米国関連

米空軍、間抜けなミスで極超音速巡航ミサイルのプロトタイプ試射に失敗

米空軍は先週、極超音速巡航ミサイルのプロトタイプを使用した初めての試射に挑み「間抜けなミス」で失敗したと米メディアが報じている。

参考:Hypersonic HAWC Won’t Fly This Year Due to Ongoing Test Problems

HAWCのプロトタイプ試射失敗は設計に問題はなく間抜けなミスが原因?

米空軍と国防高等研究計画局(DARPA)は現在、吸入空気を利用したスクラムジェットを使用した極超音速巡航ミサイル開発プログラム「Hypersonic Air-breathing Weapon Concept:HAWC」を進めており、ロッキード・マーティンとレイセオンがHAWCのプロトタイプを開発している。

今年9月には開発中のプロトタイプ2種を航空機に搭載して空力的特性をチェックするキャプティブキャリー・テストを完了、この結果を踏まえて米空軍とDARPAは先週B-52HにHAWCのプロトタイプを搭載して初めての試射に望んだが、プロトタイプを母機のB-52Hから切り離すことに失敗して試射を行うことができなかったらしい。

出典:DARPA Hypersonic Air-breathing Weapon Conceptのコンセプトアート

なぜ試射が失敗したのかについて詳しくは明かされていないが、システムのプログラムに精通した情報提供者によれば「今回の失敗はプロトタイプの設計が問題ではなく間抜けなミスが原因」と語り、プロトタイプをB-52Hのパイロンから切り離すためのシステムに「基本的なエラー」があったことを示唆していると米メディアが報じている。

仮に情報提供者の話が真実なら試射失敗の原因が判明しているため、米空軍とDARPAは近い内にHAWCのプロトタイプ試射に再チャンレジするはずだ。

因みに米空軍は年内に開発中の空中発射型の極超音速兵器「AGM-183A Air Launched Rapid Response Weapon(空中発射高速応答兵器:ARRW)」を試射すると明らかにしたが、こちらの母機がB-52Hなのでパイロンから切り離すためのシステムに問題が発生しているのならAGM-183Aの試射にも影響があるのかもしれない。

出典:ロッキード・マーティン AGM-183A ARRW

米空軍とロッキード・マーティンが開発を進めている「AGM-183A ARRW」は弾頭部分に極超音速滑空体(HGV)を採用した空中発射型の極超音速兵器で、マッハ20で滑空しながら非弾道コースで目標に接近するため従来の弾道ミサイル迎撃技術では対応するのが困難だと言われており、米空軍とDARPAが開発中の極超音速巡航ミサイルとは飛行特性が異なるため同じ極超音速兵器でも全く別の兵器システムだ。

果たして試射に失敗したHAWCのプロトタイプはいつ試射に再チャレンジするのだろうか?

関連記事:米空軍が年内に極超音速兵器AGM-183Aを試射、来年にも量産開始

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain B-52の翼下に懸架されたX-51

気がつけばドック入渠、ほとんど海にいないカナダのヴィクトリア級潜水艦前のページ

ドイツのUAV武装解禁失敗、ユーロドローンや第6世代戦闘機開発にも影響が?次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    改善を見せた米空軍機の稼働率が再び後退、爆撃機の稼働率悪化は顕著

    米ディフェンス・メディアのDefenseNewsは14日、空軍の作戦機…

  2. 米国関連

    社会的要因、Block4製造、受注減が重なりF-35の調達コストは上昇に転じる

    どうやらF-35の調達コストは進行するインフレ調整費用、製造現場のCO…

  3. 米国関連

    F-22稼働率引き上げは絶望的か、米空軍は正式に戦闘機稼働率80%という目標を放棄

    米空軍は7日、ジェームズ・マティス前国防長官が命じた「F-22、F-3…

  4. 米国関連

    バイデン政権の予算案を上院が拒否、新たに7,403億ドルに増額された国防予算を承認

    米国の上院軍事委員会は最終的にバイデン政権が提示した7,150億ドルの…

  5. 米国関連

    米空軍の装備調達コストは?F-35Aは92億円、F-15EXは107億円、KC-46は187億円

    中々、知る機会の少ない米国製防衛装備品の単価が最近公開された国防権限法…

  6. 米国関連

    再掲載|宇宙船?ボーイングが開発したバード・オブ・プレイはステルス機

    ロッキードは1970年代に初めてステルス戦闘機(F-117)の開発を経…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 12月 24日

    詰めの甘い奴はどこにでもいる、すぐ思い当たる
    組織のガンだよ
    これが人間だもんな(苦笑)

    5
    • 匿名
    • 2020年 12月 24日

    ハードばかり進化させても、それを制御するソフト(現場の人間)が追いついていかないのだろう。
    兵器はシステムとマシーンの組み合わせだから、カネをかければ何とでもなるだろうが、
    人材育成は、カネをかけても時間の足枷を外せない。

    9
    • 匿名
    • 2020年 12月 24日

    ヨシ!

    8
    • 匿名
    • 2020年 12月 24日

    B52側に新型スクラムミサイル用のドライバーを入れ忘れたとかか?

    • 匿名
    • 2020年 12月 24日

    兵器開発なんてこんなもんだろうと思うと同時に
    やはり最先端で新しい兵器を作り上げていくのは金が湯水のように溶けるんだと再実感させられる

    4
    • 匿名
    • 2020年 12月 24日

    パイロンに問題があるって、重大な問題なのでは…

    • 匿名
    • 2020年 12月 24日

    まぁヤーポン法とメートル法間違えて探査機落としたこともあるしなぁ

    2
      • 匿名
      • 2020年 12月 24日

      日本も過去有ったしな
      配線逆に繋げて墜落したF-2とか
      NECの人工衛星でも同じ事有ったし

      単純ミスって怖いね

      6
      • 匿名
      • 2020年 12月 24日

      流石ヤーポン法、死すべし!

      2
      • A
      • 2020年 12月 24日

      コンマとピリオドの入力を間違えたってのもあったようです。

    • A
    • 2020年 12月 24日

    >間抜けなミスが原因
    前後を間違えたとか?

    • 匿名
    • 2020年 12月 24日

    落下して無駄にならずに済んだと前向きに考えよう

    あと、最初はtypoだと思ったんだけど…
    「プロト」タイプではないのでしょうか?

    3
    • 匿名
    • 2020年 12月 24日

    出発前にケーブルを挿し忘れて、安全ピンを抜かずに飛んじゃったとか?

    6
    • 匿名
    • 2020年 12月 24日

    ケツ上げるとやっぱはえーな この国は

    3
    • 匿名
    • 2021年 1月 08日

    agm-183aが試射されたニュースを聞いていない以上おそらく影響を受けてしまったのでしょうね。
    そういや極超音速巡航ミサイルは今のところアメリカリードなのかな?

      • 匿名
      • 2021年 1月 11日

      ぶっちぎりでロシアだった…

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  2. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  3. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP