本はまともな試験機もない
          ちょこちょこ実証機飛ばしたぐらい

          3
      • 匿名
      • 2021年 8月 16日

      戦艦から空母へ移り変わったように
      有人機から無人機へ移り変わる転換期なのは間違いない。

      けど、結局のところ中国との戦争を本気にしてないから
      中国に先を越されたときの絶望的戦力差について危機感がない。

      3
    • 匿名
    • 2021年 8月 16日

    ステルス機の運用コスト削減は限界があり無人機やシミュレータを多用して
    任務以外での飛行時間を減らすしか方法はないって事ですかね。

    2
    • 匿名
    • 2021年 8月 16日

    >米空軍は訓練コストを削減するためステルス無人訓練機を開発
    もういいよその常套句は

    2
    • 匿名
    • 2021年 8月 16日

    空自の将来のアグレッサー部隊がどうなるのか気になる。有人機はまず無くならないだろうけど、ロイヤルウイングマンのような無人機も使うのか?
    あと、F15DJの次は何になるのか。アグレッサー塗装のF35や次期戦闘機が見たいと思っているのは多分、俺だけじゃない・・・。

    11
      • 匿名
      • 2021年 8月 17日

      教導群には単座のF-15Jもいるので、それはF-35やF-3で置き換えられるかもね
      のこりのF-15DJはT-7Aみたいな高等練習機で置き換えるんじゃない?

      1
    • A
    • 2021年 8月 17日

    一枚目の写真ってCG?
    なんか影が変。

    1
      • 匿名
      • 2021年 8月 17日

      だろうね。
      影よりも後ろの壁の柱がかなりクッキリ床に映り込んでるのに機体は全く映り込んでない。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  2. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  3. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  4. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP