米陸軍の改革に取り組むドリスコル長官は「改革に適応できない主要企業が防衛分野から撤退しても構わない」と述べたが、陸軍副参謀長のミンガス大将も「もし何もしなければより大きな痛みが生じ、近代化が遅れれば遅れるほど費用がかさみ混乱も大きくなる。これ以上待つ余裕はない」と主張した。
参考:Army Vice to aviation community: Cuts hurt, but ‘not making them would hurt more’
資金が少ないため陸軍の改革は競合する優先順位のどちらかを選ばなければならない
ヘグセス国防長官は今月1日「包括的な改革」を陸軍長官に命じ、ハンヴィー、JLTV、M10 Booker、ストライカーの調達中止、AMPVの調達削減、AH-64DとGray Eagleなどの旧式機材廃止、無人戦闘車輌=RCV計画の中止、新型自走砲を巡る競争の一時停止などを発表、ドリスコル陸軍長官は「改革に適応出来ず主要企業が防衛分野から撤退しても構わない」「トランプ政権は改革のための痛みを容認している」「変化を始めなければ死が待っている」と述べた。

出典:U.S. Army Photo by Joseph Kumzak
ミンガス副参謀総長も陸軍航空協会の講演で「我々は有人システムから無人システムに、プラットホーム中心からセンサーとネットワークへの接続型に世代交代を進めている最中だ」「我々は決断を下しているところで、必要な戦力構築に今直ぐ取り掛かるのか、次世代のパイロットを装備不足、訓練不足、多くのリスクに晒したままにするかだ」「結局のところ資金が少ないため競合する優先順位のどちらかを選ばなければならない」「そのプレッシャーの中でも我々は近代化を選択している」「これは無料ではなくレガシーな構造を犠牲にすることで手に入れている」と述べているのが興味深い。
米陸軍はレガシーな戦力構造を維持したまま「新しい能力に移行するまとまった資金」がないため、少ない資金で細々と変化するのか、レガシーな戦力構造を処分することで運用・維持費用を浮かし、この資金で大胆に変化するのかを選択しなければならず、米空軍と同じように痛みが伴う後者を選択したという意味だ。

出典:U.S. Army Photo by Mr. Luke J. Allen
因みに米陸軍の大改革には「有人攻撃ヘリ部隊の再編・削減が含まれている」と報じられていたが、ミンガス副参謀総長は「現役の航空騎兵中隊11個と予備役の2個を廃止し、現役・予備役の両方で医療後送体制を縮小する。これらの削減は痛みを伴うが、もし何もしなければより大きな痛みが生じるだろう。近代化が遅れれば遅れるほど費用がかさみ混乱も大きくなる。既に我々はあまりにも長く近代化を待たされてきたので、これ以上待つ余裕はない」と述べ、新しい能力=V-280の取得については「導入を前倒しする」「最初にV-280を受け取るのは第101空挺師団になる」と明かしている。
生まれ変わる米陸軍の戦力構造がどうなるのかは今のところ不明だが、断片的な手がかりをまとめると「改革の期限は2027年」「伝統的な武器システムからドローンとAIに軸足を移している」「1個旅団戦闘団に必要なドローンの数は約1,000機」「正式な攻撃手段として採用されたFPVドローンが兵士1人の交戦距離をmからkmに拡張する」「ドローンで拡張された認識力に対抗するためカモフラージュ技術と分散が重要視される」「徘徊型弾薬や自爆型無人機など低コストな長距離攻撃能力を優遇」「小型無人機を如何に遠距離へ投射するか、各戦場に独立したローカルネットワークを如何に構築するが課題」といったところだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Oklahoma National Guard photo by Sgt. Elliott Kim
V-280はそろそろ正式な名前を決めて欲しい
オスプレイの使い勝手は実際どうなんだろう。幾ら設備のスペックが優れていても使い辛かったり、ランニングコストが高いといった事例は私の経験上あります。公開されている情報だとオスプレイはヘリコプターより回転荷重が高くホバリング時の機動性が悪いとか、エンジンの寿命が短く頻繁な整備が必要などの問題があるらしいが、民間でティルトローター機は使用されていないので実務経験者の話が見えにくい。
V-280はローターのみのティルト機構となり、回転翼面もオスプレイより低いみたいなのでかなり使い易くなっているはず?これでティルトローター機の欠点を解決できれば民間への普及もあるかもしれない。
本当に名前決まっちゃった「MV-75」だそうです
なんか今のアメリカ軍は仮にどっかの国と戦争になったらロシア軍みたいに化けの皮が剥がれそうだな。
ウクライナ侵攻の前だとロシア軍は強いイメージが合ったけど実際は不手際が目立った軍隊だったわけだし…
イエメンのフーシ派に勝てないようでは中国と戦えるのか心配になってくる…。
シミュレートをいくら繰り返して実戦では通用しない事はままある事なので、アメリカも中国も国家間レベルの戦争ではロシア同様に最初は躓く可能性はあり得るでしょうね。
ただ、ウクライナ戦争で得た見識から新しい軍組織を構築してるのは中国も変わらないでしょうし、画期的なドローン対策等を生み出さない限りは結局の所、国力差で勝るほうに軍配があがる事に変わりはないでしょう。
(日本目線として)同盟国との関連を見ると、なかなか難しい問題でもありまして。
アメリカ軍が調達しなくなれば、軍需産業は最大販売先を失うことにより部品生産が縮小、他国で使われてる同じ兵器も代替部品調達が難しくなる可能性があります。
米軍も当然デメリットを承知しているでしょうから、ウクライナ戦争・ガザ戦争などの戦訓、改革の遅れへの焦りが相当あるのでしょうかね。
米陸軍が、新しいドクトリン・新しい兵器体系に変わったとしても、これまた実戦を経なければ有効性の有無・問題点の検証が分かりずらいというのは難しいなと。
我が国としてアメリカ陸軍と共通する装備って何があるだろうか?
細かい装備や部品単位で言えばもっとあるかもしれないが、ぱっと思いつくのはAH-64Dとハイマースくらいだが、このどちらも近い将来姿を消す予定だし。後は汎用ヘリや水陸両用車くらいだろう。
だからアメリカ陸軍の範疇で言えば、大きく掻き乱れても我が国にはそこまで大きな影響は出ないだろう。
日本じゃ空自担当ですが米軍陸軍装備のパトリオットですかねえ
まず旅団戦闘団やめて従来の師団に戻そう
賛同しますが、統合前線司令部がきちんと機能するならば旅団単位を基幹にしても戦争遂行可能ではあると思います
ウクライナ軍は失敗しましたがロシア軍BTGは成功した訳で
問題はウクライナ軍の編成は米指導で行われたであろう辺りが……
え?
ロシアのBTGは失敗品だと記憶していますが
誰がどう見てもBTGは戦力デザインの失敗例ですけど
ロシア軍BTGは失敗したぞ。今の、無数の偵察ドローン群で拡張された戦場認識で、互いに遠隔交戦アセット(砲弾や自爆ドローン)などを投げ合う戦場では、ロシア版BTGのように先鋒を務める機械化部隊そのものに砲兵を随伴させる編成は不適切だった。戦争を初めてからそれが判明したし、実際全然上手くいかなくて序盤苦戦しまくった。渋滞する機械化部隊がドローンに見つかって、ウクライナ軍の首都砲兵2個旅団にいすくめられて、序盤のキエフ電撃戦があっさり破砕されたのは記憶に新しい。
逆に前線で肉弾肉壁を担う臨時編成のストームZ部隊と、遠隔交戦アセットを用いて戦う基幹部隊に分けて攻勢を行う運用に転換したあとは、アウディーイウカやバフムートの陥落しかり、昨年の東部の大前進しかり、ロシア軍は攻勢で顕著な成功を収めるようになった。
2027がタイムリミットである理由はなんだろう
台湾有事か無人化技術の熟成かそのくらいしか思いつかないけど
東欧有事とか?
次が民主党政権になった場合に備え、可能な限り大きな変化を達成しておきたいのでは
>「1個旅団戦闘団に必要なドローンの数は約1,000機」
ウクライナ人「あ?月1000機でも足りんわ」
やっぱり直接的に新しい戦闘形態に触れているかしないかは大きな差ですね
どれだけ改革が必要だと言っても理解しない層がでてきてしまう
アパッチに無人機を連携させる話もなしになって
生産数の減少でパーツ代が高騰するのかな
最近導入した国はショックだと思います
AH-1Zもどうなるやら
AH-64については米軍が削減すると今までのようなアップデートがほぼ終了になるのでしょうから大変ですよね。
パーツ面は海外生産部品が多いだけに、外装部品辺りはデビスモンサン空軍基地に保管されている機体からパーツ取りを行うようになるのかもしれませんね。
海兵隊はバイデン時代に戦車を廃止するなどの大改革を行いましたが、トランプ政権下でまた改変があるのかもしれませんが、
海兵隊本来のお仕事、上陸地点の確保や島の取り合い辺りだと、揚陸艦からの火力支援が要りますのでAH-1Zについては安泰なような気もします。
トランプ政権かの国防改革が海兵隊の晩になるまでは運用面はこのままでしょうが、AH-1Zの生産が去年でしたか終了しましたが、駆動系はSH-60系でありまし暫くは大丈夫かと。
去年時点で米陸軍のAH-64Dは91機ですが、AH-64Eは791機なので最近導入した国はまだ大丈夫かと。
AH-64Dを導入してAH-64Eにアップグレードしていない国は悲惨ですが、本邦は廃止が決まっているのである意味ノープロブレムです。
実戦の戦訓って大事なんですね。
自分のたちの血を流さずとも改革を進められるのは
さすが米軍だと思ってしまいます。