米国関連

米空軍、無人戦闘機「スカイボーグ」に搭載するコアシステムの初飛行に成功

無人戦闘機プログラム「Skyborg(スカイボーグ)」に採用予定の自律的な飛行制御用コアシステムを搭載した無人プラットフォーム「UTAP-22」が初飛行に成功した。

参考:Skyborg ACS has Successful First Flight

スカイボーグのプロトタイプに搭載される飛行制御用コアシステムが初飛行に成功

米空軍はF-35AやF-15EXなどの有人プラットフォームとチーミングが可能で、人間が操縦する戦闘機の代わりにリスクの高い任務を実行可能な無人戦闘機「Skyborg(スカイボーグ)」の開発を進めており、同機に採用される予定の自律的な飛行制御用コアシステム(Skyborg ACS)を搭載した無人プラットフォーム「UTAP-22」が初飛行に成功したと発表した。

出典:U.S. Air Force photo

クラトス製の無人プラットフォーム「UTAP-22マコ」に搭載されたスカイボーグ用のACS/Leidos製はティンダル空軍基地で約2時間に及ぶ初飛行を行いシステムの安全性を実証するため基本的な飛行操作を実施、米空軍は発表したプレスリリースの中で「ACSは基本的な航空能力を示しナビゲーションコマンドやジオフェンス(仮想的な境界)を認識して反応するなど協調的な操縦のデモンストレーションに成功した」と言及している。

クラトスの最高経営責任者(CEO)を務めるスティーブ・フェンドリー氏も「今回のテストは再利用可能でありながら交戦中の損失を許容できる無人機=attritable dronesの可能性を示している」と語っており、また一歩スカイボーグの実用化に前進したと言えるだろう。

因みにスカイボーグプログラムは機体とソフトウェアの開発が分離されて進めれており、機体の開発を担当するボーイング、ゼネラル・アトミックス、クラトスの3社は今回テストされたACSを搭載するプロトタイプを今月中に空軍へ引渡す予定で、BAEシステムズやエアロバイロメントなど10社がセンサー類やアルゴリズム及びミッションシステムの開発を担当して最終的に3つの機体と10つのソフトウェアを全て組合せて検証を行い最も優れているペアが採用されるらしい。

出典:ロシア国防省がアップしたYouTubeのスクリーンショット

スカイボーグプログラムは昨年7月に機体担当ベンダーとソフトウェア担当ベンダーを選定したのだが、たった11ヶ月でプロトタイプの引き渡しが完了するという異例のスピードで開発が進んでおり、ロシアでも無人攻撃機「S-70オホートニク」の量産機引き渡しが2024年に始まる予定なので有人機と無人機によるチーミング実現は遠い将来の話ではなくなってきている。

有人戦闘機とのエア・チーミングに対応した無人機開発を表明(推定も含む)した国も米国、ロシア、中国、英国、欧州(ドイツ/フランス/スペイン)、オーストラリア、インド、トルコ、ブラジル、日本の10ヶ国にまで増えており航空戦術は歴史的に見ても大きな転換点を迎えているはずだ。

関連記事:爆速で完成する米空軍の無人戦闘機、プロトタイプ引き渡しは5ヶ月以内
関連記事:エンブラエル、ブラジル空軍向けにエア・チーミング対応の「ステルス無人戦闘機」を開発
関連記事:ノースロップ・グラマン、英国初の無人戦闘機開発にパートナーとして参加

告知:軍事関係や安全保障に関するニュースが急増して記事化できないものはTwitterの方で情報を発信します。興味のある方は@grandfleet_infoをフォローしてチェックしてみてください。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo

トルコ、主力戦車「アルタイ」向けに開発中だった国産エンジンの試運転に成功前のページ

米太平洋艦隊が拠点を置くハワイ諸島から約3,000km離れたカントン島に中国軍が進出?次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米空軍、F-22A Block20の改修費用は「途方もない金額になる」と予告

    F-22A Block20の退役を拒否された米空軍は「Block20を…

  2. 米国関連

    小躍りする中国、米軍事委員会が外交を活用した国防戦略への転換を要求

    米議会の下院軍事委員会で委員長を務めるアダム・スミス議員(民主党)は次…

  3. 米国関連

    米海軍、耐用年数を迎えるアーレイ・バーク級駆逐艦を維持するには奇跡が必要か

    米海軍は耐用年数を迎えるアーレイ・バーク級駆逐艦に対して大規模なオーバ…

  4. 米国関連

    米国が長距離攻撃兵器を含むウクライナ支援パッケージを準備中、GLSDB提供か

    ロイターは長距離攻撃兵器のGLSDB(地上発射型小口径爆弾)が含まれる…

  5. 米国関連

    空を飛ぶことが出来ないB-1B爆撃機?戦闘準備が完了してるのは6機だけ

    7月30日、米国議会上院軍事委員会に名を連ねる共和党上院議員マイク・ラ…

  6. 米国関連

    バイデン政権、大統領選挙までのウクライナ支援に1,000億ドルを要請か

    Telegraph紙は「ウクライナ支援を巡る対立が続けば大統領選挙を控…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 5月 06日

    このシステムをQF-16とかに載せたら駄目かな。
    古い機体なら、失っても惜しくないから。

    3
      • 匿名
      • 2021年 5月 06日

      使い道がなくはないだろうけど、そもそも有人機も無人機もステルスでレーダーに映らないのが前提で、無人機が映ったら有人機の位置が大体バレるでしょ。

      9
        • A
        • 2021年 5月 07日

        別にのんびりと編隊飛行するわけではないでしょう。
        喰いついてきたら敵の位置も判明するし、威力偵察くらいは使えるのでは?

        1
          • 2021年 5月 07日

          そのためにQF-16にして使うのかって言われると微妙なラインじゃないかな
          古い機体って事はつまり維持するのにそれなりの費用が掛かるわけだし

          2
            • A
            • 2021年 5月 07日

            なるほど。維持費のことを失念していました。
            指摘に感謝します。

    • 匿名
    • 2021年 5月 06日

    ピーナッツアプローチを思い出します

    • 匿名
    • 2021年 5月 06日

    ロイヤルウィングマン、オホトニクに遅れていたけどスカイボーグも順調なようで。やっぱ人命が関わらない分、テストも早く行えるんでしょーねー

    3
    • 匿名
    • 2021年 5月 06日

    第2•3世代戦闘機みたいなデザイン
    冷戦時代にいそう

    2
      • 匿名
      • 2021年 5月 06日

      俺は第一印象がF-104に似てるだった

      1
      • A
      • 2021年 5月 07日

      ぱっと見でBQM-34かと思ったよ。

    • 匿名
    • 2021年 5月 06日

    コアファイターか

    • 匿名
    • 2021年 5月 06日

    マコちゃんか…擬人化不可避だな…

    1
      • A
      • 2021年 5月 07日

      是非かわいい子でお願いします。

    • 匿名
    • 2021年 5月 06日

    「10つ」はどう読む?

    • 匿名
    • 2021年 5月 06日

    なぜかすごくちょっとコンビニ行って来る感

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
PAGE TOP