米海兵隊は大規模な部隊再編計画「Force Design 2030」に従って装備の統廃合(戦車大隊廃止や航空戦力調達の削減など)を進めており大きな変革期を迎えているのだが、海兵隊の戦い方についても変化の兆候が現れ始めている。
参考:The U.S. Marines Have A Plan To Hunt Submarines
少人数編成の沿岸連隊にASW作戦(対潜戦)能力まで統合することを考えている米海兵隊
米海兵隊は大規模な部隊再編計画「Force Design 2030」によって主力戦車M1A1エイブラムスを装備した戦車大隊を全て廃止、歩兵大隊は24個から21個へ、砲兵大隊は21個から5個へ、水陸両用車中隊は6個から4個へ削減、代わりに対艦ミサイルや対空ミサイルを備えた少人数編成の「沿岸連隊」を新設して西太平洋上に点在する「小さな島」を拠点に中国海軍の西太平洋海域進出を阻止する構えだ。
現在、少人数編成の沿岸連隊を海上輸送するため新しいコンセプトに基づいた低コストの揚陸艦開発を進めており、米海軍は2026年までに新型揚陸艦を30隻調達すると言っている。
ここまでの情報をまとめると米海兵隊が新たに対峙しようとしている敵は水上艦で、西太平洋上に点在する小さな島に対艦ミサイルや対空ミサイルを備えた沿岸連隊を神出鬼没に配備して、米海軍と協力して中国海軍の進出を食い止める=破壊することを狙っているのだろう。
これ位は素人の管理人でも容易に想像がついたのだが米海兵隊総司令官を務めるデビッド・バーガー大将は7日、西太平洋上に展開した沿岸連隊にASW作戦(対潜戦)能力を統合して海中での戦いを支援させる言及して注目を集めている。
デビッド・バーガー大将は「米海軍のASW能力は脆弱な後方支援に依存しており、潜水艦の性能や運用能力を飛躍的に向上させている中国やロシアと戦うには後方支援の質が重要になってくる」と語り、米海兵隊が新たに採用したドクトリン(戦闘教義)「遠征による前方基地(Expeditionary Advanced Base:EABs)」に基づいて西太平洋上に展開する予定の沿岸連隊にASW作戦(対潜戦)能力を統合すれば中国やロシアの潜水艦が晒されるリスクを高めることができるらしい。
米海兵隊の沿岸連隊に対潜戦能力をどのように統合するのか、どのような運用方法を考えているのかについてバーガー大将は「攻撃型原潜との強調」を一例に挙げている。
バーガー大将によれば「米海軍の攻撃型原潜は世界で最も静粛性能が優れているが潜水艦を攻撃する際に魚雷を使用すると大きな発射音を伴うため自艦の位置が敵にバレるリスクが高い、そのため魚雷を装備した米海兵隊の沿岸連隊が代わりに攻撃することで攻撃型原潜は海中での優位性を維持し続けられるだろう」と説明したが具体的な攻撃方法については明かさなかった。
恐らく艦艇が搭載している対潜ミサイル「RUM-139 VLA」を陸上発射に転用したり、対潜用の単魚雷を搭載した無人航空機などを活用するのではないかと推測されるが、問題は攻撃型原潜と同海域に展開する沿岸連隊との間で安全な通信をどのように確保するかだ。
現在の潜水艦は指向性の高いビーム送信の通信アンテナを備えているため沿岸連隊と直接交信するのではなく頭上の通信衛星を介せば(潜水艦→通信衛星→沿岸連隊)敵に傍受されて位置を割り出される危険は低く、魚雷使用時に発生する音と比べればアンテナを海面に出して通信を行う方が安全(海上や空中の状況にもよるが)だと考えているのかもしれないが、より安全で信頼性の高い接続を確立するため今よりも短時間で通信を完了させる方法を確立する必要があると米メディアが指摘している。
そのため直ぐに沿岸連隊と攻撃型原潜との強調が実現が実現するとは思えないが、どちらにしても「攻撃型原潜との強調」は飽くまで一例であり、沿岸連隊に独自の対潜用UAVかUUV/USVでも配備すれば独自の潜水艦検出能力を獲得できるため米海兵隊へのASW作戦(対潜戦)能力統合はそこまで難しい話ではないのかもしれない。
以上のことから「攻撃型原潜との強調」はとりあえず置いておくとしても、米海兵隊は沿岸連隊を使用して西太平洋上に点在する「小さな島」を低コストで汎用性の高いフリゲート艦にでも作り変えるつもりなのだろう。
関連記事:米海軍、海兵隊沿岸連隊を輸送する新型揚陸艦を30隻調達予定
関連記事:米海軍、潜航中の攻撃型原潜からUAVを発射して敵艦を見つける
果たして米海兵隊のチャレンジが成功するのかは謎だが、枠にとらわれない発想力と実行力については目を見張るものがある。
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Marine Corps photo by Cpl. Alize Sotelo/Released
海兵隊って、攻撃のための戦略集団だと思ってたけど、これは防御の性質に転換だね
イラク戦争みたいな国家間の総力戦はもう想定してない、陣取り合戦の次元になりつつ
今の中国に取れる戦略が封じ込めて太平洋に出てこないようにする、という事なんでしょね。
もはや空母みたいなデカい的で第一列島線内には入れないという証拠でもありますが…
二次大戦の斬減作戦とレインボー作戦みたいになってないか?
地対艦ミサイルに対潜強化とくると、ますます海兵隊のミニ自衛隊化が進みますね。
広い西太平洋で中国軍と対峙しようとすると自ずと収斂進化していくんでしょうね。
要は、P-8じゃ敵国沿岸部で原潜の頭上の安全を確保するのには限界が有るから、沿岸連隊がUVAなりを使って確保してねって事ではと
やっぱり、高高度巡行用の旅客機改造哨戒機では戦闘機や長SAMが飛んでくる接近拒否環境下では荷が重すぎたか?
本邦のP-1も低空性能や高速性能に対空レーダーと盛っているものの、それでもキツいかもしれん
やはり、狂気の沙汰と見られた、B-1やSu-34めいた戦闘爆撃哨戒機が必要になってくるのか?
>狂気の沙汰と見られた、・・・戦闘爆撃哨戒機
これはこれで素晴らしい。
なにか夢のある兵器のようです。
対艦番長主義ってやつでいかがか。
船の上だとVLSにミサイルの補給ができないけど陸上だとできるからいいと思うが、尖閣やら沖縄あたりってビーチと森しかないけど、そんなところでミサイル撃っても大丈夫なのだろうか。
与那国島くらいの有人島ならともかく尖閣は無理じゃないかと思うが。
失礼ですが、尖閣や沖縄に配置される可能性は低いでしょう(尖閣は100%無い)。
日中有事の際は最低でもグアムに司令部を後退させる計画ですし、守る対象はグアム・サイパン・テニアン等大東亜戦争の激戦地じゃないかと。
オーストラリアの基地の重要性次第ではニューギニア方面も(インドネシアがOKするば)。
地対潜ミサイルですか。
地対艦ミサイルや空対艦ミサイルとは異なり耳慣れていない分、新しくてかっこよく聞こえます(小並感)
でも、そういう防御的な作戦なら陸軍がやってもかまわないはず、現に陸自含めた各国に対艦ミサイル部隊があるし
なんで海兵隊が対潜作戦なのという違和感がぬぐえない
海軍と陸軍の戦術上のリンクが無いからだろう。
ちなみに、対艦ミサイル部隊の創設に手を挙げたのは陸軍のほうが先。
米陸軍は2018年から陸自と対艦攻撃共同訓練を始めている。
今回の場合太平洋上の島々に前進配備してかつ柔軟に運用するために海兵隊が担当するのでは
よもや陸軍艦船部隊設立するわけにもいかないでしょうし、実際の運用はともかく小規模でも隣接する島々に複数展開できる対潜部隊いるのは相手には負担でしょう
あくまで海軍との連携/海軍の<攻撃的>活動のため橋頭堡作りと考えると筋は通ってるのでは(どうやって魚雷や対潜ミサイルクラスの兵器を積んだUAVを運用できるのかという疑問はあるけど)
なんで自衛隊はいつまでも突撃してんのかな~(泣)
勘違いしてるようだけど突撃訓練をしない軍隊なんてほとんどないよ
先進国が実戦で実行した例だっていくつかある
イギリス軍なんか、2010年代に何回銃剣突撃やってんですかね・・・あの人達・・・www
まぁ、相手がろくに訓練つんでないテロリストだから有効って話もあったけども。それでも何回銃剣突撃してるんですかねwwwしかも成功させてるし・・・www
最適解かどうかはまだ分からないにしても、やっぱアメリカ人の発想ってぶっ飛んでるな
今まで当たり前と思ってた常識を割とあっさり覆したりする発想力には舌を巻く
歩兵を減らし、砲兵を増やすと。(雑
そのうち海兵隊は海軍と共同で無人の哨戒ヘリの開発でも始めるんじゃないかな
小さな島をフリゲートに変身させる発想は無かったわ
あの米軍海兵隊がだんだん海兵隊じゃなくなっていくのを見ることになるのは感慨深いものですね。「発射音で位置を特定されないため」を理由としているけど、結局は高価な原潜を万が一にも失いたくない本音が透けて見えます。衛星通信越しだとASATのリスクを考えないといけないし、陸上もまた攻撃のターゲットになりやすいことに変わりはありません。このように改革を装って規模を小さくし、現地国に負担を移していくのがアメリカの長期的な戦略なのでしょう。
潜水艦との連携は中国の進めるアクセス拒否戦術への一つの回答でしょうね。
長射程のSAMも対地攻撃兵器も海中の相手には意味を成しません。
そんな利用の仕方では、わざわざ攻撃型原潜を使う必要がないのでは?
それこそ拠点防御なら水中の徘徊型UAVにセンサーいっぱい盛り付けて敵潜水艦の位置をつたえるだけの道具にすれば、コストも少なくて済むんじゃないかと素人目に思った。
イメージ図の合成具合にクスリと来てしまった。
イメージが伝われば絵なんかどうでもいいとはいえ、あまりにも揚陸艦が浮きすぎてなんかのコラ画像にしか見えないのよね。
ともかく、構想の新型はビーチングタイプか。
太平洋って広いので、離島を拠点にした対潜作戦って「そばを通ってくれたら攻撃するよ」なので、あんまり意味がなさそうな。。。
しかも、小部隊で輸送できるような地上発射型のミサイルって射程が短い。この戦法を成立させるためには島の密度が相当高くなる必要があります。南シナ海でさえ難しいと思いますね。太平洋の密度では。。。。
日本やフィリピンのような群島国家が自国領を防衛するためには有効だと思いますけど。
元々原潜が把握した情報で攻撃するためには「敵潜が移動する前に原潜が直ちに浮上し通信」し、それを地上部隊に伝える必要があるはずで、そりゃあ無茶でしょうよ。
この記事の話は大西洋での話。
沈したクルスクの母港として有名なカリーニングラード(飛び地)とか、不凍港は限られてるし・・・
記事読んでる?
「中国海軍の西太平洋海域進出を阻止する構え」と書いてる。空目じゃないか。
ミサイルに近づかない敵方の潜水艦は離島近辺以外のだだっ広い海域で何すんの?って話でね
敵本土攻撃用で遠隔地に沈めておく戦略原潜ならともかく
潜水艦の役目は敵艦艇の撃沈なわけだけど広い海域を宛もなくさまよう訳にもいかないでしょ
基本は相手の方が寄ってくる敵根拠地の近くで網を張って獲物を待つわけで
防衛側攻撃側共に根拠地の近くに張り付く必要があるから戦闘が発生するんだよ
因果が逆
まあUボートとかガトー級みたいに数作って網の目配置するならまた話は別だけどね
記事読んでる?
バーガー大将の構想は「遠征による前方基地」であって、根拠地の防衛じゃあないぞ。
太平洋をどう捉えるかの違いじゃないかな
おそらく完全な防御戦略(太平洋への中国軍の侵入を防ぐ)ではなく、攻撃部隊の航路を確保するためのミサイル部隊のはずなのでそこまで広域の制圧力は求められていないと思います
うーん、と。まず米帝の基本認識として「現時点での太平洋の覇権は米帝が握っている」だと思う。
さて「攻撃部隊の航路を確保するためのミサイル部隊」となると米海軍は島伝いに航路を取ることになる。しかも、守ってもらえるのは島のごく近くだけ。これはすでに西太平洋へ中ロの大規模な潜水艦部隊が進出しており、それにより米海軍の自由な活動が阻害されているということを意味している。そうだろうか?
更に言うと、これは二次大戦の反攻作戦の焼き直しだが、それを今やる必要があるのか?
確かに、このまま手をこまねいていると太平洋諸島に中共の海軍基地が増えるけれど、現時点ではネガティブだと思う。
バーガー大将の発言は、「米海軍のASW能力は脆弱な後方支援に依存しており」「遠征による前方基地に基づいて西太平洋上に展開する予定の沿岸連隊に対潜戦能力を統合すれば中国やロシアの潜水艦が晒されるリスクを高めることができる」だそうだ。
バーガー大将が米海兵隊総司令官ということを考え合わせても、「夢をもう一度」と「ビッグマウス」とみるのが現実的だと思う。
>守ってもらえるのは島のごく近くだけ。これはすでに西太平洋へ中ロの大規模な潜水艦部隊が進出しており、それにより米海軍の自由な活動が阻害されているということを意味している
ちょっと話が違うと思う
シチュは色々だけど中国と戦争になった場合は、「米軍はまずグアムでまで一時退却して戦力をを整える。その間の前線は付近に位置する同盟国(と、そこに駐留してる米軍)に維持してもらう。」だから、米軍としての突出=敵地ではなく、味方同盟国の勢力圏での活動になるはず
そして今回の記事は対潜水艦だけど海兵隊の対艦・対空ミサイル部隊化はもう決定してて、そこに対潜もねじ込んでより強固な接近拒否戦術を柔軟に構築しようということだと思う
うん?
「味方同盟国の勢力圏での活動」であれば別にどこでも航行可能だと思うけど?
あえて島の近くを通る必要はないだろうに。
「そこに対潜もねじ込んで」というのは私の言うところの「ビッグマウス」なので合意ですね。
海兵はあくまでも攻勢の兵種であるという前提ならば、本来これは東シナ海や南シナ海を念頭に置いた発言になるはず。で、そっちの方が「遠征による前方基地」とも親和性も高いはず。
私は穿った見方をしていて「海兵隊の対艦・対空ミサイル部隊化」って言うのは、海兵の望むところではなく「海兵本来の仕事をさせろ」って言ってるんじゃあないかと思ってるわけです。
まずは地図を見て、中国が太平洋の外洋部(グアムとか)へと進出するには何処を通らなければならないかを確認しよう
で、日本や台湾は自前で相応の軍備を有しているので、要は米軍がフィリピンとかで人民解放軍を阻止する場合って事だよ
そりゃフィリピンが太平洋なのか南シナ海なのかって問題だね。本質的な話じゃあないな。
すぐ上のやり取りをよんでもらいところ。
対潜作戦能力を持つ陸上部隊は日本にも欲しくね?