米空軍はサウジアラビア空軍のF-15Sから剥ぎ取った主翼で維持費用の節約に努めていると報じられている。
参考:409th SCMS works with F-15 SPO, AFLCMC to secure RSAF wings for F-15, saving millions
世界で最も多くの国防予算を使える米軍、裏では地道な取り組みを行い無駄を省く努力に注力
サウジアラビア空軍はF-15Eと同一仕様だが搭載レーダー「AN/APG-70」と機外に携行する照準ポッド「LANTIRN」に多少のダウングレードが施されているF-15Sと、F-15Eベースにフライ・バイ・ワイヤー飛行制御システム、APG-63(V)3、ALQ-239DEWS、IRST、新設計の主翼を採用した新型のF-15SAを保有しているが、サウジアラビアは2018年に66機のF-15SをF-15SA仕様にアップグレードすることを決定した。
両機は搭載したアビオニクスだけでなく機体構造や制御システムまで異なるためF-15Sを完全にF-15SAへとアップグレードするためにはフライ・バイ・ワイヤーを組み込み主翼や胴体の一部を交換する必要があり、F-15Sに取付けられていた主翼は剥ぎ取られ破棄される運命だったのだが、これに目をつけたのが米空軍だ。

出典:U.S. Air Force F-15Sの主翼を再整備中の米空軍
米空軍はF-15Eの寿命延長(2040年までの運用)のため新しい主翼を必要としており、これを新しく新調すると多額の予算がかかるためF-15Sから剥ぎ取られた主翼を購入してF-15Eの新しい主翼に転用することを決定、ひとまず8セットの主翼を購入したが米空軍はこの取り組みによって約8,000万ドルを節約することに成功したと発表している。
因みにサウジアラビアから購入するF-15Sの主翼は「コンデションA」と判定された状態の良いものに限られており、調達予定数は42セットでボーイングに新しい主翼を発注するよりも約2億5,000万ドル(約260億円)以上の費用を節約でき主翼製造にかかる時間(5年)も省略してくれるためサウジアラビアと米国にとってWin-Winの取引と言えるだろうが、ボーイングだけは数百億円規模の売上と5年分の仕事量を失ったことになるため面白くないだろう。
どちらにしても第4世代戦闘機は非常に長期間の運用に対応するため多くの費用が必要で、一般的に言われている西側製兵器のライフルサイクルコストの相場「購入コストの2倍~2.5倍」という数字を超えている可能性が高く、このコストを少しでも軽くするための取り組みを講じなければ予算に対する維持費用はかさむばかりだ。
こういった取り組みは何も米空軍に限った話ではなく米海軍も退役した空母から装備を剥ぎ取り現役空母の維持に利用している。

出典:public domain 空母エンタープライズ
例えば2012年に退役した世界初の原子力空母「エンタープライズ」はニューポート・ニューズ造船所で解体を待っているのだが、同艦に搭載されていた装備は全て剥ぎ取られ1つ20トンもする錨はニミッツ級空母5番艦「エイブラハム・リンカーン」で再利用されており、剥ぎ取られたカタパルトはリンカーンとワシントンの補修に用いられた。
さらにエンタープライズが使用していた巨大な5つのスクリューは取り外され保管中で解体される船体から回収される予定の鋼鉄6万トンとアルミニウム1,500トンは再利用に回され、ジェラルド・R・フォード級空母3番艦「エンタープライズ」の建造に使用される予定だ。
この様な装備の再利用は米海軍では珍しくなく、1993年に退役した通常動力空母のフォレスタルが使用していた錨はニミッツ級空母7番艦の「ハリー・S・トルーマン」が使用しており、一見すると世界で最も多くの国防予算を使える米軍も裏では地道な取り組みを行い無駄を省く努力を重ねている。
ただこうした地道な努力もズムウォルト級駆逐艦やジェラルド・R・フォード級空母のコスト超過で消し飛ぶため、本当に実を結んでいるかは評価の分かれることろだ。
※アイキャッチ画像の出典:public domain
エンタープライズの素材がエンタープライズの建造に利用されるとかもはや転生やん
ここまで資材の使いまわしをしたら
CVN-65新世紀対応近代化プログラム
と称して予算請求しても通りそうw
逆テセウスの船ですね。ばらして再合体+ちょっと新規部品(大げさ
エンタープライズは滅びぬ!何度でも甦るさ! ピカドーン!
象徴的な意味での再利用という部分も多分に含む話でしょうけどね。
まぁエンタープライズの場合は人間側も親子そろってエンプラ乗りなんて話もあるぐらいですし。
退役分のF-15Jの米国への売却の話がありましたがこういう使い方されるんでしょうね。
空自も米空海軍同様に作戦機パイロットの平均訓練時間が多めだから、
使いまわしたくなるほどヤレてない機体はほとんどないじゃないかな。
(平均30年以上使ってたわけだし)
勿論長期間運用していた割にはキレイなんだろうけど。
なんじゃこりゃあぁぁぁー
金満米軍の落日に同盟国として不安しかない
物を大切にするのは良いことにせよ、同盟国に余剰品を分配していた余裕はどこいったのよ
部品取りは昔からどこでもやっている事なので、それ自体は驚きませんが。。。。
戦闘機の主翼ねぇ、ずいぶんな大物を。
まあ、Eなら良いのかなぁ。。。
F-15から派生して空母のうんちく話でほほーって思わせてくれるからこのサイトは楽しい
最初は海外の記事を翻訳してるだけのサイトかと思ったけど、元記事をベースに色々考えて全部一から作ってんだな。
しかも1日に3本も、これを趣味でやってるって正直尊敬するわ
だよね。
毎日一番楽しみにしているサイトの1つだ。
Thanks管理人さん。
残念ながら私も同意せざるを得ない!
けど正直ホル韓の方が楽しかった…
他サイト行け
こういう取り組みを柔軟に行って実際に予算削減に繋げているところは率直に感心するな
ただ、米軍の予算関係ではもっと別のところで削れるんじゃないのと思わなくもない
失敗は成功の母とはいうけれど、あまりに失敗ドボンが多すぎじゃないですかね
なお
米空軍:F-35の購入費用が足りないな。議会からは軍内の予算改革でなんとかしろって言われたし、よし全米で1000以上ある軍事的に意味のない無駄な基地の整理縮小で費用を捻出するか
米議会:雇用が失われる基地の整理縮小は1ヵ所も認めません。全て却下
米軍 :は?なら装備減らして費用ねん出するしか無いやん。A-10の早期退役でもするか
米議会:A-10が配備されている基地の雇用が失われるので却下
米軍 :A-10が駄目ならF-15を早期退役させるぞ
米議会:F-15の早期退役も基地の雇用が~で却下、ついでにボーイング救済で追加調達もしてやるわ
米軍 :・・・・・・
米軍の予算改革の根っこには一切手を付けられない模様
待ったをかける理由が全て「雇用」ですか…。
アメリカ議会には失業者アレルギーでもあるんでしょうか…?
そりゃあ、大事な選挙民ですから。
まぁ国家の目標のひとつは国民生活の安定だから完全に間違いではないな。要はバランスだろ、おまけに軍と議会・行政の信頼関係。これはうまく行ってるとはいえなさそうだね
> ただこうした地道な努力もズムウォルト級駆逐艦やジェラルド・R・フォード級空母のコスト超過で消し飛ぶため、
おかげでこういった投資ができたと考えることもできる気もします。
投資はどこかで回収できると考えると努力は無駄ではないですね。
サウジアラビアの軍隊はお飾りみたいなものだからそりゃコンディションは良いだろうな
まともに整備してればの話だけど
整備は米軍関係者が担当してるから間違いない
彼等は買いそろえるだけで手入れとかやらないから
サウジアラビアはイエメンで実戦経験を積んでるからお飾りじゃない
俺の小遣いも年々減らされて嫁の服代に消えていってるんだが、
米軍も同じ境遇だと思ったらまだまだ頑張れる気がしてきた!
剥ぎ取る楽しみもあるし良いんじゃないか。
>俺の小遣いも年々減らされて嫁の服代に消えていってるんだが、・・・
その通り!
年々減っているのに嫁の体重は増えているんです。
納得いかない!
海自のMH-53Eも退役後にアメリカが部品取りとして引き取ってましたね
エンタープライズが新たなエンタープライズへ・・・か。
日本も「かが」から新たな「かが」へとかできるのかな。
退役する護衛艦から取り外して30FFMとかで使えそうなものって、あるかな?
これまでも
艦橋横のウィングにある捜索用大型双眼鏡は結構使いまわしてたハズ。
他にも護衛艦の両舷にある短魚雷発射管も回収・改修して使っていた
ように思う。
CIWSとか?機関砲なんかは寿命長いから回せるかも
確か、「いずも」のCIWSは退役艦からの使い回しで ブロック1を装備していたはず。
「かが」はブロック2だった様な?
艦砲が代表的なものだと思うけど日本の場合は面倒な契約になっていて、砲自体を触れないから新型艦の設計制約になるのでやってないって言う話は聞いたことがある。本当かどうかは不明だけどはやぶさがそれで揉めたはずなので、ある程度真実味はあると思う。
FFMは例外だな。
あれは細かなシステムまで統一して22隻分揃える計画だから、中古使うと部品足りなくなる。
逆に言えば、FFMが軌道に乗ればFFM間で潤沢な部品使い回せる。
5インチ砲も結構使い回しだったはず。
正直お古を東南アジアに回すくらいの余裕は見たかった
掃海母艦うらがの主砲は、永遠の後日装備となっていまうけど、退役するゆき級の主砲を何故転用しないんでしょうね。付けりゃ維持費掛かるのはわかりますが、船体も乗員の命も安くはないので、中古でも良いから転用すれば良いのにと思います。
CIWSにしても、現状丸腰の補給艦に転用できるんじゃないでしょうか。
国の会計制度の関係で、一度名称が登録された兵器を改造できない、と聞いたことがあります。性能変更を機とする場合は、名称を新規登録して新規に調達する必要があり、既存の装備を改造できないとかなんとか。
財政規律を盾に、不効率な防衛装備整備維持体系に座するほどの余裕は、今の日本には無いと思います。
近々、新型輸送艦(DDH、掃海母艦兼務)で公開する腹積もりだからではないでしょうか?
私も「うらが」に76mm砲搭載しないか待っているけど、艦歴がもう25年なのでそろそろ更新時期で無理ですかね
艦齢延長して使うならば、その時ワンチャンあるかもだけど
最後の一文が無慈悲過ぎて草生える。
日本の中古のイーグルちゃん達も高く売れるといいなー。
いつもチクリと一言いうのが面白いよな
つまり中国はこれよりもひどいと、
元々の品質がしっかりしているから再利用できるのであって、そうでなければ再資源化しかない。
日本の中古イーグルはよく訓練する&スクランブル多い自衛隊のおかげで飛行時間長いから
オーバーホール費用かさむし二束三文だろう、恩を売ることが大事
塩害も酷いだろうしね。
日本以外もF-15の近代化改修やってんだなあ
JSI改修で出た余った部品を米国へ転売したら予算が圧縮できるとかそんな都合のいい話ありませんかね・・・
レーダーなど電子機器が中心だから、無理では?
機体構造材だと、JとEは全く別物だからほぼ使えないし。
MSIP機からPre-MISP機へ移植なら有り得そうだけど。
イスラエルがワンチャンあるぐらい?
むしろ逆に向こうから中古購入になりそうだが
イスラエルのF-15IもIAアップグレード予定なのですが、アップグレード対象は最大で25機なのでサウジの70機と比べたら期待はできなさそうです。
F-15KもKAアップグレードするなら主翼剥ぎ取って転用しそうですが、KFXとF-35を入れるのでアップグレード予算なさそうですしサウジとイスラエルの100機弱の主翼転用でおしまいでしょうね
軍用機業界、しかも米軍でニコイチみたいなことをやっているのに驚きました。(私の友人のクルマ屋がニコイチをしているらしい)
面白い記事です。ありがとうございます!