米国関連

米陸軍長官が専用設計の装備調達縮小に言及、既製ソリューションで十分だ

米陸軍長官は「主要防衛企業は我々を騙し『軍用グレードのソリューションが必要だ』と思い込ませてきたが、市場で入手可能な既製ソリューションの多くは専用設計の軍用グレードと同等か、それ以上の能力を備えている」と指摘し、専用設計の装備調達を縮小する方針を示した。

参考:The DIB, primes ‘conned the American people and the Pentagon’: Army Secretary

主要防衛企業(と株主)は迅速に行動して変化を始めるか、防衛分野から撤退するかを急いで決断しなけらばならない

ヘグセス国防長官は5月1日「包括的な改革」を命じ、ドリスコル陸軍長官は「伝統的な防衛企業が誤解しているのは大統領や国防長官が改革のため一時的な痛みを容認してる点だ」「伝統的な防衛産業企業は今後数日、数週間、数ヶ月以内に新しい状況へ対応し、変化を始めなければ死が待っていることをに気づき始めるだろう」「我々は彼らを救済するつもりはないので自らの力で成功して欲しい」「数年以内に陸軍へ販売できるシステムは素晴らしいものだけしか残らない」「なぜなら、そうでないシステムを購入するつもりがないからだ」と言及。

出典:DoW photo by U.S. Navy Petty Officer 1st Class Alexander Kubitza

ヘグセス国防長官も今月7日「スピードと量を優先する考えを共有し、確実に調達品を供給する企業としか契約を締結しない」「(伝統的な防衛企業は)リスク回避の経営方針を改めないと防衛取引から姿を消すことになる」と警告して米防衛産業界に衝撃を与えたが、ドリスコル陸軍長官もメディア向けのラウンドテーブルで「主な防衛企業は国民、国防総省、そして陸軍を騙し『軍用グレードのソリューションが必要だ』と思い込ませてきた」と指摘し注目を集めている。

“これまで購入してきたものの90%は陸軍向けの専用設計で、残りの10%が市場で入手可能な既製品だった。防衛産業全体、特に主要防衛企業は国民、国防総省、そして陸軍を騙し「軍用グレードのソリューションが必要だ」と思い込ませてきたが、市場で入手可能な既製ソリューションの多くは専用設計の軍用グレードと同等か、それ以上の能力を備えており、我々は「軍用グレードでなければならない」という考えに縛られて自らを傷つける結果を招いている”

出典:General Dynamics Land Systems

“今後は必要なソリューションを兵士に届けるスピードを優先するため主要防衛企業は効率的に動かなければならず、これまでのやり方はもう通用しない。我々がやろうとしているのは必要なソリューションの90%を市場から調達し、残りの10%のみを専用設計にする。なぜなら本格的な大規模戦争がどのようなものかを考えると専用設計は入手性や供給能力の点で既製品に劣るからだ”

“同時に私が主要防衛企業と面会する際、我々が如何に酷い顧客であったか、我々自身にも現在の状況を作り出した責任があることを伝えている。我々の需要シグナルに逆らって生産基盤を構築することが如何に困難か、非常識だった調達プロセスに耐え抜くのにどれほどの財政基盤が必要だったかを十分理解している。彼らの立場からすれば当然のことだったと理解している。彼らの殆どが名誉ある愛国者であることも分かっているが、もう従来の調達アプローチが許されない状況にあることを強く伝えている”

出典:Photo by Sgt. Timothy Massey

M1E3開発を監督するハウエル大佐もAUSAのパネルディスカッションで「現在時点で1基100万ドルするエンジンの供給先は限られ、これを構成する部品の入手先も世界で数ヶ所しかない。しかし商用向けに切り替えれば故障したエンジンを国内の最も近い拠点に持ち込むだけで1万ドル以下で修理できる。もう特注品は必要ない」と述べたことがあるものの、ドリスコル陸軍長官やハウエル大佐が挙げた数字や変更は「大まかな方向性」を示しただけで、本当にM1E3のエンジンを専用設計から商用向けに切り替えると断言している訳では無い。

それでも専用設計ではなく市場で入手可能な既製ソリューションを優先するという方針は「米陸軍の調達プロセスが大きく変化している」と強く示唆しており、ヘグセス国防長官やジョージ参謀総長も「新しい状況に対応できない企業を救済しない」「新しい考えを共有できない企業からシステムを購入しない」「この変化について来られない企業は死が待っているだけ」と繰り返し訴えているため、主要防衛企業(と株主)は迅速に行動して変化を始めるか、防衛分野から撤退するかを急いで決断しなけらばならず、既に新しい環境へ対応しているGA-ASI、Anduril、Shield AIにとって飛躍のチャンスだ。

関連記事:米国防長官の調達改革に衝撃を受ける防衛産業界、今後はスピードと量を優先
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. David Resnick

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コメント

  • コメント (32)

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    • 2025年 11月 15日

    湾岸戦争辺りから見られた「民」が「軍」を追い抜く現象
    ウクライナでのドローン戦争で決定的になった感じか

    27
      • 名無し
      • 2025年 11月 15日

      「よし!小型輸送トラックを民生品のトヨt。。。」
      「F150じゃないとダメです。」
      「エッッッ!あのぶっ壊れまくるので有名な!」

      「よし!ドローンを民生品をDJア。。。」
      「SkyDioじゃないとダメです。」
      「エッッッ!一時期、米国民生品シェアトップだったのが、気が付いたらDJIが米国民生品シェア8割覇者になっていたっていうあのSkyDio!」

      いや、結構、前途多難なんじゃないですかね。。。。。。

      23
        • daishi
        • 2025年 11月 15日

        さすがにアメリカ国内の企業、または友好国かつアメリカ国内の工場の範疇で発注でしょうね。
        トヨタだとタンドラはテキサスで生産していますが、タコマはメキシコのみのようです。

        6
    • ふむ
    • 2025年 11月 15日

    メーカー独りよがりの高級家電が安価な後発に負けた白物家電業界みたいな話ですね…

    39
      • 匿名希望係
      • 2025年 11月 15日

      軍の試験とか突破する必要があったから専用設計にしている面もあるからメーカーだけの責任じゃあないきはするけどね。

      30
    • たむごん
    • 2025年 11月 15日

    『民生品よりもいつでも使えてタフさが求められる』軍用のものは戦争で使うため、高いことが正当化されてたんですよね。

    『稼働率が低く・納期遅延だらけ』いつの間にか当たり前になっているのを見て、軍用品が高いことを正当化できなくなったなあと感じています。

    51
      • nachteule
      • 2025年 11月 15日

       そもそも軍用が高いのは供給量が限られるのも一つの理由で、必ず買うから頭空っぽにしてたくさん作れなら相当安くなる。
       恐らく自衛隊向けのある製品作っていたけど数は少なくても段取りは必要だし、不良率を低減するような対策するまでも無い数なのでその分も上乗せとかあった。

       複雑な機構を持つような軍用品なんて故障するのは当たり前で、高いとは言うが故障率が高い構成にした時点で検証や再設計して突き詰めるような事はせずにコスト面の妥協は入っていると思うので、安物買いの銭失いにならないように高価な物を買うしか無い気はする。
       用途は限られる専用設計でおまけに作るのに手間が掛かる時点で高くなるのは当たり前で一度立ち止まって本当にそのスペックが必要かは考えるべきだろうね。
       自衛隊のミサイル翼には機械で加工出来ずに職人が部分的に加工する物もあるから性能の為にそれが必要なら必要経費と割り切るしかない。

      7
        • たむごん
        • 2025年 11月 15日

        早い話しが、本番(戦争)で動かなくて、高いだけなら使い物にならないよね。

        P1みたいに、単一製品に2兆円も使って、そんな指摘されたら根本的に欠陥なんですよ。

        5
      • たむごん
      • 2025年 11月 15日

      追記です。
      日本も、アメリカを笑えないわけで…

      P-1哨戒機(稼働率3割?)、会計検査院に指摘されたのは非常に厳しいわけで、2兆円近く使ってこの状況はどこか『組織が腐っていて自浄作用がない』というのを突きつけているわけです。

      5
      • ブシェール
      • 2025年 11月 15日

      軍用規格も大半のものは民生品を規格適合しましたで数倍以上の単価で売ってたりということもあるので規格そのものも問題になる部分はあるかなと見てます。
      軍用でもミサイルに搭載するFPGAなどの半導体とかは良品判定基準や設備に動作保証も含めて高い基準で製造してるのはありますが…

      5
        • たむごん
        • 2025年 11月 15日

        仰る点難しいなと感じてまして、ある程度高くなるのは理解できるんですよね。

        半導体などについても、アメリカ国防関連ですら調達ロットが極少なので、後回しにされるという話しも見かけました。

        『現場の兵士が血の対価を払う』自分が特に懸念してるのは、低稼働率・耐久性のないものが増えれば、最前線にシワ寄せいくのかなと…

        3
    • 古銭
    • 2025年 11月 15日

    では他産業と同程度には取引相手を選ぶ自由も許されるのですか?

    6
      • ponta
      • 2025年 11月 15日

      [市場で入手可能な既製ソリューションの多くは専用設計の軍用グレードと同等か、それ以上の能力を備えており]
      そんなはず無いでしょう。外注、派遣、外国人労力つかいまくったり、海外部品OKなら、スペック的にはそうかもしれませんが。
      まあ、アメリカ陸軍はそれを許容した。という記事ではあります。
      軍需も海外依存で、アメリカの製造業はさらに凋落するでしょう。

      16
    • らんらんるー
    • 2025年 11月 15日

    記事から伺えるのは、現在の軍需産業に対する強い不信ですね
    民生品しようするにしても、その分これまで以上に目利きと工夫が必要になるでしょうね
    民は余り余裕が無いのです

    22
    • hoge
    • 2025年 11月 15日

    とりあえず無茶なスペックの専用設計のM1E3やXM30を諦めることから始めるべきでは…

    27
    • 無印
    • 2025年 11月 15日

    >“同時に私が主要防衛企業と面会する際、我々が如何に酷い顧客であったか、我々自身にも現在の状況を作り出した責任があることを伝えている。(略

    まぁ、一方的に産業側を悪者には出来ないよね…

    43
      • トーリスガーリン
      • 2025年 11月 15日

      コンステレーション級とか次期ICBM用ミサイルサイロの有様とか見てると発注側の問題点があまりにも…となりますからね
      表面化してる事例だけでそんな状態なわけだから、それ未満の状況は言わずもがなって感じがします
      (もちろん不当な価格吊り上げとか生産体制の不備とか産側の問題点も色々ありますが…)

      6
    • Kaeru
    • 2025年 11月 15日

    あの部品がモデルチェンジしたので代わりにつけました
    って感じで世代が違うと同じ機体でも微妙に使ってる部品が違うってことにならないのかな

    10
      • バーナーキング
      • 2025年 11月 15日

      当然起きますね。今でも少なからず起きてる問題ですが桁違いに増えるでしょう。
      もちろん代替部品の調達や適合改修等にコストは掛かる訳ですが、それ込みでもCOTS品の方が専用品より安価で、その分のブレやリスクも「必要なソリューションの90%」については容認する、という話かと。

      3
      • hoge
      • 2025年 11月 15日

      それは専用設計でもたくさん起きてる。
      T-72なんかは、Ural, A, Bの過渡期は部品がごちゃ混ぜ。

    • hiro
    • 2025年 11月 15日

    COTS活用は今に始まった話じゃないような…

    陸軍を含む米軍(というか多くの西側諸国の軍隊)問題は
    単純な予算不足の側面も大きいと思う。

    各国がこれからちゃんと継続的に予算付けて防衛産業か成長産業になるなら
    民間企業だって必死になる。
    それが正に今の状況。

    3
    • dd4
    • 2025年 11月 15日

    昔は一般的な品はそこまでタフさはなかった
    武人の蛮用に耐えられない製品も多かった、だから軍用の特注品が必要という現実があった
    けど今は、一般製品もタフな品が多くなった、だから専用特注品でなくても十分、という話が成立するわけだけど…
    消耗品ならともかく、長期間使う製品だと選別難しいだろうなぁ

    日本人にはあまり実感わかないけど、今の時代でも外車って割とすぐ壊れるからなぁ
    ドイツ車は比較的ましだけど、それだって毎日メンテしておくのがある程度前提になってるところがある
    日本車みたいにほったらかしでも大丈夫って、そんなタフさ持ってるのはほぼないわけでで…
    米軍の現場がどの程度のレベルを求めるのかは、今回の政策を実際にやってみてしばらくたたないとわからないんおかもしれない気がする

    24
    • lag
    • 2025年 11月 15日

    米軍以外は知ってたと思う

    米軍の軍用モバイルバッテリーって重い、嵩張る、小容量、充電遅くて問題になってるって数年前に聞いたけど

    アマゾンで売ってる中華製バッテリー以下の性能を軍用のコネクタつけて高額で売りつけてるわけか

    2
    • 名無し
    • 2025年 11月 15日

    軍用規格だからタフだというのも、最新のものだとむしろ全くタフじゃねえじゃんという事例が多すぎるからね
    Pzh2000はカタログスペックだけ見れば西側トップクラスの自走砲だけど、ちょっと撃つとすぐ故障してしかも整備性も悪い
    だからウクライナ軍は他の西側製自走砲や旧ソ連製の方を重用してる有様
    メーカーが提示するカタログの数値で戦争するんじゃねえんだから、ちゃんと動く動かせる物を現場は欲するわな

    21
      • たむごん
      • 2025年 11月 15日

      仰る点、理解できます。

      Pzh2000など、ゲームチェンジャー神話がありましたが、(記憶ベース)稼働率10%くらいでしょうか。

      長砲身を共通化していて、世界中から引き合いがあるといえど、スペアの砲身を調達できない武器なんか戦争に適さないなと感じています。

      (2024.07.14 ドイツが砲兵戦力の増強に乗り出す、RCH155の100輌調達を計画 航空万能論)

      2
    • DEEPBLUE
    • 2025年 11月 15日

    メーカーだけが悪いというだけじゃなく軍の官僚化を解消するのも必要ですからね。

    5
      • 一般人
      • 2025年 11月 15日

      結局軍需品が高いのは、軍が要求する複雑で官僚的な試験と規格を突破するのに費用がかかるからですからね。
      それをなくせば安くなるでしょう。
      ただ軍も試験をなくした責任からは逃れられないので相応のリテラシーが必要ですが

      15
    • Authentic
    • 2025年 11月 15日

    >市場で入手可能な既製ソリューションの多くは専用設計の軍用グレードと同等か、それ以上の能力を備えている
    波動減速機みたいな汎用品でも軍事用途向けは競争力のないアメリカのメーカーが古い設計のやつを作り続けてるという話を見たことがあるけど
    大昔に認証を得た部品を設計や素材を変えずに使い続けてたらそりゃそうなるよね
    まあ、アメリカ政府的にはそれで産業を保護してるつもりだったのかもしれないけど
    それだと結局古くて競争力がないものを作り続けることになるだけだから
    本来なら物自体に拘るよりメーカーの設備投資や研究開発を支援して常に新しいものを作り続けられる能力を育成すべきだった
    それなら民生での競争力強化にも繋がったはずだし
    でも中国と違ってアメリカにはそういう知恵がない

    3
      • dd4
      • 2025年 11月 15日

      米社会特有の、「投資に回すくらいなら、株主配当に回せ」や、役員報酬を滅茶苦茶に増やそうとする悪癖が影響しすぎてるのもあるからなぁ…
      設備投資しないというかさせないから、いつまでたっても古臭い生産設備と製品のままとかよくある話

      8
    • ブシェール
    • 2025年 11月 15日

    メーカー側へ納期厳守やコストダウンの努力を求める動きは分かりますが、国防総省の調達側も他の同等部品を探したりを怠ったり、納期をコントロールするのをどんぶり勘定だったり役所仕事でやってた面もあるのかなと。
    (B-21は開発に煩雑な手続きを飛ばして進めたという実績もありますが)
    そんな中でAndurilみたいな企業が出てくるのも米国の底力凄いなぁと感心もしてしまいます。

    4
    • 2025年 11月 16日

    中国はどんどん強化される一方でアメリカは迷走、なんなら弱体化する今日この頃

    1
    • イーロンマスク
    • 2025年 11月 16日

    欲しいものでなくあるもので戦えと言ったのは誰だったかな
    ICBMのような戦略兵器ならまだしも陸戦兵器にはオーバースペックだわ
    そもそも兵隊すら消耗品なのに

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