米陸軍は長距離精密射撃と近距離間接射撃のギャップを埋める「中距離射撃能力の取得」に動き出しており、ミンガス陸軍副参謀長は「迫撃砲、105mm砲、投射型弾薬、徘徊型弾薬、FPVドローンを組み合わせたものが長距離射撃と大砲のギャップを埋める未来を想像している」と明かした。
参考:Army seeks $197 billion FY26 budget with transformation plan at center
参考:Army experiments with integrating attack drones into artillery formations
この問題はどちらが優れているかではなく「補完関係なのでどちらとも大事」が正解だと思う
米陸軍の2026会計年度予算案の中でM109A6、ハンヴィー、グレーイーグル、旧式化した対戦車ミサイル(恐らくTOW2)の売却を要求、さらにM10、JLTV、UH-60やAH-64向けの新型エンジン開発、RQ-7Bの後継機調達計画などを削減プログラムにリストアップしたが、パトリオットシステムを構成するレーダーの刷新=LTAMDS、旅団戦闘団に配備する徘徊型弾薬や無人機、対ドローンシステム、電子戦システムの調達、次期指揮統制システムやM1E3の開発の加速には予算を手厚く配分している。

出典:U.S. Army photos by Elena Baladelli
米陸軍はウクライナとロシアの戦争を観察する段階を終え、ドローン戦争から得た教訓を各戦場特有の環境で大規模にテストし、この新しいシステムと戦術を自軍と将来戦場に最適化させる段階で、数年以内に各旅団戦闘団は偵察ドローン、徘徊型弾薬、電子戦システム、対ドローンシステムが配備され、歩兵大隊レベルではFPVドローンの本格運用が始まり、これも3Dプリンターを持ち込んで部隊内で製造する体制を準備しており、地上部隊の戦力構造は2022年以前とは全く異なる形になっているだろう。
2022年以前から進めていた通常火力戦略もドローン戦争から大きな影響を受けており、58口径155mm榴弾砲と新型砲弾の組み合わせで70km超の射程距離を狙ったExtended Range Cannon Artillery=ERCAは中止され、米陸軍は長距離精密射撃と近距離間接射撃のギャップを埋める「中距離射撃能力の取得」に動き出している。

出典:U.S. Army Photo by 1st. Lt Ellington Ward
陸軍副参謀長のミンガス大将は戦略国際問題研究所のイベントに出席した際「我々は砲兵による間接射撃の有効性を再確認したが、これは大砲のみで構成された未来ではなく、HIMARS大隊とM777大隊に加わる3つ目の大隊、つまり迫撃砲、105mm砲、投射型弾薬、徘徊型弾薬、FPVドローンを組み合わせたものが長距離射撃と大砲のギャップを埋める未来を想像している。この構成の部隊を様々な戦場シナリオでシミュレーションしている」と明かした。
ウクライナとロシアの戦争で起こったことは「条件や環境が異なる戦場でも有効かどうか」は不明だが、FPVドローンは車輌や兵士への直接攻撃以外にも「大砲の役割」を代替し始めており、最も顕著な例は前線の裏にある兵站への攻撃や移動の妨害で、もはや通常火力が不足しているのでFPVドローンを使用しているのか、通常火力よりも勝手が良いのでFPVドローンを使用しているのか、何処から何処まで通常火力の役割なのかも曖昧になっている。

出典:U.S. Army photo by Sgt. Jose Lora
この問題はどちらが優れているかではなく「補完関係なのでどちらとも大事」が正解で、まだ最適な組み合わせ(恐らく正解は1つではない)に誰も辿り着いていないと思うが、それでもドローンを将来の戦術と戦場に最適化させる努力を軽視することだけは絶対に間違っているだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army Photo by 1st Lt. Ellington Ward
155mm砲も射程が延びれば、装薬ユニットを多く使うため、砲身寿命が短くなるんですよね。
中距離砲撃能力を整えて、相手に長距離砲撃を強要することができれば、敵軍の砲身寿命を縮める事もできるでしょう。
105mm砲・迫撃砲は、既に大量生産されており・軽量ですから、有効活用する仕組みを整えることができれば、素早い戦力向上に繋がりそうですね。
管理人様の過去記事で、105mmについての記述があるので追記します。
ウクライナ戦争で、105mm砲の優秀さが証明されたともされていますが、どういった戦訓があるのかが少し気になっています。
>現時点で言えば152mm砲弾と155mm砲弾の使用比率は1対10だ。そして105mm砲も122mm砲と比較して非常に優秀であることが戦場で証明されている。
>戦場での使用が多いのは155mm、122m、105m、152mの順だ。
>全ての大砲が牽引式である必要はないものの、全て大砲が自走式である必要もない。結局のところ牽引式が適しているのか、自走式が適しているのかは戦場環境と戦術に左右されるため、大砲の使い方は各戦場毎に異なるのだ。
(2024.11.21 ウクライナ軍司令官、最も効果的で戦場に適している砲兵システムはM777 航空万能論)
素直に長距離砲撃による寿命減にはならない気がしますね、それこそここで言う棲み分けでしょう。
勝手な想像ですが50km越えるようなレンジで数を撃つような場合はそれこそ着弾までの時間が掛かろうとも機能は最低限でコストに優れるミニシャヘド136みたいな徘徊兵器を使う時代が来ても不思議じゃない、もしくは安価なGMLRSとか。
既存の長距離砲弾は誘導装置を付けるなら高価で射程の為に炸薬は大幅に減少しています。ベースブリードは射程を伸ばす代わりに命中率が低下するので無誘導で使用するには微妙な砲弾。
命中率、発射コスト、炸薬量全てが微妙なら砲に拘る必要があるのかと考えるのは普通では?
Pzh2000の砲身が、20000装薬ユニットの耐久性。
ウクライナ戦争では、1発平均4〜5装薬ユニット使用してるという、ウクライナ兵の話しがあります。
仰るように、複数兵器を上手に組み合わせながらやっていくのが、重要なのでしょうね。
M777とHIMARSのギャップを埋めるのに105mmとドローンっていうのがよくわからん
M777の最大射程が40km、ATACMSの最短射程が150km程度と予想されてるから41~149kmのレンジを埋めたいってことか?
40+数十km程度なら自走砲で移動すれば事足りるだろうけど、それ以上となるとやっぱり空中機動か
M777は本来ブラックホークとかツインヒューイで運べるはずなのに、何だかんだ安全性とかで大型ヘリ使うことになったし、今度こそブラックホークやMV-75で運べるようになるといいな
遂に完成してしまった当たる誘導砲弾(FPVドローン)。ぶっちゃけ、直撃するのであれば経験的には12ボンド砲(75mm)で間に合う訳ですよ。
対装甲を考えてもトップアタックなら105mmで十分。ドローンは電動モーター推進で実現した訳ですけど、砲身砲でやれるモンなんでしょうかね。
ロケットや模型用ジェットの方が簡単なような。
3つ目の連隊では迫撃砲、105mm砲、徘徊型弾薬、FPVドローンを組み合わせると有るので一つの区切りとして20km以内としか考えられないけど。アメリカが持つ迫撃砲にしたって重迫撃砲で射程延伸しても18kmレベル、M119のRAPで19km、FPVなら10km前後で大体20km以内。ただ徘徊型弾薬は幅がありすぎて速度さえ無視出来るならALTIUS-600Mなんか400km超えるから正直中距離ってどのくらいだよって感じはする。
M777とHIMARSの間を埋めるだから、多分10~20kmの範囲じゃないと思うんですよね
基本射程はHIMARS > M777だし、仮にM26弾やM270弾だとほぼM777の射程と被っちゃうし
ドローンはともかく野砲はM777を増産すればいいだけでは?大は小を兼ねるわけだし。
最新技術で新兵器開発→要件モリモリ・迷走→時間を浪費して開発中止 のアメリカ兵器開発あるあるが発動しそう
ロシアだって新規野砲の開発なんかしてないでしょ
一例として、ウクライナ軍で検討されている物を挙げてみます。
6軸マルチコプターで高度1000mから複数の小型爆弾を投下するというものです。
高度1000mですと敵の塹壕陣地内にあるECMアンテナからの距離が十分なので、
妨害の電界強度は弱まる。だからドローンは悠々と照準を付けられる。
1000mだと小火器で狙撃してもまず当たりはしない。ということのようです。
当然、繰り返し利用ですね。積載量が十分大きければ、爆撃以外にも
色々と使えそうな気がします。補給や着弾観測、e.t.c。
現在、ウクライナでは、ヘキサコプターのバーバヤーガが、任務の一つとして、
回収したロシア軍の対戦車地雷の信管を付け替えた物を運んで、
ロシア軍を爆撃しているとの記事もありました。
この地雷は、7.5kgの爆薬を内蔵していて、155mm砲弾と同じくらいの威力とのこと。
ぼくのかんがえた兵器スペックを羅列した妄想日記は要らないです
155mmや6インチの根拠ですが、この辺りから経験的にも実験的にも装甲車両に対する破片効果が期待されます。120mmだと破片調整弾が必要です。
105mmは対人に有効な破片数(量ではなく)としては155mmより有用と言う意見もあります。コレは60mm迫と81mmの比較でも言われる事なんですが、
当たってしまうな破片効果もクソもありませんわな。
当たり前の話をすると破片効果は弾着炸裂や空中炸裂でも変ってくる。あらゆる状況の散布界を見れば分かるけど綺麗なパターンを描く事はそう多くない。当たれば効果もクソもないは言い過ぎでしょう、当たる物次第でしかない。
炸薬量が多いければより細かな破片になり炸薬が少ない方が大きな破片の割合が多くなるので普通の砲弾なら少ない方が有用と言われるのはそれが理由。
対人であるなら5~10gがベストとか有るらしいけど距離減衰考えたら一律な数値でもないだろうと思う。大破片の飛散距離は105mmより155mmの方が2倍以上なので破片が持つエネルギーを考えると炸薬量が多い方がプラスになる。
破片効果を最大限にしたいなら空中炸裂する炸薬量が多い調整破片加工した砲弾だと思うし、それはそれで信管とか調整破片の加工とかコスト的には上がる方向なのでどうバランス取るかではある。
俳諧型やFPVタイプのドローンって、砲兵の装備品になるんでしょうかね?
個人的には歩兵砲の延長上にある装備と思っていたのですのが、文脈的には砲兵装備になるように読み取れ
そうすると軍直下の砲兵旅団の装備が、なかなかカオスなことになってくる気が。
砲兵による一元管理のメリットと、歩兵側で運用することでの即応性によるメリットどっちもあるからかなり揉めそう
砲兵用
・作戦半径数十kmクラスの固定翼若しくは大型マルチコプター
・用途はISRと着弾観測
歩兵用
・作戦半径数kmクラスの小型マルチコプター若しくはUGV
・用途は前線偵察及び自爆(小型マルチコプター)、輸送及び火力支援(UGV)
のように各兵科の射程による棲み分けが出来るのでは。
航空科「ヘリが減らされて仕事ないんだわ。その大型ドローンくれよ?」
最終的には自走迫撃砲が砲兵戦力の主流になって弾薬とドローンとEMPの投射機として使われる未来に収斂していきそう
迫撃砲から重ドローンを打ち出しても驚かない。
ドローンは決して移動は早くないし燃費も良くないがデリバリーシステムとしての砲弾に詰め込んで送り込んでからコントロールするようになるかもしれない。
自走迫撃砲が現代のパルティアンショットになるんですかね
ドローンで偵察して走り回りつつ高精度の迫撃砲を乱射する世界
ウ軍へのクラファンをXでやってるウクライナ人が言ってたけど
彼が言うにはFPVが最も優れたドローンだとは全然思わないそうだ。
「重爆撃機」ドローンの方が強力に見える、と。手榴弾を複数抱えて
飛行するこれが歩兵の集団を虐殺する動画を何度か見てそう思ったらしい。
そのポスト見て思ったけど、これって攻撃ヘリがやりたかったことだよ
なあ、と。大ペイロードを持って敵歩兵上空に乗り込み弾をばら撒いて
効率の良い虐殺を実現する、というのは。
現実は有人ヘリは高価脆弱すぎて大ペイロードって言ってもエアフレームは
デカいマルチコプターになっているが…
米軍もどうせ高価な兵器を少数作るのが好きなんだから攻撃ヘリの代替として
ハイエンド重爆撃ドローンを作るのはどうだろう?
真剣に榴弾砲とロケット砲の間を埋めるならペイロードが相当量必要だろう。
ここの管理人は結論を急がないのがほんとに信用できる。
155mmより120や105mmが有利なのは弾幕じゃないかな?ウクライナの戦域でも155mmの影で両軍のグラードが活躍しているし、アメリカにはグラード的なのがない代わりに105mmが代わりを果たすんじゃないか?
このFPVドローン用ゴーグルかっけえな
寝転がって映画見たいから売ってくれんかな
ミサイル、155mm榴弾砲みたいな長距離火力は正確性が最重要になるだろうけど、
120mm重迫、105mm軽砲、或いは小型MLSからなる中距離火力は、一撃の破壊力はミサイルや155mm、航空爆弾に任せる分、相手の活動を沈黙させる弾幕の量が最重要になると思う。
長距離火力はドローンで捕捉次第破壊する事に意味があるが、中距離火力はドローンで捕捉した敵以外(その周辺に散開しているだろう)の活動能力を奪う上で重要