米陸軍は高価なパトリオット迎撃ミサイル=PAC-3 MSEを補完する低コスト迎撃ミサイル(100万ドル以下)を開発中だが、ミサイル防衛局もミサイル防衛用低コスト迎撃ミサイル(75万ドル以下)の開発に乗り出しており、固体ロケットモーターは推進薬スラリーの押出積層で作られる。
参考:Pentagon awards contract in race to field cheaper interceptors, missiles
参考:X-Bow Selected for $11 Million U.S. Missile-Defense Contract to Build a Low-Cost Interceptor and Expand Rocket-Motor Production
LCI-MDも根本的には低コスト弾道弾迎撃ミサイル=FP-7.xをコアにした防空システム=フレイヤと同じアプローチだ
米陸軍は5月に発行した情報提供依頼書の中で「空中の脅威、巡航ミサイル、近距離弾道ミサイル、短距離弾道ミサイルを迎撃可能な迎撃ミサイルおよび射撃管制のトータルソリューションを求めている」「提案するソリューションはM903発射装置と統合防空向け指揮統制システム(IBCS)に統合可能でなければならない。FY2026第4四半期までに実射を含む能力実証に耐えうる技術的成熟度を備えていることが必須で、プロトタイプまたは量産レベルにおける迎撃ミサイルの単価は100万ドル未満でなければならない」「迎撃ミサイルに搭載するシーカーや射撃管制装置のコストもそれぞれ25万ドル以内でなければならない」と言及。

出典:SAM.gov An official website of the U.S. General Services Administration
1発あたり100万ドル未満の低コスト迎撃ミサイルを実現させる秘訣は「低コスト迎撃ミサイルの全要素を主契約企業に丸投げする方法(開発プログラムを受注するとプログラム全体を所有できて製造、運用、維持、アップグレードに関する作業を独占できてしまう調達上の習慣)」を改め「低コスト迎撃ミサイルを構成する各要素(弾頭、ロケットモーター、シーカー、射撃管制装置など)に分解して専門サプライヤーに競争させる方法」を採用することで、最終的に各要素のモジュールはオープンシステムアプローチで迎撃ミサイルに統合される。
米陸軍は産業界向けに低コスト迎撃ミサイル=low-cost interceptor(LCI)の説明会を6月23日に開催し、ダン・ドリスコル陸軍長官は「ペンタゴンでホワイトボードを囲み、恣意的な要求事項を練り上げるようなプロセスは取らない。代わりに『科学は何をしてくれるのか』『優れた開発者たちは何をしてくれるのか』と問いかける」「このLCIは既存の優れた防空システムを置き換えるものではない」「現在のシステムは素晴らしいものでもフェラーリのような製品で、これを補完する別の手段が必要だ」と言及。

出典:Lockheed Martin
LCIの価格についても「我々の念頭にあるのはジェットエンジン搭載型シャヘドのコストを考えた時『現在の我々は脅威の阻止にいくら払う用意があるのか』ということだ。もちろん米国人の命がかかっているなら必要なものを使うけれども、量産規模で考えた時『それらに対処するために我々はどれだけのコストを許容できるのか?』だ。 そして我々の頭にある具体的な課題から『25万ドル』という価格が導き出されたのだが、その価格に縛られるつもりはない。もし誰かが28万ドル、42万ドル、61万ドルで適切な答えを持ち込んできたなら我々はそれを買うだろう」と述べており、情報提供依頼書で言及した数字はあくまで目安に過ぎない。
米陸軍は7月にLCIの技術提案書募集を開始し、120日以内に実射を含む選定や評価を完了させ、2027会計年度が始まる10月1日に合わせて新規契約の予算を執行し、仮に提案された技術成熟度が実用化レベルであれば開発フェーズをスキップして即量産へと移行することも視野に入れており、LCIは官僚的レッドテープ(要求定義→設計→試作→評価→量産という一連の承認手続きの殺到)を回避して超短期調達を目指しているものの、これは「PAC-3 MSEと同等の迎撃ミサイルを100万ドル未満で作りたい」のではなく「PAC-3 MSEと補完関係になる持続可能な防衛手段としての迎撃ミサイルを100万ドル未満で作りたい」という意味だ。

出典:SAM.gov An official website of the U.S. General Services Administration
ミサイル防衛局(MDA)もミサイル防衛用低コスト迎撃ミサイル=Low Cost Interceptors for Missile Defense(LCI-MD)に関する募集を2025年8月に開始し、高価なPAC-3 MSE、THAAD、SM-3、NGI、GPIを補完する弾道ミサイルや極超音速ミサイルを迎撃可能な1発あたり75万ドル未満のミサイル開発を模索中で、Defense Newsは27日「ニューメキシコ州に拠点を置くロケット製造会社=X-Bow Systemsがミサイル防衛局(MDA)から低コスト迎撃ミサイルの開発と飛行試験を行うため10,981,581ドルの固定価格契約を受注した」と報じた。
MDAはLCI-MDを通じて「迎撃ミサイルを構成する高価な推進系などの部品を全て見直し、ライフサイクルコストあたりの弾倉深度(ランチャーに装填する迎撃ミサイルの在庫、補充スピード、価格まで含めた火力の持続力の厚みのこと)を改善し、ノースロップ・グラマンとエアロジェット・ロケットダイン(L3ハリスの子会社)による兵器向け高性能固体ロケットモーター(SRM)供給の二社寡占に風穴を開けたい」と考えており、この契約を受注したX-Bowは推進薬スラリーの押出積層でSRMを作ることができ、既にX-Bowはサブスケールで作成したSRMの地上燃焼テストに成功している。

出典:X-Bow Systems
LCI-MDも迎撃ミサイルの全要素を主契約企業に丸投げする方法ではなく、弾頭、ロケットモーター、シーカー、射撃管制装置などの各要素をX-Bow、Anduril、Leidos、Atea Engineering、Opto-Knowledgeに作らせており、今回取り上げたX-Bowの契約は「LCI-MDを構成するSRMを実際のミサイルに搭載して飛行試験を行う」というもので、このまま行けば米軍のミサイル防衛は高価なPAC-3 MSE、THAAD、SM-3、NGI、GPI、弾道ミサイルや極超音速ミサイルを迎撃する安価なLCI-MD、ドローン、巡航ミサイル、短距離弾道ミサイルを迎撃する安価なLCI、ドローンが闊歩する低空域向けの超安価な迎撃ミサイルの4段構えになるのだろう。
ちなみにLCI-MDもヒット・トゥ・キル=直撃破壊が必須ではなく、性能とのトレードオフで価格を引き下げ1目標に複数の迎撃ミサイルを同時に発射し、目標に命中して無力化する確率を担保するアプローチであり、ウクライナと欧州が共同で進めている低コスト弾道弾迎撃ミサイル=FP-7.xをコアにした防空システム=FREYJA(フレイヤ)と同じアプローチだ。
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※アイキャッチ画像の出典:X-Bow Systems





















やっぱりアメリカはなんだかんだ言っても適応早いな…
いやいや、プロジェクトを乱立するのをまずは辞めるべきでは?
種類を絞り、それを途中で飽きずに最後まで完成させる、今のアメリカ軍に求められてるのはこれだと思います。
『選択と集中』はそれを実践したウェルチが、多角化投資で業績上げてるし、最後には選択と集中へ切り替えてもいる
そもそも時間が限られている状況なら、多くの選択肢を作って8割程度で仕上げた方が良い場合もある
当のアメリカ人達が考えて選んだ結論なら、敢えてどうと言う事もない
ただ、メスキート工場みたいなのは本当に駄目
ミサイルも開発プロジェクトも数撃ちゃ当たる?
それだけの体力と忍耐が求められますね
賭けてもいいが、この計画は破綻する。
分割発注しても、絶対にシステムインテグレートしきれない。
元請がどれだけ苦労してるのか、アウトプットだけ受け取る連中は分かってない。
今のトレンド、モジュール化とソフトウェアによる適応。
単純な安物じゃなくって拡張性やらを含めたプラットフォームの規定。プラグアンドプレイ方式の兵器。
安くしろって言うんなら、軍或いは政府が大量に仕入れ続ける保障をしないと企業も動けんやろ
ミサイルはドローンと違って民生への転用も不可能な完全な軍需品なんだから
その辺りを党を越えてアメリカ政治界の基本方針として保障すれば、ミサイル工場への大量投資に繋がるんじゃないかな?
本家(笑)のロッキード/マーティン社がPAC-3 ACEを開発中なのですが。
あれこれ読んでみる範囲では、どうも、頭部のACMが省略されているのかな?。
であれば、出来上がりは小型のPAC-2のような物になる、とも思えるのだけれど。
この記事のミサイルはどうかしら?。気になります。
ヒット・トゥ・キルを目指すなら、そして、標的の回避運動について行くなら、
ACMは不可欠のものと思えるのだけれど。
そして、ミサイルの動力部分で、一番、値段の張るところなのでは?。
そう考えると、低コストというのは難しいのでは?、などと思います。
自己訂正です。
記事の中に、
”LCI-MDもヒット・トゥ・キル=直撃破壊が必須ではなく”
とありました。