米国関連

米陸軍、パトリオットのギャップを埋める新しい防空システムに「AIM-9Xインターセプター」を採用

米陸軍はパトリオットシステムのギャップを埋めるため新しい防空システムにダイネティクスが提案した「AIM-9Xインターセプター」を採用すると報じられている。

参考:Here’s who the US Army has tapped to build an enduring capability to counter drones and cruise missiles

アイアンドームの派生型「スカイハンター」を蹴って国産技術ベースのAIM-9Xインターセプターを採用する米陸軍

西側標準とも言える米国製の高度な防空システム「パトリオット」はイエメンのシーア派反政府組織フーシによる簡素な作りの無人機や巡航ミサイルによる攻撃を阻止するのに失敗しており、ロシア国防省の関係者は米国製防空システムの仕様は実際の性能を反映していない証拠だと主張して「米国製の防空システムはロシア製防空システムに比べて効率が悪い」と酷評、イスラエルのミサイル防衛機構元局長は「パトリオットのレーダーは地平線よりも下を移動する目標を検出して捕捉することが不得意=不可能に近い」と指摘して低空を飛行する無人機や巡航ミサイルの迎撃に効果がないと語っている。

出典:U.S. Army photo by Charles Rosemond パトリオットシステム

米陸軍も既存の防空システムがカバーできない部分を敵が狙って攻撃を仕掛けているのを認識しており、パトリオットシステムのギャップを埋めるため無人機と巡航ミサイルの脅威(将来的にはロケット弾や砲弾類の迎撃にも対応予定)に対抗できる能力を備えた新しい防空システム調達に動いている最中で、アイアンドームの派生型「スカイハンター」採用が有力視されていたが米陸軍は比較テストの結果「ダイネティクスが提案したAIM-9Xインターセプターを採用する」と報じられており注目を集めている。

※AIM-9Xインターセプターは正式名称ではないので注意(ダイネティクスは便宜上EnduringShieldと呼んでいる)

ダイネティクスが提案した「AIM-9Xインターセプター」は米陸軍がロケット弾や砲弾類を迎撃するため独自に開発を進めていた「Multi-Mission Launcher/マルチミッションランチャー(技術的成熟度の不足により開発中止)」の技術を流用して開発されたものなので、AIM-9Xインターセプターの採用は海外依存ではなく独自のC-RAM確保を望んでいた陸軍の後押しがあったのかもしれない。

このMMLは種類の異なるミサイル(スティンガー、ヘルファイア、AIM-9X)を1つのランチャーに混載運用できるのが特徴で、近距離防空やC-RAMとしてパトリオットシステムのギャップを埋めることが期待されていたのだが技術的な課題や成熟度不足で開発中止されたシロモノで、紆余曲折を経て再びスポットライトがあたった格好だ。

但し、AIM-9Xの調達コストは1発あたり約50万ドル/約5,400万円でアイアンドームが使用する迎撃弾(4万ドル~10万ドル)と比較すると高価過ぎるので、仮に実用化できても米国以外に採用する国はいないだろう。

関連記事:韓国、アイアンドームに類似した防空システムやVTOL対応の無人航空機開発を決定

 

※アイキャッチ画像の出典:Dynetics

20年間に及ぶ米軍のアフガン駐留も最終局面、放棄する装備品の破壊準備に着手前のページ

米国で高まる嘘つき大統領への批判、リーダーシップの欠けたバイデン政権は敵へのギフトに過ぎない次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米国の危機感、なぜ米国の同盟国は中国から無人航空機を購入するのか?

    米国のミッチェル航空宇宙研究所は無人航空機は航空機であり巡航ミサイルや…

  2. 米国関連

    米国が海軍の艦隊再編計画を発表、2045年までに500隻体制+軽空母6隻導入

    マーク・エスパー国防長官は6日、噂されていた海軍の艦隊再編計画「Bat…

  3. 米国関連

    中国よりも先に第6世代戦闘機を手にれたい米空軍、議会に資金供給を訴える

    米空軍航空戦闘軍団の司令官を務めるマーク・ケリー大将はメディアとのセッ…

  4. 米国関連

    KC-46Aの欠陥は空軍が原因、国防総省が空軍の開発体制を批判する報告書を発表

    国防総省は空中給油機KC-46Aの欠陥はボーイングだけではなく空軍が開…

  5. 米国関連

    ロッキード・マーティン、2023年までに同盟国分を含むF-35の運用コスト10%削減を約束

    ロッキード・マーティンは2023年度までにF-35の運用コストを3万ド…

  6. 米国関連

    空母への着艦に非対応な謎仕様? 米海軍の次期訓練機プログラムが始動

    アレスティングワイヤーによる着艦に対応しなくてよいという謎仕様の米海軍…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 8月 25日

    サイドワインダーも、機能の拡張に次ぐ拡張で、性能はめちゃくちゃ上がったけど、価格も上がる一方だなぁ
    そこそこの性能でお安いのが正解なのか、圧倒的な性能で完封を目指すのが正解なのか。
    短距離ミサイルひとつできまるわけじゃないけど、全体で見ても、米国製兵器の高価格化はずば抜けてるしなぁ

    18
      • 匿名
      • 2021年 8月 25日

      高性能化しないと、開発費用が貰えないからなあ。

      4
        • 匿名
        • 2021年 8月 26日

        段々日本の家電みたいになってる

        4
          • 匿名
          • 2021年 8月 26日

          ほぼ必要のない高付加価値を自慢する、売れない商品か
          兵器も家電も価格の二極分化するとして、物には共通の問題がある
          家電には定まった寿命があり、兵器は必ず使い捨て、戦闘機ですら1回目の出撃でもう失われる可能性がつきまとうのに、その費用に見合う戦果はまったく保証されていないということ

            • 匿名
            • 2021年 8月 27日

            事実だけを積み重ねてよくぞここまで意図不明な迷文が書ける物だ…。

            1
      • 匿名
      • 2021年 8月 26日

      ドローン撃ち落とすのにAIM-9Xは大げさだよな。対ドローン用の小型ミサイルでも作ったほうが良さそう。根拠とかはなんもないけど
      何万発もいっぺんに契約すれば安くて必要十分なのができるでしょ

      6
        • 匿名
        • 2021年 8月 26日

        計画配備数と単年〜複数年跨ぎの予算は別ですからねー
        配備数減になった場合の違約金、能力向上型も考えると一括契約は無理。

    • 匿名
    • 2021年 8月 25日

    要するに、MMLでは種類の異なるミサイルを1つのランチャーに混載運用したのが間違いの元(射撃統制装置の仕様等の困難度が上昇する)だったので、使うミサイルをAIM-9Xに絞った訳ね
    米陸軍もようやく「兵器はシンプルズ・イズ・ベスト」が正道だって言うのを理解したらしい
    後、AIM-9Xの価格については今後インターセプターの量産効果で若干下がる可能性(元々、AIM-9Xは空対空ミサイルのベストセラー)があるし、使用目的がアイアンドームとは異なる点を考慮すると、米陸軍は余り気にして居ないかも知れない

    1
      • 匿名
      • 2021年 8月 26日

      ベストセラーと言えるのは、AIM-9Mで、このAIM-9Xは言えない。
      もはやAIM-9Xは今までの短距離対空ミサイルとはもはや別物で、現存の短距離対空ミサイルとは、その先進性から性能でも一線を画してる。お値段も一線を画してる。
      中長距離ミサイルみたいな構成してる

      5
    • 匿名
    • 2021年 8月 25日

    インターセプターでインターセプトしろ!

    1
    • 匿名
    • 2021年 8月 25日

    高っ!?
    高すぎるっ
    アイアンドームですら、安いロケット弾相手だとコスパ悪すぎってなったのに、これは……

    18
      • 匿名
      • 2021年 8月 25日

      アメリカ以外に買いそうな国がひとつだけあるだろ
      いや、買わされるかw

      13
        • 匿名
        • 2021年 8月 25日

        某国「うーん、トウモロコシとセットで採用!w」

        5
        • 匿名
        • 2021年 8月 26日

        売ってくれて、買える財力あるなら感謝。

        1
    • 匿名
    • 2021年 8月 25日

    日本も変に凝ったりせずにAAM-4やAAM-5をそのままSAMにした方が良いと思う

    4
      • 匿名
      • 2021年 8月 25日

      実を言うと、AAM-4は2000年代に海自がシースパローの後継として「XRIM-4」の名でSAMにしようとしたんだが、防衛費削減の煽りでESSMを導入されて開発中止になっちゃってる
      只、最近になって海自は「ESSMじゃあ射程が短過ぎる」と思ったらしく、今度は陸自の03式中距離対空誘導弾(改)をベースにしたESSM後継の新艦対空誘導弾を2017年度から2023年度までの計画で開発を進めていて、将来的にはもがみ型護衛艦に装備されるのではと言われている

      17
        • 匿名
        • 2021年 8月 26日

        03式のベースがAAM4B、とにかくAAM4Bは性能がいいから低層BMDにも使われそう。

        5
      • 匿名
      • 2021年 8月 25日

      AAMのSAM化ってあんまり信用できない
      セミアクティブ誘導のシースパロー以外転用の成功例を聞かないと思うんだが

      1
        • 匿名
        • 2021年 8月 26日

        ノルウェーでAMRAAM使って無かったか?

        2
        • 匿名
        • 2021年 8月 26日

        そのものずばりAIM-9をベースにしたチャパラルSAMがそれなりに配備されておりましたな

        1
        • 匿名
        • 2021年 9月 06日

        英CAMM 伊CAMM-ER 仏VL MICA 印VL-SRSAMあたりがAAM転用SAMだけどぶっちゃけマイナーかな、成功云々は基準どこにおくかかねぇ?
        CAMMは開発国以外に複数の国で採用してるのでわりと売れてる方?

    • 匿名
    • 2021年 8月 25日

    >AIM-9X
    無人機や巡航ミサイルがチャフやフレアばらまきながら高軌道で回避行動しつつ突撃してくることでも想定してんのかと思うようなオーバースペック
    無駄が多すぎやしないか

    10
      • 匿名
      • 2021年 8月 30日

      UAV相手だと赤外線検知の9Lは対応できないので、画像誘導できる9Xになったのでは?
      9Lの生産ラインをいつまで維持するのかも問題で

    • 匿名
    • 2021年 8月 25日

    高性能な迎撃ミサイルによる防衛は、絶対に被災してはならない空母とか基地とか
    局所的に守るんなら有りやけど、街全体とか広範囲の防御には安価なミサイルや
    ドローン攻撃で一気に畳み掛けられたら、金が幾ら有っても足らんよな

    2
      • 匿名
      • 2021年 8月 25日

      ここは、サージェント・ヨークの復活を(無理か)。

      1
        • 匿名
        • 2021年 8月 25日

        いや、ローランドの米国版の復刻版を

        • 匿名
        • 2021年 8月 26日

        そして議員の前で動かなくなるのか?

    • 匿名
    • 2021年 8月 25日

    ブースター無しなら射程20kmくらいかな?
    拠点防衛ならRIM-116とか良さそうだが

    2
      • 匿名
      • 2021年 8月 25日

      高高度で高速飛行中の戦闘機からの発射と違って、地上から加速なしでだからなぁ

      9
        • 匿名
        • 2021年 8月 26日

        装弾筒つけて発射筒から装薬で射出…、誘導砲弾との境目が分からなくなる流れだな、これ。

      • 匿名
      • 2021年 8月 25日

      自分も射程気にしないならLPWSのRAM版で足りるんじゃないかという気がしますが、RAMは打ちっぱなしの個別運用前提装備で複数ユニット間の連携や目標ハンドオーバーの捜査なんかに対応してないから、アイアンドーム同様冗長化で迎撃率を上げたいならどっちにしてもシステム部分は新規構築することになるんじゃないかとも思います

      2
    • 匿名
    • 2021年 8月 25日

    9Xって高いなぁ。2発あれば1ユニット90万ドルのRAM買えちゃうぞ。
    9Xインターセプターのスペックはよく知らないけど、アイアンドームのカバー範囲が70kmなのに対して9Xは空対空ミサイルとして使った場合でも40kmが上限とされているんだが、地上から打ち上げる以上はさらに短くなると見込んでカバー範囲半分程度になってしまわないか?バカ高い(その値段の理由の何割かは旧型ミサイルの設計を残したまま高性能化したせい)うえに射程が短い=必要なユニット数が増えるんだけどアメリカ軍大丈夫か?

    2
      • 匿名
      • 2021年 8月 27日

      アイアンドームのカバー範囲を射程と勘違いしてない?タミルミサイルのサイズ見たらとてもそれだけ飛ぶミサイルとは思えん。あれはミサイル誘導も含めた探知範囲のレンジ表しているとしか。

      1
    • 匿名
    • 2021年 8月 25日

    パトリオットもTHAADも弾道ミサイル向けで巡航ミサイルと無人機の迎撃には向いてないからその穴埋めとしてコイツが必要ってことが

    • 匿名
    • 2021年 8月 25日

    ラジコンジェットにシーカー付けて特攻だな
    機体形状でも最速700km/hオーバー。ミサイル形状にすれば時速1000km/hは出るだろ
    1機1000万以内。大学やベンチャー集めてコンペやろうや

    3
    • 匿名
    • 2021年 8月 26日

    アイアンドーム派生を選択しなかったのは興味深い。アイアンドームはレーダーでシーカー有効範囲まで誘導する、ある意味ラジコンで撃ちっぱなしって感じじゃない。対してインターセプターはランチャーだけで完結は出来るシステムなんじゃないかな、音声通信でも良いから敵上方有ればなお良しみたいな?

      • 匿名
      • 2021年 8月 26日

      迎撃弾一発一発に高度で高価格な誘導装置を載せる必要がないほうが、コスト面で数が求められる迎撃装置に向いているんよ>アイアンドーム

      だからこそ安くて大量生産される脅威度が高いドローンに対してチープキルできる迎撃装置が求められていたはずなんだがなぁ

      5
    • 匿名
    • 2021年 8月 26日

    防止システムがいまいちと言われてたけど
    アメリカも一応考えていたのか

    • 匿名
    • 2021年 8月 31日

    30日朝、カブール空港に飛んできたロケット弾5発を撃ち落としたのって、このMMLっぽいね。試作機を空港と大使館に置いておいたのか。
    UAVや砲弾には性能不足だったのか?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 軍事的雑学

    ようやく本領発揮、世界最強の戦闘機F-22Aが「神の視点」を味方に提供
  2. 欧州関連

    再掲載|英海軍の闇、原潜用原子炉の欠陥と退役済み原潜の処分費用
  3. 日本関連

    海外メディアも注目、横浜で護衛艦「いずも」の空母化工事が始まる
  4. 米国関連

    本当に笑えない、米空母ジェラルド・R・フォードを苦しめるエレベーターの呪い
  5. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
PAGE TOP