ウクライナ防衛企業=FIRE POINTは「2027年末まで弾道ミサイル迎撃に対応したFP-7ベースの低コスト迎撃ミサイル(100万ドル未満)を実現させる」と明かしたが、米陸軍も「弾道ミサイル迎撃に対応した100万ドル未満の低コストミサイル」に関する情報提供依頼書を発行した。
参考:REQUEST FOR INFORMATION: LOW-COST INTERCEPTORS
低コストの迎撃ミサイルを実現する方法は様々、米陸軍は民間企業が競争市場を通じて部品コストを削減してきた手法を取り入れる
ウクライナ防衛企業=FIRE POINTの共同創設者兼チーフデザイナーを務めるデニス・シュティレルマン氏は24Kanalの番組に出演した際「すでにFP-7(戦術弾道ミサイル)の試験飛行が完了した」「我々は『親愛なる隣人たちへのテスト』に移行している」と明かし、FP-7を含むFIRE POINT製兵器について非常に興味深い話を披露したが、今度はセルヒー・ステルネンコ氏の番組に出演して「現在開発中の短距離弾道ミサイル=FP-9(射程850km)は戦闘機からの空中発射が可能だ」と示唆して注目を集めているものの、海外の軍事アナリストやディフェンスメディアは別の言及に大きな関心を示している。
シュティレルマン氏はステルネンコ氏の番組の中で「パトリオットシステムで1発の弾道ミサイルを迎撃するには2発~3発の迎撃ミサイルが必要で、この迎撃ミサイル=PAC-3 MSEの価格は数百万ドルもする」「もし1発のコストを100万ドル未満に抑えられれば防空分野におけるゲームチェンジャーになるだろう」「我々は(独自のミサイルで)弾道ミサイルの迎撃を2027年末に実現させる計画だ」と明かし、FIRE POINTはレーダー、弾道ミサイル探知システム、通信システムといった分野の専門知識が欠けているため欧州企業と協議中で「彼らは強い関心を持っている」と述べている。
ミサイル技術の専門家であるファビアン・ホフマン氏は「2027年末まで弾道ミサイルの迎撃を実現させるという目標は野心的だが、FIRE POINTの迎撃システムが安価ならパトリオットシステムほど効果的でなくても国内外からの需要は大きなものになるだろう」と指摘し、既に中東の投資家がFIRE POINTへの投資=株式の30%取得(7.6億ドル相当)に動いており、ウクライナ独占禁止当局は10月までにFIRE POINTの株式取得(この投資家とはUAEの防衛企業=EDGE)について判断を下す予定らしい。

出典:Denys Shtilierman
FIRE POINTの低コスト迎撃ミサイルは旧ソ連製の48N6系をコピーしたFP-7ベースで、シュティレルマン氏は「UAE案件が実現してもしなくても低コスト迎撃ミサイルの成功を実証できるまで追加投資家は受け入れない方針だ」と述べており、どうしてFIRE POINTは弾道ミサイル迎撃に対応したミサイルを100万ドル未満で開発できるのかについては24Kanalの番組に出演した際の言及がヒントになる。
FP-7の調達コストはATACMSの約半分=50万ドル~75万ドルで、シュティレルマン氏はFP-7の調達コストを語る際「兵器の価格が高価になる大半の理由は官僚的な手続きのせいだ」「これはFIRE POINTだけではなく世界の防衛企業に共通する負担だ」「ボーイング747は構想から最初の商業飛行まで6年、エアバスA380の場合は25年もかかった」「これは全て官僚的な手続きのせいで、誰にも必要とされていない書類を作るため無数のエンジニア、弁護士、マネージャーが必要になる」「さらに手続きに必要なテストにも何年もかかり、この全てのコストが最終価格に加算されるのだ」と指摘。
ウクライナ当局は2022年9月「兵器の実用化や導入にかかる1年半〜2年の承認手続きを数週間~数ヶ月に短縮する」と、2023年3月「数ヶ月間を要する書類審査からドローン製造企業を免除する」「ドローン製造企業に対して25%の利益率を保証する」と、2023年10月「国防省は開発された製品テストを完了後『最大10日間』で部隊配備を承認する」と発表し、シュティレルマン氏は以下のように述べている。
“政府が長距離攻撃兵器に『官僚的な手続きが極限まで簡略化されたドローン審査の枠組み』を適用したのは正しい判断だった。FIRE POINTは全ての製品をドローンとして登録している。FP-5もFP-7も書類上は全てドローン扱いだ。今の我々に古い開発手法の手続きを行っている時間的余裕はない。もし軍の官僚主義が作り出した規則に従っていたら、我々は未だにFP-1のテストを行っているだろう”

出典:Lockheed Martin
シュティレルマン氏はステルネンコ氏の番組の中でも「FP-7は書類上『弾道ミサイル』ではなく『弾道ドローン』として登録している」と強調しており、恐らく「ウクライナで開発すれば兵器の実用化にかかる官僚的な手続きを大幅に圧縮できるため、弾道ミサイル迎撃に対応したミサイルを100万ドル未満で作れるかもしれない」と言いたいのだろう。
この低コスト迎撃ミサイルが防空分野におけるゲームチェンジャーになるかもしれないという言及も「低コスト迎撃ミサイルの性能が革新的で凄い」ということではなく「攻撃コストと迎撃コストの交換比が大きく改善される=低コスト迎撃ミサイルが持続可能な防衛手段になる」という意味で、Lockheed MartinはPAC-3 MSE(調達単価は約500万ドル)による迎撃の有効性について92%と報告しているため、仮にFIRE POINTが開発する低コスト迎撃ミサイルの有効性がPAC-3 MSEに及ばなくても100万ドル未満なら価値があるという意味だ。
Despite attempts to hinder us and many distractions, our caravan is moving forward. Fire Point is joining the anti-ballistic coalition.
Soon, interceptor missiles will be in the skies not only over Ukraine, but over all of Europe.
For more details, see the presentation I’ve… pic.twitter.com/j0RLpvGvIr
— Denys Shtilierman (@DenShtilierman) May 14, 2026
もちろん、FIRE POINTのみで低コスト迎撃ミサイルを使用する防空システムを構築できないため欧州企業(シュティレルマン氏は番組内でWeibel、Hensoldt、SAAB、Thalesなどの名前を挙げている)の協力が必須で、フランスのマクロン大統領は5月16日「フランスは弾道ミサイル防衛システムの開発においてウクライナと協力する用意がある」とゼレンスキー大統領に伝え、この構想の協議にはNATO事務総長と13カ国の加盟国代表が参加したらしい。
さらに米陸軍も15日に発行した情報提供依頼書の中で「空中の脅威、巡航ミサイル、近距離弾道ミサイル、短距離弾道ミサイルを迎撃可能な迎撃ミサイルおよび射撃管制のトータルソリューションを求めている」「提案するソリューションはM903発射装置と統合防空向け指揮統制システム(IBCS)に統合可能でなければならない。FY2026第4四半期までに能力実証に耐える技術的成熟度を備えていることが必須で、プロトタイプまたは量産レベルにおける迎撃ミサイルの単価は100万ドル未満でなければならない」「迎撃ミサイルに搭載するシーカーや射撃管制装置のコストもそれぞれ25万ドル以内でなければならない」と言及。

出典:SAM.gov An official website of the U.S. General Services Administration
1発あたり100万ドル未満の低コスト迎撃ミサイルを実現させる秘訣は「低コスト迎撃ミサイルの全要素を主契約企業に丸投げする方法」を改め「低コスト迎撃ミサイルを構成する各要素(弾頭、ロケットモーター、シーカー、射撃管制装置など)に分解して専門サプライヤーに競争させる方法」を採用することで、最終的に各要素のモジュールはオープンシステムアプローチで迎撃ミサイルに統合される。
つまり「開発プログラムを受注するとプログラム全体を所有できて製造、運用、維持、アップグレードに関する作業を独占できてしまう調達の習慣」で低コスト迎撃ミサイルを調達すれば、主契約企業は迎撃ミサイルを構成する各要素を垂直統合方式で管理して各サプライヤーの利益を守ろうとするため、米陸軍が「新たなサプライヤーを製造に参加させて生産能力を引き上げた」と考えても主契約企業には拒否する権利があるため、各構成要素を分解して直接管理して競わせる、つまり民間企業が競争市場を通じて部品コストを削減してきた手法を取り入れるという意味だ。
さらに言えば「PAC-3 MSEと同様の迎撃ミサイル」を100万ドル未満で作るのではなく、PAC-3 MSEと補完関係になる「持続可能な防衛手段としての迎撃ミサイル」を100万ドル未満で作るという意味で、運用インフラもパトリオットシステムを、センサーもIBCSに統合して既存のセンサー資産を流用することでシステム全体の開発コストを圧縮するのだろう。
ちなみにFY2026第4四半期までに求められる迎撃ミサイルの技術的成熟度はTRL6以上、つまり実験室レベルではなく実環境で技術が実証済みの成熟度が求められるため、低コスト迎撃ミサイルは「短期間でも実用化を強く意識した計画」となる。
追記:NATOは弾道ミサイルの迎撃成功率を向上させるため1回の迎撃で複数の迎撃ミサイルを使用することを義務付けているが、The Timesは「ウクライナ軍は防空システムの隠蔽と機動の達人だ」「戦争初期の痛ましい失敗から学び、現在ではいつ、どこで、どのように防空システムを展開すべきか熟知している」「ウクライナ軍は米軍よりも速くパトリオットを組み立て・分解する方法を編み出した」「ロシアの新型弾道ミサイルは目標を隠すため2度上昇と降下を行うため防空部隊は鋼の精神で自動照準をオフにし、ミサイルが目標に命中するわずか数秒前という極めて正確なタイミングで迎撃している」と指摘。
ウクライナ空軍も「我々は出来るだけ迎撃ミサイルの節約に努めており、2発~4発ではなく1発で破壊する」と、ノースロップ・グラマンも「防空資産をIBCSに統合すればパトリオットシステムの迎撃ミサイル備蓄を確保する上でゲームチェンジャーになるかもしれない」「米陸軍のパトリオット部隊は1つの目標に対して通常2発の迎撃ミサイルを発射していたが、複数のセンサーからの目標データを統合して精度を向上させるIBCSのコンポジット・トラッキング技術によって命中確率を大幅に改善できるため、目標に対する迎撃ミサイルの発射を2発から1発に減らすことが可能だ」と述べたことがある。
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin





















FIRE POINTの低コスト迎撃ミサイルは旧ソ連製の48N6系をコピーしたFP-7ベースって書いてある通り
開発コストがかかるベースをソ連時代に開発費負担してるから派生型を低コスト化出来てるだけでしょう
あと戦時なので評価試験を実戦でやっているので安くなる
レーダーとか通信技術が無いのに出来るかもとか言ってセールスしているのを見ると、中国サプライヤが出来る出来る適当言った結果、結局出来んくて導入側が炎上する弊社の案件を思い出した
日本もミサイル技術については全て自前で持ってますから、低コスト迎撃ミサイル開発に是非挑戦してほしいですね。
迎撃ミサイルなら地対空、空対空、艦隊空とバージョン違いで国内の需要も見込めます。海外への輸出もITAR Freeの兵器として売り込めますし防衛専用の兵器なら売り込むのに国内メーカー・サプライチェーンの心理的抵抗も少ないでしょうからね。
良くも悪くも戦時中だから出来る動きだな
マニュアルや手続きは気分で増えてるわけではなく、不正を防ぎ公平で安全な評価、運用のために作られる物
有事が迫ってる危機感はあれど、ウクライナをすぐに真似できるほどではない
弊社もAIを導入してから資料作成やチェックがすごく楽になりましたが、今迄は特に法令やら社内規定のどれに当てはまるのか等をいちいち人力で調べているとあっという間に数日過ぎたり、稟議通す根回しにもめちゃくちゃ労力がかかってました。
そういった費用が部品から始まり製品にまでかかっていくなら、確かにすごい費用と時間がかかりますので、割り切ってすっ飛ばせれば安くなりそうです。
ただ、それをやって炎上中なのが米国の兵器開発かと思いますので、匙加減というか範囲やら何やらが難しそうですね…
パトリオットに匹敵する性能を証明した韓国の天弓2の迎撃弾価格がパトリオットの1/3だったので、ソ連時代のロストテクノロジーと安い人件費を生かせるウクライナ企業なら100万ドル以下の弾道ミサイル迎撃弾も夢ではない。これが現実化したら欧州や日本のシステムと互換性を持たせて、地対空ミサイルの米国依存を減らしたいところ。
これまでの米軍: 「思いつく限りの機能を備え信頼性が高い最高の兵器を生産しよう」 → 炎上・計画中止
これからの米軍: 「思いつく限りの機能を備え信頼性が高い最高の兵器をべらぼうに安く生産しよう」 → 新しい炎上要素が解放されました。なんかの能力を妥協しますか?自動車に例うる規模で大量生産しますか?
それはそれとして、
>>最終的に各要素のモジュールはオープンシステムアプローチで迎撃ミサイルに統合される。
が上手くいってF-35の搭載兵装統合が技術的側面と契約内容の両面でカジュアルに行えるようになるといいですね。
Google Chromeの拡張機のように。
おやびん「APIの仕様がかわったので互換性なくなります~」
戦争中は、ドンドン兵器開発・進化が進んでいきますね。
”PAC-3 MSEと同様の迎撃ミサイル」を100万ドル未満で作るのではなく、
PAC-3 MSEと補完関係になる「持続可能な防衛手段としての迎撃ミサイル」”
米軍は黙ってPAC-3 MSEの増産に励むべきでは?。
”「提案するソリューションはM903発射装置と統合防空向け指揮統制システム
(IBCS)に統合可能でなければならない。FY2026第4四半期までに能力実証に
耐える技術的成熟度を備えていることが必須で、プロトタイプまたは量産レベル
における迎撃ミサイルの単価は100万ドル未満でなければならない」”
妙な色気は出さない方が良いのでは?。発射機生産も足りていない様子なのだから。
やるならば、欧州側がFP-7ベースのシステムを完成させてから購入したら?。
ウクライナ主体で開発すれば、S-300系統の技術になると想像できるのでは?。
PAC-3 MSEの性能は、現在、皆が認めているし。
将来の戦争で後詰め?となる(つもりはある?)べき米軍が高性能の兵器を
携行するのは、あるべき姿とも思えるし。
ざっと見た限り弾道弾等を迎撃出来る詳細が説明されていないので、どこまでの性能が必要かが不明。速度だけ速くて単なる弾道軌道しかしないミサイルに対して高価で高機動なPAC-3MSEを使用するのは無駄でしかない。現状を見るに朱抹段階で機動変更しようが変更後は単純な機動しか出来なくなるならPAC-3MSEの性能は過剰でしかない。
価格だけで言うなら現状で節約して1発のPAC-3MSEを使用しているなら新型ミサイルは5発発射出来る計算で、1発迎撃するのに5発撃ち込むなら性能が低かろうが迎撃率はPAC-3MSE1発より上になる、1発だけ迎撃に使用するなら5倍迎撃出来て、同時に2発なら10連装ランチャーなら5倍に出来るとか考えているんでしょう。そうでなければPAC-3MSEを大人しく増産した方がマシ。
最高の装備があればそれで言い分けないでしょう?予算は有限、迎撃すべき目標は多数。低コストの迎撃ミサイルは早期に必要です。例え欧州側が出来たとしてそれは何時になり米軍の要求を満たす物である保証はありますか?大人しく輸出かライセンスを許可してくれるのかも分からない。
ロケットモーターやミサイルのボディみたいな根本的に製造が難しい品は簡単に安くできないから、シーカーを安価にして、使い捨てないレーダー側を高性能にするとかになるのかな
調達年度が違うため現在の金額と必ずしも一致はしませんが、弾道ミサイル迎撃弾の調達コストはこんな感じのようですから「100万ドル未満で現在の迎撃弾を補完できる」ことは「戦いは数」「数による質」に必須ですね。
PAC-3 MSE 迎撃弾:400万 から 550万ドル
THAAD 迎撃弾:1,260万ドル
SM-6:957万ドル
SM-3 Block 1B:960万 から 1,250万ドル
SM-3 Block 2A:2,890万ドル
Ground-Based Interceptor (GBI):9,000万ドル
Next Generation Interceptor (NGI):1億1,100万ドル