米国関連

アーセナルプレーン構想の実用化に一歩前進、米空軍がラピッド・ドラゴンからのJASSM-ER分離に成功

米空軍は飛行中のC-130Jからラピッド・ドラゴンを搭載したパレットを投下して想定通りにJASSM-ERが分離することを確認したと発表した。

参考:Rapid Dragon conducts palletized munition demonstration using production long range cruise missile separation test vehicle 

実用化に向けて前進したラピッド・ドラゴンシステム、ラックからJASSM-ERが想定通り分離することを確認

米空軍は輸送機C-130やC-17を必要に応じて攻撃兵器の運搬機に変身させる「アーセナルプレーン構想」を進めており、この計画の鍵となるのはロッキード・マーティンが開発中の「ラピッド・ドラゴン/Rapid Dragon」と呼ばれる空中投下型弾薬パレットだ。

出典:Lockheed Martin

もっと正確に言えばラピッド・ドラゴンとはC-130やC-17が貨物を積み込む際に使用する標準パレットの上に並べるラックと付随したシステムのことを指しており、ラピッド・ドラゴンシステムを搭載した標準パレットを後部貨物扉から空中に投下、パラシュートによってパレットの落下姿勢を安定させた後ラックに収納されているJASSM-ERを垂直に分離、ラピッド・ドラゴンのラックから分離されたJASSM-ERは折りたたまれていた主翼と垂直尾翼を展開してエンジン点火後に目標に向かって飛行していくという寸法で、米空軍は飛行中のC-130Jからラピッド・ドラゴンを搭載したパレットを投下して想定通り分離することを確認したと発表した。

出典:Air Force Research Laboratory C-130Jから投下されたラピッド・ドラゴン

以前公開されていた動画はラックに収納していたJASSM-ERがモックだっためパレットを投下して落下姿勢を安定させる所までしか検証されていなかったが、今回のテストでラピッド・ドラゴンから分離されたJASSM-ERは想定通り主翼と垂直尾翼を展開して安定した飛行姿勢を保つことに成功したため、ほぼラピッド・ドラゴンシステムの技術的課題はクリアされたと言える。

因みにC-17はラピッド・ドラゴンのラックを3段×3列で搭載した標準パレットを4枚搭載=JASSM-ERを計36発、C-130はラピッド・ドラゴンのラックを2段×3列で搭載した標準パレットを2枚搭載=JASSM-ERを計12発を運搬することが可能(管理人がLMの公開した動画で確認した数で公式の数字ではない)なので、10機のC-17で360発(10機のC-130なら120発)のJASSM-ERを集中運用する事が出来てしまうため巡航ミサイルによる飽和攻撃が現実になるという意味だ。

問題はラピッド・ドラゴンで使用されるJASSM-ER(もしくはJASSM)を大量に用意する必要があるので、弾薬の大量ストックが必要=多額の資金(JASSMの米空軍調達コストは1発128万ドルなので360発用意するには4.6億ドル/約527億円)を投入する必要がある点だろう。

関連記事:アーセナルプレーン構想、ロッキード・マーティンが空中投下型弾薬パレット「Rapid Dragon」を公開

 

※アイキャッチ画像の出典:Air Force Research Laboratory

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    専門の爆撃機が要らなくなるというだけでも経費節減になりますね。

    9
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      輸送機に攻撃能力を付与すると言う事は輸送以外の仕事をさせるって話しだから、輸送能力の低下は問題ないのか。あとはやっぱり攻撃には最低1ラック=6発は必ず消費なのは冗長性に欠けるよな。

      6
        • 匿名
        • 2021年 11月 18日

        別にフル装填する必要はないでしょ

        2
          • 匿名
          • 2021年 11月 18日

          攻撃が予定通りに行く話でもない。

          最初に端数、次にフルでとか考えていて予定変更あったとしたら端数処理しないと発射も出来ないから少なくするか多くするかとか出てくるから、そいつで解決する訳でもないだろ。

            • 匿名
            • 2021年 11月 18日

            わかりやすい日本語で

            2
        • 匿名
        • 2021年 11月 18日

        管理人さんも言ってるけど2段×3列、3段×3列は公式ではないのでまだわからない
        リンク先ソースの画像は2段×2列のを2パレット積み込みしてるし
        それ以外にも9/21のデモンストレーションで搭載されてたのは
        2段×2列のパレットだったし

        8
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      この手のは構想倒れで、実験ぐらいはやっても、実戦配備化された試しってもんが殆どないからな

      6
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    C-2に利用できたら自衛隊も爆撃機を持てて敵基地攻撃能力を獲得できるやんw

    11
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      積み込む際のパレット等の問題なければいけるね

      11
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      日本の兵器調達ではニーズがなければシーズは生まれない
      で、この手の投射手段のニーズをどう見るか
      JASSM-ERの射程900km超だと、北朝鮮を想定するなら、日本海沿岸部(鳥取県の海岸部から)
      でも射程900kmだと北朝鮮の国土の大半が射程内に入る
      それならわざわざC-2を飛ばさなくても同射程の地上発射型でも十分となるけど、日本の場合
      地上発射型は「それを、どこに配備するか」で大抵揉めるので、それなら本土上空の安全な空域
      から発射して北の大半を射程に収められる、この様な兵器は価値を持つかもしれないな。

      22
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      これ巡航ミサイル保有国が同盟国の輸送機に装備して簡易ミサイルキャリアを短期間に増やせるわけで
      中型輸送機を保有しているだけでも潜在的脅威とみなされるようになるのでは・・・

      2
        • 匿名
        • 2021年 11月 19日

        だから何なの?
        潜在的脅威じゃない軍事力なんかあるの?

        7
          • 匿名
          • 2021年 11月 20日

          おや、潜在的脅威という単語だけでそういう受け取り方をされるとは思わなかった。
          例えば中国が同じようなものを開発した後、パキスタンが中国製輸送機を導入したら「これは・・・」と思うでしょ。
          立場の弱い中小国は中露なんかへの配慮(あるいは直接的圧力)からC-130はちょっと・・・みたいになっていくかもしれないね、と

          1
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    (JASSMの米空軍調達コストは1発128万ドルなので360発用意するには4.6億ドル/約527億円)

    200機以上のC-17と、護衛艦並みの予算をミサイルに注げるアメリカだからこそ出来る力技だなぁ…

    7
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    垂直でいいならソノブイみたいにスカスカ落とせばいいのに

    2
      • 匿名
      • 2021年 11月 19日

      それだと専用の改装が必要になって弾薬費とパレットセット代だけですむというメリットが無くなる

      5
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    10機のC17から360発のCMというと何故か実感が湧かないが、5機のC17から180発と言われると、それはやばい、、という気がする。自分だけだろうか?

    9
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      言わんとしてることは分かる
      グローブマスターを二桁同時運用ってあんまり実感わかないけど、一個飛行小隊程度の規模で気軽に大火力を投射できるってのは相手からすれば気が気じゃなくなるからね

      17
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    日本でもC-2で使えそうだから成功して欲しいね
    国産ミサイルに置き替えるのも簡単そうだし

    13
      • 匿名
      • 2021年 11月 19日

      日本の場合、一度の武器投射能力高めるより弾薬数を揃えるほうが先決かと
      このセットを用意したところで何回これで攻撃できるんだという……

      4
        • 匿名
        • 2021年 11月 19日

        偶に撃つ 弾が無いのが 珠に傷

        とはよく言ったものだ(泣

        5
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    米中露以外はもう専用爆撃機なんて新しく作らないだろうしまあこうなりますよね

    3
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      米中露でもB-52のように地面を耕せればいい機体はこのようなシステムに移行していくかもしれませんね。浮いた金で輸送機を浮いた以上に買えば効率的にもいいはずだし。
      反対に爆撃機まで手が回らないような国でも飽和攻撃が可能になるのは厄介ですね。お隣の国が180発のCMを投射できるとかなったら自衛隊は頭が痛いだろうに

      11
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    これでB-52おじいちゃんの仕事が減るのかな?

    2
      • 匿名
      • 2021年 11月 19日

      B-52はこれと違ってある程度の敵対空装備に対応できるのと足が速いのと搭載量と種類が多いという覆せない差があるから、仕事量が減るとしても限定的じゃないかな

      4
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    普通にC-2に4~8くらいのパイロンを付けて翼を折りたたんだ巡航ミサイルや滑空爆弾をぶら下げた方が簡単なのでは。
    要はパイロンにつるすかパレットで放り出すかの違いしかない、カワサキに20機ほど発注して仕事を増やそう。
    アーセナルプレーンとして使える輸送機なら輸出も可能になる、現状輸出されている戦略爆撃機は無いから結構需要はあるだろう。
    爆撃機と違って照準装置は不要だし敵地上空まで行く危険性が無い。
    4機のC-2が各8発の滑空ミサイルを積めば32圧になり中国艦隊の艦対空ミサイルの射程外から飽和攻撃が出来る、艦接近してくる隊防空任務の戦闘機は先行するF-3で処理する。

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      パイロンに30発以上の空対地ミサイルを積めるなら良いかもめ

      3
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      Youtubeとか探すと見つかりますが、パイロンに装備を吊るすのって時間もかかるしかなり大変なようですよ。

      2
        • 匿名
        • 2021年 11月 19日

        爆撃機の爆弾ラックに装填するのも大変なのに、まして爆撃機以外の機体の、それも専用ラック以外にとなると全部搭載するだけでもどれだけ時間かかることになるんだろうか

        リンク

        3
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    これも米が実現化のための予算折衝で揉めてるうちに中国が実用化する訳ですね
    飽和攻撃って簡単に言うけど、補給と備蓄に関する負担が大きいと思うんだよね。過去に問題になったこともあったけど現状、海上自衛隊の艦艇は手持ちのミサイル全部撃ち尽くして後方で補給うけて再度戦線復帰するような長期間の戦いは想定してない(複数の護衛艦に何度も補給できるほどの備蓄もない)。陸自や空自にしてもそんな長期戦を想定した大量の武器弾薬備蓄はしてないので、今からこの種の戦術を日本で導入しようと思ったら補給体制の見直しからやらないといけないよなぁ

    12
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      補給の見直しか…
      そういや油槽船造ってたな

      1
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    ガンシップの最新型だってガン廃止で荷室からミサイル落とすガンスリンジャー搭載機でしょ
    あっちはジャベリンとかヘルファイアだけどあれだって対人では十分すぎるスタンドオフ兵器

    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    海もVLSにこだわらず、対艦対空車両そのまま載せるとか
    コンテナ格納式のミサイル開発するとか

    3
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      ウソか本当か、おおすみとかいずもの甲板にMLRSをずらっと並べて対地攻撃する構想があるそうですよ。

      2
    • 匿名
    • 2021年 11月 19日

    米国は、こういう物量作戦が得意だよね

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