米国関連

米空軍がB-21のプロトタイプ完成を議会に報告、2022年初頭にロールアウト予定

米空軍は8日に開催された下院軍事委員会で開発を進めているB-21のプロトタイプ2機の組み立てが完了していることを明かして注目を集めている。

参考:The First Two B-21 Stealth Bombers Are Now Ready For Testing

米空軍はパームデールのプラント42で組み立て中だった2機のB-21が完成している下院軍事委員会の公聴会で明かす

米空軍で調達・兵站部門を管轄するダーリーン・コステロ次官補は「カリフォルニア州パームデールのプラント42で組み立て中だった2機のB-21が完成した」と8日に開催された下院軍事委員会の公聴会で明かして注目を集めている。

米空軍の地球規模攻撃軍団(AFGSC)で司令官を務めるティモシー・レイ大将は「従来とは異なる斬新な開発・取得プロセスを採用しているためB-21の初期作戦能力(IOC)獲得にかかる時間を大幅に短縮できる」と主張、肥大化した兵器開発に批判的なことで有名な下院軍事委員会のアダム・スミス委員長も「F-35プログラムで学んだ教訓を生かしたB-21プログラムは開発予算の超過もなく予定通りにインテリジェントな方法で開発が進んでいる」と称賛しているほど同機は開発予算の超過もなく予定通りに進捗しており現在のスケジュールでは2022年の初頭にロールアウト、2022年半ばまでに初飛行を行うことが計画されている。

出典:U.S. Air Force Courtesy graphic by Northrop Grumman

ただB-21の開発や調達が加速可能かという質問に対してコステロ次官補は「開発と調達を同時並行で行なわないB-21を完全に完成させることが最重要だ」との認識を示したのが非常に興味深く、新しい開発アプローチを採用しながら「完成するまでは量産しない」という基本に忠実な辺りがF-35で学んだ最大の教訓なのかもしれない。

因みに8日に開催された下院軍事委員会の公聴会ではB-21以外にも興味深い話題が2点取り上げられ、1つ目は米空軍の戦術輸送機が将来の脅威や軍のニーズに対応していないため老朽化したC-130を退役させて垂直離着陸が可能な戦術輸送機を導入すべきだという話題だ。

出典:public domain

米空軍の説明によるとC-5、C-17、C-130で構成された航空輸送能力は他国と比較して非常に強力だが、中国との戦いで要求される戦力の分散配備に関するニーズ(太平洋上に点在する飛行場などを備えていない小さな島に海兵隊と装備を迅速に送り込むという構想)に対応できないため老朽化したC-130を退役させて垂直離着陸が可能な戦術輸送機を導入すべきだと言及しており、米軍が進めている戦力の分散化に対する取り組みが本気であることを示している例だと言えるだろう。

2つ目はKC-46Aについてで予告通りロブ・​ウィットマン議員が日本向けスペアパーツ契約に価格が適正か検証されていない1,000万ドル分のスペアパーツが含まれていること、同機に用いられるナビゲーションライトの調達コストが以前よりも15倍に高騰している点を挙げて「この問題はKC-46Aの開発契約自体に原因がある」と指摘した。

簡単に彼の主張を要約するとKC-46Aの研究・開発費用は固定金額(最大49億ドル/約5,310億円)で契約されのだが、幾つかの問題によってKC-46Aの開発費用は契約で定められた固定金額を大幅に超過したためボーイングは47.5億ドル(約5,000億円)を超える自社資金を投入、この状況を米空軍が放置したためボーイングは自然と自社の出血を止める方向に動き状況が悪化し続けているらしい。

出典:U.S. Air Force Photo by Tech. Sgt. John Wilkes

つまり固定金額だからといって問題を放置すればボーイングが自社の損を最小限に抑えるため問題の修正を費用面からアプローチするようになり、損を回収するための別の方法を試みるようになると指摘して「これを防ぐため空軍は有効なインセンティブを与えるなどKC-46A開発の積極的管理に乗り出すべきだ」と主張したのだが、コステロ次官補はKC-46Aで選択したアプローチ(つまり固定金額での契約)は間違っておらず問題修正に必要な追加資金をボーイングに支給することで合意済みだと反論。

食い下がるロブ・​ウィットマン議員はスペアパーツの高騰について見解を要求するもコステロ次官補は「それはあなたが日本のために膨らませたコストで、日本向けスペアパーツに価格の適正を検証できなかったものが一部含まれることを日本側に通知したが8,800万ドルの契約額は日本が事前承認した金額を下回っていたこと、何より日本自身がKC-46Aの到着と同時にスペアパーツが揃っていることを望んだため総合的な判断に基づきボーイングとの契約を締結する決定を下したことをあなたは知らない」と語り両者の議論は平行線のまま終わった。

ロブ・​ウィットマン議員は最終的に「空軍のKC-46Aに対する取り組みは不十分だ」と吐き捨てて次のテーマに議論は移ったが、両者の主張のどちらが正しいのかは謎のままで終わったため再びロブ・​ウィットマン議員が次なる資料を携え下院軍事委員会の公聴会に突撃するかもしれない。

関連記事:ボーイングによる空自向けKC-46Aのスペアパーツ価格釣り上げ疑惑が浮上、米議会で討議される予定
関連記事:開発予算の超過もなく予定通りに進捗、F-35を批判する軍事委員長も称賛するB-21の開発状況

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force Courtesy graphic by Northrop Grumman

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    F-35みたいにこまめなアップデートはしないって言ってたっけ

    3
    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    > 垂直離着陸が可能な戦術輸送機
    オスプレイじゃ流石に小さいから新型?
    それともまさかオスプレイをその用途で使うのかな

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 10日

      新型でしょうね。

      10
        • 匿名
        • 2021年 6月 10日

        オスプレイを拡大するイメージしかわかないけど、それ以外の技術的展開があるのだろうか

        1
          • 匿名
          • 2021年 6月 10日

          ターボプロップの代わりにギアードターボファンを使うって策はある。
          あとは垂直に取り付けた固体燃料式RATOをデフレクターで制御するとか、強力なアッパーサーフェスブローイングを組み合わせて超短距離離着陸で誤魔化すとか?
          新型デイジーカッターで即席飛行場をどこにでも作れるってのも面白いかも。
          まぁ、どうやってもオスプレイの合理性は簡単には覆らんでしょうな。

          1
    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    C-130の代替というからには複合ヘリコプターなんかではなくティルトローター機の事を言っているんだろうけど、現状でもペイロードやキャビン容積に対するローター径がギリギリなのにC-130相当(20トン)のペイロードのVTOLが作れるんだろうか

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 10日

      極端な話Mi-26が存在するから、20tの荷物を抱えて垂直離着陸する輸送機自体は物理的に存在可能ということになるけど
      C-130に見劣りしない速度と航続距離を持つとなるとどうなんだろうかね

      オスプレイを単純にデカくすれば良いというわけじゃないのは素人でも想像つくけど

        • 匿名
        • 2021年 6月 10日

        すっげー乱暴な計算で異論はあるだろうけど、オスプレイ方式で最大ペイロードをC-130同等にしようとするとパワープラントはおよそ3倍は推進力が必要になる。
        ペイロードは戦術要求から決まるんだろうからなんともだけど、ペイロードをある程度忍んでオスプレイの串形ティルトウィング化が開発リスクも低く良いような。
        個人的意見です。

        2
          • 匿名
          • 2021年 6月 10日

          テ、テイルシッター輸送機(震ぇ

          • 匿名
          • 2021年 6月 10日

          ジェット化…
          いやロケット化かな

    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    米中ロシアのステルス爆撃機を揃えて航空ショーやってくれよ
    いろんな意味で手間が省ける

    1
    •   
    • 2021年 6月 10日

    次期垂直離着陸機開発の一環で大型なものが含まれているからソレだろう

    4
    •   
    • 2021年 6月 10日

    C130の後継はC130Jですすんでおり、あくまで古くなったC130を部分的に置き換えたいって計画であろ
    C130をまるごと置き換えるとの誤解がでないように念のため

    3
      • 匿名
      • 2021年 6月 10日

      ガンダムで言うとミディア輸送機のようなVTOL輸送機体が出来ると胸熱です。
      当然、開発されれば日本も購入検討されるでしょうね。

    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    来年に初飛行となると
    実機が披露されるのはいつになるのか分らんが早く見たいな
    配備されるのはいつ頃なんだろう?

      • 匿名
      • 2021年 6月 10日

      ロールアウト時にお披露目の式典をやるのが普通なんで来年初頭が期待できるんじゃ?
      B-52とB-1を代替する配備開始は今のところ2020年代後半としか公表されてないですね。

    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    クアッドティルトローターってありましたね
    構想で止まっているみたいですが、実用に向けて動き出すのかな

    1
    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    米国専用機なだけあってスムーズでなにより

    1
    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    間で噛み込むリベートを受けて働く層がいるから当初予算から何倍にも膨らんで最後は日本など言われるがまま払う国に押し付ける訳ですねわかります

    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    下院軍事委員会の公聴会のようなものは、日本にもあるのかな。

    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    B-21も早いけど
    後半の要約するとティルトローターかSTOL機でせいぜい700-1000ヤードで離着陸可能なオスプレイの倍くらいは積載できる無人機を(有人機も)開発中あるいは策定中でC-130Jと併用すると運用的にもロジスティクス的にも人員的にかなり強力と
    MQ-9の離着陸システムでいけるだろうし
    輸送機って戦力的戦術的にかなり重要だからいまのオスプレイですら発狂気味な彼らは島嶼にそんな新型輸送機を楽に降ろされると分かるだけで気絶しそうだな
    130同様ガンシップ化とかも期待できる

    3
    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    C-130の新型とか垂直離着陸の輸送機とかの開発予算つけるぐらいなら
    海軍とかほかにもっと開発予算まわせよ

      • 匿名
      • 2021年 6月 10日

      無理にコメントせんでええよ

      1
    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    C-130の後継、しかもVTOLとは面白い。
    F-35Bのパワートレーン(リヒートなし)を双発で使う機体を考えてしまった・・

    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    クアッド・ティルトローターは研究してるから可能性ありそう
    オスプレイが真上通ると窓が振動するけど4発大型機だと一体どうなってしまうんだろう…
    楽しみ

    • 匿名
    • 2021年 6月 10日

    ティルトローターはどうしても重量が嵩むからC-130の代替はキツイよなぁ

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