米軍の武器開発に対するニーズは大きく変化して遂げており、米太平洋海兵隊のグリン司令官も「将来の作戦環境において重要なのはスピードだ」「我々に完璧な解決策を待つ時間はない」「インド太平洋地域において年単位のタイムラインは通用しない」と防衛産業界にメッセージを送った。
参考:General tells industry to bring more prototypes to help forces move at speed
米軍のニーズは「画期的な能力開発に時間を掛けてもよい」から「短期間で違いを作り出せる能力提供に注力しろ」と変化している
米陸軍のジョージ参謀総長もM1E3開発について「馬鹿げた方法で開発するな」「必要なら現実的なリスクを受け入れろ」「異なる目的のため作られたポリシーや規制に縛られるな」「法的・道徳的に許容可能な全てのものを利用しろ」「あらゆるリスクを管理してリスク0を追求するな」と指示して開発期間を半分以下に圧縮し、AUSAのパネルディスカッションでも開発関係者は「完璧ではない90%の解決策は理想的な100%の解決策よりも遥かに優れた答えだ」「もう全てにおいて考え方が変わった」「誰もがスピードこそが勝利をもたらすと信じている」と言及

出典:Photo by Sgt. Timothy Massey
陸軍最高技術責任者のミラー博士も「これまで技術の成熟に10年もかかる調達スケジュールを厳格に守ってきたが、もう実戦部隊からのフィードバックに3年も4年も時間を掛けない。時間内に得られたフィードバックのみを反映した改良バージョンを素早く配備できるようにする。最も避けたいのは実験部隊のみでテストを行い、実戦部隊の戦車兵が初めてM1E3が見た時、もうどんな修正も不可能な完成バージョンにならないことだ」と述べて注目を集めたが、米太平洋海兵隊のグリン司令官も防衛産業界に「とにかく失敗を恐れるな」「もっと多くのプロトタイプを送ってくれればより良いものにするため協力する」とメッセージを送った。
グリン司令官は「将来のダイナミックな作戦環境において重要なのはスピードだ」「我々に完璧な解決策を待つ時間はない」「調達部門も何かを開発するのに何年も時間をかける余裕はない」「だから失敗を恐れず一緒に挑戦しよう」「上手く行かなくても全く問題はない」「アイデアではなくプロトタイプがあれば実戦運用まで非常に素早く物事が進められる」と述べ、有望なプロトタイプを寄せ集めて能力を生み出す計画として開発された統合火力ネットワークを成功例に挙げている。

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Chloe Zimmerer
緊急ニーズを満たすための統合火力ネットワークについて「(完璧ではなかったものの)それで構わまかったし、これしか無かったため使用せざるを得なかった」「重要なのは迅速に行動することだった」と述べ、防衛産業界に「プロトタイプを提供する能力、それを任せられる信頼、これを正式プログラムに転換しても決められたタイムラインで成果を出せる能力が必要で、我々のタイムラインは知っての通り週単位や月単位だ。インド太平洋地域において年単位のタイムラインは通用しない」とメッセージを送っており、もっとイベントや演習でアイデアを形にした現物を見せてくれと注文した格好だ。
伝統的な防衛企業はアイデアを国防総省に持ち込んで予算を獲得し、それから形にしていたため提案されたアイデアを実際に試すまで時間がかかっていたが、AndurilやShield AIといった新興企業は自社資金による積極的な研究開発への投資、そしてアイデアを形にしたプロトタイプを素早く製造して軍に提案することで契約を獲得し、たった数年で米防衛産業の一角を占める地位まで上り詰め、Lockheed Martinも第3四半期の決算報告の中で「研究開発に対する従来のアプローチを転換した」「自社資金による投資でプロトタイプの自主開発も進めている」「これにより顧客へ真の能力的飛躍を実証できる」と言い出している。

出典:Australian Defence Force/Kym Smith
つまり米軍のニーズは「画期的な能力開発に時間を掛けてもよい」から「短期間で違いを作り出せる能力提供に注力しろ」と変化し、そのためのトレードオフして「リスクが許容範囲に収まるなら商用技術でも構わない」と提示しており、市場で入手可能な技術を統合し兵器システムとして成立させる能力が問われているのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:United States Marine Corps





















ゆっくり高機能であれ、迅速にプロトタイプであれ、結構な数の技術者が必要なことにはかわりません。
アメリカにどのくらいいるのかな?
ミリタリーを扱うなら三世以上くらいは必須ですかね。
ソフトウェア以外も必要です。
アメリカの強みって、物量と合わせて、失敗しても立て直せることだったんですよね。
超大国としての国力=経済力=物量、同盟国や友好国による縦深、本国は地政学的に安全など、多少失敗してもやり直せるわけです。
第二次大戦~、連綿としてそれが続いてきた時期を見れば、米軍兵器が完璧だから超大国としての地位を維持してきたわけではないんですよね。
今のアメリカは、もう『失敗できる』国ではなくなりました
失敗してもやり直せるアメリカと今のアメリカの違いは、借金の額です
国が借金を増やし、借金で稼ぐ金融業が再現なく膨張し、完全に首が回らなくなりました
金融業が膨張した国は、例外なく工業力がぶっ壊れます
イギリスは勿論、我が国や中国でさえそうでした
さほど金融業やってたわけでもないのに工業力が今の酷い有様になってるロシアは何故こうなったのか
すぐに経済制裁で破綻するって、マスコミや有識者(?)ものすごい流布してたんですよね。
3年半持っていることに、驚いてる人の方が多いと思いますよ。
ロシアは最近成長率が急落して財政状況が著しく悪化してるのに3年半持ってるからすごいとか思うわけねぇだろ
上記アプローチで見れば、結局やり直せる時間を稼げるのは、変わらないかなと。
ウクライナ戦争では、同盟国(ヨーロッパ)が痛んでいますし。
台湾海峡問題でも、台湾・同盟国(日本)が先に痛むことになるからです…
AI化により、アメリカでブルーカラー脚光を浴び始めてますから、今後どうなるのか見守りたいと思います。
昔のような圧倒的な生産力が復活するのは、難しいでしょうね。
(2025年11月2日 米国で「ブルーカラービリオネア」現象 NIKKEI The STYLE 「文化時評」AI発展で潤う肉体労働者 日経新聞)
いよいよ本格的に中国が主敵になったんだな
若しくはその先にインドも見据えてるかもしれないが、、、
旋盤や溶接の練習しとくかぁ
フライスも0番なら普通に家に置けますよ
そんなに場所取らない
暗闇で育てたハエを世代交代させていくと研究者が観察できる期間内で目が退化した話を聞いたことあります。プロトタイプをどんどん出せれば、それだけ進化は速くなりますけど、技術者が大量に要りそうですね。
ソフトやアイディアは何とかなりそうかもしれませんけど、溶接とか金属加工とかの物理的なものに関してはどんなでしょうか。
何だか金融系やIT系に偏ってそうですけど。
韓国や日本に作らせたらいい気もしますけど、国内産業の保護復活も並行していきたいトランプ大統領はどこまでやるのか気になります
とはいえ提案ではなくまずプロトタイプを出せというのは企業にこれまでよりも初期リスクを背負ってくれと言う意味なので…
進化を早める理想とは反対に、現に動いている有り物を組み合わせるばかりになり、世代交代レベルの革新的な飛躍を遅らせてしまうジレンマも生みそう
軍のトップが公式に「プロトタイプを送れ」と言ってるんだから無償ってことはないでしょう。
原価支給とか現用品の無償貸付(現状復帰義務なし)とかだけでもあれば企業側は利益はなくともコストを掛けずに開発リスクは低減できる訳で、うまく回れば win-winでしょう。
まあ要するにプロトタイピング開発に軍を組み込む、というだけの話で問題はコスト面より「失敗を恐れず一緒に挑戦しよう」「上手く行かなくても全く問題はない」というお題目が現場部隊にまでちゃんと浸透して機能するかの方じゃないかなぁ。
スピードが大事という理屈はそれらしいけど完全には同意しかねる。
米軍の兵器調達は変なのものに飛びついて大失敗ってパターンを繰り返してきた。
必要なのはスピードじゃなくて本当に必要なものをちゃんと選んでじっくり完成させる
計画性じゃないのかな。
次世代ナントカだのフューチャーほにゃららとか計画だけたくさん作って
結局何も出来ないんじゃないの?
時間をかけている間に要求事項が雪だるま式に増えて「俺(米軍)の考えた最強の…」→失敗に繋がってる気もするので、難しいところですね…
スピード共にちょっと先の必要な物をと言う話だと思う。
ガバっと新しい新技術より、ステップを細かく刻んで確実な進歩って事。
手段と目的が入れ替わってるのが今の米軍の兵器開発だから。
量産性の回復かな?質×量なので、高い生産性で大量消費できれば質の高いものと同じ結果や、さらに相手に消耗を強いれるってのもある。
革新的な技術でをじっくり成熟させるのも
短時間でよりマシなプロトタイプを提供するのも
結局どちらも必要って結論になりそう
別に時間をかけた研究をやめるとは言ってない、よね?
もしかしなくても既に東シナ海や南シナ海では戦力的に負けてるのでは?
艦艇や航空機の数など本当に負けてると思います、米海軍も極東に貼り付けられるのは一部ですし。
小泉進次郎さんが、防衛大臣就任後のYoutubeインタビュー(反町さん)で答えていましたが、防衛機密に触れてヤバいとなって発信を変えたと答えてるのがそれかなと推察しています。
管理人様、コメント欄の皆様が心配されてきたのは、あながち間違ってないのかなと。
本当の問題はどっちのやり方でも中国に勝てそうにないことでしょ
無いです
仮に戦力で負けていても日米には太平洋という聖域があるので不利になっても一旦撤退すればいくらでも再起できます
中国はそういう場所が存在しない
工業技術水準でも生産規模でも大差を付けられれば聖域もくそもないでしょ
日本企業ですらこの先10年~20年の間に中国企業との競争で何社生き残れるか分からないくらいだし
個人的には20年後には中国が世界の工業生産を独占してても驚かない
それくらい今の中国の生産力の伸び方はやばい
中国は中国で、連邦国家なので下手したら省単位で産業立ち上げて潰し合いする蠱毒な環境。
輸出も怒涛の様なダンピング価格とモデルチェンジの早い使い捨て型だから、消耗品以外は厳しくなってるのでは?
完全勝利は無理かもしれませんが、台湾侵攻を躊躇わせるぐらいにはなると思いますよ。
そもそも台湾は中国が世界一の超大国になったら自然と中国人意識が高まってわざわざ進攻する必要なくなるんじゃないかな
日の出の勢いだったドイツがオーストリアを併合した時民族意識が高まってたオーストリア人が歓迎したみたいに
少なくともそういう工作はかなりし易くなるはず
だから習主席は統一を焦ってないと思う
実際中国専門家と称される人でも富坂聰氏や遠藤誉氏のような中国共産党の内的論理に詳しい人ほど進攻説には否定的だし
よく中国は台湾統一を最も重視してるって言われてるけど習主席が本当に重視してるのは新質生産力を発展させて中国を世界の工業生産を支配する国にすることだと思う
他は後からついてくるから
ソ連時代より豊かになったはずのロシアが、プーチンの思いつきで、ウクライナに侵攻してしまいました。
中国の場合も、全ては習近平がどう思うか次第ですね。
彼が侵攻したいと考えたらら、台湾侵攻は始まります。
それにそもそも、共産党が侵攻に否定的なのが本当なら、それは抑止力が働いているからですよ。
その抑止力が働いている状態を保ち続ける必要が有ります。
言い方が悪かったかもしれないけど
内的論理っていうのは要は中国共産党の政治家の物の考え方的にってことで否定的なのは習主席は今やらなくてもいずれ実現すると思ってるから(という見立て
だから遠藤氏なんかはむしろそのために中国は中国製造2025を推進して製造超大国になろうとしてるけど
それを阻止したいアメリカが台湾を使って中国を戦争と経済制裁の罠に引き込もうとしてると言い切ってる
まあ、それはバイデン政権時代の話でトランプ大統領はそういう考えは持ってないだろうけど
まあ、勿論僕自身は中国共産党の人と付き合いはないから誰を信用するかだけどね
個人的には富坂氏や遠藤氏とか興梠教授は共産党の具体的な内部事情にすごく詳しいから信用してるけど
あと高口康太氏も習主席の生産力への偏愛を繰り返し指摘してるのは鋭いと思う
昔の米帝はこういうの得意だった筈なのに、冷戦後半から官僚化したね
なんもかんも金融資本主義が悪い
バーグマスター社という日本でも尊敬されてた工作機械メーカーが衰退してやがて消滅する様を描いた潰えた野望という本を読めばいかに金融資本主義者がモノづくりを金づくりに置き換えていったかがよく分かる
業績の悪化した企業がやるのは判を押したように従業員の大量解雇
技術とノウハウの継承は損なわれ研究開発も減速する一方で役員の給料と配当は上がる
こうして社会は支配階級と奴 隷に二極化していく(現在進行系)
名前を変えただけの貴族制なんだよね
エリートが自国の庶民より他国のエリートにシンパシーを持ってるのも貴族が自国の平民を別種の人間として見下しながら他国の貴族に対しては同じ貴族として敬意やシンパシーを持ってたのと似てるね
でもそういう人たちはいつか痛い目に合うと思う
そういう人たちが自由な資本移動や私有財産権の絶対化を推し進めた結果として
かつて誰も見たことがないような超大国になりそうな中国は自由な資本移動も私有財産権も部分的にしか認めず金融も国家によって統制されてる国だからね
だから僕にはエリートが自分たちの首を括るためのロープを売ってるようにしか見えない
そしてアメリカのバーグマスター社が金作りにしか興味がない経営者と株主に乗っ取られたのは半世紀以上前だし長期的プロセスだから気づきにくかったけど
今まさに処刑台が完成してエレベーターが動き出したところだと思う
全然関係ない話なんですが、記事のサムネイル写真の無反動砲って、こういう風に後ろ向きに撃つのが正しいやり方なんですか?
奥にいる人が手前の人が被って見えなくなってるだけでは?