米国関連

米空軍パイロットの飛行回数、即応態勢維持に必要な最低基準を下回る

米空軍のグアステラ元中将は2023年6月「米空軍は中国空軍にパイロットの飛行時間で抜かれた」と言及していたが、ミッチェル研究所の円卓会議でも「米空軍のパイロットは戦闘任務遂行が可能と認定されるのに必要な飛行回数(ソーティ)を確保できていない」「後方地域のパイロットに与えられる飛行機会は月1回だ」と指摘された。

参考:Air Force fighter pilots fall below sortie minimum to be deemed combat ready

2025年6月の対イラン作戦において米国の航空優勢はイスラエル軍に依存していた

2018年2月に米上院軍事委員会の即応力小委員会で「空軍パイロットの飛行時間は月平均9~10時間程度で、海兵隊の月平均14~16時間よりも少ない」と報告され、当時のウィルソン空軍長官は後日「2017会計年度におけるパイロット全体の飛行時間は月平均約17.6時間で、戦闘機パイロットは約16.4時間、輸送機パイロットは17.3時間、爆撃機パイロットは平均19.7時間だった」と反論したが、ミッチェル研究所が2023年6月末に発表したレポートを執筆したジョセフ・グアステラ元空軍中将は「米空軍は中国空軍にパイロットの飛行時間で抜かれた」と言及した。

出典:Mitchell Institute for Aerospace Studies

このレポートは「現在の戦闘機戦力は老朽化(A-10、F-15C/D、F-16C/D、F-15Eの平均機齢は41年、38年、32年、30年)が進んでいる」と指摘し、グアステラ元空軍中将は「大半の戦闘機は計画された耐用年数を過ぎており、機体が古くなればなるほど必要な整備と部品交換が増加し、その影響でパイロットの飛行時間が減少する。中国空軍のパイロットは米空軍のパイロットよりも飛行時間が長く、この差が実戦で違いを作り出す」と述べていたが、今月11日に開催されたミッチェル研究所の円卓会議でも「もう米空軍のパイロットは戦闘任務遂行が可能と認定されるのに必要な飛行回数(ソーティ)を確保できていない」という発言が飛び出した。

米空軍のパイロットが即応態勢を維持し「戦闘任務遂行が可能」とみなされるためには月に9〜10回の飛行が必要で、ミッチェル研究所のジョン・ベナブル上級研究員は「空軍の指揮官や現場のパイロットから話を聞いた限り、前方展開してない米本土やその他地域に残る航空機のパイロットに与えられる飛行機会は月1回に過ぎない」「空軍が最後に飛行回数のデータを公表したのは2023会計年度で、当時のパイロットの月間飛行回数は約5.5回だった。これは戦闘任務遂行が可能とみなされる必要水準の約60%だ」「空軍は飛行回数の数字がさらに落ち込んだためデータの公表を停止してしまった」と証言。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Jennifer Nesbitt

さらに空軍が説明するパイロット不足の数は2,000人だが、ベナブル氏は現場の証言に基づいて「実際には約2,400人にまで増加している」「バイデン政権時代のケンドール空軍長官が6,000人分の航空関連整備要員予算を他の優先事項に振り替えたため即応態勢の状況がさらに悪化した」「2025年6月の対イラン作戦(ライジング・ライオン作戦やミッドナイト・ハンマー作戦)において米国の航空優勢はイスラエル軍に依存していた」「なぜならイスラエル軍パイロットの方が圧倒的に飛行時間が長く、月に20回の飛行をこなし、特に第一線のパイロットは25時間〜30時間の飛行時間を確保しているからだ」と付け加えた。

米空軍が保有する戦闘機は2024会計年度時点で1,084機、そのうち戦闘任務の遂行が可能な機体は634機に過ぎず、ベナブル氏はミッチェル研究所のデータに基づいて「空軍がエピック・フューリー作戦に投入した戦闘機は約325機(約25個飛行隊)しかなく、これを1991年の湾岸戦争時に投入した戦闘機と比較すると約半分で、この数字が現在の空軍にかき集められるほぼ限界だ」と述べ、もう1個飛行隊を定数の24機で展開させることもしなくなっているらしい。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Melany Bermudez

つまり「機体の老朽化で整備に時間がかかってパイロットの飛行回数や飛行時間が少なくなり、その影響は前線地域よりも後方地域に留まるパイロットに深刻な問題を引き起こし、機体の老朽化、整備工数の増加に対応する整備士不足、パイロットの訓練不足、パイロット自体の不足が相まって即応態勢が低下してしまい、1,084機の内634機しか戦闘任務に適した戦闘機がなく、2026年のエピック・フューリー作戦では約325機をかき集めるのがほぼ限界だった」という意味で、今すぐ欧州やインド太平洋で別の戦争が起きても「戦闘機戦力を回す余裕はない」ということになる。

2026年1月から6月まで日本の嘉手納空軍基地に展開していた第120戦闘飛行隊のフランク・プロコップ中佐も「F-16C Block30の運用維持に課題がある」「F-16が最初に製造された当時、1飛行時間あたりにかかる整備工数=整備マンアワーは概ね6〜8時間程度だったが、現在は1飛行時間あたり平均15〜20時間の整備工数を費やしている」「恐らく我々が直面している最大の課題は機体の整備時間の要求が高まっているにもかかわらず、それに見合うだけの人員増強が整備部隊に対して行われていないことだ」と指摘した。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Francisco Huerta

F-16C Block30は耐用年数の限界に近づいているため「機体のひび割れ」など構造的欠陥が非常に高い頻度で発生し、より綿密な整備に手間がかかるため地上に留まる時間が増え、その影響で第120戦闘飛行隊のパイロットは実機による飛行訓練を減らし、シミュレーターでの訓練時間を増やすなどの調整を迫られている。

米空軍上層部も「保有する戦闘機の平均機齢上昇を防ぐためには、少なくとも年72機の戦闘機を調達しなければならない」と訴えているものの、この最低ラインを最後にクリアしたのは2024会計年度予算で、2025年度の予算要求は60機(成立はF-35Aが44機+F-15EXが18機で計62機)、2026年度は45機(成立はF-35Aが24機+F-15EXが22機で計46機)という低水準に留まり、現在審議中の2027会計年度予算でも62機しか要求しておらず、この構造的な問題が解消する目処は見えていない。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Kristen Heller

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コメント

  • コメント (15)

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    • たむごん
    • 2026年 9月 12日

    エピックフューリー作戦で、陸海空の作戦機を大量投入しているわけですが、どれくらい損耗してるのかも気になるところです。

    作戦期間が想定より長く、かなり長期化しているわけですから弾薬在庫だけでなく、部品在庫・整備状況などもなかなか厳しいのかなと。

    日本目線で見れば、極東の抑止力に直接影響してくるわけですから、イラン戦争で米軍が損耗していくよりも内部体制整備のほうに注力して欲しかったなあと感じています。

    20
    • 匿名ちゃん
    • 2026年 9月 12日

    もう無人戦闘機配備は急務か
    パイロットアシストAIで訓練効率化するとか

    7
    • 匿名ちゃん
    • 2026年 9月 12日

    もう無人戦闘機配備は急務か
    パイロットアシストAIで訓練効率化するとか

    • 名無し
    • 2026年 9月 12日

    OSINT見てるとイラン戦争に投入されてる航空機が緊急コード7700を異常なほどに出してましたしねえ

    18
    • あばばばば
    • 2026年 9月 12日

    F-15・F-16の生産ラインを増やして更新ペースを上げるしかないだろう
    生産ラインの増設に失敗するリスクから心配しなければいけないけど

    7
    • かず
    • 2026年 9月 12日

    帝国の黄昏ってこんな雰囲気なのかも

    43
    • K1
    • 2026年 9月 12日

    1個飛行隊の定数24機で展開出来ず

    嘉手納に配備されるF-15EX、1個飛行隊当たり18機ってなってましたね。

    自衛隊のF-15も那覇で立て続けに故障起こしていて、老朽化が深刻に感じますし、機能制限あるF-35だけでは心許ない。
    早急な立て直しが必要でしょうが、一度失われると取り返すのはなかなか難しいでしょうね。

    15
    • daishi
    • 2026年 9月 12日

    「戦闘機高齢化空軍」ですね。
    ・軍縮で戦闘機の継続的な調達が途切れた(F-22)
    ・第5世代戦闘機の大型調達で要件とサプライチェーンが複雑化し特にソフトウェア問題が深刻になった(F-35)
    ・システム・オブ・システムズが高度化しソフトウェアの複雑化に伴う問題は決定的な解決策がない(全般)

    途切れなく継続的に開発が行われ、適切に更新していれば、という点は中間層が薄く慌てて新人を増やすことになった日本企業と似ていますね

    9
    • AKI
    • 2026年 9月 12日

    やってることが朝鮮戦争、ベトナム戦争から変わってないアメリカ。
    高級で鈍重な戦闘機を面倒みられず、安い中華戦闘機にやられるという。
    人的資源の違いと、企業や官僚の儲けが大事の資本主義だから仕方ないけど。

    F-16にも、任務を限定した軽量な新型が必要かも。

    12
    • Mo
    • 2026年 9月 12日

    アメリカ空軍の稼働航空機の数はピークをすぎてるから飛行時間で抜かれるのも妥当でしょう
    空軍も海軍もとっくに規模縮小しています。予算の額だけは立派ですが

    7
    • 元ねじ屋
    • 2026年 9月 12日

    デジタルセンチュリーシリーズ構想とかも有りましたが、まあもしGOサイン出していたとしても現代の米国では画餅だったと思いますしねえ。

    3
    • 暇な人
    • 2026年 9月 12日

    ない袖は振れぬということでしょう
    戦闘機一回飛ばすのに燃料費やら整備で数百万かかると聞いたことがあります
    満載した大型トラックよりも重いものをマッハで飛ばすと考えればそのコストはとても重いのでしょうし

    ホルムズ封鎖で一日20億ドルでしたっけそりゃ予算なくなりますよ

    10
    • 暇な人
    • 2026年 9月 12日

    ない袖は振れぬということでしょう
    戦闘機一回飛ばすのに燃料費やら整備で数百万かかると聞いたことがあります
    満載した大型トラックよりも重いものをマッハで飛ばすと考えればそのコストはとても重いのでしょうし

    封鎖で一日20億ドルでしたっけそりゃ予算なくなりますよ

    • 匿名希望係
    • 2026年 9月 12日

    後方向けに韓国からT-50をつるしでかえばー?
    結構マジな話として…
    後方訓練程度になら使えるだろうし。

    4
      • コロ
      • 2026年 9月 14日

      KF21をツナギで買うのもありでしょう。

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