米国関連

理想的なカウンタードローンシステム?米軍が魔法のスコープ「SMASH」ベースの新型を開発

米国防総省が魔法のスコープ「SMASH」をベースに飛行中のドローンにも対処可能な新型スコープ「IWOO」を開発すると報じられている。

参考:SMART SHOOTER SELECTED FOR US IWOO PROGRAMME
参考:Israeli SMART SHOOTER to Prototype Weapon for Pentagon’s Irregular Warfare Directorate

イスラエル企業が開発した魔法のスコープ「SMASH」の実力は本物、米軍が同社の技術をベースに新型スコープの開発に乗り出す

イスラエルのスマートシューター社が開発した「SMASH(スマッシュ)」呼ばれるスコープは標的を一度捕捉すると自動で追尾し続けるため、兵士はトリガーを引いたままSMASHを覗き込んで追尾された標的に十字カーソルを合わせ続ければSMASHに搭載されたコンピュータが標的までの距離、角度、方向、速度、風向きを計算して最適なタイミングで弾丸を発射するので標的に必ず命中するという代物だ。

このようなコンピュター制御の弾道計算技術自体は1970年代に登場しているため目新しくはないのだが、このような装置が小銃に搭載できるまで小型化されたという点と約990ドル(約10万円)という低コストで調達な点が評価され欧米の特殊部隊が実際にSMASHを購入してテストを実施、軒並み高い評価を受けている。

さらにオランダ陸軍はSMASHをドローン制圧に活用するため実証テストを実施、オーストリアの雪山で実施されたテストは強風が吹き付ける厳しい気象条件の下で行われSMASHを取り付けたコルトC7で最大200m離れたドーロン67機に3発つづ小銃の銃弾を命中させることに成功した。

※アイキャッチ画像の出典:オランダ陸軍

この様にスマートシューター社が実用化に成功したSMASHには各国から大きな関心が寄せられているのだが、遂に米軍がSMASHに使用された技術をベースに新しい自動照準スコープの開発を始めるらしい。

国防総省で非正規戦に関連した技術開発を担当する部署(IWTSD)は昼夜を問わず長距離で静止・移動中のターゲットを自動検出・追尾して最適な射撃タイミングを射手に提供可能なスコープを開発するIWOOプログラムを進めており、昨年実施されたコンテストで優勝したスマートシューター社製「SMASH」をベースに1倍~8倍までの可変ズーム等の新機能を追加したプロトタイプを製造してテストが実施する予定だ。

IWTSDの説明ではIWOOと呼ばれる新型スコープは地上の目標だけでなく小型ドローンに対するハードキルにも対応する言っているので、小銃+自動照準機能付きのスコープの組み合わせは対ドローン対策の強力な選択になるかもしれない。

出典:U.S. Army/ Staff Sgt. Timothy Gray 商用のドローンに対する対処法を開発中の米陸軍第5機甲旅団

勿論、この組み合わせで対処できるのはクワッドローターのような小型ドローンや比較的低速で低空を飛行する小型の無人航空機ぐらいが限界なので近接防空システムの代替品になるわけではない。しかし既存の小銃を流用できスコープのコストも比較的安価なので低コストのドローンに対処するに理想的(費用対効果の面)だ。

米軍はドローンの脅威から拠点や兵士を保護するのに十分な量の近距離防空システムや専門部隊が欠如していると認めて「兵士からコックまで兵種に関係なく全ての人員がカウンタードローンに関するスキルを身につける必要がある」と言っており、訓練を受けていない兵士でも低コストで熟練の狙撃兵に変えてしまう魔法のスコープは米陸軍が探している「兵種に関係なく全ての人員が直感的に操作可能なカウンタードローンシステム」にぴったりだろう。

関連記事:歩兵戦闘のゲームチャンジャー? 英陸軍が注目する「命中を保証」する魔法のスコープ
関連記事:米軍を最も安価に攻撃する方法を明かす米海兵隊大将、答えはコストコで売っている
関連記事:小銃でドローン撃墜は可能、オランダ陸軍が実証した魔法のスコープ「SMASH」有効性

 

※アイキャッチ画像の出典:kaninstudio / stock.adobe.com

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コメント

    • 新・にわかミリオタ
    • 2021年 3月 25日

    このスコープ本当にすごいな
    中小国が採用すれば、一気に驚異となり得る

    16
      • 匿名
      • 2021年 3月 25日

      脅威というか、低価格ゆえにテロ組織、紛争地帯に多量に流れ込めば、安易な狙撃手を生み出して非戦闘員の被害まで増加させるだろう、
      そうなると国際的規制の対象とかなって、またも西側が動けなくなり無法者な中国ロシアトルコが喜んで同類を開発する

      23
      • 匿名
      • 2021年 3月 25日

      物理的に小銃で可能な範囲のことしかできないから、新たな安全保障上の脅威にはならないと思う。あくまで守りの兵器。

      7
        • 匿名
        • 2021年 3月 25日

        地上戦闘で敵に擬似熟練スナイパーが多くいるのは厄介だけどやっぱりあくまで狙撃の脅威にとどまるかな

        11
      • 匿名
      • 2021年 3月 25日

      皆がゴルゴ擬きに成れたらすごいよね。

      9
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    画像処理でターゲットを捕捉してるのだったら、将来的には〇〇軍の制服着てたら発砲とかもできるかな?
    そうなると将来の市街戦では取り敢えず民間人だろうが銃口を向けてみて、サイトが敵と判断したら発砲みたいな事になるかも知れないね

    13
      • 匿名
      • 2021年 3月 25日

      民間人っぽく見える時点で制服は着てないと思う。ただなんらかのアプローチで敵戦闘員を識別できる手段が実用化されたとして、人を殺傷する攻撃は人が最終判断を下さないといけないというのが倫理的な世界標準であって自動発砲はその意味でハードルが高い。枝主は自動発砲までは意図してないかもだけど一応。

      9
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    このスコープを向けられるまでが、勝負の分かれ目ってことかな?
    ところでバッテリーの持ちはどれ位なんだろ?

    4
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    我が国の自衛隊 、更に警察への導入も急がれる……

    3
    • ソソソナス
    • 2021年 3月 25日

    既存の銃を使えて尚且つ特別な弾丸を使用しなくて済むのが良い。日本も自衛隊と警察の両方で採用を考えてみたらどうでしょう。

    5
      • 匿名
      • 2021年 3月 25日

      船で使用出来ますかね?出来れば既に海自辺りでテストしてそうですけれど、船に乗りながら新人が銃でドローンを普通に撃ち落とすの見てみたいです。

      4
        • 匿名
        • 2021年 3月 25日

        洋上で使用されるドローンは航続距離的にある程度の大きさを伴うから小銃じゃ無力化は難しそう。そもそも艦艇の発見に小銃の有効射程内までの接近は必要ない

        7
          • 匿名
          • 2021年 3月 26日

          弾が軽いのに狙撃に向いてる銃に変身するついでにドローン狙撃し易いのはやはり大事かと・・飛行機の光学標準器が小型になっていると考えれば解り易いかと・・
          海上保安庁の特殊部隊
          リンク
          海上自衛隊の特殊部隊
          リンク
          こういう部隊では採用されるかも?そして、総数増えるかも?

    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    この技術一つで「素人を徴兵しても使えない」が否定されるようになる訳ではないが、
    兵器側の技術進歩によって、少年兵やら民兵やらが職業軍人とも戦えるように出来てしまうと、
    一段と戦争形態がむごいことになりそうだ。

    20
      • 匿名
      • 2021年 3月 25日

      「対ドローン用の使い捨てのリモードウェポンシステム」と考えれば十分な性能を発揮するでしょうね。
      しかも上で論じられてる発砲判断の倫理問題もクリア。
      クソな組織ほど有効活用できちゃいそうな感はありますねぇ…

      19
        • 匿名
        • 2021年 3月 25日

        アフリカとかにこれが入ったら氏族とか部族対立が余計に加速する気がするねぇ
        杞憂に終わればいいけど……

        14
      • 匿名
      • 2021年 3月 25日

      激しく同意…。裏の流通網を完全に取り締まることなんてできないから、こうした安価で高度に自動化された兵器の紛争地への流入は避けられなさそう。なんとか抑えてほしいけど…

      14
      • 匿名
      • 2021年 3月 25日

      いずれガンダムのジオン残党みたいに
      下手な軍隊よりも重武装なゲリラやテロリストが出てくるんやろうか?

      5
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    採用された場合選抜射手に優先的に渡すことになるのかな?
    後、こうやって一発必中化が進めば小口径のライフル弾は使用されなくなり
    7.62㎜程度が復活してくるのかな?

    6
      • 匿名
      • 2021年 3月 25日

      アメリカでは今次世代小銃開発競争中ですよ、多分6.8mm弾になります。
      リンク
      リンク
      1番目はテレスコープ弾なので専用設計です。
      2番目のは薬莢が樹脂製になっており軽量化されてます、旧型でも使えそうですね。

      3
      • 匿名
      • 2021年 3月 25日

      5.56mmがメジャーになった理由は接近戦でのフルオート射撃の反動が少ないことだから、中・遠距離狙撃を補助するsmashでは存在意義は揺らがないと思う

      2
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    魔法というか神話の武器だよね。投げれば必中の槍

    14
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    イスラエルの事だから、このスコープを欺瞞、あるいは妨害するための装備の開発も進んでるんだろうな

    6
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    個人用FCSかあ。小型グレネードランチャーにこれ付けたらカミカゼドローン対策にならんもんかね

    2
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    マークスマンなりに持たせるにはいいと思うが対ドローンという点では、家庭用のマルチコプター級に対する最終防衛でしかないよね。
    小銃使う時点で水平方向で数百メートルの射程しかないし何より捜索どうするかが問題。

    3
      • 匿名
      • 2021年 3月 25日

      光学スコープの直接照準で狙える距離なんだから射程(索敵範囲)なんて推して知るべしでしょ

      5
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    徘徊型ドローンは映画ターミネーターのスカイネットが運用していたドローンみたいになっていきそうだし、戦争のデジタル化・小型化技術の発展でSFの世界が現実になりそうよな
    一昔前は「無人兵器は人間対人間ではないから非人道的」とかいう主張も目にしたもんだけど、もうなにそれって感じだな

    3
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    米軍はこれを8倍のスコープにしてお値段も8倍?

    1
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    東京マルイのパチもんは出る?

    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    民間用にも販売してくれよ
    ショットガンにこれつけたらクレー射撃で百発百中でめっちゃ楽しそう
    こんなすごいもんが10万程度で手に入るとかすごすぎんか

    1
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    技術的にはセントリーガンがもう作れそうだな

    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    AIとジャイロを積んで小型化して自動的に引き金を引くシステムを組めばもう最強じゃん
    これから発展型としてロボットやドローンに搭載して必要なセンサー類を取り付けた兵器が出てきそうだ
    自衛隊もすぐに手を付けて国防に活かしてほしいな

    2
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    ドローンにSMASH組みこんで空中から狙撃させたらすごくね

    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    日本国内にも導入検討すべきだろうけど、警察だと保有するアサルトが限られ扱う者も限られる。フルオート射撃は上司の許可は必須だし、町中でばらまくのを許容するのかとかハードルは高いよな。政治家どもは普通にソフトキルなりネット弾とかコラテラルダメージが低い対処法しか許可しないだろうな。

    ドローン探知はドローン・ドームとかあるんだし導入するか作るかだよ。対ドローンとAPS兼用のレーダー+光学センサーとか研究したりしたら面白いかも。

    2
    • 匿名
    • 2021年 3月 25日

    日本だとカメラのレンズメーカーが手ぶれ補正機能付を開発しそうだな。
    ま、照準は補正出来ても銃口の補正は出来ないが。。

    1
    • 匿名
    • 2021年 3月 26日

    スティーブン・ハンターの小説に、iスナイパーっていう同様の機能を持つスコープが出てたのを思い出した。

    2
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