米国関連

航空戦力の整理を始めた米空軍、2025年に高高度偵察機「U-2」を退役させる?

米空軍は初飛行から70年が経過する2025年に偵察機「U-2ドラゴンレディ」を退役させるだろうと報じられている。

参考:U.S. Air Force Planning To Retire U-2 Dragon Lady Spy Planes In 2025

東西冷戦期に伝説的な活躍を演じた偵察機U-2ドラゴンレディもいよいよ退役?

U-2はロッキード(現:ロッキード・マーティン)のスカンクワークスが戦闘機F-104をベースに開発した高高度偵察機で、2万1,000メートルもの高度を飛行することが出来るため運用開始から数年間は地対空ミサイルの性能が未熟だったこともあり非常に有効な偵察手段だったが、1960年にS-75地対空ミサイルによって撃墜されてしまった。

出典:public domain 高高度を飛行中のU-2から撮影された風景

しかし偵察機材の発達で敵空域に侵入すること無く情報収集が可能になったため、後継機であるSR-71が退役した現在でも現役機として活躍を続けているが、米空軍は2月10日に発表した2021会計年度予算案の中で、5年後の2025年に偵察機「U-2ドラゴンレディ」を退役させる計画を明らかにした。

米空軍は2021年から2024年までU-2を維持するための費用予測を盛り込んだが2025年以降については「0」だと記入し、U-2は2025年に退役する予定だと記載されている。

ただ米空軍のローラ・マクアンドリュース広報担当官は、予算案が示したのはU-2が2025年に退役するのではなく、少なくとも2025年まではU-2を維持し続けるという意味だったと語り、U-2を開発したロッキード・マーティンは同機の退役報道について確認中だと回答した。

出典:public domain RQ-4 グローバルホーク

これまで何度も退役を噂されたU-2だが、無人偵察機「RQ-4 グローバルホーク」の調達コストが高価な上、導入当初の時間あたりの運用コストが4万ドルを越え、情報収集率や悪天候下での運用能力、搭載できる偵察機器の量や発電能力の面で評価が高いが、現在ではノースロップ・グラマンのサポート費用が運用機の増加に伴い分散されたため時間あたりの運用コストは1万1,000ドルまで低下している。

米空軍は2018年にU-2を2022年までは維持することを決定したが、それもあと2年で期日を迎える。しかも2025年には初飛行から70年が経過するため機体の維持にかかる費用も馬鹿にならず、米空軍は2021年から爆撃機B-1Bや攻撃機A-10などのレガシーな航空機の退役を行うと発表しているため、レガシーなU-2の退役を米空軍が計画していても何ら不思議ではない。

果たして米空軍は、長年に渡り偵察分野で伝説的な活躍をしてきた「U-2ドラゴンレディ」を本当に退役させてしまうのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain U-2ドラゴンレディ

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 2月 17日

    SR-71よりU-2がここまで生き残るとかテクノロジーの進化って面白いよなあ

      • 匿名
      • 2020年 2月 20日

      B-1よりもB-52が生き残るとかもね

    • 匿名
    • 2020年 2月 18日

    逆にまだあったのねこの機体

    • 匿名
    • 2020年 2月 18日

    機体が古いってこともさることながら、与圧スーツを着用しての32時間の滞空って乗務員へのストレスの問題もあるよね。
    これもオムツ着用なのかな?(アメリカ軍のE-2C/Dもトイレが無いからオムツだったはず)

    • 匿名
    • 2020年 2月 18日

    A-3は古いのにデカイから改造してカムチャッカ半島方面への長時間の電子偵察やVIP専用機として活躍してたもんなあ
    それでも長時間のミッションは場所も含めてハードだったらしいけど
    長時間のミッションでも快適なのって旅客機ベースのAWACS とかになるんだろうか

      • 匿名
      • 2020年 2月 19日

      U-2は高・高度(約2万m)で長時間、滞空するから、与圧スーツ。排泄機能は付いてるらしいけど、トイレ(大)はできるのかな?

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