米国防総省は提出した要求予算案の中で防衛装備品の調達に約2,050億ドルを要求し、低コスト巡航ミサイルを約3,000発調達する費用として6.5億ドルを計上、1発あたりの取得費用は約21万ドルで、目標コストの15万ドルには届いていないものの初回発注分としては悪くない数字だ。
参考:Pentagon’s $205B procurement budget revealed: New weapons require reconciliation
低コスト巡航ミサイル取得費用は約21万ドル、目標の15万ドルを達成していないものの初回発注分としては悪くないかもしれない。
2期目のトランプ政権にとって初めての国防予算編成は大波乱を巻き起こしており、誰も見たことがない1兆ドルの国防予算の蓋を開けてみれば裁量的予算=通常の国防予算要求額はバイデン政権時代の支出水準(約8,930億ドル)と遜色がなく、インフレ率の上昇分も加味されていないため「実質的な予算削減」と言われており、1兆ドルを達成するための義務的予算=共和党主導のBig Beautiful Billに盛り込ま割れた1,500億ドルの追加国防支出は両院で可決されたものの、上院バージョーンと下院バージョーンでは資金配分が異なり、前者が採用されると海軍の艦艇調達資金は大幅に削減されてしまう。

出典:The White House
さらに国防総省は2026会計年度の要求予算を完全に完成させていないのに下院歳出委員会が独自の予算案を発表し、トランプ大統領も国防総省に相談なくF-15EXの配備基地を増やして混乱を引き起こしており、ヘグセス国防長官の指示で陸軍が進めている戦力構造の大改革も防衛産業界を凍りつかせ、海軍が進めてたF/A-XXも「政権のF-47優先方針」の影響を受けて「F/A-XX開発に割り当てられるはずだった資金がF-47開発に転用され本格開発が先送りされる可能性」が浮上し、ここまで混乱した国防予算の編成過程を見るのは初めてかもしれない。
国防総省は完全ではない要求予算案を今週提出したが、今年の要求予算案が難解なのは「通常の国防予算で賄う要求なのか」「まだ成立していないBig Beautiful Billで獲得する資金で賄う要求なのか」に分かれている点で、国防総省は防衛装備品の調達に約2,050億ドルを要求しており、2025会計年度の調達資金と比較しても約18%の増額で「インフレ率の上昇を吸収するのに十分な伸び率」と言えるものの、要求額の1/4に相当する約510億ドルを確保できるかどうかはBig Beautiful Billの成立にかかっており、もし不成立なら調達額は約1,530億ドルになって2025年度の1,740億ドルを下回ることになる。

出典:DoD photo by U.S. Navy Petty Officer 1st Class Alexander Kubitza
さらに国防総省が提出した要求予算案には「2つ目のバージョンがある」「このバージョンは1,500億ドル(4年間で支出する合計額)の追加資金が得られなかった場合のものだ」と報じられており、このバージョンでは国防予算の7%削減が行われることになり、下院歳出委員会は「前例のない方式の要求予算案」について「何がしたいのか良くわからない。歳出委員会の場でパーセンテージについて話するもの、何を喋るのも自由だが、我々が何のためにどれだけの資金が必要なのかを理解しないと議論は前進しない。だから計画の詳細を教えて欲しい」と苦言を呈しており、今年の資金獲得は大荒れになるかもしれない。
因みにBig Beautiful Bill成立を前提にした完全ではない要求予算案において空軍は航空機調達に248億ドル、ミサイル調達に62億ドル、弾薬調達に7.8億ドル、その他の調達に322億ドルを要求、主要な要求額はB-21は47億ドルの他に先行調達費用として8.6億ドルを、21機のF-15EX調達に25億ドル、24機のF-35A調達に36億ドル、14機のT-7A調達に3.6億ドル、15機のKC-46A調達に28億ドル、復活したARRW取得に3.8億ドル、低コスト巡航ミサイル調達(約3,000発)に6.5億ドルとなる。

出典:Defense Innovation Unit
要求予算案の金額は関連費用が含まれていない「純粋な取得費用=機体単価」に近く、1機あたりのF-15EX取得費用は約1.2億ドル、F-35A取得費用は約1.5億ドル、T-7A取得費用は約5,000万ドル、KC-46A取得費用は約1.8億ドル、低コスト巡航ミサイル取得費用は約21万ドルで、特にF-35Aの取得費用はインフレ率やTR3の組み込みによって大幅に上昇している格好だ。
低コスト巡航ミサイルの目標コストは15万ドル、AGM-158B-2の取得費用は推定128万ドルなので、21万ドルという数字は初回発注分として悪くないかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:CoAspire
画像の様にF-35から撃てるようになるのは、いつなのだろうか?
未だに何も巡航ミサイルを使えないんだけど。
マルチロール機として、早く使えるようになればいいですよね。
F-35全てが、画像のように使える時が、いつかどこかでくるかもしれませんね。
画像は、ステルス性が皆無の状態ですから、この状態で使うのであれば高い維持コスト・低稼働率が改善していけばいいなと。
この安価なミサイルを遠方からバンバン投げまくる作戦が出来るようになれば良いね
普段から備蓄をするのも重要だけど製造工場を国の金で抑えておくってのも大事かもしれない、国営工廠的な感じで
予算会議が荒れるのはいいんだけど、軍、政府、大統領がバラバラな戦略描いてるように思えて何とも不安だな
安価な巡航ミサイルは腐らないからそこが順調なのはいいことだけど
ああいった手合いはF-15EXが好きだからね。だっていっぱいミサイル積めるからさwわかりやすいよね。
Pc見たいに後からセンサーやチップを変えられるようにすりゃいいのに
その2つはずっと安くなっていくんだし
同じような考えで失敗してるF-35という前例があります
センサーやチップが変わると、往々にしてソフトも変える必要が出て来るでしょうね。
作り込みによっては、統合作業も個別に必要となるケースもあるかも?
ちなみに個人的にEOL対策で、pin互換の後継ICに(ソフト互換とも聞いてたので)単純交換したら、
実は初期化の仕方が違っていて出力波形にビート出まくり、ボードを壊したかとビビった事があります。
この記事見るたびに、一方ロシアはシャヘドを使った、という文字が目に浮かぶのなぜ?
老婆心ながらコメントしますが、自爆型ドローンとと巡航ミサイルの用途差くらいは理解したうえで、記事を読まれたほうがよいかと。
速度や命中率、発射するプラットフォーム、誘導方法などかなりの差があり、だからこそロシアはシャヘドと巡航ミサイルミサイルを併用しているわけで…。
巡航ミサイル本体の性能向上を追求するのと同じくらい、安価なデコイミサイルなんかの開発も需要になる気がしますな。
ロケットモーター部分は結局同じコストが掛かりそうだから、誘導部分で、本物のミサイル追従かなんかで簡略化できるかなあ。
ドローンに巡航ミサイルの代わりは務まりませんよ
巡行ミサイルと徘徊型弾薬の違いは何と問われたら性能とコストとしか言いようがないのも確か
何なら偵察とか長時間滞在できる分徘徊型弾薬にも利点はある
21万ドルというのは頑張ったと言えるが中途半端とも言える
この値段でジェットエンジン積めるかな?気になる
俺なんかはどうせ音速飛行しないんだからプロペラでいいじゃんって思ってるが
円筒形の申し訳程度の翼で飛ばすんなら、推力に頼らざるをえないからなぁ
ロケットだと飛距離が出ないうえ発電できないから別途バッテリーがいるし、プロペラで同じ速度、航続距離を目指すんならメチャデカくて二重反転みたいな複雑化も免れないから、ジェットエンジンが一番安上がりなんだと思う
AGM-158の場合、ペイロードは1,000lbと思います。
低コスト巡航ミサイルを、バラクーダ 500とすると、ペイロードは100lbです。
少し少ないかな?、と思ったり。数は撃てても。
結局問題は弾頭重量だと思うけどね。
コストを下げたらエアフレームとして大した事ないわけで
弾頭も随分軽いだろう。
コストを下げた分威力もゴミですじゃあコスパが良いとは言えないね。
ウクライナが3000発以上長距離ミサイルを食らったがそれ自体は
そこまで効いてないという事実にも注目する必要がある。
結局ロケットは飛行装置として高価すぎるし一国を機能不全にする
レベルの爆撃をさせるには全く不適切。
巡航ミサイルは高価値目標に適切に使用してあくまで戦場での有利に
貢献する兵器として運用する必要がある、まあ実際はロシア然り
イラン然り嫌がらせ都市爆撃専用になっているのが現実だけど。
こんな感じなのでしょうか?
運送現場がトラックもバンも足りていないとして増備要望。
経営層は輸送力増強の必要を理解して、新車導入を約束。せっかくだから斬新な改良型購入を決定。仕様も納期も不明。
株主も輸送力増強の必要を理解して、これからはドローン配送の時代だから先進AIドローンの研究開始を指示。
年初に「日米両政府がトマホーク取得で正式契約 最大400発、2541億円」てニュース出てたの思い出してうーーんてなった・・
この低コストミサイルってアンドリル社のバラクーダ250か?
最大射程300kmらしいので競合はJSMって感じ
ただJSMは全行程低空飛行だと空気抵抗で射程200km程度まで落ちるのでこの低コストミサイルがどういう飛行なのかにもよるかな