米国関連

極超音速兵器の試射に成功しない米空軍、今度はAGM-183A ARRWの試射に失敗

米空軍は国防高等研究計画局と共同で開発を進めていた極超音速兵器「ARRW」の試射に昨年失敗したが、今度は単独で開発を進めていた極超音速兵器「AGM-183A」の試射に失敗したと発表して注目を集めている。

参考:The first flight test of the Air Force’s air-launched hypersonic booster didn’t go as planned

二度あることは三度ある?失敗原因はデジタルエンジニアリングを採用した開発手法?

米陸軍が2023年までに実用化を予定している地上発射型の極超音速兵器LRHWについて「能力が重複する兵器を二重開発するのは愚かだ」と批判、長距離攻撃任務は米空軍が開発を進めている空中発射型の極超音速兵器「AGM-183A Air Launched Rapid Response Weapon(空中発射高速応答兵器:ARRW)」に一本化すべきだと地球規模攻撃軍団(AFGSC)のティモシー・レイ空軍大将が主張していたが、米空軍は予定されていたAGM-183Aの試射に失敗してしまった。

※アイキャッチ画像の出典:ロッキード・マーティン AGM-183A ARRW

米空軍は今月5日、B-52Hに搭載されたAGM-183Aのプロトタイプをカルフォルニア州沖の海上で試射を試みたが発射シークエンスが正常に完了しなかったためAGM-183Aを切り離すことに失敗、B-52Hは試射に失敗したAGM-183Aと共にエドワーズ空軍基地に帰還したらしい。

今のところ発射シークエンスが正常に完了しなかった理由については不明で米空軍は原因を解明後に修正を加えて再びAGM-183Aの試射に望むと言っているが、米空軍と国防高等研究計画局(DARPA)が共同で開発を進めている吸入空気式のスクラムジェットを使用した極超音速巡航ミサイル「Hypersonic Air-breathing Weapon Concept:HAWC」も昨年の試射でパイロンから切り離すためのシステムに不具合が発生して試射に失敗している。

出典:Air Force photo by Giancarlo Casem B-52Hに搭載されるAGM-183A ARRW

HAWCの試射失敗はプロトタイプの設計に問題があるのではなくHAWCが統合されたB-52H側の兵器制御システムに原因があり、システムのプログラムに精通した情報提供者は「間抜けなミス」だと指摘していたがAGM-183Aの試射も発射シークエンスに問題が生じたため同種の問題で躓いた可能性が高い。

レイ大将は初期作戦能力の獲得に5年程度かかる見込みのLRHWを酷評する一方で、空軍のAGM-183Aは今月5日までに試射を完了させて2022年までに初期作戦能力を宣言すると自信満々に語っていたので流石に今回の試射失敗に赤面していることだろう。

出典:Air Force photo by Giancarlo Casem B-52Hに搭載されるAGM-183A ARRW

まぁ冗談はさておきAGM-183Aはデジタルエンジニアリングを採用して開発を進めたため開発工程の一部を省略することが出来たと米空軍のローパー次官補(現在は退官済)が語っており、従来のプロセスでAGM-183Aの開発を進めていれば初期作戦能力の獲得は2027年頃になっていたらしいが、兵器開発にデジタルエンジニアリングを全面的に採用したのはごく最近のことなので米空軍も開発企業も想定外の問題に直面しているのかもしれない。

米空軍にデジタルエンジニアリング採用を強力に推し進めたローパー次官補は既に軍を去っており、次回の試射にも失敗すればデジタルエンジニアリングを採用した兵器開発体制自体にケチがつく可能性もあるので何とか成功して欲しいところだが「二度あることは三度ある」という言葉もあるのでどうなることやら、、、

関連記事:米空軍が年内に極超音速兵器AGM-183Aを試射、来年にも量産開始
関連記事:米空軍、間抜けなミスで極超音速巡航ミサイルのプロトタイプ試射に失敗

 

※アイキャッチ画像の出典:Air Force photo by Giancarlo Casem

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    空軍と陸軍で立派に漫才コンビ組める
    タイミングが上手すぎる

    21
    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    スプトニーク・ショックとそれに伴う冷戦期のミサイル・ギャップ論争の恐怖再びだな
    今回の失敗はデジタル・エンジニアリング等とは関係無く、今までやって来なかった事を急にやっても絶対失敗すると言う好例で、今後米国を含む欧米は極超音速兵器等の一部兵器開発の分野で中国やロシアに対して劣勢であると言う自覚を持たない限り、挽回は無理
    特に米国は、マーキュリー計画からアポロ計画に至る宇宙開発競争の時を思い出して、挙国一致の体制で中国やロシアに立ち向かわないといけないだろう、それ位までに今の中国とロシアは強い

    17
      • 匿名
      • 2021年 4月 07日

      今の米国は挙国一致どころか多様性という名の烏合の集になってるから先が思いやられるね

      17
        • 匿名
        • 2021年 4月 07日

        独裁政治国の挙国一致に幻想してるね、もとからアメリカは多様だよ、それが取り柄なんだから

        10
          • 匿名
          • 2021年 4月 07日

          ところが、米国が本気で戦争をする時は「これ独裁政治だろ?」とツッコミたくなる位の挙国一致体制になるよ
          太平洋戦争がその好例だけど、湾岸戦争や9.11直後の対アフガン戦・イラク戦争開始直後でも米国各地の民衆が開戦の報を聞いてノリノリになっていた光景がTVニュースで報じられたのを見て、思わず呆れた記憶がある
          因みに、これは英国も同じで開戦時には挙国一致内閣を作るし、フォークランド紛争や湾岸戦争開戦時の英国人もかなりノリノリで出撃する自国軍を見送ったりしていたから、欧米の民主主義ってそんなものかも知れない

          6
        • 匿名
        • 2021年 4月 07日

        目下米国にとって最大の安全保障上の脅威が国内ヒスパニック人口の増大なんで……正直米国製造業の研究開発が弱ってるのは職人適正高いゲルマン系白人比率が低下してるのも遠因なんじゃないかなって

        7
          • 匿名
          • 2021年 4月 07日

          アメリカ陸軍のLRHWは試射に成功しているので、人種の比率は関係ないでしょ。
          ゲルマン系白人ではない中国やロシアも、極超音速兵器の実用化に成功しているんだし。
          まぁ、アメリカ空軍は偉そうなことを言っていたのに、試射に失敗したのは滑稽だけどね。

          6
            • 匿名
            • 2021年 4月 07日

            LRHWは試射の段階にすら到達していないよ。米国が試射に成功しているのは陸海が共同で極超音速滑空体(HGV)の基礎技術習得のために開発したAHWだけで実用タイプのLRHWとは別物

            5
              • 匿名
              • 2021年 4月 07日

              試射に成功したのは、弾頭であるC-HGB(陸海軍共通極超音速滑空体)でしたね、失礼しました。
              しかし、最も重要な技術(極超音速滑空体)の開発は成功しておりますので、やはり人種の比率は関係ありません。

              2
        • 匿名
        • 2021年 4月 08日

        結局「議会制民主主義」という制度自体が疲弊して老害化しただけなんだよなぁ…
        日本も中共の様な統制社会へ早急に舵を切り直さないと西側諸国の崩壊に巻き込まれて死ぬよ

        中露の脅威に呑まれない為にも今すぐ政権は統制社会のプロである日本共産党に任せ、徴兵制を視野に入れながら新世代の「赤軍」を作っていくしか無いね

        「徴兵制は時代遅れ!」というなら対露情勢の緊張に対処する為近年徴兵制を復帰させた北欧諸国を学ぶべきだわ

      • 匿名
      • 2021年 4月 07日

      現状の中露の防空能力相手だと攻撃面ではトマホークやJASSMERなど従来の巡航ミサイルでも十分いけそうなのとLRHWの方は順調で弾頭のテストは別のミサイルを使って完了済み今年中にはシステムが一式揃って来年から各種テストで24年には量産開始予定なんで空軍が失敗しててもそこまで深刻なギャップは埋まれなさそう。
      ちなみにアメリカが昨日今日開発を始めたみたいな言い方だけど極超音速兵器の研究は実は昔からやってるよ。
      LRHWの開発が順調なのはそのおかげ。

      それより迎撃手段の方が重要そうな気がする。
      THAAD、PAC-3、SM-3の改良型や新規設計のミサイルが開発中だとか。
      あと日本も高高度迎撃用飛翔体技術の研究とやらが動いてるから将来的に中SAMの改良型とかが出てきそう。

      3
    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    過去記事
    対中ミサイル網建設は資金の無駄、米空軍が陸軍と国防総省を「愚かだ」と批判
    リンク

    2
    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    開発を省略しただけで問題が発生しないとは言ってないし…(震え声

    5
      • A
      • 2021年 4月 07日

      しかも失敗は成功の母と言いますから…。(ガクブル)

      1
    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    海のものか山のものかも分からないようなことにチャレンジしているわけでもないのに大袈裟なのでは。
    試射が失敗だろうと成功だろうと、データが得られて修正が入り再テストという流れに変わりはないです。
    中露がどれだけの失敗を繰り返しているのか公表もされておらずまともな比較もできていないのに、無データで悲観論やら批判やらをしてもなんの意味もないかと。

    4
      • 匿名
      • 2021年 4月 07日

      極超音速ミサイル自体の性能じゃ無くてB-52から切り離しに連続で失敗してるんだから海のものか山のものかも分からないようなことにチャレンジしてるとは言わないでしょ

      5
        • 匿名
        • 2021年 4月 07日

        文章読めてないよね
        同じこと言ってるよ

        5
    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    実際のアナログなデータの裏打ちがないとデジタルエンジニアリングだけでは回らないわな。
    単にそれだけの話。

    6
    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    今回の試射失敗で得た教訓は、人の悪口を言うと自分に跳ね返ってくるということかな。皆も気をつけようね(自分は出来るとは言っていない)

    17
    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    人を呪わば穴二つってとこか?いやちょっと違うか、まあ、どっちにしてもそんなことを仲間同士でやらないで欲しいものだ。

    1
      • 匿名
      • 2021年 4月 07日

      昔から予算争奪戦は軍隊にとって最大の戦争だからね
      戦前の帝国陸軍と帝国海軍や冷戦中の米海軍と米空軍と比べたら
      今の軍隊は仲良くなったなという印象

      5
      • 匿名
      • 2021年 4月 07日

      このニュースで陸軍がほくそ笑みしてるならば、おいおい、敵はそっちじゃねえだろってツッコミが必要
      挙国一致ならずを移民問題と思ってる連中に指摘な、アメリカはまず4軍が団結するところから始めないとチャイナの後塵を拝するはめになる

    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    この調子が続くとバイデン殿や議会様の鶴の一声で、海軍のNSMみたく他国の類似品を導入することになるかもなぁ(ならない?)
    ニッポンのASM-3や、その発展型とか……いきなり共同開発を強要してきて、それにかこつけて「技術よこせやサル(超意訳)」と、またホザいてきたりしてな

    2
    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    発射母機もどうにかせえや

    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    いやまあロシアや中国も開発成功配備とは言ってるけど本当かと思ってる
    特にDF-17は滑空体が大きく露出してて上昇時大丈夫かと思うけど

    3
      • 匿名
      • 2021年 4月 07日

      パレードに出てたのは単なるダミーで、実物とは異なる可能性あるよ

      1
    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    デジタルエンジニアリングでの設計はあくまで実物と近似させてるのであって、実際のものとはずれがある。近年のアメリカは効率化といいつつ従来のやり方や地道な積み重ねを捨て、奇抜なアイデアに頼ろうとしているように見える。

    3
      • 匿名
      • 2021年 4月 07日

      空軍も海軍のフォード級等と同じ失敗に足を突っ込んでいる様な気がする……

      4
    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    米軍の言うデジタルエンジニアリングって要するにアジャイルソフトウェア開発の真逆なんだよね
    ソフトウェアの世界ではその複雑さと要件定義の難しさに立ち向かうためにソフトウェアを各要素に分解し一つ機能を実現するたびに繰り返しリリースとテストを行い欠陥や要件定義に問題がないか繰り返し確認、修正を繰り返しながら少しずつ積み上げていく

    複雑化、大規模化が進むハードウェアの世界でも同様の考えが必要では?そりゃソフトよりずっと試作は難しいだろうけどさ、そのための3Dプリンタであり製造技術の革新でしょ
    無人テストなら品質管理も強度計算もとりあえず適当でいいし
    設計は前より難しい&製造は前より簡単 なら設計の負担を軽くしてその分試作製造を増やすべきでは無いの?

    1
      • 匿名
      • 2021年 4月 07日

      デジタルエンジニアリングは、その試作&修正のプロセスを軽量化する意味があるんでは。
      逆を行っているというのは言い過ぎかなと。

    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    飛行機が飛んできても既に燃料タンクがかなりのダメージを受けてるだろうから、一日中CAPするだけで何百トンも消費するのにたった二発だけしか撃てませんってのもちょっと困る。

    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    デジタルセンチュリーって大丈夫なんか?
    失敗したら、どうするんだろ

    1
      • 匿名
      • 2021年 4月 07日

      そう言えば、昨年デジタルセンチュリーの試作機が初飛行したって米空軍が発表したのに、未だにその機体の写真すら一切公開されていないのだが、もしかしたらもう既に墜落事故を起こしてこの世に無いのかも?
      ※実はこれ、過去に実例がある
      F-117ステルス戦闘機開発時に試作機として秘密裏に2機製造された「ハブ・ブルー」と言う機体があったのだが、製造からほんの2年程で2機共墜落事故を起こして失われてしまったにも関わらず、存在が公表されたのはF-117の存在が公表された後で、現在でも数枚の写真しか発表されていない

      1
    • 匿名
    • 2021年 4月 07日

    次世代型最新兵器のテストなのに発射母機はB-52なのはなんか草

    1
      • 匿名
      • 2021年 4月 10日

      おじいちゃん、信頼性は高いから。コンバットプルーフ。

      1
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