米海軍のマイク・ギルディ作戦部長はネイビー・リーグ(海軍連盟)が8月に実施する防衛展示会「Sea-Air-Space 2021」の事前オンラインイベントに登場、最新の空母ジェラルド・R・フォードが手痛い失敗を被ったことを認めて注目を集めている。
参考:America’s Newest Carrier Is a Fiasco. The Navy Just Admitted Why.
フォード級空母に23もの新しい技術を詰め込んだことは海軍にとって繰り返すことの出来ない過ちだった
ジェラルド・R・フォード級空母はニミッツ級空母と比較してフライトデッキや発電能力を拡張、アナログだった航空機発着艦支援システムを刷新、格納庫や弾薬庫から航空機や武器をフライトデッキに移動させる経路の合理化、本格的な省力化技術導入など斬新な技術やアイデアが幾つも詰め込まれ2018年に米海軍の次世代を担う空母として華々しくデビュー(本格配備)するはずだったのだが、1番艦フォードは米海軍に引き渡され4年以上経過しても実戦配備(2022年予定)に就くことが出来ていない。
これは艦載機の発艦を支援する電磁式カタパルト(EMALS)、艦載機の着艦を支援する新型着艦制動装置(AAG)、艦内で弾薬類を移送するために使用される電磁式の兵器運搬用エレベーター(AWE)といった新技術が設計通り機能しなかったためで、本格配備が大幅に遅れている1番艦フォードの建造費用は130億ドル(28億ドルのコスト超過)を突破して当時のトランプ大統領や議会から大きな批判を受けている。
オンラインイベントに登場した米海軍のマイク・ギルディ作戦部長は「フォード級空母に23もの新しい技術を詰め込んだことは海軍にとって繰り返すことの出来ない過ちだった」と語り、今後のプラットフォーム開発において新技術の導入はもっと慎重なアプローチをとる必要があると主張して「1隻に追加する新しい技術は2つまでにして事前の陸上テストを徹底することが望ましい」と付け加えた。
フォード級の手痛い失敗に懲りた米海軍はコンステレーション級フリゲートに採用される米海軍が扱ったことのない装置や新しい技術を検証するための陸上施設を建設、ここで設計通り作動するのか確認をおこなっているのでコンステレーション級がフォード級のような問題に直面することはないと思われるが、この検証はもともと議会が命じたものなので米海軍が本当に反省しているのかは謎だ。
コンステレーション級フリゲートの推進機関はCODLAG(ディーゼルエレクトリック・ガスタービン複合推進)方式で、ベースとなったカルロ・ベルガミーニ級フリゲートでも特に問題がなかったため「テストなし」で採用するつもりだったのだが議会は「想定外のリスクを排除するため米海軍が扱ったことがないCODLAG方式を地上試験施設で検証しろ」と命じており、フォード級の失敗を生かして慎重なアプローチを本当に実践しているのは米海軍ではなく議会なのかもしれない。
関連記事:コンステレーション級に期待する米海軍、開発中の技術を土台にした艦艇開発から脱却
関連記事:国防総省と評価が対立してる空母フォード、米海軍は発着艦システムが目標をパスしたと発表
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Connor Loessin/Released
いっそ建造中の3番艦(CVN-79)以降は一旦キャンセルして、フォード級の問題点解消を設計に反映させた別クラスとしてCVN-80以降を建造するほうがいいんじゃないか。乗員数想定や動線の問題は稼働率要求の見直し程度じゃごまかせないし、フォード級のカタログスペックに合わせた艦隊定数まで作っちゃってるんだから
議会主導といっても、元軍人上がりの議員も多いし、軍事系シンクタンクやそういう関係の秘書も多数存在する国なんで、素人議員の無知な誘導という訳ではない
むしろ今の海軍内部がどうしてこうなってしまってるのか、そっちが心配だ
アメリカの製造業の衰退と無関係じゃないと思う
高い頂点は広い裾野があってこそで、裾野がなくなった今頂点も崩れ始めてるんだろう
造船の量から見ても
中国:2400万トン
日本・韓国:1400万トン
アメリカ:27万トン
こんなしょっぱい業界に人なんか集まらないんじゃ・・・
米国は、英国での製造業の衰退を呆れるほど見事になぞっているといえそう
それが産業文明に必然的な栄枯盛衰の道筋ならば、次は我が国の番だと言う話になるのが恐ろしい
分かり切ってる流れなのに経団連とか一切是正する動き見せないどころか
完全に後追い上等で突き進んでるからねぇ…
WASP気取りで自分達は国がどうなろうと儲けられりゃ関係ないと思ってそうだが
アメリカ造船業の受注件数後退は自然の摂理もあるが、世界上位2国が特例補助金で実質ダンピングしてるせいぞ。どこの国かは言うまでもなく。
現役バリバリの軍人達の判断が問題なのに元軍人上がり(←元か上りかどっちかにせーや)ってのは判断の正しさの根拠にはならんだろ。
ズブ素どころかアレルギー持ちが根拠も総括的視野もなくヒステリックに反対する日本よりは多少マシ、という程度の話なら否定はしないが。
冷戦期を勝ち抜いたOBたちからすると、最近の後輩どもは何をやってるんだ程度の話で
アメリカにおける造船業の弱体化とは別に、それを管理する政府と軍のどこに問題があるのかな
コンステレーションの話を聞いたら本当に反省してるか解らん…
元が大丈夫だからエンジンのテストなしって
地上試験やって問題無し、実戦配備で問題無し
「ほら大丈夫だったでしょ、次(DDG-X)では地上試験は無しね、コスト削減」
とかやってまた炎上してしまいそう
コンステレーションも6000tから7300tまで1300t以上大型化してるから電気推進部分の負荷は相当上がってるはずなんだよな。
LCSで機関システムやらかしてる前科あるのに、後継で検証不足とか不安でしかない。
統合電気推進は遠いなぁ
まあ、米海軍よりも遥かに手堅い海上自衛隊でさえ、もがみ型護衛艦で初採用されたロールスロイスのMT30ガスタービンが一番艦に搭載前の陸上試験中に、脱落した部品を吸い込んでぶっ壊れる事故を起こして、一番艦の進水が二番艦の後になったんだからなあ…統合電気推進なんて後数世紀は実用化までに必要だったりして(笑)
もがみ型のMT30の事故は統合電気推進に由来したものじゃないですよね?
エンジンをテストする際には常に起こり得ることではないでしょうか?
どちらかというと作業者の練度/作業行程管理/MT30の設計といった分野の問題だと思いますが。
統合電気推進は実用化済みじゃないですか? しらせとか。
そういう話ではなくて?
戦闘艦艇は難易度が全く別物。
しかも、しらせですら電動機は5.5MWx4に対し、発電機は7.4MWx4で差し引き7.6MWもの余力あるし、
1基減った7.4MWx3でもギリギリ賄えるような余力を取ってある。
よく機関出力と艦内電力とを共有化して効率的にとかって誤解してる人多いけど、
実際には停電対策で相当に多めに発電し続ける必要があるから、エネルギー効率がかなり悪化するのが電気推進。
元コメに戦闘艦艇、なんて縛りはないんだよ。
それは統合電機推進の技術的な難易度の話ではないですよね?
必要な機関出力は速度の3乗倍に比例するとか、
増速するほど波浪で出力変動が激しくなるとか、
冷却システムも必要なことか、
レーダー等に艦内電力がメガワットクラスで必要になることとか、
・・・そういういうのが山盛りで、細かく説明してもどうせ話半分だろ?
だから書いたとして、「戦闘艦艇は非戦闘艦艇より発電マージンが多めに必要」だってことがわかればいいんだよ。
一方で電気推進採用なんて方針打ち出した奴らに限って建造費や維持費の要求がシビアだし、結局、特殊用途以外じゃシビアでないと電気推進にする意味もない。
それでも造ろうとするとマージンのギリギリを攻めされられるのに自然環境や将来性も考慮しなきゃならんくて技術的な難易度が物凄く高くなるのが電気推進式の戦闘艦艇。
>・・・そういういうのが山盛りで、細かく説明してもどうせ話半分だろ?
なぜそう決めつけるのかわからないが、そういうことを知らないから「しらせ」の例を出したわけで。
せっかく書くなら、相手に通じる意味ある返答を書けばいいと思うよ。
その説明がなければ、マージンが必要だとはわからないよ。
まあ、教えてくれてありがとう。
うーん,これは作戦部長,ギルティですよ
責められるべき責任者は本来彼ではないのに、まったく貧乏くじだね
最初の投稿者の意図を察してやってくれ。(T_T)
これはデジタルエンジニアリングの敗北なのでは?
陸上施設作ってテストするならコスト削減出来る部分が無くなって従来の方法と変わらん
個人的には工業製品は試作してなんぼだろと思ってるので今更何言ってんだ?って感じだけどね
なんで?デジタルエンジニアリングによってアナログでの試作回数を減らしたりタイミングを後ろにズラせれば十分なのでは?
物理試作を完全にやめなきゃ成果と認めてくれないの?
やはり日本の防衛装備庁のように、新技術の実証実験を行い問題点を全て解消した後に、兵器に実装するのが堅実な新技術の開発方法なのでしょう。
某国家のように、見栄や外見を優先するあまりに、未完成の技術で大型の揚陸艦や大型の潜水艦の実兵器を建造して、不具合が見つかっても建造を中断せず、それどころか2番艦3番艦の建造を進めてしまい、結果的に実戦配備が遅れてしまうという失敗を喫する愚は避けたいですね。日本では考えられない愚かさです。
某国家と日本は、頭脳が違うのですよ。
比べて喜ぶのはあっち側の技法だからね
真似しないように
上をみて歩こう
試験艦あすか、のある海自が誇らしいですね。
退役艦を試験艦に流用する国が多い中、専用艦をわざわざ建造する日本は珍しい方だけど、真の狙いは有事に際して護衛艦に改造できる船を平時から確保する名目だと思ってるよ
潜水艦隊も試験艦名目で定数外の潜水艦を維持してるしね、
正直ボーイングの件も含めエンジニアリングを軽視しすぎでは無いですかね。デジタルセンチュリーズもシュミレートで工数削減を狙ってるのでしょうけど、理論上はどれだけ綺麗にできても実証試験でどうなることやら。
MAGAでアメリカを立ち直らせないと中国覇権になってしまうよね
他の開発での遅れやコストの高騰も無関係じゃない
なのに、BLMとかCRTとか内戦みたいなことばかりしよって。
中華はオリジナリティがなくて本当につまんないんだよ
>フォード級の失敗を生かして慎重なアプローチを本当に実践しているのは米海軍ではなく議会なのかもしれない。
議会が軍事の分野でもきちんと常識的な機能を果たしているのは。心底羨ましい
世界の艦船8月号読めば、フォード級のやばさが分かるよ
遠洋航海とか怖くて出来ないレベルだから