米国関連

謎の命令? 米空軍が退役済みのF-117に対して空中給油を正式に許可

米空軍は最近、公式に退役済みのF-117ナイトホークへの空中給油を許可するという謎の命令を出して注目を集めている。

参考:F-117s Cleared To Refuel From All KC-135s As “Retired” Stealth Jets Expand Operations
参考:U.S. Expands Operational Options For Supposedly Retired F-117 Stealth Fighters With Aerial Refuelling Clearance

伝説のステルス攻撃機は今後も米空軍にとって重要な役割を果たす貴重な航空機として運用が続けられる

米空軍にとって最も重要なステルス設計を取りれた航空機はB-2でもなければF-35Aでもなく、2008年に退役した伝説のステルス攻撃機「F-117 ナイトホーク」だ。

米空軍は通常、退役した軍用機を通称「飛行機の墓場」と呼ばれるアリゾナの砂漠で保管して非常に稀な再就役に備えているのだが、実際ここに運ばれる航空機の大半は部品取りか貴重な金属回収のため解体される運命にあるのだが非常に稀なパターンが存在する。

出典:Aspersions / CC BY-SA 3.0 モスボールされるUH-1とF-4

Type1000に指定された航空機は非常に高い確率で再就役することが予想されるため他の航空機とは保管方法が異なり、飛行が可能な状態を維持しながら保管されるため野外の砂漠で保管するのではなく空調の効いた倉庫で保管され、全ての部品が揃った完璧な状態で保管されるのだ。

そのためType1000に指定された航空機は最短30日、最長でも120日以内に再就役が可能だと言われており、F-117はType1000に指定され保管されている数少ない航空機(墓場に持ち込まれる航空機の10%以下)なのだが、この保管方法はコストがかかるため米空軍は2017年から飛行可能な機体を少数だけ残し毎年4機づつステルス技術が流出しない方法で廃棄するはずだったのだが、実際には多くのF-117が非公式に現役復帰を果たして再び空を飛んでいる。

2017年にはF-117が中東地域に再配備されイラクとシリア上空で任務に従事したという報道や、2019年には米国カルフォルニア州のR-2508射撃場空域を飛ぶF-117の写真を航空雑誌「コンバット・エアクラフト」が掲載し、4機のF-117がF-16と一緒に訓練を行なっていると報じられている。

出典:ロッキード・マーティン 博物館寄贈用に再整備されたF-117

このような動きについて米メディアは「F-117は速度も性能も整備性も現役の第5世代戦闘機には劣るがレーダー反射断面積(RCS)の値だけはF-35Aに近く、実戦で実証済みの運用方法が確立されているため新技術のテストベッドに使用したり、対ステルス戦闘機との戦闘を想定した訓練に最適な航空機だ」と評価しているが、最近さらに興味深い動きが観測された。

米空軍の輸送業務や空中給油業務を担当する航空機動軍団(AMC)は最近、空中給油機KC-135に対してF-117への空中給油を正式に許可する命令(Air Refueling Operations Approval for KC-135 and F-117 Aircraft)を出したため、公式に再就役を認めていないF-117への空中給油を許可するという命令は相当「Back To The Future」な指令だと皮肉っている。

補足:この命令は2021年1月1日付けで承認されている

米国人のジョークとも受け取れる皮肉は置いておくとしても、米空軍がF-117への空中給油を正式に許可したということはナイトホークを使用した新しい計画があるという意味で、伝説のステルス攻撃機は今後も米空軍にとって重要な役割を果たす貴重な航空機として運用が続けられるのだろう。

因みに退役済みのF-117がどのくらい現役に復帰しているのは謎だが、少なくとも4機以上のF-117が墓場から這い出しているのが確認されているので10機前後のF-117が現役に復帰しているのかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force Graphic by Maureen Stewart

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    【テストヘッド】(test head)電子デバイスの試験において、ウエハに集積された装置を、切断(選別)してチップパッケージ内に組み付ける前に、電気的にテストするために使用される試験用プローブヘッド。

    【テストベッド】 (test bed) 新技術の実証試験に使用されるプラットフォーム。

    6
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    ベストの状態で保存されても復帰には最短で30日、プラス、パイロットと整備員の習熟にも時間は要するだろう。
    保存してあるから即戦力という状態ではないことを知ってないと、判断の遅れが致命的になる恐れがあるね

    1
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    と言うか、こうなるとF-117の退役とは何だったのかと勘繰りたくなるな
    勿論、費用面でF-117全機を維持する理由が無くなったからなのだろうが、実の所は「公に出来ない極秘任務」をやらせる為に一部の機体が任務に就いているのを隠す目的で「退役」と言っただけじゃないだろうか
    実際、イラクとシリアで飛んでいたと言うし、今回の空中給油許可の件ももしかすると中東方面か中国・北朝鮮への対応が目的だったりして

    24
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      確かロシアに壮大な釣りされて撃墜されたから退役したハズですけど、ロシアと中国の対ステルス用レーダーS-400とHQ-9が無ければF-117でも未だに活動可能という事なのかと思われます、後は同盟国の対ステルスレーダーが機能するかのテスト用(F-35買えない国)とかデモンストレーション用かと、見つかってしまうと先ず逃げられない運動性能なのでトランプの趣味入ってるかも?

      1
        • 匿名
        • 2021年 1月 31日

        1997年のコソボ紛争時にF-117Aが撃墜された件に関しては、米空軍側にも電子戦機による支援が無かった上に毎晩決まったコースを飛んでいたと言う舐めた作戦をやっていた報いもある
        実際、撃墜されたパイロットも出撃前に撃墜される危険を感じていたそうだ
        勿論、セルビア側も独自にSA-3地対空ミサイルの改良をやっていた成果が出たので、それをロシア側が応用している可能性はあるね

        11
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    最後の最後までふむふむ4.5世代戦闘機を新に調達するよりいいかもな、と感心してたら最後の最後で

    >少なくとも4機以上のF-117が墓場から這い出しているのが確認されているので10機前後のF-117が現役に復帰しているのかもしれない。

    たったこれだけじゃテストぐらいしか使い道なさそう

    3
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      重要目標を通り魔的に誘導爆弾で狙う様な極秘作戦なら、数機程度を派遣出来る準備が出来ていれば十分
      実例を挙げれば、2011年に米海軍特殊部隊のSEALsを中心とした部隊がオサマ・ビンラディンを暗殺した「ネプチューン・スピア」作戦に使われたとされるステルス仕様のMH-60、あれ1機か2機しか作られていない(更に1機が作戦中に墜落)と言われているし、未だに確かな写真が公表されていないでしょ
      この様に、隠密作戦だったら極少数機を配備するだけで良いんだよ
      それに予備機を加えて10機前後が現役復帰しているのなら、一部をテストや訓練に回していても不思議じゃない

      14
        • 匿名
        • 2021年 1月 31日

        記事の最後あたりまで先日の元将官による「元米空軍中将はF-35Aを支持、ライフルサイクルコストではなく費用対効果を重視せよ」で言われてたような問題(第五世代ほどのステルスじゃない4.5世代戦闘機でロシア・中国の防空網をかいくぐれない)の対応策の一つなのかなと明後日の方向で読んでたので、最後の最後で全然違うやんけ!と一人ズッコケたという話です

    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    形状としてはF117がもっともステルス性能は高いはず。
    退役したことにして極秘任務用に活動してるんでしょう。

    5
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      いや、それは無い。逆に、当時のコンピュータの限界の結果として直線的な設計になっただけだぞ。

      11
        • 匿名
        • 2021年 1月 31日

        ですね。
        初期だけに「パッと見にも分かりやすいステルス形状」をしているってだけかと。

        8
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    >>ナイトホークを使用する新しい計画がある
    そうだと思います。ただ、その使い途を、我々が知ることはないのでしょう。

    10
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    以前、管理人さんがF22とB2のイスラエルへの供与の可能性を記事にしていましたが
    これが供与される可能性はありますかね?

    3
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    以前、管理人さんがF22とB2のイスラエルへの供与の可能性を記事にしてましたが
    これが供与される可能性はありますかね?

    1
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    ナイトホークはまだ生きているんですね。
    極秘任務という言葉は童心を思い出すようですよ。

    10
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    俺も墓場から這い出したいが流石に無理そうだわ
    未来のために頑張ってくれF-117!

    7
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    なのだが~なのだが~って日本語が気になって仕方がない
    意味は通じるから目くじら立てる程でもないが

      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      目くじら立ててるじゃん!

      39
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    仮想敵機として、最新の機材のテストベッドとして活躍していることは何度か耳に入っていました。
    資産として使えるなら当然の措置かと。
    F-22やF-35をそういった用途に使うには期待価格も運用費用も高価すぎます。

    5
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    2000ポンド爆弾を収納できるのは使い勝手が良いということかな。
    そして、何か特殊任務にあたらせるならば旧式のほうが墜落時の情報流出リスクが小さい
    退役したけど退役してませんって、米軍も建前の世界なんだね

    2
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    対ステルスUAVを想定したアグレッサー部隊なんじゃないか?
    でF117使って防空網の確認と見直ししてるとか。

    2
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    ナイトホークと言うよりゾンビホークやんけ…

    3
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    飛行特性が似ている機体の訓練機かな?

    1
      • 匿名
      • 2021年 1月 31日

      A-7Dが復活するんですねw

      4
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    デジタル・センチュリーのベースはコレwww? 

      • 匿名
      • 2021年 2月 01日

      寧ろ、試作機試験をカモフラージュする為に飛ばしてるのかもね

      2
        • 匿名
        • 2021年 2月 02日

        あぁ、UFO目撃情報の量産だな

        1
    • 匿名
    • 2021年 1月 31日

    日本も退役した機体を標的機にしてたから標的機としてステルス機を撃破する実験をやってるんじゃないかな
    撃墜しても惜しくないステルス機なんてナイトホークぐらいしか無いだろうし

    1
    • 匿名
    • 2021年 2月 01日

    エグゼクティブデシジョンで見たからしってるよ
    胴体に貨物スペースと背中にハッチを付けて飛行中の旅客機に特殊部隊を送り込める輸送機に改造したんでしょ

    1
      • 匿名
      • 2021年 2月 01日

      セガールの無駄づかい

      3
    • 匿名
    • 2021年 2月 01日

    退役で爆撃機や攻撃機の手が足りなくなってる状況が続いてますもんね。
    墓場からナイトホークも召還しますよ。

    • 匿名
    • 2021年 2月 04日

    RCSがF-35A並なら無人化すれば現行で十分通用するロイヤルウィングマンとして結構使いやすそうな気がする。

    3
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